ネギま! another scenario   作:たつな

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変化

「ふーむ……」

 

 

保健室を後にし、雄は学園の噴水前の道のりを歩いていた。顎に手を当てて考え事をしているようだが、一体何を考えているのか。

 

刹那との件が一段落し、近右衛門への報告も済んだことでフリーになった雄は、自分を探しているであろう木乃香達の元へと戻ろうとしていた。トントン拍子で事が片付いたお陰で、時間はそこまで経ってはいない。買い物を楽しむ時間は、多少なりとも残されている。

 

一緒に買い物へ行こうと話はしたものの、いつまで出掛けるのか、時間に関しては明確に決めていない。もしかしたら終わっている可能性もあるし、逆にまだ買い物中の可能性もある。

 

ただ刹那の元へと駆け付ける際に、自身の買った衣類等の荷物を全て明日菜へと預けてしまったため、確実に迷惑を掛けていた。会った時には一旦謝罪を入れておこうと、心に決める雄。

 

 

「んー」

 

 

それとは全く別に考えるべき事があった。先ほどからずっと唸っているばかりで、考えが纏まらない。端から見たら不審者そのもの、近くで見たら鬱陶しいことこの上なかった。

 

 

「ダメだ、分かんね。今考えても仕方ないか」

 

 

考え込んでも結論に至らず、匙を投げる。今考えても無駄だと判断し、一度考えるのを辞めた。うだうだと考え込んだところで何も出てこないのなら完全な時間の無駄、だったらもう少し有意義なことを考えた方が有効な時間の使い方に繋がる。

 

 

「あー! あんなとこにいた! 雄さーん!!」

 

「お、明日菜?」

 

 

丁度階段を降り切った頃合いを見計らったかのように、遠方から声が聞こえてくる。周囲を見渡すと、両手に紙袋を抱えた明日菜がこちらに走ってくるのが見えた。明らかに走りにくそうに走っているも、それでも後を追いかけてくるネギや木乃香よりも早いところをみると、明日菜の足の速さがよく分かる。

 

そんな明日菜を驚愕させるほどの脚力を持つ雄。ものの見事にぶっちぎってくれた。雄の存在に気付いた後は早く、明日菜に続いてネギと木乃香が駆け寄ってくる。

 

 

「もー! 急に何なんですか! 人にこんなに荷物押し付けて!」

 

「悪い悪い! ちょっと急用を思い出して」

 

 

うがーっと両手を挙げて文句を言う明日菜に、申し訳なさそうに謝る雄の図といった何とも奇妙な絵面が出来上がっていた。そうは言っても明日菜からしてみれば理由もあやふやなままに全荷物を預けられ、一方的にどこかへ行ってしまえば、多少なりとも怒るのは無理もない。

 

 

「まさか、遊んでいたとかじゃないですよね!?」

 

「違うっつーの。ちゃんと仕事はしてきたって」

 

 

仕事をしてきたことは事実だが、教師とはほぼ関係ない裏の仕事という事実だけは伏せた。流石に敵勢力を追い払って来たなどと馬鹿正直な発言は出来ない。

 

 

(嘘は言ってないよな。まぁいずれタネを話すタイミングは来るだろう。明日菜の立ち位置もこっちよりみたいだし)

 

 

実力や認識まではつかめないものの、ネギとの距離感からどことなく、明日菜がこちらよりの存在だと察する。よもや雄に悟られているなど、この時ネギも明日菜は知る由も無かった。

 

明日菜も雄の淡々と話している様を見て、嘘は言っていないと勘ぐったのか、それ以上追求する事を辞める。だがどことなく納得の行っていない表情にも見えた。それもそのはず、どこの教師がやり残した仕事があるからと、生徒に荷物を押しつけて居なくなるのか。

 

これくらいの荷物なら預けなくても、と明日菜は多少の文句を言い掛けたところで踏みとどまった。

 

 

「はぁはぁ、やーっと見つけた。お兄ちゃん急にどうしたん?」

 

