遠い未来、地球で   作:ジェダ

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辰砂と燐葉石

「眠りが悪い……というかあまり寝たくない…」

 

 前までは早寝遅起きが習慣だったが、最近は寝るのが正直しんどい。間違いなく毎回見る変な夢のせいだ。今でこれなら冬眠するときはどうなってしまうのか……正直考えたくも無い。

 

 (シンシャを何とかするためだったらホントは寝ないといけないかもなんだけどなぁ…)

 

 夢に出てきた星の海を自由自在に渡り歩くことができる旧世界の文明(?)ならばシンシャの体を何とかすることぐらい容易いのではないかと思える。今はまだ断片的な情報しか見ることができていないけどもっと深いところまで知ることができれば希望はあるかもしれない。だからといって見ていて気持ちのいいものでは決して無いが。もしもこの夢がかつていたカイバーの中にいたミディクロリアンとかいう生物によって見せられるものだとしたら、というところまで考えて僕はあることに気づいた

 

 (いや待てよ、知識だけではダメなのかもしれない。以前いた宝石…彼も僕と同じような夢を見ていたとしたら…まだ何かが足りないのかもしれない。)

 

 彼の一部分だけの義足しか持っていない自分よりもカイバーは深い知識を有していただろう。その彼でもシンシャの体質を治せないということは知識以外の別の要因が必要なのかもしれない。

 

 (ほかの要因か、技術だけでは無理となると……それを実現させるための原料とか?いやいやそんな言い訳がましいこと考えてどうする。)

 

 はっきり言って夢を見るのが怖い、情けないことに見るたびに情報量が多すぎて自分が分からなくなってきそうなので最近は眠るのが怖い。

 

 「……やっぱり直接聞いてみるか。」

 

 一度報告もかねてシンシャに相談するべきなのかもしれない。ダイヤと同じくらい生きている彼ならばもしかしたらもっとカイバーのことを知っているかもしれないし、体質のことについてどういった答えをもらったかも分かるかもしれない。虚の岬辺りにいると良いのだけれど…

 

 

 

 

 

 

 

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 「……それで俺に何の用だ?ありえないことだろうがまさか俺の新しい仕事が見つかったとかじゃないだろうな?」

 

 「い、いや新しい仕事ってわけじゃないんだけど、今日はちょっと相談したいことがあって…」

 

 「お前が相談とはいったい何だ。また何かろくでもないことでもしでかしたか?」

 

 シンシャは運よく虚の岬で見つかった。それにしても随分とひどいいいようである。碌でもないこととは失礼なことだ、そんなことは……結構していたな。正直みんなに迷惑をかけていることは自覚している。しかし今日来たのはそういう話ではない、以前の約束についての糸口についてだ。

 

 「今日はというか最近は何もしてないよ…多分。相談したいことというのはカイバーのことについて聞かせてほしいんだ。」

 

 「聞いてどうする?話をしたところでお前に関係することなどあるはずはないだろう。」

 

 「彼が作った…カイバーの体の一部を使った義足を移植した。その結果変な夢を見るようになった、その夢の中には僕たちにはないすごい技術がいっぱいあった。」

 

 普通夢の内容なんか話すなと馬鹿にされるか怒られるだろう。しかし実際にはライトセーバーというそれまでにない技術がかつてカイバーからもたらされている。だからただの夢と断じられることはないかもしれないと踏んだ。

 

 「もしかしたらその中に君の体質を何とかできるかもしれない技術もあるかもしれない、だから話を……」

 

 もし技術があってもそれをなす素材がないのであればシンシャに『カイバーもかつて同じことを言ったが、そんな都合のいいことはない』と答えられるだろう。それならばそれでその答えを受け止め別の道を探すつもりだったが、シンシャの反応は予想とは違った。

 

 「……お前あいつの足を付けたのか?しかも変な夢を見るようになっただと!?」

 

 「最近の話だけれどね。」

 

 「……詳しく聞かせろ。」

 

 予想外にシンシャが話に食いついてきたためこれまでにあったことを話す。足を失った経緯、新しい足をルチルに移植されてから以前よりも格段に足の運動能力が上がったこと、夢に出てきたここではないどこか遠くのはるか昔の話、そこにあった高度な技術とフォースと呼ばれる力。何気にシンシャが自分の話をここまで真剣に食いついて聞いていたのは初めてかもしれない。

