遠い未来、地球で 作:ジェダ
遠い遠い昔、遥か彼方の銀河系で1隻の船が追われていた。
銀河系を支配する邪悪な帝国が作る秘密兵器に使われるある鉱石を盗掘していたが、それを良しとしない反乱勢力の一派がその鉱石を盗み出す。しかしその盗み出した鉱石を運んでいた船は帝国に補足されることとなり、ついには撃墜寸前まで至った。
そして最終的にその船は最後の力でワープを試みそれは成功するが、その無理がたたり船はついに誰もいない場所で航行不能となった。
それから遠い遠い未来、地球に一隻の船が墜落した。もしもこれがこの星に人類がいれば大騒ぎとなっていたが人類はとっくの昔に滅んでいるため騒ぎ立てるものはいなかった。
その後海に落ちた船の残骸にあった死体と鉱石は地中をさまよった挙句堆積し、ついには緒の浜と呼ばれる場所にたどり着いた。
それからさらに未来、地球にはある知的生命体が現れ始めた。それらは宝石と呼ばれ、さまざまな鉱石がモチーフになった宝石たちが生まれた。そしてその中には外宇宙から飛来したかの鉱石の特徴を持った宝石もいた。
…ただしこれはその宝石の話ではなく、彼がいなくなってさらに未来の話である。
足を失ったフォスのために持ってきた新しい足、それはかつての仲間が遺していった義肢。これまでは月人にさらわれた仲間たちはどれも全身もしくは記憶を失い動けなくなるほどの量の体を持っていかれていたので、この義肢を試すことは無かったがついに被験者が現れたのだ。
(それにしてもどうやってこんな複雑なつくりのものを…)
彼が作った義肢は構造以外にもなぞが多い、とくに謎なのがこれをどうやって作るかに至ったアイディアだ。最初これを見た先生は彼が人類の遺した資料を拾ったのかと推察していた。かつてこの地にいた人類は先生いわく自分たちが想像もつかないような技術を持っていたらしいので彼に資料を見せてもらうように頼んだ。
しかし返ってきた答えは意外なものだった。"資料など存在しません先生、これはフォースの導くがままに作ったものです。"というのが彼の答えだった。もちろん私たちの誰もがその言葉を疑ったが先生だけは何か神妙な顔で『そうか…』とだけ答えてこれ以上の追求を止めるようにみんなに言った。
「これは先人があなたみたいな状況にあるこのために作ってくれた足です。」
「今の僕みたいな人のために…ってこの足はルチルが作ったものじゃないの?」
「そうですよ、これはかつての友の遺品とも呼べるものです。だから適合できたとしても無理な使い方をせずに大事に扱ってくださいね。といいましても硬度3のあなただと足の前に体が壊れますがね。」
「ひどいな、それ以前にちゃんと足になるの?動くの?」
「実際に試すのはあなたが初めてですが彼の言葉を借りるならこの足は『フォースと共にあり、動かし方は足が導いてくれる。』とのことです。」
「フォース?僕?」
「フォスじゃなくてフォースです。彼が持っていた不思議な力やアイディアの源らしいですが私にもよく分かりません。」
「え!?そんな未知なものを僕にくっ付けるの?なんだかちょっと怖いな。」
足の製作者もすでにいない、おまけにその原理はルチルもまるで分かっていない。そんな義肢を付けられることに若干の不安をフォスは覚える。しかしルチルはそんなフォスのことを知ってかしらずか、早くこの義肢を付けたくてうずうずしながら言い放つ。
「大丈夫ですフォス、フォースと共にあれですよ。」
「ちょっと!ルチル顔が怖いよ!?」
「何事にも最初の一歩というものはあります!たまたま今回はそれがあなただけだったのであきらめて大人しくしてください。それともこのまま動けないままでもいいのですか?」
「うっ…それはいやだな…」
「じゃあ我慢してください。」
「…分かったよ、なるべくやさしくね。」
少しごねようとするフォスだったが結局このまま足がないのは不便すぎると思い、あきらめて足を取り付けて貰うことにした。
「じゃあいきますよ…」
(ルチルちょっと顔が怖いな…)
形を整えたフォスの足の破断面にルチルが義足をくっ付ける。すると義足は驚くほど一瞬にしてフォスの足に結合した。
