遠い未来、地球で 作:ジェダ
「ぁあ…朝か…」
光が窓から差し込む中フォスは目を覚ます。そして眠気がまだ覚めないながらもそれまでのことを思い出し、整理する。
「昨日新しい足ではしゃぎ過ぎて頭が割れて、ルチルに治してもらってそのまま寝たんだっけか?……そこから何だっけか、とんでもなく変な夢を見た気がする…」
とにかく変な夢を見た。星の海を泳ぐ楔形の物体の群れ、全身を覆う白い服を着た謎の集団、砂だらけの場所に自分たちに似た形の者の他にトカゲのような顔の者やカエルとナメクジを足した者が良くわからない言語で話し合う様子、黒い岩と煮えたぎるように暑い赤い川の場所で青く光る剣をぶつけ合い争う二人。どれもこれもが自分が今まで見てきたものとはまるで一致しものばかりだった。
他にもいろいろ見たがあれらは一体なんだったのだろうかと考えようとした矢先、近くの椅子に座っていた仲間に呼び起こされる。
「おはようございますフォス、頭の具合はどうですか?」
「ルチルか…そういえば僕昨日頭が割れたんだっけ。くっ付き具合は良好だよ。」
「それは良かったです。もし動いても問題なさそうなら先生のところに行きましょう。」
「先生のところに?ちょっと待ってて準備するから。」
ベッドから起き上がり服を着替え準備をする。先生のところに行くということは何か用事があるのだろう。自分も一緒ということは足についての報告だろう。
「それで、新しい足の具合はどうかね?」
「すごく良いですね、まるで生まれ変わった気分ですよ!」
「ふむ、どうやら彼の体に残っていたインクルージョンとミディクロリアンはフォスの体を気に入ってくれたようだな。」
「ミディクロリアン?何ですかそれは?」
インクルージョンは分かるが一応知っているが、ミディクロリアンという単語は知らなかったので疑問になる。ただ、このミディクロリアンという新しい単語、なぜか分からないが懐かしいような感じがした。
「この足を作った者の体に共生していた微生物…らしい。私にも詳しいことは分からん。」
先生もその微生物?については詳しくは知らないらしい。というかそんな良く分からないものをルチルは僕の足につけたのか…
とんでもないマッドサイエンティストだなと隣のルチルをジト目で睨む。
「ルチル~」
「い、いや私は最初から信じてましたよ。フォスの中の図太く能天気なインクルージョンならばきっと上手くいくと思ってましたから。そう可能性、君の中の可能性が開花したんですよ。」
「ははは…お前は本当に強運だな。」
全くフォローになってないフォローをルチルがし、イエローが乾いた笑いを漏らす。だが眠っていた可能性が思わぬ形で開花したというところだけは同意しても良いだろう。ならばその開花した可能性を有効に使えるよう先生に働きかけてみるべきだ。
「そこで先生!僕はこの新しい足を活かして戦いたいです。」
その言葉に先生は何かを考えているのか黙りっぱなしだった。…もう一押し必要かもしれない。
「新しい力を無駄にする気ですか!?」
「……」
相変わらず先生は黙ったままだった。代わりにルチルとイエローから反論が飛んでくる。
「勢いで無茶を言わないことです。足が機敏なだけでは勝てませんよ。」
「そうだなぁ、それに戦うなら誰かと組む必要があるがフォスをカバーしきるのは大変そうだ。」
マッドサイエンティストめ…だが最初の内はカバーしてくれる人材が見つかれば光明はまだある。
「イエロー!栄光のダイヤモンド族よ!」
「ほえ?」
「その輝きで僕をカバーしてくれ。」
「俺にはジルコンがいる。」
「ならジルコンと三人でもいいよ!どうだ!」
「三人は意思疎通が難しいんだよ、せめて同属でないと…」
「そこを何とか!」
なかなかうんと言ってくれない強情な先輩、押しが足りないのだろうか。そんなやり取りをしていると、今まで何かを考えていた先生が目を見開き口を開いた。
「オブシディアン、かつて《カイバー》が使っていた剣を。」
「《カイバー》が使っていた剣ですか。ええと…どこにしまいましたっけ。少しだけ待っててください。」
先生が剣を磨いていたオブシディアンに昔使われていた剣を持ってくるように言い、オブシディアンは引き出しや棚を物色し探し出す。そしてしばらくすると古びた木箱が運ばれてきた。
「こちらでーす。いやぁ探すのに苦労しましたよ。」
「ごくろう。フォスこの箱をあけてみなさい。」
「は、はい!ただいま!」
ついに待ちに待った瞬間、声が上ずってしまう。ここから僕の新しい一歩が始まるのだ。意を決して箱を開けてみると円筒状の物体があった。手にしてみると重みはあまり無いこれがみんなが使っているような《光る剣》になるのだろうか。
