書籍第①巻発売まであと《10日》!
10日前! 亡霊とインタビュー
「ドーモ、ドーモ、恐縮です!」
胡散臭い、というのがひとの形をしたらこんな感じになると思う。
ひと、というか、
「《
「ええ、はい、そうですけれど」
「なによあんた」
「ややややや、これは失礼。私、こういうものです」
旅の馬車に揺られる私たちを急襲したその
姿を隠した私が横から見る限り、上等な紙に、均一な大きさの画一的な文字で
印字に慣れた現代日本人には、これは印刷物なのだ、とすぐに察せられる。
確か、帝都の方には印刷機があるとかいう話だけれど。
「《
「ご丁寧にどうも。私はリリオ、こちらはトルンペート」
「《
「帝都の新聞社ですよ、最近出始めた」
「ややややや、ご存じとは、恐縮です。これは自慢ですけれど、新進気鋭の大人気新聞社でございます」
ふふん、と胸を張る仕草は、
人族には、っていうか私にも、
気づかれていないのをいいことに、私はトゥヤグラーモなる
鱗持つ手に、きらきらとしたチップで飾られたネイル。
肘のあたりまでを覆う黒い飾り羽は、光の角度で深い紫色が差す。一見すると装飾された袖みたいなこの羽で空を飛べるのだから不思議だ。
黒い髪色・羽色は、里
活動的に短めに切った髪に、耳元にはじゃらりとピアス。きらりと輝くのは透明度の高い……宝石じゃないな。ガラスかな。帝国ではガラス工芸は下手な宝石より高いこともある。ガラス自体はそこそこ流通してるけど、技術料が高いんだね。これはたぶん割とお高めのやつ。
脚は逆関節……ではないらしいんだけど、みんな逆関節って呼ぶいわゆる鳥みたいな下半身。ハーピーみたいな感じかな。鮮やかな尾羽の伸びる腰あたりから羽毛に覆われ、脛、すね……? まあとにかく足元の方はいわゆる鳥っぽい足が伸びている。
ローファーみたいなのを履いてるように見えるけど、かちかち、かちかち、と硬質な足音は、革靴のそれじゃなくて、爪の音だ。
だからこれは文化的ですよっていうアピールだったり、マナー的なものだったり、お洒落だったりするらしい。
服装もある意味
羽毛を邪魔しない半袖のジャケットに、短パンみたいなズボンというのは
西部の
幅広の肩掛けカバンに、角ばった箱型のケースくらいが荷物で、武器らしい武器もない。飛び回るし、魔法が得意らしいから、あんまり武器は持たないと聞くけど。
さて、そんな風に一通り観察して、不審ではあるけど危険も薄そうなので、私はまあいいかなとリリオたちに頷く。私の過保護ムーブにも慣れた二人が、ちょっと呆れたように笑って頷いた。
「ややややや、《
「いるよ」
「ややっ!? ややややや! これは失礼! 気づきませんで……!?」
「いいよ、影が薄い方なんだ」
「そんだけでっかいのに影が薄いは無理があるわよ」
「うっさい」
「そうです! こんなにかわいいんですから!」
「うっさい!」
トゥヤグラーモに姿をさらしてやり、改めて《
「三人目、閠だよ。別に数に入れなくてもいいけど」
「いーえ! うちの大事な仲間なんですから!」
「そんで大事な嫁ね」
「それ言う必要ある??」
「ややややや、《
ええい、ブン屋が目を輝かせてしまった。っていうか噂になってるのかそれ。
小走りとはいえ歩きながらじゃいくらなんでも、ということで私たちはトゥヤグラーモを馬車に招き入れた。私たちにとって生活空間でもある馬車は、人族平均程度の大きさのトゥヤグラーモが上がりこんでもそこまで狭くはない。
リリオが一応御者席に座ってるけど、うちの馬こと
「改めまして、《
「はい、トゥーヤーちゃん!」
「ややややや、本当にお呼びになるんですねえ」
「そのやり取り心臓に悪いからやめて欲しいなあ」
京都人かこいつ。
まあ、
あまり人族基準でまともにあたると不快になりかねない。
「ところで《
「ややややや、ウルウさんはご存じなかったですか。お恥ずかしい」
「帝都の新聞屋ですよ。印刷機を持ってるだけでなく、
「へえ……」
「ややッ!? は、反応が鈍いですねえ!? あ、