「すごいこんなに一瞬でくっつく物なの!?」
「…私も驚きました。でもここからが重要です。くっ付くのと動かすのはまた別問題、なのでフォス少し試してください。」
「分かった、動け僕の足!」
付いた新しい足をフォスは早速動かしてみることにする。するとその足は以前と同じくらいに…いや以前よりも早い反応で動いた。
「やった!動いた!僕の足!!」
「よかったわねフォス、新しい足がすぐになじんで。」
さっきまでの不安はどこへやら、新しい足がすぐに動いたことに喜びが隠せないフォス。一方でルチルも喜びの感情を浮かべていたがその表情はどこかマッドサイエンティストじみていた。
(まさかこれほど上手くいくなんて、この結果は今は眠っている子たちの回復に大きく役立つかもしれないわね。)
この義肢には《デュラスチール》と呼ばれる金属の他に彼の体の一部が組み込まれている。そのうちのどちらがフォスの体になじんだかは定かではないがこのままフォスの経過が良ければ、今は月人に体を奪われ眠っている仲間たちの回復に役立てられるかもしれないとルチルは考えていた。
(できればあなたにフォスを診てもらって意見を聞きたいですね。あなたならどう答えるのでしょうか…カイバー。)
彼は今はまだ眠っている…いやそれは単なる願望だろう。彼はもう死んでいる、かつてあった月人の大襲撃の際単身月人に挑みかかり敵を殲滅した後体が砕け散り、元になったであろう鉱石の塊になった、かつて遠い銀河ではカイバークリスタルと呼ばれていたものに…
「では私は席を外しますので、フォスはここで少しリハビリがてら足の運動でもしていてください。」
「ん、ルチルどこかに出かけるの?」
「先生と彼にあなたの足が上手くいきそうだと報告に行くだけです。」
「分かった、じゃあ僕リハビリがんばるね。」
そのやり取りの後、ルチルは部屋から出て行きフォスは新しい足のリハビリを開始する。しかし新しい足は前の自分の足よりも上手く動かせるんではないかと思えるほどだったので、すぐにやることが無くなり退屈になる。
「この足を作った人はどんな人だったんだろう?」
この足の製作者について多くを語る人はいない。知っているのはかつて先生に近い強さを持ち、月人の大襲撃を退けたということぐらいである。それもこれも全部自分が生まれる前の話だ。
「月人の大群を退けたならもっとみんなの話題に出てきそうなのになんでだろう?まぁいいや、今度先生にそのことを直接聞いてみよう。今はとりあえずルチルに言われた通りリハビリだ。」
疑問はいったん棚に上げフォスはリハビリという名の散歩に出かけることにした。
「足はフォースが導いてくれるとかルチルが言ってたけどどうやってその導きを受ければいいんだろう?」
問題はルチルの言葉にあったフォースの導きを授かる方法がまったく分からないということだ。しかし誰かに聞こうにも聞けない、今部屋には今自分一人しかいない上に知ってそうな人がとにかく限られているからだ。結局ルチルが帰ってくるまで待つか、自分で何とかするか悩んだ結果出した答えは…
「ただいまフォス、足の具合はどうですか…っていない!?あの馬鹿どこに行ったんだ…」
もぬけになった部屋を見てルチルは一人愚痴を零す。無茶な扱いをしたら義足にダメージが入るかもしれない上にフォス自体も割れてしまう可能性があり、それをなおさなくてはいけないかもしれないという労働に頭を抱えた。今思えばフォスの性格を考えて部屋を空けるときにもっときつく言っておくべきだったのだろう。すべては後の祭りであったが。
…それからしばらくしてルチルは月人の襲撃を持ちこたえたジルコンを治療をしていた。
「さすがはジルコンですよ、最小限の傷です。フォスの次に若いのに本当に優秀ですね。」
「いいや馬鹿だよ、俺をかばうなんて…」
ジルコンというよりは自分に言い聞かせるようにイエローダイヤモンドは呟く。そんなイエローダイヤモンドをフォローするようにルチルは答える。
「あなたをとても尊敬していますからでしょう。」
しかしイエローダイヤモンドは皮肉を浮かべた笑みで自嘲しながら続ける。
