勘違いで生き残れ! 作:朝が嫌い
白に拳が迫る。当たった。そう思った・・・だが
「なッッッ」
最低限の動きで躱される。
「話にならんな」
「くッッッッ」
★★★★
怖すぎだろ・・・顔の横に、凄まじい勢いの風圧と拳が振りぬかれたのだ。
そして、その後もラッシュが来る。拳も足もどの攻撃も常人には躱せないであろう怒涛の攻撃を最低限の動きで避けていく。
「どうした、こんなものか」
あと、28秒・・・
「クソ・・・」
「オラアアァアァァァ」
十六夜の拳がさっきの速度の比にならないくらいの速度で迫ってきている。しかし、少し届かない。
残り20秒。
「本命は、これだ」
手に隠してあった、つぶてを投げる。つぶてといえどこの速度は危険極まりないだが当たらなければどうということ言うことはない。
残り18秒。
蹴りが眼前に迫っていたしかし、躱せる。そろそろか・・・
「これで理解できただろ。お前は、俺に攻撃を当てることは出来ない。」
「お前の拳には何もないのだ、理想も覚悟も、狂気もだから届かない。ただ、快楽と己の渇きを癒すためだけの獣の拳など何年経とうが届かぬ。・・・お前の拳は届かない」
「クッ・・・」
十六夜の拳が迫る。恐らく今までで一番強い威力だろう。だが、
残り7秒だ・・・・
「詰みだ・・・十六夜」
こいつはここで潰しておかないと厄介になる。
『死風』・・・あらゆる負の感情を思い出す・・・・4年前のあの男の顔を、炎を、地獄のような光景を、思い出せ、あの日誓った復讐心を、憎悪を、怒りを!!!
「散れ・・・」
空間が軋んだ。
対魔王用威圧、『死風』・・・死を体現した殺気が吹き荒れた。
空気が空間が歪んだ・・・・
★★★★
十六夜さんの候関が当たっていない。これほど違うのですか。
十六夜さんならもしかしたら、という考えがあった。だが、甘かった。相手は、白帝。
少人数のコミュニティーで、弱冠15歳で白帝と恐れられる者、十六夜さんは弱くない。
でも、圧倒的すぎる。
「出鱈目だわ、あんなの」
飛鳥さんのつぶやきも理解できる。
空気が変わった・・・・。死風・・・風に乗ってそんな声が聞こえた。
「なッッッ」
空間が悲鳴を上げている。歪んでいる。何だこれは?これが、こんなものが殺気なのか。こんなに悍ましいのか、こんなにも、邪悪なものなのか?黒ウサギの本能が全力で逃げるべきだと叫んでいる。こんなにも、距離が離れているのにもかかわらず立っていられない。
「く・・・・十六夜さん!!!」
あの、殺気の奔流の中にいる彼はどうなってしまうのだろうか。意識が、途切れようとする。もう・・・・
「やめい!!!!」
白夜叉様の声がした。殺気の嵐が止まっていく。
十六夜を見ると、そこには、倒れる十六夜とそれを眺める白が立っていた。
はッ・・・目を覚ます。ここは・・・ここはノーネームか。
「目が覚めたのですね!」
黒ウサギが嬉しそうに近付いて来る・・・・あの後、どうなったんだ。
「黒ウサギ、俺は負けたのか?」
「はい、十六夜さんは白帝様とのギフトゲームにおいて敗北してしまいました…でも、白帝様相手にあそこまで食い下がるのはすごいことなのですよ!」
自分を、励まそうとしているのは分かるが、今はやめてほしい。思い上がっていた。自分の退屈が埋まることが分かったのに喜べない。全く、戦いになっていなかった。思い上がっていた。俺より強いやつは、やはりいてそいつらと戦うには俺は不足なんだ。
「なあ、あの後どうなったんだ?」
「・・・はい、あの後は・・・
★★★★
「黒ウサギ、判定は?」
「は、はい。白帝様の勝利です」
「ふん・・・是非もなし」
十六夜は起きる気配がない、自分の周りも、地獄絵図だ。辛うじて、自分は立っているが、白夜叉様ですら顔色がよくない。アナさんは平気そうだ。圧倒的だ。ここまで・・・違うものなのか。
「十六夜に伝えておけ。俺は、暇ではない・・・。お前がそのまま戦うに値しない状態でいる限り、再戦をする気はない。」
「そう言っていました。」
戦いの中であいつに言われたことが頭から離れない・・・
『これで理解できただろ。お前は、俺に攻撃を当てることは出来ない。』
『お前の拳には何もないのだ、理想も覚悟も、狂気もだから届かない。ただ、快楽と己の渇きを癒すためだけの獣の拳など何年経とうが届かぬ。・・・お前の拳は届かない』
その通りだ。何も言い返せない。
「黒ウサギ、俺はあいつの言っていたものを見つけられるのか?俺は・・・」
「十六夜さん、ここは何処だと思いますか?」
「?」
「ここは、箱庭です。ここでなら、見つけられますよ!」
「・・・そうだな、そうだよな。それにあいつは、このままだったら再戦をしないといったんだ。あいつの、戦うのに相応しいやつになればいいんだ。」
快楽のためではない。自分のやりたいことを見つけた気がした。
★★★★
「あれでよかったんですか?」
アナが聞いてくる。ああ問題ない。力の差があると錯覚してくれただろう。そして、ああいっておけば、すぐに再戦を申し込まれることもない。今は、それでいい。俺の秘密についても気が付かなかった。少なくとも、今までのような、獲物を見るような眼はしないはずだ。
「潰すよりも、あいつに白帝は強いと言いまわってくれたほうがいい」
「そう・・・数日後に開催される火竜誕生祭に魔王が現れるらしいですよ。」
「それは、好都合だな。俺の脅威を示すチャンスだ」
次回から二巻。