双人~ふたり~   作:弟月 凌

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魔法機械師は今を語る

 

「びっくりしたよ!似てるなっと思ったらハルなんだからさ。この仕事やってなかったらもう二度と会えなかったかもね〜」レオがニコニコしながら目の前にあったジョッキをつかんで飲み干した(中身はただのジュースである)

「俺だってあんなとこに学院の同級がいるとは思ってないさ」とハルはジョッキについた水分で遊びながら隣のレオをチラッと見た

 

 

ハルとレオは酒場のカウンターに座っていた

言わずともここはハルの行きつけの酒場だ

あの後ハルが酒場に行く予定だと言うとレオは一緒に昼ごはんを食べに行くと言ってさっさと剣やら盾やらを片付けてついてきたのだ

ちなみに俺は酒を飲もうとしたがレオに却下されたため泣く泣くジュースを飲んでいる

 

「で、レオはなんであんな店開いてたんだ?」とハルは気になっていた疑問をぶつけた

ハルの記憶が正しければ確かレオは故郷の街を守る力をつけるために学院にきていたはずだ

「もぐもぐ…ああ…うんそうだよ…ごっくん」ご飯を頬張っていたレオは飲み込み「あ、そうかハルのいる村と僕のいた街は遠いしそもそも国が違うもんね」と言いながら続けた

 

「笑っちゃうような話なんだけどね、僕が街に帰ったらもう街がなかったんだ」

「…は?」

「僕が帰る10日ぐらい前に他国の軍が攻めてきたらしくてね。僕がついた頃には街に誰もいなかった。というか街がきれいさっぱり消えてたんだ。帰ったら守るべきものはもうなかった。ね、笑っちゃうような話でしょ?」手に持つスプーンをもてあそびながらレオがさびしそうに言った

 

「で、何もやることがなくなったから色々行ってみようかなって思って旅してるわけ。学院の仲間のその後も気になるしまあ僕魔法機械いじるのが得意だから仕事には困んないしさ」そう言ってレオはまた目の前のご飯を食べ始めた

 

「…大変だったんだな」となんとかそれだけハルは言葉を絞り出す

今こんなに明るく話すレオだが、当時はひどくショックを受けたんだろう

 

「あ、ごめんごめん話が暗くなっちゃったね」とレオがハルに謝った

「いや、聞いたのは俺の方だからさ」とハルは手を顔の前でぶんぶん振った

「でもさ、あんな魔法道具そんな簡単に仕入れられるのか?」

たしか魔法道具はかなり希少でそうやすやすと手に入るものではないはずだ

「ああ、それが結構簡単なんだよ」と言った後レオは周りを見渡し

「今ここの国と隣の国が戦争してるだろ?」

と少し声の音量を落として言った

「ああ、ここまでは戦火はきてないけど国境付近がひどいんだろ?」

とハルは答える

ここ最近隣の国が周りの国に侵略して領土を大きくしているのは有名な話だ

「そういう襲われた街とか村には侵略過程で壊れたり魔力が切れた魔法武器とかが戦場に放置されたままなんだ。それを拾って直してああやって売ってる」

レオがスプーンを皿の上に置きながら言った

もう食べ終わったらしい

「そういえばハルは学院を出た後ずっとこの街にいたのかい?」

とレオが聞いてきた

「この街からちょっと山の方に行った村だけどな」

 

チリンチリン

 

ドアベルの音が響いたのでハルが振り向くとちょうど酒場に大きな槍を持った若い女が入ってくるところだった

つられて振り向いたレオが

「わっすごい!あれも魔法武器だ」

と目を輝かせた

槍を持った若い女はハルとレオを見てちょっと驚いたようだったが(店に入って早々に男2人にガン見されれば当たり前か)2人から少し離れた店の角に座った

 

* * * * * *

 

「そういえばこの剣はどうなんだ?」

若い女の槍を見てハルはずつと持ったままだった戦利品のシャムシールを机の上に置いた

早速手に取り品定めを始めるレオ

流石は魔法機械オタク、さっきまでと目の色が違う

「これ…かなりレアな品物だね。たぶんもとの持ち主は貴族かな。あと使える魔法は炎だと思う」あれこれ見てふんふん言っていたレオはそう結論づけた

「へー…そんなにこれいいモンなのか。ってかこれ魔法使えんだな」とハルが言うとレオが再び目を輝かせて言う

「そうだよ!なんだったら買い取りたいくらいだよ!!」

「じゃーレオにやるよ。俺使わないから。金もタダでいいし」

「いいの?!」

レオが心底驚いたように言う

「いいよ。こんな長めの剣なんか持ってて邪魔だからさー。むしろ俺工具とかの方が最近よく使うからさ」

「ありがとう!でもタダでもらうのは少し申し訳ないなぁ…そうだ!」

と急にレオは横に置いてあった鞄を手に持ち中身を探り始めた

ぱっと見普通の鞄だがそれも一種の魔法道具で中には驚くほどの道具が入っているのをハルは知っている

ちなみにさっき売っていた剣や盾もこの鞄に入っている

「あったあった。これとかどうだい?小さいから持ち運びには便利だし、いざという時は護身用にもなるし」

とレオが鞄から手を取り出すとそこには透明な石がついてとても綺麗な装飾が柄に施された25cmほどの大きさの二刀一対のダガーがあった

「まだ魔法を込めてないからただのダガーだけどこれなら使えるんじゃないかい?」

ハルに手渡しながらレオ自慢げに話す

「おっいいねこれ、かっくいーし」

「でしょでしょ!それにこれはどんな魔法も入れられるからハルが不得意で使えない水魔法も使えるようになるよ!」

「…テメー俺に喧嘩売ってんのかよ」

ハルは少しふてくされた

確かに風魔法以外ハルはほとんど使えないが

 

* * * * * *

 

「そういえば僕学院のみんなのその後の話したっけ?」

ふと思い出したようにレオが言った

「いや、してないぞ。ってか俺も他のやつのその後とか知らないな」

「そうなんだ。実のところ僕もほとんど学院のみんなの消息は掴めないんだけど…ユキだけとんでもない噂を聞いたんだよ。あ、ユキは覚えてるよね?」

とレオは切り出した

「覚えてるさ。お前らが似てるだの双子だのって騒いでたんだからな」

ハルはまた不機嫌に言った

「で、ユキがどうしたんだって?」

「まあそんなカリカリしないでよー」

とカリカリさせた当本人がなだめながら話を続けた

「ユキはその後国に帰って国王を補佐する魔法使いの役職についたらしいんだ。よく争いを無くしたいって言ってたからね。ただその頃には国王が変わって好戦的な国王だったんだって」

そこでいったん話を切りレオはハルの顔を見て

「どの国か分かるだろ?」

と言った

「今絶賛侵略しまくってる隣の国か?」

とハルが聞き返す

「そう。だからユキは国王に真っ向から対立したらしいんだ。でも聞き入れてもらえずに処刑されそうになったらしい」

 

「されそうになったらしいって…どうなったんだユキは?」

とハルは恐る恐る聞いた

「分からない。魔法を使って逃げたって話もあればそのまま処刑されたって話もあるし…まあ今のところ消息不明さ」

難しそうな顔をしてレオが鞄をパチンと閉めた

 

ユキか…

あいつ今無事だといいな…

 

ハルは酒場の窓からぼんやりと外を見ていた

 

* * * * * *

 

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