「俺は尊敬されるようなやつじゃないさ。組んだやつをみんな月に生かせてしまった駄目な宝石さ。グリーンダイヤモンドもルビーもサファイアもピンクパーズも連れて行かれた。それにカイバーの奴も死なせちまった。そして気づけば逃げ足が速いだけで最年長3597歳だ。…もう何で戦っているかも思い出せねぇよ……」
「『連れ去られた仲間は取り返せることをあきらめなければいつか必ずチャンスが巡ってくる、忍耐が重要だ。』彼が言っていた言葉をあなたが忘れてどうするんですか?」
「だけど死んじまった奴にはそのチャンスすら巡ってこない…」
イエローは皮肉を浮かべた表情のまま昔を思い出す。
今より昔、二人の宝石がある言い争いをしていた。
『カイバーどこに行く気だ!?あんな大軍いくらお前でも無理だ!!せめて俺と一緒に、駄目なら先生も呼んできて…』
一人はイエローダイヤモンド、彼は誰かを引きとめようとしていた。
『駄目だこれは僕が何とかしなくてはいけないことなんだ!!奴らは僕…いや正確には僕の中にある知識を狙って攻めてきたんだ!だから僕がやらなきゃいけないんだ!』
そして引き止められているほうの宝石はカイバー呼ばれ、その髪色は普段なかまとすごす時の青色でも無く、寝ているときの透明でもなく、血色に染まっていた。
『お前何を言って…狙われているのはお前だけじゃないだろ?だから今までお前も助け合いが大事だって言ってたじゃないか!?』
『違う…いや今まではそうだったけれど事情が変わった。奴らは《祈り》をここではない遠くに求め始めた。そしてそのためには僕の知識が必要らしい。』
『そこまでして求めるお前の知識とは何だ?教えろ!仲間だろ、一人で抱え込むな!!』
『それはできない!詳しく話してしまえば他のみんなもどうなるか分からない!』
その言葉と共にカイバーは悲しさを浮かべた笑みをイエローに向け、手をかざす。その構えには見覚えがあった。彼が不思議な力…フォースと呼ばれる力を行使するときによくやる仕草だった。
『待て、カイバー…』
月人の大群に向かおうとするカイバーを何とか引き止めようとするが言葉が途切れる。最後に見たカイバーは一瞬だけだったとはいえ血色に光る髪ではなく、普段の澄み切った青空のような青色に戻った。
『さようならイエロー…今までありがとう、君と組めて楽しかったよ。フォースと共にあれ……』
「あいつは馬鹿だ、俺が会った中で一番の愚か者だ。止められなかった俺も同じくらい愚かだけどよ…」
あいつは最初から死ぬつもりだったのだ、自分ごと知識を破壊して月人たちをあきらめさせるために…昔のことを思い出したイエローは憂鬱な気分になっていた。そんなイエローを案じてかルチルは話題を変えることにする。今は雨も降っている、こういうときは難しく考えずに休むのが一番だ。
「…雨、一休みできそうですね、こういうときは無理に考えすぎないことが大切ですよ。」
「そうだな…そろそろ冬眠の準備もしないといけないしな休むとするか。」
ルチルは宝石たちの修繕に疲れ、イエローもこの雨の中何かをしたい気分にはならなかったため、休むことにした。しかしその前に何気なく窓の外を見ると自分のよく知る二人の宝石が何かを探しているかのようにせわしなく動き回っていた。
「あいつら何しているんだ?」
「さぁ…あ!もしかしてフォスを探してるんじゃないでしょうか?」
「フォスを!?あいつまだ帰ってきてないのか!?」
「…新しい足がよっぽど気に入ったのか、まだ戻ってきてないのかもしれません。それでダイヤとボルツが探し回っているのかもしれませんね。」
「…あの馬鹿どこをほっつきあるいてやがるんだ?俺も探してくる。」
「気をつけて。」
行方不明の末弟の捜索をしているであろうボルツとダイヤを手伝うためにイエローは部屋を飛び出す。幸いにして距離はそこまで離れていなかったので二人にはすぐに合流できた。
「ボルツ、ダイヤ。フォスを探しているのか?」
「イエローお兄様!お兄様もフォスを探しておられるのですか?」
「ああ、二人はあいつの行きそうなところとか心当たりがあるか?」
「新しい足を付けてから外に行ったきり以外は分からない。」
