「…おい、おい!」
肩を小突かれてハルの思考は現実の世界に引き戻される。
ハッと顔を上げるとネージュの顔がすぐ目の前にあった。
「…気分が悪いのか?」
「ハル、大丈夫?」
ネージュ、レオが共に声をかけてくる。今まで一切喋らなかったから気分が悪いか緊張してると思ったらしい。
「…ああ、大丈夫だ。ってかレオこそ大丈夫かよ。顔真っ青だぜ?」
ハルは無理やりニヤリと笑ってレオを茶化す。
「た、たぶん大丈夫だよ…きっと」
「なんか怖えーな…」
とつぶやきながら木陰から町の方を見る。街はほんのり赤い膜のようなものに覆われている。おそらくあれが結界だろう。
「あんたら、無駄話してないでもう一回確認するよ。とりあえず街の結界内に入ったら町の中心目指して進む。途中でアタシはボスであるジマを足止め。その間に2人は人質を転送魔法で安全なところへ逃がす。レオさん、隣町は受け入れオッケーなのよね」
ネージュが鞄に手を突っ込み、確認をする。
「うん、さっき確認したけど大丈夫だって。問題ないと思うよ」
「分かった…。じゃ今周りに見張りもいないみたいだし…いくよ!」
ネージュが真っ先に木陰から飛び出し手に持った石を結界の方にかざす。
すると結界の方から手のひらサイズの魔法陣が飛び出してくる。それを素早く指先で触り魔法陣を書き換えていく。早すぎてハルには目で追えない。
「レオさん、転送用の水晶玉貸して。」
「…いいけど、どうして?」
びっくりした声色でレオが聞きかえす。
「一応隣国の兵士が転送装置で逃げられないように登録した水晶玉でしか転送できないようにしとこうかと思って」
動かす手を止めずにネージュが答える
「なるほど………。ネージュさんは賢いね。わかった。はい。」
少し経った後、そう言ってレオは鞄から取り出した水晶玉をネージュに手渡す。
ネージュは受け取り、魔法陣に近づける、と魔法陣と水晶玉の間で魔力が行き来する。
「よし、完了。はい、返す。」
すぐにレオに水晶玉を返すとまた魔法陣の書き換えを続ける。
と、ネージュの右側の結界が破れ、人ひとり通れるほどの穴が開いた。
「さ、通って!あんまり長い間開けとくと気づかれるかもしれない」
「わかった」
レオが先行して結界内に入る
ハルは結界の前に立ち、深呼吸をする。
そして結界内に足を踏み入れた。
続いてネージュが素早く入る。
そしてネージュの背後で結界の穴が閉まった。
もう後戻りは、できない。
「行こう」
水魔法で姿を見えなくして、3人は走り出した。
* * * * * *