 

 「なるほど話は大体わかった…はずだ。」

 

 「それで僕の夢について何か知っていることは?その中に君の体を何とかするのに役立ちそうな内容はあった?」

 

 「結論から言うと俺も詳しいことまでわかるわけではない。ただお前が見ていたという夢はかつてカイバーも見ていたものと同じものだということくらいは推測できる。」

 

 「やっぱりカイバーも同じものを見ていたんだ!」

 

 「あいつの中にあった知識を再現して俺の体質を改善することはできなかった。ただ…」

 

 カイバーも無理だったということは役立ちそうな知識もしくは改善を成す素材がなかったということだろう。予想していた答えではあったが少し落胆する。しかしシンシャは言葉をつづけた。

 

 「ただ……」

 

 「ただ、何?」

 

 「お前が見た夢の中にも出てきたであろうフォースという力、それはカイバーも使うことができた。……それは俺の体から出る水銀を防御そして体質は無理でも制御することができた。」

 

 「マジで!?」

 

 思ってもみない言葉だった。それと同時にかつてシンシャの体質は無理にしても水銀を制御できる力があったことに驚く。そして希望も湧いてきたミディクロリアンとかいう生物と共生し、その力の一端である過去を見るという力を発現している僕ならばいずれ同じようなことができるようになるかもしれない。

 

 「だったらいつかそのフォースという力を使えるようになったら僕が君の水銀を何とかできるというわけだ!」

 

 「お前があいつの力を使えるようにか……こりゃまた大きく出たな。」

 

 シンシャは僕の言葉に呆れたかのように反応する。しかしあきらめるつもりはないいつかこの力を手にしシンシャを夜から解放するつもりだ。 

 

 「もし僕がフォースを使えるようになったら、僕とペアを組もうよ。」

 

 「組むって…お前、博物誌の仕事はどうしたんだ?」

 

 「博物誌の仕事は失職しました。」

 

 「元の無職ってわけか、よかったな瞑想する時間はたくさんあるぞ。」

 

 「無職とは失礼な!戦闘員見習いだよ。」

 

 「冗談にしてももっとましなものはなかったのか?お前が戦闘員など太陽が逆から登るくらいあり得ない。」

 

 「そんなことないよ!確かに今はまだ訓練中だけど…」

 

 「訓練?あの妙な丸い球(機械)を使ってか?ライトセーバーはどうした、お前そんなもの作ってないだろ?」

 

 どうやらシンシャは僕がライトセーバーをもらったことを知らないらしい。いつも一人でいるから無理もないことなので証拠としてライトセーバーを取り出し起動して見せつける。

 

 「どうこれが僕の新しい武器!……正確にはお下がり品だけど。」

 

 「ば、馬鹿な!?どうしてそれをお前が使えるんだ!?それはカイバーのライトセーバーだろ、普通は自分のを作らないとダメなはずだ!!」

 

 「んー先生が言うには僕の体はよほど彼の体、正確にはミディクロリアンと相性が良かったらしくてカイバーの体が使われているこのライトセーバーとも共鳴できている。」

 

 ライトセーバーを起動する際には自分の生体エネルギーを運用しているとのことなのであまり長時間の運用は好ましくないとのことらしく、使う予定がないときはすぐに切る必要がある。今回は自慢と報告もかねての起動だったがもう終わったので光刃を出すのをやめる。

 

 「ねぇ驚いた?驚いた?」 

 

 「ああ、驚いた……何を思ってこんなボンクラにフォースが宿ったのだとな。ミディクロリアンは共生する相手を間違えたらしい。」

 

 「ひどいなー」

 

 相変わらず言葉にはまだまだとげがある。その内フォースもライトセーバーの剣術もマスターしてアッと驚かせてやる。

 しかしそんな意気込みをあざ笑うかのようにやつらが突如として現れた。

 

 宝石攫いが現れる前兆――月人の黒点が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 「ちょっ……ちょっと!ついこないだ現れたばかりなのに!!何で!?」

 

 「糞!こんなときに現れやがったか…」

 

 黒点を発見した俺はすぐにライトセーバーを手にもち、戦闘態勢に入る。

 

 「フォス!お前ライトセーバーの扱いはどのくらいできる?」

 

