勘違いで生き残れ! 作:朝が嫌い
「なッッ、何でこんな下層に白帝がいるんだよ!」
「何、ただの野暮用だとも」
「……………確かにそいつは僕のメンバーだし、どういう訳か石化されなかった商品もいるようだ……。だがな」
そう言って一拍入れてからルイオスは勝ち誇ったように喋り出す。白な登場に焦ったようだが、腐ってもペルセウスのリーダー調子を取り戻したようだ。
「そんなに決闘がしたければ、その吸血鬼から話を聞くんじゃなくて"サウザンドアイズ"にちゃんと調査させればいいよ。………尤も、ちゃんと調査されて一番困るのは全く別の人だろうけど?」
「そ、それは………!」
黒ウサギは視線を白夜叉に移す。逃げてきたレティシアを匿っていた事実は、幹部である白夜叉にとってかなりの責任問題だった。
「さて、んじゃ僕は帰るよ。これでも僕はやることが一杯なんでね。さっさと商品を箱庭の外に送る準備もしないとだし。」
「貴方正気ですか!?"箱庭の騎士"は箱庭の外だと……」
「そうだね。でも仕方無いじゃん。取引相手は箱庭の外にいる奴だし?それに愛想無い女って嫌いなんだよね、僕。特にソイツは体も殆んどガキだしねえ―――だけどほら、それも見た目は可愛いから。その手の愛好家には堪らないだろ?気の強い女を裸体のまま鎖で繋いで組み伏せ啼かす、ってのが好きな奴も居るし?太陽の光っていう天然の牢獄の下、永遠に玩具にされる美女ってのもエロくない?」
ルイオスは全く悪びれた様子も無く、更に挑発半分で商談相手の人物像を口にする。
案の定、黒ウサギはウサ耳を逆立てて叫んだ。
「あ、貴方という人は………!」
「しっかし可哀想な奴だよねーソイツも。箱庭から売り払われるだけじゃなく、恥知らずな仲間の所為でギフトまでも魔王に譲り渡す事になっちゃったんだもの」
「え?それは………本当ですか、レティシア様?」
黒ウサギは恐る恐るレティシアに訊くと、彼女は無言で目を逸らした。それを黒ウサギは是と取り動揺した。
そしてルイオスは黒ウサギのその動揺を見逃さなかった。
「報われ無い奴だよ。〝恩恵ギフト〟はこの世界で生きて行くのに必要不可欠な生命線。魂の一部だ。それを馬鹿で無能な仲間の無茶を止める為に捨てて、漸く手に入れた自由も仮初めのもの。他人の所有物っていう極め付けの屈辱に堪えてまで駆け付けたってのに、その仲間はあっさり自分を見捨てやがる!その女は一体どんな気分になるだろうね?」
「………え、な」
黒ウサギは絶句しレティシアを見る。やはり彼女は目を逸らして悔しそうな表情のまま何も言わない。
蒼白になった黒ウサギにスッと右手を差し出し、ルイオスはにこやかに笑って、
「ねえ、黒ウサギさん。このまま其処の彼女を見捨てて帰ったら、コミュニティの同士として義が立たないんじゃないか?」
「………?どういうことです?」
「取引をしよう。その吸血鬼を〝ノーネーム〟に戻してやる。代わりに、僕は君が欲しい。君は生涯、僕に隷属するんだ」
「なっ、」
「一種の一目惚れって奴?それに〝箱庭の貴族〟という箔も惜しいし」
再度絶句する黒ウサギ。飛鳥とレティシアもこれには堪らず怒鳴り声を上げた。
「外道とは思っていたけど、此処までとは思わなかったわ!もう行きましょう黒ウサギ!こんな奴の話を聞く義理は無いわ!」
「ああ。黒ウサギが私なんかの為に犠牲になるのは間違っている!私のことはいいから早急に帰ってくれ!」
「ま、待って下さい飛鳥さん!レティシア様!」
黒ウサギの手を握って出ようとする飛鳥と、それを催促するように言うレティシア。だが黒ウサギは困惑していて動かない。
それに気付いたルイオスは厭らしい笑みで捲し立てた。
「ほらほら、君は〝月の兎〟だろ?仲間の為、煉獄の炎に焼かれるのが本望だろ?君達にとって自己犠牲って奴は本能だもんなあ?」
「………っ」
「ねえ、どうしたの?ウサギは義理とか人情とかそういうのが好きなんだろ?安っぽい命を安っぽい自己犠牲ヨロシクで帝釈天に売り込んだんだろ!?箱庭に招かれた理由が献身なら、種の本能に従って安い喧嘩を安く買っちまうのが筋だよな!?ホラどうなんだよ黒ウサギーーーー」
「この・・・『黙りな』黙れ」
瞬間世界が凍った。白の殺気に白夜叉を除くすべての動きが止まる。
「見るに堪えんな。」
「何だと?そもそも、何で口出しする。あんたには、関係ないだろ」
「何、今俺はなここに泊まっていてな、余りにうるさい声で下らんことを喚くからな。」
「何様なんだよ、お前は!!!」
そう言って、白に鎌を振りかざした。ハァーっと溜息を吐くと
「さっきの忠告に気づかないとはな。」
白に鎌が当たる直前、ルイオスの動きが止まった。
「ガアアァ・・・」
「この程度の殺気で、動けなくなるとはな。もはや、その首とるにも能わぬな」
そう言って、殺気を解く。
「否定したければ、そうだなそこのノーネームに勝ったら訂正してやる」
「なッ」
「出来るだろう、俺に楯突くくらいなのだからな」
「良いだろう、やってやるさ。ただし、こいつらが挑戦権を手に入れたらだがな」
「決まりだな」