「おい!!どういうことだよこれ!!!なんでアンタがこれを着てるんだ!」
ハルは後ろから襲おうとした甲冑を着た男──ジャンの父親の──上に馬乗りになったまま胸ぐらを掴んで言った。
「ちょ、ちょっとハル落ち着いて!どうしたのさ!」
慌てて近づいてきたレオが後ろからハルの肩に手をかけて揺する。
「こいつは…こいつはアイツの…ジャンの父親だ…なあ、なんであんたが!」
「ち…違うんだ…。俺たちは…無理やり…」
ハルにガクガクと揺さぶられながらジャンの父親がたどたどしく答える。
「無理やりってアンタ…」
「頼む…ハル。左肩を見てくれ…」
ハルの声を遮りながらジャンの父がしゃべる。
「左肩?鷲のマーク以外何もないけど…」
ハルは左肩の甲冑を確認したが何一つ変わったことは見つからない。
「…まさか」
だが、レオは違ったらしい。震える声で呟くと慌てて甲冑の肩の部分を取り外し袖をまくっていく。
やがてジャンの父親の肩に真っ黒い炎の入れ墨が入っているのが見えた。
「やっぱり…
「そうだ、眼鏡の兄ちゃんは知ってるのか」
「はい、これが何を意味するのかというのも…」
「おい、俺を置いて話すな。レオ、これは何だ?てかアンタこんな入れ墨してなかったろ」
1人話についていけないハルにレオが深刻そうな顔で告げた。
「これはたぶん付与魔法に近いと思うんだけど…人、特に奴隷とかににこうやってマークをつけるんだ。動きとかを制限するし、もし規律違反を犯したら…………」
「…どうなるんだ?」
「魔法をかけた本人が定めた罰を受ける。…物によるけど」
一瞬言葉に詰まるハルだったがあることを思い出して言葉を繋げた。
「…待てよ、隣国は魔法使いはいないじゃないか。じゃあ隣国の魔法じゃないだろうし、今の話だとこれは付与魔法なんだろ。ということは解除方法もある…」
「これは!あの黒器でつけられた物だ!本来の白魔法から外れた存在だ!それが何を示すかハルにも分かるでしょ!!?」
────レオの怒鳴り声に遮られた。
基本的には魔法はかけた本人しか解けない。かけた本人よりはるかに高い魔力の持ち主が無理やり解いたり、ある程度の魔法では相殺するできる魔法もある。
しかしそれは
黒魔法と白魔法では当てはまらないのだ。
「ハルは…ずっと村にいたから知らないかもしれないけど!僕は……何人も同じ人を見てきたし……その人たちが最後どうなったかも知ってる…!」
そこまで言い切るとレオは唇をかんでうつむいてしまった。
「…なあ、アンタのその肩につけられた制限は何なんだ?」
ハルはジャンの父に恐る恐る尋ねる。
「この結界内に入ってきた人間の捕縛と人質を一定場所に留めること。動ける範囲は…この街のみだと黒い剣の男は言っていた」
「それを…破ったら?」
「…実際に見せられたよ」
ジャンの父はそれ以上答えなかった。
「なあハル坊、ひとつ頼まれごとをしちゃあくれねーか?」
「…なんだよジャンのおっさん」
「頼むからさ、息子と妻を安全なところに逃がしちゃくれねーか?」
それを聞いたレオがガバッっと顔をあげる
「おじさん!そんなことしたら…!」
だがジャンの父はレオを片手で制する。
「いいんだ、眼鏡の兄ちゃん。だがな、俺らにも選ぶ権利があるだろう」
そう言ってジャンの父はニッと笑った。
よく見たら頬が腫れて青黒くなっている。付与される時に抵抗したのだろうか。
だが目には男として覚悟を決めた目が目の前にあった。
「…レオ、すまねぇ転送魔法をできるだけ早く準備してくれ。」
「…!…………分かった」
一瞬目を見開いたレオだったが、小さくうなずくとまた人質の中央に戻って行った。
「悪いが俺はあの転送魔法について行かないぜ」
「!?ハルてめぇ…」
「俺はこの街の中央まで行く。…あの男に会いに行く。ジャン達に関してはレオが責任もって隣町まで転送してくれるはずだ」
「隣町は大丈夫なのか?」
「あああ。もう連絡済だそうだ。騎士団が待機してるらしい。」
それを聞くとジャンの父は初めてホッとした顔を見せた。
「悪いな、ハル坊。…後は頼んだよ。」
「縁起でもねぇこと言うなよ。俺は俺のできることをするからさ」
「ああ、わかってらぁ。おんなじ状態の奴をできるだけ探してみるさ」
「で、それなんだけどさ、一応その文様?みたいなので妨害されないように…その…」
ハルが言いにくそうにするとジャンの父親は少し笑って言った。
「ああ、分かってる。いいぜ」
その言葉にハルはしっかりうなずくと人差し指をジャンの父に向けた。
「…ああ。
静かに唱えるとジャンの父の体から力が抜けていき、やがて静かに寝息をたて始めた。
* * * * * *
さてさて長くなったのでやっぱりここでワンカット
作者都合上あとがき長く書けないですがひとことだけ!
次回、ネージュが久々に登場!!
お楽しみに!!!!!