ネギま! another scenario   作:たつな

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カエルパニック?

集合時間となり、新幹線への乗車を始める三年A組一行。

 

旗を振るネギを先頭に、次々と生徒たちは新幹線への乗り込みを開始した。ネギは班ごとに分かれて順番に乗り込む生徒の数と班の数を確認しながら、次々と座席へと誘導をかけていく。連結部分ではネギが待機し、車両の中では雄が指定された座席に生徒たちを割り振っていた。

 

 

「ネギ大丈夫だった? ご飯ちゃんと食べれたの?」

 

「はい! おにぎりありがとうございます!」

 

「ほかほか、よかったー!」

 

 

そして今は五班の誘導をかけている最中。新幹線に乗り込んだ明日菜が、ご飯を無事に食べれたかどうかを確認すると、ネギは笑顔で返答する。

 

ネギの返答に対して答えるのは木乃香、ネギの反応から自身の作ったおにぎりの評価が上々であることを確認すると笑みを浮かべながら、良かったと喜ぶ。自分の作った料理を好評されて悪い気分はしない。

 

二人の一連のやり取りを見てネギと何かあるのではないかと思ったクラス委員長のあやかが、木乃香に疑問を投げかけるも何のことかと飄々と答える。

 

やり取りをみている限り、ネギに対して何か特別な感情を持っているわけではないのは分かるが、以前の出来事を知っているために、油断出来ないと思い込んでいるようだ。

 

 

「ん、今ので最後? もう一班足りないぞ」

 

 

騒がしいクラスだと、木乃香とあやかの後姿を眺めるネギだが、誘導した班の中で一組足りないことに気付く。誰がいないのかと考え込むネギの後ろから、一人の生徒が声を掛ける。

 

 

「ネギ先生」

 

「あ、貴方は桜咲刹那さん……とザジさん」

 

「はい。私が六班の班長だったのですが、欠席者が出たために、私とザジさんの二人きりになりました。どうすればいいでしょうか?」

 

「え、あっ、そうですか。困ったな……」

 

 

刹那だった。

 

元々六班の班長を担当していたものの、エヴァンジェリンや茶々丸が休んだことにより、六班はたった二人きりになってしまい、どうすればいいのかとネギへと尋ねる。

 

不測の事態に困ったなと頭を悩ますネギだったが、二人では満足な判別行動が出来ないことを理解し、各自別々の班に組み込むことに決定。近くにいた三班班長のあやかと五班班長の明日菜にそれぞれザジと刹那を組み込むように伝える。

 

 

「じゃあ明日菜さんは桜咲さんを、いいんちょさんはザジさんをお願いできますか?」

 

「はいはい」

 

「かまいませんわ、ネギ先生」

 

「え……」

 

 

班長の二人が何事もなく了承するのに対し、明日菜の近くにいた木乃香が反応を現す。

 

 

「せっちゃん。一緒の班やなぁ」

 

「あ……」

 

 

木乃香の声に言葉足らずのまま、一礼すると踵を返してそのまま車両の方へと歩いて行ってしまう。

 

そんな後姿に寂しそうな表情を浮かべる木乃香と、何が起きたのか分からずに首をかしげるネギ。二人の関係を知っているのは雄だけであり、その雄も車両の中で誘導を手伝っている兼ね合いもあって、ここにはいない。誰一人二人の関係を理解する間もなく、無事に班分けも終わった一同は車両へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、本当に最近の子たちはアグレッシブだな。朝っぱらからこの騒ぎとは」

 

 

点呼や朝礼も終わり、乗り換えから東京駅を出発した一行は、つかの間の移動時間を楽しんでいた。

 

車両の前の席に座り、椅子を反転させてカードゲームを楽しむ生徒や、単純に雑談だけを楽しむ生徒。

 

我関せずウォークマンで音楽を聴きながら眠りに落ちる生徒など様々だが、生徒の大半はワイワイと騒いでいる状態であり、朝早くから集合しているのにどこにそんな元気があるのかと感心するばかり。

 

そんな雄は、朝に手渡されたおにぎりを丁度食べ終えたところで、食後のお茶を楽しんでいるところだった。お茶とは言っても車内販売で売られているペットボトルのお茶であり、優雅なティータイムとはほど遠い内容になる。

 

ペットボトルに口を付けながら、改めてスケジュールに目を通していくと、ほぼ毎日のようにある夜間の見回りに骨が折れそうになる。これも教師の仕事とはいえ、中途半端な睡眠は朝の体調に直結するが故に、出来ればきちんと睡眠はとりたいと本音は思う雄だが、彼だけにわがままが許されるはずもない。

 

シフトに出てくる『風見雄』の名前に、ため息をつきながらスケジュール帳を閉じた。

 

乗車してから小一時間ほど経つが、今のところこれといった出来事は起きてない。東京から京都までは新幹線ひかりで二時間半、新幹線での移動もようやく半分を折り返そうとしていた。このまま何も起きずに京都に到着してくれればと平穏無事を思う雄だが、一旦は見回りに行こうと席を立つ。

 

京都までの間は特に何か指示を受けているわけではなく、ある程度までは自由に動くことが出来る。多少車両周辺の見回りに出掛けて仕掛けられているものがないかどうかの確認をしといて損はない。むしろ罠をそのままにした方が今後に悪影響を及ぼす可能性もある。

 

 

「あや、お兄ちゃん。どっかいくのかえ?」

 

「おう、木乃香。ちょっと見回りに行ってくる。うちの生徒が別の車両とかでふざけてたら問題になるし……ってあ! そういえば、ありがとうなおにぎり。さっき食べたけど凄く美味かった」

