ご注文は腐った魚ですか?   作:フリーダムrepair

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こちら、前回お読み頂いたお客様にもう一杯サービスでございます…
なーんてとりあえず、あんな1話だけで伸ばすのもアレなので2話目も投稿しちゃいます。






二杯目

喫茶店でいつものようにコーヒーカップを拭いていて、ふと時計を見ると、午後2時を過ぎようとしているところだった。

そろそろ今日始業式だった香風が帰ってくるだろう。

「…もう、八幡くんも同じ学校なら教えてくれればよかったのに…」

俺と同じようにテーブルを拭いていた保登がしょんぼりとため息混じりに言った。そういや今日、お前学校行ってたな。

確かに昨日保登が妙にはしゃいでいたのを覚えている。

ああ、とか、おお、とか適当に返事を返していたので実を言うと保登の話の8割方聞いていなかったのだが、普通、入学式の日位自分で確認しろよ。

「あのなぁ、保登。だいたい自分の学校の入学式くらい自分で確認しろよ、人に頼りすぎてるとあっさり騙されるぞお前」

見損なってもらっては困る。俺は楽をするためならどんな努力も惜しまないのだ。故に、これ以上ぐちぐち言われるとめんどうなので保登を言いくるめくりいのことはする。

保登はむーっと不満げなご様子だが、ふと何かに気がついたように首を捻った。

「ねえ、八幡くん。どうして八幡くんは私のこと苗字で呼ぶの?」

「どうしてって…そりゃお前の名前が保登心愛だからだろ?」

「そうだけど…みんな私のことココアって名前で呼んでくれるし…そうだ!!八幡くん。私のことココアって呼んで!」

「保登」

「ココアって呼んで!!」

「…おい、保登」

「ココアって呼んで!!!」

「保登…いいから仕事しろ、さっきから客に笑われてる」

照れ隠しの変わりにこほん、と小さく咳払いをして周りを見渡すとクスクスと小声で笑われていた。うん、普通に恥ずかしい。

しばらくコーヒーカップ拭きに身を呈していると、保登はある常連客の所にオーダーを取りに行き、ニコニコしながら戻ってくる。

「ねえねえ八幡くん!さっきお客さんにココアちゃんはシスターコンプレックスだねって言われちゃった!」

「…は?」

「響きがかっこいいよね」

目をキラキラと輝かせながら何度もシスターコンプレックスと呟く保登。…コイツ意味分かってんのか?

大体、まだ妹(香風)帰って来てねえだろ、や、香風 自体 保登の妹じゃないけど。

そんなことを思っていると店の扉の鐘がチリンチリンと鳴り、誰かが扉を開けたことを知らせる。ガチャリと扉が閉まり、店内に香風が現れた。

「ただいま」

「あっ!チノちゃん!!聞いて!聞いて!!私ねー」

保登がテテテーと香風に駆けていく。さっきの話の続きでもする気なのかしら…(困惑)

まあ、シスコンに関しては俺も一家言ある。俺もお兄ちゃん歴15年やそこらの大ベテランだ。むしろ、アイツ(保登)のレベルでシスコンを語るとか片腹痛いよ?

時間的にもそろそろ俺のシフトが上がる頃だ。丁度香風と入れ替わりになるように店を出る。

さて、どうするか。受験終了後も結構バタバタしていてゆっくり1人静かに落ち着いて過ごせる時間というのは少なかった。こちらに来てからの休日も特に何もしないまま終わってしまった。

ようやく羽を伸ばすことができる。俺はもともと1人の時間が好きなのだ。

どの辺をぷらぷらしてようかなーと考えていると、だんだん気持ちも弾んでくる。

自前の自転車を取りに行き、鼻歌混じりにペダルを踏む。

そして、延々と続くように見える石畳の通りをひた走った。

 

 

商店街付近に着くともう夕刻というにはだいぶ日が暮れ街は歓楽街の顔を見せていた。川沿いから街の中ほどへ進んで行き、喫茶店フルール・ド・ラパンの方へと向かう。

この辺りはよく野生のうさぎが出没するので気をつけて運転しなければならない。

野生のうさぎなんて物をこの街に来るまで見たことがなかったが、アイツら、本当によく通行の邪魔をしてくるので迷惑この上ない。

そんなこんなでいつもの如く、表通路にはうさぎが沢山いて運転しずらかった。

仕方なく自転車で真っ直ぐ進むのを諦め、比較的野良うさぎの少ない路地裏を通ることにすると、今度は金髪の女子と野良うさぎが睨み合いをしていてどちらにしろ通れなかった。