「これが剣…刃の部分はどうやって出すのですか?」
「せ、先生…本気ですか?ましてやこの剣はカイバーが使っていたもの、せめてフォスの一部を使って調整しないと使い物になりませんよ。」
手にしてみたはいいがどうやって刃の部分を出すのか分からない。それにどうやらルチルが言うには調整が必要らしい。しかも自分の体の一部が必要となるとまた体を削る必要があるのか…少し憂鬱になりそうだった。
しかし先生の考えは違った。
「フォス、この剣を手に持ったまま刃が出るように念じなさい。」
「え!僕の体の一部を使わなくてもいいのですか?」
「いいから試してみなさい。」
「わ、分かりました。」
先生に言われるがままに、いつもみんなが使っているような光る刃を連想し、出るように念じる。
「出ろ!僕の刃よ出~ろ……っわ!出た!!」
しばらく念じると突如、青白い光線が飛び出し長さ一メートル程の刃に落ち着く。まじまじと見てみると鍔元から切っ先にかけて同じような輝きを放っておりすさまじいエネルギーを感じられた。……これは間違って体に触れてはいけないやつだ。
「ば、馬鹿な!そんなことがありえるのですか!?」
「調整しないと絶対無理なはずなのに!」
「俺も予想外だ。偶然?…いやフォースの導きなのか!?」
刃が出たことに先生以外の全員が驚く。そんな中先生はこの状況を冷静に分析していた。
「カイバーの体とフォスが相性がいいのは分かっていたがこれほどとはな。イエローの言うとおりフォースの導きか…」
「刃が出るのがそんなにすごいのですか?確かに細かい調整はしていないみたいですけどそんなに驚くことじゃ…」
驚いたり神妙になったりするみんなに疑問を抱くがそれに対してオブシディアンから突込みが入る。
「それがありえないのよ!フォスは詳しく知らないだろうけどみんなの剣…《ライトセーバー》には核となる《カイバークリスタル》以外に、先生が私たちの体の形を整える際に削りだした余り物…いわば自分自身の体が使われているの。」
「それとどう関係があるの?」
「おおありよ!この剣のエネルギー源は宝石たち自身が生み出すエネルギー…いわば生体エネルギーでまかわなれているから他の宝石の持つライトセーバーじゃ上手く共鳴しなくて使えないの。」
「じゃあ何でこれは僕に使えたの?」
「知らないわよ…私だってこんなこと初めてだし。」
剣の調節役を任されているオブシディアンでもどうやら初めての出来事で分からないらしい。そんな中先生はある仮説を語り始めた。
「そのライトセーバーはかつてカイバーが使っていたもので、他のものと違い発掘したカイバークリスタルではなくカイバー自身の体が使われていた・・・当然他のものがおいそれと起動できるものではないがフォスの体はよほど彼の体と相性が良かったのだろう、足だけでなくこのライトーセーバーとも共鳴できている。」
「ということはこの剣は僕自身の体と置き換えることもできるということですか?」
「そういうことになるな…」
先生は僕の言葉を肯定する。剣が自分自身の一部…足など自分の体に密着しているものならば分かるがやはりぴんとこない。こういうのは使っていくうちに分かってくるのだろうか。
「ま、何はともあれそのライトセーバーはお前を選んだんだ。大事に使えよ。」
「分かってるよイエロー、僕だってせっかくもらった剣なんだから。」
「…本当に分かっているのか?いいか、その剣はお前の命と思え。あとちゃんと綺麗にしたり、間違って体を切ったりしない、ましてや絶対になくしたりするなよ!どうも心配だ…」
「わ、分かってるよ…大事に使うよ。」
どうやら想像以上にこの剣は大切なものらしい。もし夢に出てきたよく剣を落としたり、敵に取られたりした誰かのようになったらイエローに殺されそうだ。今後気をつけてこの剣を使っていこう。
「さて、この剣を持ったからには実戦に出るかどうかはともかく訓練ぐらいはしないとな。」
「訓練?もしかしてみんながやってるアレ?」
「そうだアレだ、ついて来い。先生今日は誰がやってます?」
「今の時間ならアメシストがやっているだろう。ちょうどいいフォス一度彼らに習い練習してみなさい。ただし月人が現れても戦闘には参加しないこと、いいな。」
「え、今からですか?」
「そうだ。イエロー案内してやりなさい。」
剣を貰って即訓練とは休み時間というものは無いのだろうか。まぁこれはチャンスだ、ここでいいとこを見せて先生に認めてもらうんだ!