 

 

立ち上がり、通路で鉢合わせたのは木乃香だった。この後の自身の予定について伝える雄だったが、おにぎりの件でのお礼を思い出し、改めて感謝の気持ちを伝える。朝食を取らず出てきた雄は案の定、駅前での朝礼の時から空腹に襲われていて、もし木乃香がおにぎりを作ってなかったら魂が抜けて仕事もままならなかったことだろう。

 

 

「よかった! センセたちの集合は朝早いって言うてたから、もしかしたら食べてないんやないかっておもて……」

 

「いや、マジで助かったよ。木乃香のおにぎりのお陰で今日一日頑張れそうだ。何ならここから走って京都に行けるかもな」

 

「ややわぁ、大袈裟すぎるでお兄ちゃん」

 

 

ちょっと例えが大げさすぎたか、木乃香は笑いながら突っ込みを入れてくる。くだらないジョークでも本心から笑ってくれるところが、木乃香の人の好さがにじみ出ていた。

 

 

「ははっ……ん?」

 

 

人の好さがにじみ出ているのは分かったが、彼女の笑顔にいつも程の力がない。気のせいかとも思ったが、普段の笑顔と比べると、若干影が差しているように見えた。

 

木乃香の性格上、小さなことでは挫けることはまずない。雄が初めて会った時、同世代と遊ぶことが出来ずに過ごしていたが、浮かべる笑顔に影が差すことは無かった。

 

歳月を経て彼女の内面が大きく変わったのか。仮に変わったとしても、何の兆しもなくこのような状態になるとは思えなかった。

 

昨日会った時も別段変わったところは無かったし、今日の午前中に何かがあったのだろうか。刹那との一連のやり取りを見ておらず、雄にはどうして木乃香が暗くなっているのか理解出来ずにいた。

 

どの道、二人のやり取りに関して第三者として口を出すつもりは雄にも無いため、一旦は深く理由を聞かずに胸の中へとしまう。

 

 

「とりあえず京都に着くまでまだ一時間くらいあるし、木乃香もカードゲームでもやってきたらどうだ?」

 

「お兄ちゃんも今は仕事中やもんなー。また後で時間ある?」

 

「あぁ。基本今日はベタでクラスに張り付くから、ある程度は時間作れると思うぞ」

 

「それなら後で行くなー。ちょっと夕映のとこいってくるわー」

 

「了解」

 

 

木乃香と別れて、改めて三年A組の車両を後にする。他にも四クラスがこの新幹線には乗車しており、新幹線の何両かは麻帆良学園で完全に貸し切っている状態だ。その先頭に三年A組の車両があるため、進行方向に向かって歩いて行くと先頭車両へと行き着く。

 

見回りとは言っても万が一に備えてのためだけであり、そこまで時間を掛けるつもりは無かった。一般車両と麻帆良学園貸切の車両の連結部分に出ると、壁にもたれ掛かりながら立つ刹那が居る。

 

が、こちらもどこか元気が無いように見えた。

 

 

「よう、刹那。どうしたんだこんなところで」

 

「わっ!? び、びっくりした。驚かさないで下さいよ……」

 

「そ、そうか? そりゃ悪かった」

 

 

雄としては驚かす気持ちなど微塵もなく、いつも通り声を掛けただけに過ぎないが、上の空の時に声を掛けられたせいで、刹那はいつも以上に敏感に反応してしまったようだ。

 

軽く謝罪の言葉を伝えると、ふぅと一つ息を吐き、いつもの凛とした表情へと変わる。

 

 

「ちょっと先に見回りをと思ってまして。可能性は低いですが、相手が何か仕掛けて来るとも限りませんから」

 

「確かに。特にこの車両近辺での気は感じられないし、先の車両でも見ておこうと思ったんだが……」

 

「えぇ。それが良いでしょう。術式も一カ所だけとは限りませんし、バカ正直に正面から来るとも思えませんから。遠くから何か妨害をしてくるとすると、気の察知も難しそうです」

 

 

この狭い車内で正面から飛びかかってくる可能性は低い。逆に雄や刹那も大きく動けないのも事実。念には念をと考えるのなら、多少なりとも車両別に配置を変えた方が良いかもしれない。

 

幸い周辺の気の流れは雄が追えるが、呪符による術式は、発動までは呪符を目視で確認して剥がすしか対策はない。

 

 

「何があるか分からないし、一旦先の車両まで見てくるよ。そしたら「ひっ、いやぁぁぁ!!」……言ってる側からこれか! 刹那、先の連結部分を押さえろ! 俺は後を押さえる!」

 

「分かりました、気をつけて下さい!」

 

 

不意に車両から聞こえてくる悲鳴の方向を見る二人。突如の異変にも関わらず冷静に判断を下し、先の車両に刹那を、後方の車両に雄を配置し実行犯が居た場合は取り押さえようという作戦だった。

 

全長は長くとも、所詮新幹線は密室の匣。時速三百キロ近くで移動する匣から逃げ出すなど、自殺行為に等しい。

 

簡単な指示を伝えると、二人は散開。雄はクラスの車両へと戻ると。

 

 

「なっ……!?」

 

 

座席や通路を両生類、カエルの団体が埋め尽くしていた。苦手な生徒も多く、車内は阿鼻叫喚の渦に包まれており、耐性のある生徒は慌ててカエルの回収に取り掛かっていた。

 

 

「そういうことか。やってくれるぜ」

 

 

どのみちこの騒動を鎮めなければならない。ゲコゲコと鳴いて飛び回るカエルの回収を手伝うべく、一目散にカエルを素手でつかんでいくのだった。

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