 

明日菜の相手をしていると、追い付いた木乃香が息を切らしながら疑問を投げ掛けてくる。明日菜には理由を話したが、木乃香とネギには一切理由を伝えていない。明日菜の口からそれとなく話は伝えられているとはいえ、真意は分かっては居なかった。

 

切らした息を整えながら、木乃香は雄の顔を見上げる。

 

 

「いや、明日菜にも話したんだが、急にやり残した仕事を思い出してな。明日に回すわけにも行かなかったから、片付けに行ってたんだわ」

 

「ほーん、そうなん? アスナはサボってるんじゃないかーって言うてたけど」

 

「はは、んなわけあるか。どこのアホ教師だそれは」

 

 

教師として失格の烙印を押されるような真似はしないと、木乃香に伝えるとすんなりと納得する木乃香。戦闘時に刹那からかって痛い目を見たり、イレギュラーとはいえ女子寮で生活することを容認したりと、適当な部分はあれども、私用のためにサボることはしない。

 

危機を察すれば、いち早く助けるために現場へ駆け付けているように、常に自分の生徒のことは考えるようにしていた。

 

 

(ん、何だこの感じ)

 

 

先ほどまでは気のせいかと気に止めることは無かったのだが、やはり気のせいではなかったと木乃香のことを見つめる。

 

 

「ほぇ?」

 

 

見つめられていることに気が付き、木乃香は声を漏らしながら首を傾げる。雄が違和感を感じたのは木乃香を纏う雰囲気だった。

 

元々彼女の中に眠っている魔力量は膨大なものがあり、初めて雄が会った時も、あまりの量に驚きを隠せなかった。上手く扱うことが出来れば、どれだけの人たちを救えるかという希望とは逆に、悪用されればどれだけの血を流すことになるかといった絶望も危惧されている。

 

むしろ木乃香自身に悪用する気持ちは微塵もないだろうが、彼女自身の魔力を扱うことが出来るのは本人だけではない。第三者、直近では関西呪術協会なんかは間違いなく扱う事が出来るだろう。

 

 

 

その魔力が僅かだが、確実に身体の外に溢れ出てきているのだ。魔力を纏えるようになるには、多少なりとも訓練が必要になる。ただ木乃香には魔法の存在を一切知らせていないことことから、個人で学んだとは考えづらい。

 

それに、たかだか数十分ほど会わないだけで、ここまで如実な変化が現れるとは思えない。雄が刹那を救出に向かっている間に、残された三人の中で何かがあったと考えるのが妥当か。

 

三人に対して、関係のない第三者が介入した可能性は極めて低い。となると考えられるのは現段階で魔法使いのネギが介入している可能性だ。

 

 

(それとネギくんの肩に乗ってるオコジョ、確か魔法妖精だったか。魔法妖精がいるとなるとまさか……)

 

 

そういえばと、雄はネギの肩に乗っているオコジョの存在を思い出す。魔法妖精が出来ることはそこまで多くはないが、扱える魔法もある。その中に魔法使いと結ばれる、仮契約の儀式があった。

 

仮契約には対象者を強化するだけではなく、秘めている力を呼び覚ます効果もある。総合的に判断するとネギと木乃香が何らかの理由で仮契約を交わした、そう考えると全ての辻褄が合った。

 

何故ネギと木乃香が仮契約を交わしたかは不明なものの、執行時に出てくるカードが可愛いから欲しいだとか、割とありきたりな理由ではないかと雄は推測する。

 

そしてこの推測が当たっているのだが、それが明らかになるのはまだ先のことになる。

 

 

「お兄ちゃん、どうしたん? ウチの顔に何かついとるん?」

 

「……」

 

「お兄ちゃんってば!」

 

「あ、いや。そういう訳じゃないんだが」

 

 

長い時間見つめていたせいか、自分の世界に入り込んでしまい、一回目の木乃香の声掛けに反応が出来なかった。雄は平静を取り繕いながら、何事も無かったかのように話を進めていく。