「もっと相手の銃口をしっかり見て!」
「弾道を予測しないと当たっちゃうよ。」
…そう考えていた時期が僕にもありました。この訓練やってみてとんでもなく難しい。
意気揚々と外に出て剣術の達人であるアメシスト双子に訓練のコツを言われているのだがまるでできる気がしない。そりゃ怪我して体がかけたりすることは無いのはいいことだけどもう少し初心者向けのはないのだろうか。
「ほら、また当たったぞ。これが月人の攻撃だったらお前今頃砕けているぞ!」
イエローからもお叱りの言葉をいただく。この訓練に使われる機材は何でもルチルと昔いたカイバーがボルツ監修のもと作り上げたもので、電気という雷に似たエネルギーで動いているらしい。ちなみにその電気だが、これまたカイバーとルチルが作った太陽光発電機?とか言うものを使って生み出したものをこの装置に入れているらしいが僕にはさっぱりだった。しかしそんなことはどうでもいい、この装置はぷかぷか空中を漂いながら表面の至る場所にある突起から光線を発する仕組みになっており、その光線をこのライトセーバーで弾くのが訓練の内容なのだ。
…普通に考えてズブの素人にできるわけ無いだろう!
「これむずいよ…なんかコツとかないの?」
「慣れるしかないな、とにかく練習を続けていくことだ。」
「どのくらい続ければいいの?」
「ん~とね。実戦で使い物になるまで年単位といったところかな?」
「…マジで言ってる!?」
「マジだ、なぁに今の私たちにとってはすぐだ。少なくとも慣れるまで実戦に出されることは無いだけありがたいと思え。」
「そんな~」
技能習得期間の長さにめまいがしそうになるがこれでも、自分は恵まれているほうらしい。
昔は月人達は弓と矢しか使ってこなかったらしく、カイバーという宝石が誕生してしばらく以降その攻撃方法は彼のフォースという力によって完全に無力化されしばらく平和が続いていたらしい。しかし、月人達は馬鹿ではなかったらしくもっと速くて威力のある弾に攻撃方法を変え、そのためにこの訓練方法が生まれたらしい。そして戦闘担当の訓練期間の間、一部の宝石と先生以外戦力外になり幾人の宝石たちがさらわれる暗黒時代があり今に至ったという。
そう考えれば確かに今の自分はマシな方だろう。…この訓練を無事に終え先生に認められるかどうかはまた別問題だが。
図書室、ここはさまざまな記録が保管された場所である。過去の戦闘記録や生き物の生態、先人たちが残した知恵が眠っている書物が本棚に整列している。
「フォスの足…今は彼が残した義足だけれど経過は良好、それどころか以前よりも身体能力の向上が見られるか。興味深いね。」
ルチルが書いたカルテを読みながら図書館の主であるラピスラズリは物思いにふけっていた。そんな中彼のテリトリーとも言えるこの場所に客人が駆け足でやってきた。
「ラピスいる?」
「おやゴースト、何か用かい?」
「今日のフォスのことなんだけどラピスはもう聞いた?」
相棒であるゴーストが駆け足でわざわざ言いに来るということは何か目ぼしい発見か出来事があったということだろう。読んでいた資料は一度読めば頭に入るので
「いいや、まだ何も知らないね。その様子だと何か変わったことがあったみたいだけれど。」
「フォスが彼の…《カイバー》のライトセーバーを調整なしに起動した。」
ゴーストの言葉を聞きラピスは新しい発見をした喜びを顔に浮かべた。
「へぇ…それはまた興味深いことになってきたね。そうか足だけでなく彼のライトセーバーまで…フォスは上手くそれを扱えてるの?」
「いいや、今のところはからきし。」
「それは残念、でも今後の経過に期待だね。」
残念といいながら少しも残念そうな様子を見せずにラピスはくつくつと笑う。
「それでいいのかい?いくらフォスが彼と同じ力に目覚める可能性があるといってもフォスがこの現状に疑問を抱くまでどのくらいかかるのか想像もつかないよ。」
「それについては問題ないよ。どの道今の僕らじゃ準備が足りなさ過ぎる。気長に待つさ。」