 月人が放つ弾は早くて威力が高い。ゆえに弾道を見切って回避するかライトセーバーで焼失させてしまうしかない。こいつの練度は明らかに低いだろうがフォースの導きとやらがあるならばあるいは…

 

 「まだ訓練を始めて数日だよ…成功したことはまだない。」

 

 わずかでも期待した俺が馬鹿だった。まぁこればかりは仕方が無い、たぶん足をつけたのは最近のことだからな。期待は全く持てないがもう一つの力についても一応聞いておく

 

 「ではフォースの…物を浮かせたりする力の扱いは?」

 

 「夢で見たのと同じような訓練方法をやり始めて、小石くらいなら何とか持ち上げられる…」

 

 「……戦力外だな。」

 

 俺の言葉にフォスはがっくりと肩を落とす。とはいえ俺としては想定範囲内だ。もしもこいつがフォースを使って物を操れる力が大きければ俺の水銀を月人にぶつける戦法が取れたが、現状ではそれも無理そうだ。

 となるとやっぱり俺だけで何とかするしかない。

 

 「俺だけでやるしかないようだな。」

 

 ライトセーバーを起動し自身と同じ鮮紅の光刃を出現させる。それとほぼ同時に月人の攻撃が始まった。

 月人の持つ武器から目で追いきれない速度の弾が発射されるが弾道さえ見切れば避けるなり、ライドセーバーでかき消すことが可能だ。後はその状態を維持し距離をつめ月人を直接攻撃すればいい。ただここで問題が発生した、以前ボンクラ(フォス)を助けたときは月人はそこまで離れた距離にいなかったため水銀ですぐに撃退できたが、今回はそこそこ離れた位置に出現したためボンクラが完全にただの的と化すのだ。 

 

 「走れ!早く!!」

 

 ならば今やることはこの役立たずをさっさと移動させて自分だけで戦えるようにすることだ。しかし発破をかけたはずのボンクラは恐怖の余りかその場に立ちつくして動こうとしなかった。

 

 「何やってやがる!さっさと行け役立たず!!」

 

 「…っは!?そうだ!戦いが始まってるんだ!!」

 

 ようやく我に返るボンクラ。しかし何を思ったかこいつは俺の想定外の行動をとり始める。

 

 「落ち着け!心を解き放つんだ!」

 あろうことかこいつはその場に立ったまままだ使い慣れていないであろうライトセーバーを起動した。当然ただの的でしかない宝石を月人が放っておくわけが無い。

 

「視覚と聴覚に頼らずフォースを感じ取るんだ!ライトセーバーをよく無くすけど強い人もそう言っていたじゃないか!」

 

 フォスはわけの分からないことをつぶやきながら蒼い光刃を構える。そして月人の放った弾丸の内の一発がフォスに直撃するコースを取る。もちろん俺はあいつが砕ける様を想像した。しかし信じがたいことにフォスは蒼い光刃を格好は良くないが的確に振るい弾をかき消した。

 

 「やった!出来た!?」

 

 「……嘘だろ。」

 

 鏡は無いので確認できないがおそらく俺はここ数百年で一番間抜けな顔をしているだろう。しかし無理は無い、この状況を目にすれば他の宝石たちも…否先生も『まさかあのフォスが!?』と同じような顔をするに違いない。しかし戦闘において油断は禁物だ。月人の攻撃はまだ続いており、その内の一発が正確にフォスを捉える。

 

 「あ……」

 

 フォスが間抜けな声を上げると同時に上半身と下半身が砕け分かれる。……やっぱりあいつはあいつだった。これであのボンクラは走ることすら出来なくなった。

 

 「馬鹿め…油断しすぎだ。」

 

 状況が一気に悪くなった。というかあいつは夢の内容とはいえライトセーバーをよく無くす奴の助言を真に受けて実行したのか?頭が痛くなりそうだったがすぐに思考を切り替える。このまま俺が月人を倒すころには確実にボンクラは回収されていることだろう。おまけにここは滅多に誰も来ない、当然増援など望むべくも無い。

 

 「本当に世話の焼ける奴だ。仕方が無い……」

 

 このまま悠長に倒していては間に合わない、増援の見込みは無し、ならば《もっと早く月人を倒せばいい》。

 

 (これは後がしんどいからあまりやりたくは無いんだがな。)

 