「いや、リリオの家でさんざん撮ったっていうか撮られたし……」
「か、金持ち!? いえ、貴族様でしたねえ…………くっ!」
なんか悔しがらせてしまった。
いやまあ、この世界でカメラとか写真とかがまだ一般に普及してないのは知ってる。
リリオの家、というかリリオパパのカメラも高級品で、撮影するのに時間かかるやつだったし。
ただ、私はそのカメラが手のひらに収まるようなスマホに標準搭載されてて、指先ひとつで世界に発信できる世界の人間なので、別に、というか。なんならいまでもスクショ機能で記録のこせるし……。
でもリリオパパのカメラの話をすると、トゥーヤーちゃんは気を取り直したようだった。
「ややっ、同じ
「あら、ちっちゃいわね」
「本当ですねえ。うちのとは違います」
「ああ、小さい方なんだ、これ……」
トゥーヤーちゃんが箱型のケースから取り出したのは、がちゃこんと開くタイプのポラロイドカメラみたいなやつだった。子供のころに見せてもらったことがある。頑張れば片手で持てるサイズ、かな。まあ、リリオパパのやつは三脚立ててしっかり構えないといけないやつだったし、小さいといえば小さい。
「フフン、
「ものの見事に何もわかんなかった」
「しかも会社に持っていくと
「自社の自慢の技術をここまであいまいに説明するの逆に才能あるかもしれない」
とにかくすごい自信があるのは確かだった。
根拠が一切理解できてないのにここまで自信満々なのはすごいよ。営業の才能あるんじゃないかな。知らんけど。
「とはいえですね、最新技術はお金がかかるものでして。新進気鋭の大人気! とは申しましても、当社も実際、設立間もなく実績も少ないので、売れる記事をバンバン出していかないといけないんですねえ!」
「ここまで素直なブン屋も珍しいわねえ」
「素直、軽率、逃げ切りが当社の標語ですねえ!」
「やっぱ駄目なブン屋かもしんないわね」
その素直で軽率で逃げ切りが得意らしいブン屋がいうには、いま《
冒険屋というのはやくざな商売であり、土地によっては本当にやくざやってる感じでもあるらしく、いささか以上に治安の悪いこの世界でも半分ダークというかならず者予備軍みたいな意識はあるらしい。
しかしそれでも、荒事込みの便利屋さんとして頼りにされているのも確かで、そういう冒険屋の頑張る姿を見える化し、ならず者は排除し、クリーンな冒険屋業界を推進していきたいという国の方針に乗っかったものらしい。補助金も出てるとか。それって報道が政治に……いや、まあ、いいや。
「《
「ほほう……それはなんだか面映ゆい評価ですね」
「なんでも北部の魔獣を食べ尽くしたので南下してきたとか……!」
「それはなんだかうれしくない評価ですね……!」
「そうでなくとも辺境貴族とブランクハーラの合わせ技リリオさんに、飛竜紋の武装女中トルンペートさん! これは話題になりますとも! ウルウさんはあんまり情報出てないんですけどねえ……」
「だろうね。特にPRはしてないから」
というか私は必要なとき以外は姿消してるしね。
戦闘の時ですら危なくなければずっと馬車から観戦してるし、街中うろつくときも基本的に
「ままままま、こうしてお会いできましたし、ウルウさんのことも是非聞いていきたいですねえ!」
「私もいっぱい聞いて欲しいですね! ウルウのかわいいところとか!」
「かっこういいところではないんですねえ?」
「かわいいんです!」
「了解ですねえ!」
「心底やめてもらえる??」
そのようにして、胡散臭い新聞屋《
用語解説
・《
帝都初の写真入り新聞を発行する新進気鋭の新聞社。
写真印刷技術に関しては社主である
・トゥヤグラーモ(Tujagramo)
以前は帝都の『
一応事実のみを記事にするというモットーはあるが、それはそれとして下世話な話題が好きなのも事実。
・
黒髪黒羽が特徴で、里
比較的小柄で、指先が比較的器用。光り物を好む。
小回りのきく飛翔能力は優秀で、特に高層建築のある都市部で活躍する。
例によって高慢で、悪戯やからかいを好む。魔法適性が高い。