「気長に待つといって数百年、ついに光明が見え始めたってことか。」
彼らは長い年月を待っていた。この現状を変える…月人、金剛、宝石この三者の現状を変えられるきっかけを。
かねてよりラピスは現在の戦争状態に疑問を抱いていた。そしてその疑問に対する調査を今は亡きカイバーに依頼していた過去がある。ラピスたちの同士だった彼はそれに快く応じフォースと呼ばれる不思議な力を瞑想することで集中させ情報を集めてくれた。しばらくして彼は調査結果をラピスに資料として提出してくれた。その内容は他の宝石…ゴースト以外には先生にも見せていない物となっている。
「数百年か思えば、僕たちが彼に依頼した調査が彼を変えてしまったのかもしれないね。僕たちはカイバーの中に渦巻く暗いエネルギーを甘く見ていたのかもしれない。」
月人の目的、先生の正体、連れ去られた宝石たちの末路様々なことが書かれたその資料はとても公表できるものではなかった。そのころからだった彼が変わり始めたのは。
「彼の中の憎しみよりももっと問題だったのは僕たちと彼の考え方の相違だったかもしれないね。」
ラピスは物思いにふけりながら過去を思いはせる。自分とカイバーとの考え方に相違があったのは今となっては認めざる終えない事実だったがかつてはそうではなかった。自分はこの現状が変わるならば宝石たちの価値観が変わり月人との和解や先生に反旗を翻すのも致し方なしと思っていたが、カイバーは違っていた。
カイバーが目指していたのはあくまでも平穏、月人が攻めてこない以外は今までと同じように先生や仲間たちと楽しく暮らす生活。先生の正体や月人の目的には本質的にはどうでも良かったのだ。
「結局僕らは彼との考え方の相違にも気づけず、憎悪も止められなかった。あのときに戻れればと今でも思うよ。」
「カイバーが平和に月人を消す方法を選ぶかどうかは少しばかり疑問かもしれないけどね。その憎悪から楽には消そうとはしない選択肢をとったかもしれない。」
フォースが見せた光景で連れ去られた宝石たちの末路を直接垣間見た彼の憎悪はとにかく強烈だった。そのせいで彼は見誤った、月人が彼の中の知識を求め始めたときそれを交渉材料に使うという発想を逃し殲滅するという選択肢を選んでしまったのだ。
「彼の気持ちも理解できるけどね、自分のせいで大軍勢がやってきたそれまで抱えてきた焦りや怒り悲しみが爆発すれば冷静でなんていられないよ。それでも僕たちがもっと早くに気づいて仲間の安全と平和のためにと理解を求めればまだ引き返せたかもしれない。」
「いずれにしても今となってはどうしようもないけどね。フォスはこの先真実を知ったとしてどう行動すると思う。」
「さぁね、僕たちもカイバーもフォスじゃない。彼のことは彼とフォースの導きが決めるさ。」
覚醒が始まりつつある、ならば後は見守るだけだ。フォスがどの道を選ぶかは分からないが真実を知ったとき今度は上手く導けるように努力しよう。
《ライトセーバー》
基本的な性能は性能は本編と同じだがエネルギー源がバッテリーではなく宝石たちの生体エネルギーとなっている。各人のライトセーバーごとに自身の破片を使い生体エネルギーの供給と同調を行っているため基本的に他者のライトセーバーは使えないグリーヴァス涙目仕様の専用武器。
体の一部である石を使うのは今はレジェンズ(非公式)になった小説に登場するランベントクリスタルからのアイディア。
《ライトセーバーのフォーム》
月人は基本的に遠距離攻撃がメインなので必然的にソレス(第三フォーム)仕様。月人たちの攻撃は当初弓矢だったがフォースの壁によるヌルゲー仕様に強化パッチが当てられ旧文明のレールガン仕様になったため生み出された。
ちなみに厳密にはジェダイたちのようなソレスを使うのはカイバー(故人)だけで他の宝石たちは敵の弾道を読みきり防御攻撃を行う《ガン・カタ・ソレス》とでも言うべきもの。
人間だとまず習得不可能だが高い身体能力と長い寿命を練習に費やせる宝石たちは基本的にこれを修めるようにしている。