 久方ぶりに俺は普段使うライトセーバーとは別の《三本のライトセーバー》を起動させる。両手に二本、そして《水銀で作った手》に残りの二本を持つ。

 

 「また汚してしまうな……」

 

 体から出る内のいくつかの水銀が草原に散らばるが、いつものことかと諦め月人へと最短コースで走る。無論ただ突進してくるだけの俺に対して月人は弾丸を発射してくるが、今の俺にはそんな程度では効かない。

水銀の手に持たせた二本のライトセーバーを高速回転させ、両手に持ったライトセーバーも合わせて飛んでくる弾を全て消し、一気に月人との距離をつめる。

 

 「さっさと消えろ。…これ以上汚したくは無い」

 

 そのまま月人たちを四本の光刃を駆使して切り裂く。その後フォスが回収されていないか確認する。その結果間抜け面を確認できたことから無事だったようだ。

 

 「すごい…シンシャそんなことできたんだ。」

 

 「疲れるし、完全に制御できているわけではないからやりたくは無いがな…」

 

 体が二つになき分かれたにもかかわらず呆けた声でフォスのやつは感心する。正直四本もライトセーバーを使うため生体エネルギー(?)をやたら使って疲れるし、戦闘で使う分には問題ないがやはり汚れは生じるため本当はやりたくない。全く持って面倒をかけさせる奴だ。しかし面倒はまだ終わらない、こいつを回収できるやつを呼ばなくてはならないのだ。

 

 「ちょっと、どこに行くのシンシャ!?僕をおいてかないでよ!」

 

 「俺じゃお前を回収できないから誰か呼ぶしかないわけだが……その間今回のことをせいぜい無い知恵を駆使して反省してろ。」

 

 「えーもしもその間に月人がまた来たらどうするの?」

 

 「……運が無かったと諦めることだな。」

 

 「えー、やだー。」

 

 フォスの文句を無視してその場を去る。そこは尻拭いをしてやってるだけありがたく思うべきだろう。

 

 (あいつがフォースを使うようになるか…)

 

 校舎に戻る途中もしもフォスがフォースを使えるようになったとして、万に一つ自分とペアを組むとなったらどういったことになるのか。そうなった場合を想像する。

 

 (絶対に能力にかまかけて調子に乗るな。フォローが大変そう…というかしきれん。)

 

 仮にライトセーバーの剣術とフォースをまともに使えるようになったとしてもあのお調子者能天気野郎は絶対に自分の能力を過信して失敗をしでかすだろう。フォースだってそこまで万能というわけではない。そのフォローを自分がするとなるとぞっとしない。

 

 (腕四本で足りるかな…って何で俺はあいつと組むこと前提なんだ!?)

 

 夜から出たいとは思う。昔はフォースの使い手がいたため体から出る水銀を抑えてもらえたが今はそうじゃない。本当は冬眠するときだってみんなと一緒がいいし、トランプだってまたしたい。しかしその代償としてあいつのフォローなどしていたら過労死してしまうのではないかとも思う。なのになぜ自分はあいつと組むこと前提で物事を考えていたのか?フォースの力は熟達すれば距離が離れていても作用するから別にいつも一緒に行動する必要があるわけじゃないのに。

 

 (たぶんあいつの技量に不安があるからだろう。うん、きっとそうに違いない。)

 

 あいつのことだ離れた場所にフォースを作用させるなんてそうそうできやしないだろう。そうなると体から出る水銀を抑えるには否が応でもあいつの近くにいなくてはならなくなる。だからあいつのフォローをする前提で物事を考えていたんだろう、そうに違いない。

 少しだけ心に疑問を残しながらそう結論付ける。ただ今回のことで一ついえることがある。

 

 (嘘つきというのは今のところ撤回してやってもいいか。一応わずかながらでも希望があるわけだし。)

 

 未熟もいいとこだがあいつはその力の片鱗を見せた。あいつが力を上手くコントロールし引き出すまで何年かかるかは想像したくは無いが、それでも本当に…本当に久しぶりに小さいとはいえ希望というのが持てたような気がする。

 




 《シンシャの戦い方》

 一体何グ○ーヴァス何だ!?

 《ライトセーバーをよく落とす人》

 一体何オ○=ワン=ケノービ何だ!?
 実は彼の剣技は宝石たちが使う剣技の究極形態にあたる。
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