双人~ふたり~   作:弟月 凌

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第6話

ダダダダダッ ダンッ

タタタッ タタン

ここら辺一帯は市場というのもあって比較的家が密集している

その分屋根をつたって移動するのはかなり楽だった

 

ハルたちは走りだしてすぐ町の状況を知った

さっき襲ってきた奴と同じ鎧を着た隣の国の兵士たちが商人を片っ端から捕まえていた

抵抗する商人には暴力を浴びせている

かなりやられたのか血だらけでぐったりしている商人もいた

「ひどい…」背負っているレオが悲しそうな声で言う

「…いくらなんでも兵士の数が多すぎる。どう考えても不利だ」斜め後ろを走るネージュの声を悔しそうだ

 

「…」ハルはその兵士たちを見て考えた

こいつらの親玉は?

さっきみたいにもう怒号は聞こえない

ということはこの町はほぼ制圧された、と考えるのが普通だ

ということは1番情報伝達が容易な場所は――

 

ハルは進路を右に変えた

「何するつもり?」急な方向転換に何か感じたのだろう、ネージュが鋭い声で聞いた

「中央広場に行く。あそこはこの町の中心に位置しているから親玉がいるはずだ!その親玉を叩く。それでだいぶ状況は変わる!」

振り返らずハルは答える

むしろ、それしか状況を変える方法はない

「む、無茶はしないでよ…」とレオが心配そうな声でいう

チラッとレオを見てハルはいう「ああ、だいじょう…」そこで声が途切れる

 

いや、ハルは言葉を続けられなかった

目の前の噴水がある広場

そこに上質そうな鎧をつける男が1人

腰には黒い大剣

ハルと同じ珍しい紺色の髪

冷酷な笑み

間違いない

俺の父親……ジマだ

 

ごめんレオ無茶するわ

 

「ネージュ」

「何だ…ってうわ?!」

今まで背負っていたレオを風魔法でネージュに飛ばす

あたふたしながらネージュはレオをなんとかキャッチした

「危ないだろう!」

ハルはその声を聞かず「レオと共に先に町の外まで避難してくれ。ここからならどの方向に行っても同じくらいの距離だ」そう言ってレオからもらったダガーを片手に1つずつ持った

「…待て!あいつは相手にするな!行くな!」1人だけ鎧が違う奴に気づいたネージュの顔が焦っている

 

「いいから行け!」

身体全体に風魔法をまとい、ハルはジマに向かって突進して行った

もう理性なんてどこかへ飛んでいた

 

* * * * * *

ネージュ目線

 

「ハル!」抱えているレオが叫んだがその声に耳を貸さずにハルは飛んでいった

 

ネージュがかけた水魔法は距離が離れたこととハルが自身にかけた風魔法によって維持できず、跡形もなく消えた

これで向こうから視認できるようになってしまった

 

くそっ

 

下に降りるのは危険すぎる

そう判断しネージュは屋根づたいにハルを追いかける

 

「はああああっ!」ハルが声をあげてボスと思しき男――ジマに斬りかかる

だが、ハルの刃はジマに届かなかった

黒い炎がハルを拒むかのように立ちふさがったのだ

黒い炎とハルのダガーが触れた瞬間

カンッ

という金属音と共にハルが後ろに吹っ飛ばされていた

 

それを見てネージュは歯がみする

「やはりジマは黒器使いに…!」

それをきいたレオの目が驚きで見開かれる

「黒器だって!?じゃあハルに勝ち目なんてないじゃないか!」

その間もハルは凄まじい勢いでジマに斬りかかっているが全て黒い炎に遮られていた

 

確かにこのままじゃ確実にハルはジマに殺されるだろう

こうなったら…

「…眼鏡君さ、ちょっとそこら辺で隠れておいてくれることできる?」

ネージュの問いにレオは「もちろん」と言った

 

* * * * * *

ジマ目線

 

ったく久しぶりに会ったっていうのに憎しみ全開で攻撃か、まあいつもの事なんだけどな

自分の周りで凄まじいスピードで動き回る我が息子にジマは眠たそうな目を向けた

「いつまで遊んでいるんだ?バカ息子よ?」

「っ…!」

さらに怒りで顔を歪ませ、スピードをあげる息子

こちらとしては魔力をさっさと使い切ってもらったら始末しやすいのだがな

 

そう思いつつ、ジマは手を腰にある大剣の方に持っていく

なに、この『黒炎剣』がある限り息子の攻撃は私に届かない

 

そのうち息子のスピードがゆるくなってきた

そろそろ頃合いか

黒炎剣を抜き、横薙ぎに払った

切っ先から黒い炎が出現し、息子を派手に吹っ飛ばした

「もう終わりか?」倒れた息子に近づきながら冷たい笑いで見下ろした

きっとこいつは罵倒しながら斬りかかってくるだろう

 

これでこの息子を見るのは最後だ。せめてチリ1つ残さず燃やし尽くしてやろう。手に持つ黒炎剣に力を込める

 

「うるさいっ」案の定、飛び起きて手に持つダガーをこちらに向ける

そしてそのダガーがジマに届くよりも早くジマの黒炎剣が息子に当たった

 

 

 

はずだった

 

 

 

その瞬間蒸気が周りに立ち込めた

 

「なにっ!」

ガンッ「うっ…」ダンッ

 

「燃やせ」ジマが黒炎剣に命じると黒い炎が視界を覆っていた蒸気を燃やして消した

 

だが晴れた視界の先に息子はいなかった

 

誰かが連れ去ったのだろう

 

「チッ…」

 

逃がしたか

 

忌々しそうな顔でジマは黒炎剣をしまった

 

* * * * * *




ご感想お待ちしておりますー。

黒器は次回説明します
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