「…うう…せっかくリゼ先輩に助けてもらったのにどーしてまたコイツがここにいるのよ…」

少しその場で待ってみて、いつまでたっても退く気配がなかったので、気がついたら手を伸ばし うさぎを通路から退かせていた。

うさぎと睨み合っていた女子が驚いたように俺を見る。

何か苦情を言われるかと身構えてはいたものの特には何も言われず、金髪の女子は何か言い出そうと口を開くが、声は出てこない。

身体こそこちらに向けられているものの、視線は合わさず床へ向けられていた。

少し気まずい雰囲気であり、ここは早々に立ち去った方が吉だ。

向こうが目線を下げてるうちに、俺はその場をあとにする。

どうせ二度と会いはしないのだ。見た目清楚可憐な金髪美少女と孤高の一匹狼たる比企谷八幡に接点などない。

路地裏を出ると、近くにあった映画館のディスプレイを眺める。

ちょっと興味があった映画が始まるまでにはまだ小一時間ほとの時間があった。どこかで暇でも潰しておけば、ちょうどいい時間になるだろうか。

ちょうど映画館の付近にはこじゃれた喫茶店がある。あるのだが、見た目のこじゃれさとここにいる客のオサレ満喫感がどうにも得意ではないので他の店に行くことにした。こうゆう喫茶店でワイワイガヤガヤしている調子に乗った頭の悪い学生のウザさは言い表すことが出来ない。そのような理由も含めてやはりこの店はダメ。

映画館からはす向かいにあるファーストフード店のコーヒー無料券(2枚一組セット)の有効期限は今日までだったはずだ。この店は

カフェオレでもOKなので俺としてもありがたい。寧ろカフェオレを甘くして飲むと千葉県民らしくてさらにいい。ここは千葉じゃないけどな!!

店内に入って、アップルパイとカフェオレを注文した。二階へと上がり、席を探す。

いやー、1人で甘いものを食いながら甘いカフェオレでティータイムとか充実すぎてヤバイ。大体、俺が、他人と生活している方がおかしいんだよ、やはりぼっちたる俺は自分で考えて、自分で調べ、自分で楽しまないと!!誰かに頼らず自分でなんでも出来るゼネラリストじゃないとな!!

軽くウキウキで空いている椅子を探す、1階、2階含め空いている椅子は3つ。かなり店の中は混雑している状況だった。

さて、どこに座るか、1つはテーブル席で2人用のもの、もう1つはカウンター席なのだが、自分でも何故だか分からないが空いているカウンター席の方は座りたくなかった。

その隣が超が付くほど美人なお姉さんだったからだろうか、その席に座る、という行動自体を身体が無意識的に避けようとしていた。

となると、少し迷惑だがテーブル席を使わせてもらおう。

テーブル席に座り、とりあえず購入したアップルパイをがぶっと噛む。

鞄の中から文庫本を取りだし、スピンをつっと動かし、読みかけていたページを開いた。

いやー、1人で甘いものを甘い飲み物で(以下略)

しばらく本を読んでいると、とんとんと肩を叩かれた。あん?ちょっと今いいところなんだから邪魔すんじゃねえよ。と思いつつも叩かれた方を振り向くと店員が満点の営業スマイルでこちらを見ていた。

「…申し訳ございませんお客様、こちらご相席よろしいでしょうか?」

「…はぁ、いいですけど」

適当に返事を返し、また読書に戻る。すると、見覚えのある人物が目の前の席についた。

「あ」

ウェーブの掛かった金髪にカチューシャを付け、お嬢様学校と名高い学校の制服着用していて、雰囲気にまで気品を感じる。

先程会ったばかりだが見た目からして家柄や育ちの良さを醸し出していた。

こういうファーストフード店ではなく、むしろ、さっきの喫茶店のカウンターにでも腰かけていると相当絵になっていただろう。

まさかここで再び出会うとは思っていなかっただけに我知らず身体が固まってしまう。

様子を窺ってみると、その金髪の女子は目をぱちぱちと瞬きさせ、こちらを見つめていた。

くっそ…なんで会うんだよ…。ここんとこ辛い試練続きでなんかこう神に愛されてる感あるけど、ちょっと愛が重い。

とにかく、さっさと食べて飲んで出ちまおう。

と思ってカフェオレに口をつけるのだが、あいにく俺は猫舌なのである。

必死にふーふー吹いていると、金髪の女子は俺に話しかけてくる。

「あの…さっきはありがとうございました」

「…はい?」

「?さっき助けてくれたでしょ?」

あれ、困ってたの?むしろウサギの観察か何かしてるのかと思ったので絶対何か言われると身構えてたまである。

「…別にそんなつもりもなかったし、あの場にいられると通行の迷惑だったから退かせただけだ。だから、その、こうなに…感謝されるようなことじゃない」

そう言ってまた読書を再開する。大体、俺が個人を特定して恩を売った訳じゃないんだから、個人が俺を特定して感謝する必要がない。

こんな些細なことに拘る必要はないのかもしれないが、筋はきちんと通しておかないとな!!うわ、なにこの偏屈、超めんどくせぇ!!

