勘違いで生き残れ!   作:朝が嫌い

8 / 13
今回はほとんど白はしゃべりません。


火龍誕生祭

「黒ウサギのお姉ちゃ~ん! 大変なの!」

 

 リリは黒ウサギとレティシアのいる農園跡地に慌てて駆け込んだ。

 二人はただならぬリリの様子に驚く。

 

「ど、どうしたのですかリリ!?」

 

「こ、これ!」

 

 そう言って、リリは二人に手紙のようなものを渡す。。

 

『黒ウサギへ

 

 近日行われる箱庭の北と東の“階層支配者”による共同祭典火龍誕生祭に参加してきます。

 

 貴方もあとから必ず来ること。あとレティシアもね。

 

 私たちにこの祭りのことを秘密にしていた罰として、今日中に私たちを捕まえられなかった場合———三人ともコミュニティを脱退します。

 

 死ぬ気でで探してね♪

 

 なお、ジンくんは道案内に連れていきます。』

 

「な、なんなのですか、これは!? あ、あの問題児様方はあああああああああああ!!」

 

「タイミングが悪かったな」

 

 というのも、火龍誕生祭のことに関する白夜叉との会談が今日だったのだ。

 

「たしかに、一度依頼を受けて向こうに行かれてしまったら元も子もない。すぐに追いかけるぞ! リリ、留守を頼む!」

 

「わ、わかりました!」

 

 リリが返事をすると、黒ウサギは髪が桜色に代わり、レティシアも姿が変わる。

 

「行くぞ、黒ウサギ!」

 

「はい! レティシア様!」

 

 

★★★★

 

 

「で貴様らは何をしている?」

 

「よう、白帝様。白夜叉に北まで送ってもらおうと思ってな。」

 

「なるほどな。ちょうどいい、白夜叉俺も頼んだ」

 

「おぬしら・・・人使いが荒いのではないか?」

 

「それより、その目を見る限り己の傲慢さには気づいたらしい」

 

「ああ・・・そのうえで必ずもい一度戦って勝つ」

 

「ふん・・・俺が認めたらな」

 

「おぬし等、そろそろ行くからの」

 

そう言って手を叩くと、そこは北だった。

“サウザンドアイズ”支店から外を見た“ノーネーム”の一同は、その街の様子に息をのんだ。

 基本的に農耕地が中心ののどかな村のような風情のある東側と打って変わって、北側は街灯やランプによって彩られたきらびやかな街だった。

 

「すごいわ! 白夜叉、あっちのガラスの回廊に行ってきていい?」

 

 瞳を輝かせて言う飛鳥に、白夜叉は苦笑する。

 

「構わんよ。続きは夜にでもしよう」

 

 白夜叉の気遣いに、問題児たちが大手を振って街に繰り出そうとしたところで、白とアナはただならぬ気配を感じる。

 

「ようぉぉぉやく、見つけたのですよ。問題児様方」

 

「チッ! もう追いついてきやがったのか! 逃げるぞ、お前ら!」

 

「ちょっと、十六夜君!?」

 

 十六夜は飛鳥を抱えると、一目散に逃げ出し、耀も逃げようとしたところ黒ウサギに足を掴まれ、後方へと投げ飛ばされる。

 

白夜叉のほうに投げ飛ばされる。

 

「こら、黒ウサギ! 白もおんし、最近いささか礼儀を欠いておらんか!」

 

「白夜叉様! 黒ウサギは十六夜さんと飛鳥さんをレティシア様と捕まえてきますので、耀さんをよろしくお願い致します!」

 

「おお…、がんばっての」

 

 黒ウサギの勢いに気圧され、白夜叉は頷く。

 “サウザンドアイズ”支店のある展望台からジャンプする黒ウサギ。

 黒ウサギと問題児たちの追いかけっこは、後半戦に突入するのだった。

 

 

★★★★

 

 

「おおとも。おんしには是非参加してもらいたいものがある」

 

「私?」

 

 

 耀は首を傾ぐ。

 

 白夜叉は袖から一枚の羊皮紙を取り出す。

 それを耀は覗き込む。

 

 

「造物主の決闘?」

 

「生命の目録のような創作系のギフトでもって行われるギフトゲームだ。展示会でもよかったが、そちらはもう期限が過ぎておってな。まあ、たとえ力試しのゲームでもそのギフトなら充分勝ち抜けると思うのだが……」

 

 

 随分と長い間、食い入る様に羊皮紙を見つめる耀。

 

 やがて、顔をあげた少女の真っ直ぐな瞳が白夜叉へ向く。

 

 

「ねえ白夜叉」声には不安が見え隠れしていた「優勝したその恩恵で、黒ウサギと仲直り出来る……かな?」

 

 

 そう問われて、目を丸くしていた白夜叉はふっ、と微笑む。その笑顔は慈愛に満ちていた。

 

 

「出来るとも。おんしにそのつもりがあるのなら」

 

 

 本当は、黒ウサギならばそんなことしなくても許してくれると知っている。彼女がとても優しい兎だというのは、昔から見ていて充分にわかっていることだからだ。

 

 だがそれを白夜叉が伝えたところで、目の前の少女の幼い顔に浮かぶ不安と罪悪感が本当の意味で消えることはないだろう。だが・・・黒ウサギは間違いなく許す。わかりきった結末だが、耀が己の暗い部分に向き合い、そこから一歩前に踏み出そうとしているならば、白夜叉はそれを見守ろうと思った。

 きっとそれは彼女達の絆が一層深まることに繋がるという確信があるから。彼女達の優しさと強さを信じて。

 

 

「うん。なら出場する」

 

 

 願わくばこの少女により一層の幸福あれ、と思いながら白夜叉の意識は隣の少年へと向いた。

 

 

「おぬしは何をしに来たのじゃ?」

 

「何、面白そうだったのでな。気晴らしに来ただけだ」

 

白は、素っ気なく言うとクルリと背を向けて歩き出す。アナが後をついていく。

 

「夕刻には戻る」

 

「昔のように道に迷うなよ」

 

「分かっている」

 

そう言って街に繰り出していった。

 




次は、ペストが出てくるはずだ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。