 

 

「結構木乃香も買ってるなと思って。それ全部そうなのか?」

 

「あ、ちゃうちゃう! これはウチのだけやのーて、ネギくんの分も入っとるんよ」

 

 

よく見てみると木乃香の手にも結構な量の紙袋が握られている。自身の量に比べれば少ないものの、一人当たりの量で考えると相当な量があった。雄の反応に対し、不審がる様子も無く受け答えをしているところを見ると、どうやらあまり気にしてはいないみたいだ。

 

持ち物の持ち主を知ったことで、今度はネギへと話題を振る。

 

 

「へー、ネギ先生の。先生はあまり私服とか持たれないんてすか?」

 

「へぅ! ぼ、僕ですか? あはは、そうですね。あまり自分の服に頓着が無いというか……」

 

 

何気ない質問にわたわたと慌てながら答えるネギだが、そこまで慌てることかと雄の頭の中に疑問が浮かぶ。何かを隠したがっているような仕草に、何故か顔が赤い。

 

 

「ん。顔赤らめて、何かあったんですか?」

 

 

思ったことが既に口に出ていた。ネギのことを疑っている訳ではなく、純粋に気になったからこそ聞いたのだが、年上からの何気ない質問はネギの思考をより動揺させる。

 

 

「ふぇっ、ぼ、僕はべ、別に隠し事なんかしてないですよ! ね、このかさん!」

 

「んー、隠し事? ネギくんとキスしたら貰えるっていうカードのことかえ?」

 

「ちょ、ちょっとネギ!? アンタやけに買い物が長いと思ったら……!」

 

「はぅぅ! す、すみませんアスナさん!」

 

 

完全に聞いた相手が悪かった。

 

木乃香の天然が炸裂し、盛大に暴露してしまう。内容を知った明日菜はどういうことかとネギに問い詰め、明日菜に詰め寄られたネギはただ謝るばかり。一般人からすれば何の話かくらいで済むレベルだが、聞いている相手は魔法関係者の雄。

 

どうして木乃香の身体から微量の魔力が漏れだしているのか、一発で判断が出来た。同時にネギと木乃香が仮契約を交わしたこともバレてしまったことになる。

 

一見明日菜の反応も、女の子に何をしているのかという部分に対して言っているようにも見える。またそれとは別に魔法関係の事象に木乃香を巻き込んで良いのかと、暗に伝えているようにも見えた。

 

ガミガミと問い詰める明日菜を前に、頭を垂れてショボくれるしかないネギ。そして二人を宥める木乃香の図が何とも言えない図になっていた。

 

雄は三人の様子を腕を組ながら観察する。木乃香の件にカンしては、おおよそ予想通りではあったからこそ、別段驚くようなものは無かった。

 

 

(まぁ、予想通り。漏れ出したのは仕方ないし、今しばらくは様子見になりそうだな)

 

 

結論として、大事に巻き込まれてしまった訳ではないため、現状特に気にするものではないとして結論付ける。

 

 

「はいはい。明日菜もその辺りにして、ちょっとカフェにでも行って一息つこうぜ」

 

 

わいわいと騒ぐ二人を一旦静めて、話題を別のものへと振り替えた。

 

 

「へ? カフェですか?」

 

「あぁ、今日他クラスの生徒に聞いてね。最近改装したばっかりで、ショコラケーキが美味いんだと。迷惑掛けちまったし、今日は俺が全部奢るからさ」

 

「え、本当ですか? でも先生にお金を出して貰うなんて……」

 

「お兄ちゃんも言ってくれとるし、ええんとちゃう?」

 

「そうそう。それに明日菜には結構大変な思いさせたし、せめてこれくらいは格好つけさせてくれ」

 

「……雄さんがそこまで言うのなら」

 

「よし、決まりだな!」

 

 

明日菜も納得したところで、一同目的地に向かって歩き出す。その後日が暮れるまで、四人はカフェで時間を潰すのだった。

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