そして、静かな、まったりとした時間が流れて行く。

向こうから話しかけてこない以上、そうそう会話も生まれない。

静かな空間の中でカフェオレを啜る。…ああ、カフェオレ美味いなー…。でも、甘さが足りないかもな。練乳置いてたりしないかしら。代替策としてスティックシュガーをさらさら投入して飲んでいると、視界の端に金髪の少女が目に入る。

金髪の少女は机の上に手帳を広げ、頬杖をついては時折、フライドポテトに手を伸ばしていた。

しかし、本当上品そうに食うなコイツ、ポテトを一本一本そんな上品に食う奴初めて見た気がする。

しかし、不意に俺の視線に気がついたのか、驚いて食べていたポテトを喉に詰まらせてしまったらしく、苦しそうに胸元を叩き始めた。

「…おい、大丈夫か?」

声をかけるも、手で制され、うずくまるだけだった。

俺は1つため息をつき、近くを通った店員さんにカフェオレのお代わりとアイスコーヒーを注文する。受け取ったコップを苦し悶えている金髪女子の前にそっと置いた。

金髪女子が勢いよくアイスコーヒーを飲み干したのを見届けた後、俺も読書に戻る。

なんかよく分からん海外ソングが店内を支配し、お代わりのカフェオレを飲みつつ、本のページをめくると、目の前の金髪女子は口を開いた。

「あのさ」

「…あん?」

「今日は私を助けてくれてありがとー!」

「え?…あ、はい?」

突然の変わり様に思わず動揺してしまった。たぶん驚いたのが表情まで出ていたのだろう。なんなのこの人…と金髪女子を見ると、金髪女子は満面の笑みである。

「だってー、助けてくれたことには変わりないでしょー?もう、この捻デレさんめー!!」

そう言ってつんつんと俺のアホ毛を触る。

うわぁ…ウゼェ…というよりめんどくせぇ…。初対面でちょっと会話しただけでこの疲労感。丸くなった背に加えてさらに俺の肩ががくりと下がる。

ここはそろそろ本格的に撤退した方がいいかもしれない。

予想外の邂逅はすぐさま撤退すべし。慢心よくない。

「じゃあ、まあ、俺はこれで…」

「えー、今日は帰っちゃヤダー!」

椅子をずらしてぐいぐい近寄ってくる。近い近い柔らかい近い近いいい匂い近い…。

てゆうか、こいつなんでこんなに近いの…。てゆうかていうか、なんでこんなに柔らかいの…。女の子は柔らかいって本当ですか?おしえて!知恵留先生!!

とは言ってもこうガシッと腕にホールドされていると身動きが取れない。ここはもう一度帰るタイミングを見計らうべきかもしれない。

ただ黙っている分には俺も困らないし、むしろ俺の得意分野だ。

あれだな、やっぱり寡黙な男のほうがいいわけで。

来たな…。これは来ましたよ、ぼっちの時代。これからは会話しない系男子が流行る(モテるとは言っていない)

しばらく黙って様子を窺っていると、その金髪女子は俺の腕を掴んだまま眠ってしまった。え…まじでどうするのこの状況。

一応、ゆすったり、叩いたりしてみたがこの様子だとテコでも起きそうにない。

机を見るとこの金髪女子の物とおぼしき生徒手帳がぽつん、と置いてあった。

名前は桐間紗路。住所は…ああ、ここ、あれだ甘兎庵の近くだ。ということは思いっきり方面がウチと同じな訳で…。コイツ運ばなきゃいけないのかなぁ…でも流石にこのままここに放置していくのもなぁ…。

甘兎庵といえばウチのラビットハウスとは昔からのライバル店だと、タカヒロさんから聞いたことがある。ついでに店の位置もラビットハウスからたいして離れていないため、見学も兼ねて行ったことがあるくらいラビットハウスから近い。

1つ大きなため息をつき、この桐間たらいう女子を背負う。たぶん、本来ならこんなことをする必要もないのだろう。

だが、それでもこのまま放置していくのはなんとなく目覚めが悪い。だから、これは単なる自己満足だ。

店を出た辺りでよいしょっと桐間を背負い直す。

空はもう暗く星が点々と輝いているのを眺めながら俺はコイツの家があるという甘兎庵に向かって歩き始めた。

そして、結局俺は桐間を家まで運んだ後。後日自転車を取りにまたファーストフード店まで戻ることになってしまった。

 




はい、という訳で2話目でした!!
なんというかアレだね…ココアとの下りを書きたかったが為にこのssを書き始めたんだよなぁ…しみじみって感じですね!!

そして出てきた甘兎庵、なんでもラビットハウスとは因縁の中にあるとか無いとか、ダンディなおじさんことタカヒロさん…通称アゾットタカヒロが教えてくれたらしい…またれよ…

…この世界にはカフェインで自我が吹っ飛ぶ程酔う人間がいるらしいですね…そんな人物との邂逅のお話でした!!
兎ヤベエよ…というか兎が街中を徘徊するってどこの世界の常識だよ…奈良?
まあ、そんなことよりも面倒くせーと言いながらも見捨てるのもちょっと忍びねえなぁ…という八幡の心情が表すことが出来たらいいなぁ…と思っております。
まあ、その後、甘兎庵に連れて行って変な誤解を受けたり、そこの若女将(予定)な人物におもてなしを受けたりもするのですが、それはまた別のお話(無い)

さて、ここまで読んで頂いた皆様に感謝を込めて…次回もまた読んで頂だけますように。
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