二人もフォスを探していること以外にめぼしい情報は無く、イエローはこれは長くなりそうだと面倒な気分になる。
「あいつどこに行きやがったんだ?月人にでも見つかったらどうするつもりだ…」
フォスは脆い、弱い、狙われやすいの三重苦を背負った宝石だ。月人に見つかったらただでは決して済まないだろう。だから早く見つけなくてはならない。
「ダイヤは西、ボルツは東を頼む、俺は北の沼を探す。」
月人がもし襲ってきたら戦力が分散した状態では危険だが今はその予兆は無い。それならば三人いるなら手分けして探したほうが早いし効率的だ。
イエローは驚くべき速さで北の沼まで走りそこにあった木の上からフォスノ姿を探す。結果当たりを引いたのは自分だった。遠くの方にフォスの姿が確認できたのだ。
「フォス!」
すぐにそこまで走り声をかけると向こうもこちらに気づいたのか振り向く。
「イエロー?」
「やれやれ、こんなとこまでほっつき歩いて心配し…」
後は連れ帰るだけそう思ったイエローの言葉は途中で止まった。フォスが以前とは比べ物にならない速度で動き目の前から消えたからだ。
「はやっ!…ていうかなんで逃げる!?」
「ちがうよ、足の導きに従ってたらこうなったんだよ。どうしよう!?」
足の導き?こいつは何を言っているんだ。いくらなんでも義足に意思なんてものは無い、そんな馬鹿なと思いフォスを捕まえようとするとフォスは捕まる直前で見事な跳躍をして回避し、着地も見事にこなした。イエローはそれを見て困惑した、その動きには見覚えがあったからだ。
(あ、あの動き!?あいつの…カイバーの動きにそっくりだ!どうしてあいつが?まさかあの足が導いたというのは…)
かつての相棒と同じ動きをしたフォスに目を奪われる。が、すぐに正気に戻りフォスを捕まえることにした。その目はフォスではない誰かに負けたくは無いという気概に満ちていた
「もう一回だ!次は絶対止める!」
「で、でもイエローにぶつかったら!?」
「上手くやる!その動きには見覚えがあるからな!」
「…割らないでよ。」
先ほどと同じようにフォスを捕まえようとイエローは走る。その速さにフォスは危機感を抱き先ほどと同じように飛んでかわそうと跳躍する。
「お兄様を…俺をなめるな!」
だがそれすらも読みきっていたイエローは途中で急激な方向転換をし着地する寸前のフォスの体を掴む。
「どんなもんだ!」
「捕まっちゃった…」
「まだまだ動きに体がついていけてないようだな。まいきなりあいつみたいな動きは無理ってことだ。」
「あいつってこの足を作った人のこと?」
「まぁな…」
捕まえたフォスの足を見る。その足は足としての形状を保ちながらも内部は実に複雑な構造をしているとルチルはいっていた。その足を見てイエローは物思いにふける。
(あいつの作った足か…あの動き、足の導きというフォスの言葉、カイバーお前はその中で生きているのか?)
無理な動きをしながらもフォスの足の付け根などはまるで無傷のままだ。今までのフォスならば確実に砕けていただろうが、まるで何かに守られているかのようだった。
「新しい足上手くなじんでよかったじゃないか。上手く使いこなせよ。」
イエローはそう激励した後フォスを地面に置く。しかしそのおいた場所が問題だった。そこには岩があり衝撃がフォスの頭まで伝わる。そして頭までは加護されてないのか、今日一日の無理がたたったのか、フォスの頭が割れた。
「あっ…い、岩があるとは…悪い…」
《カイバー》
昔にいた宝石の一人で故人。存命だったころはイエローダイヤモンドとペアを組み、ルチルと技術の進歩について語っていたりしていた。後フォースの導きで得た剣術を他の宝石に広めて、人間グリーヴァスならぬ宝石グリーヴァスを生産(剣術的な意味で)したりしていた。
モデルはライトセーバーやデス・スターの主砲の材料となるカイバークリスタルから。
フォースが使えるのは墜落した船の死体からミディクロリアンが「緒の浜」に取りこまれた結果とかそんな感じのガバ設定。
生きたカイバークリスタルそのものなため感情がライトサイドかダークサイドよりになることによって髪や目の色が変化したりする。
(ライトサイドだと青、ダークサイドだと赤)