勘違いで生き残れ! 作:朝が嫌い
白夜叉と別れて、しばらくして・・・・
両手に、クレープを抱えて大層ご満悦なアナを横目に見ながら、どうやって情報を集めるか考える。・・・そうだな二手に分かれるか。
「アナ二手に分かれよう。」
「わかりふぁした」
・・・こいつこんなキャラだっけ?・・・ほんとに大丈夫だろうか?
★★★★
街へと出たはいいものの、まったく土地勘のない場所のため、どこに行けばいいのか迷っていた。さてさて、どこに行ったもんか…。この街の地理には全く詳しくない。かつ、他人に聞いてもそれが地元の奴でなければ意味がない。とすると、警備している“サラマンドラ”の奴に聞くのが妥当だ。
「なのに、周りにいないとは、どうなっているのやらな。警備ちゃんとやってるのか?」
「まったくね。ちゃんと警備する気があるのかしら」
白はいつの間にか自分の横に立っていた、斑模様のスカートの幼女を見る。
そして、それが部下から報告のあった魔王の特徴と一致していることに気づいた。
「初めまして、白帝様。本当にこんなところで会えるとは驚きだわ」
「魔王が何の用だ?」
「ッッッ」
「気づかないとでも思ったか戯け。俺をなめすぎだ!!!」
瞬間、恐ろしいほどの殺気がペストを襲う。
「ぐッッッッ・・・・流石は、白帝。たった数人のコミュニテイーで成り上がってきただけのことはあるわね」
警戒して強めに殺気を出したがこんなものか。ま、新米魔王だからな。それでも動けはするようだ。『死』という概念に比較的近い存在なのかもな。
「それで貴様、俺に何の用だ?」
「・・・取引をしない?私と、取引をすれば、あなたの探し物の手掛かりとなるものを提供できる」
「ほう・・・だが、俺の何を知っているかは知らないがお前らを潰して聞き出すことをしないと何故言い切れる?」
「そうしたら私は嘘を吐くわ、でもそうしないのであれば本当のことを話すわ」
・ ・・ハッタリで言っているのは分かる。が、ここで戦うと、新米魔王とはいえ殺気だけではもしかしたら制圧できないかもしれない。下手に交戦してボロが出るより、ここは口車に乗っておくほうがいいか。
「面白い。その勇気を評価してやろう。何が望みだ」
「これから、始めるギフトゲームに手を出さないでほしいの」
「ハハハハ」
「元より俺は参加するつもりなどない」
これは、都合がいいな。俺の脅威を認識している魔王は使い勝手がいい。そして気になることは・・・
「そう。ならよかったわ」
「一つ聞かせろ。貴様は、先ほど「本当にここにいるとは驚きだ」と言っていたな。何故俺がここに来ると知っていた?」
「ある人物から聞いたのよ。『魔王』の一人からのタレコミよ」
「・・・そうか」
「じゃあ私はこの辺で失礼するわ」
俺の行動を把握できる奴なんて・・・ああなるほど。なんとなく、分かってきたぞ。
考えがまとまってきたところで、ドーーーンと大きな音がした。
振り返ると、時計塔が崩れているのが見えた。
・・・十六夜だな。
★★★★
宿に戻るとアナが先に帰っていた。
「どうだった?何かめぼしいものはあったか?」
そう問いつつ何にも調べないで帰ってきてしまったと今更気づいた。
「特に・・・・」
「そうか、しょうがないな」
「そちらは?」
「こっちも似たようなものだ」
そう言ってごまかす。
「それと、あとで魔王について話がある」
「分かりました」
★★★★
「長らくお待たせいたしました! 火龍誕生祭メインゲーム、造物主の決闘の決勝をはじめたいと思います! 進行及び審判は、サウザンド・アイズ専属審判でお馴染みの黒ウサギがお務めさせていただきますよ!」
舞台上で黒ウサギが笑顔を振りまくと途端会場から割れんばかりの歓声が響く。
「うおおおおおお月の兎が本当にきたああああ!」とか「黒ウサギいいいいお前に会うためにここまできたあああああ!!」とか「今日こそスカートの中を見てみせるぞおおお!!」
などの歓声というには首を傾げる内容の。おかげで黒ウサギが怯んでいる。
有象無象の歓声でハッとした十六夜が
「そういえば白夜叉、黒ウサギのミニスカートを見えそうで見えないスカートにしたのはどういう了見だ。チラリズムなんて古すぎるだろ。」
「馬鹿じゃないの?」
「バカですね」
という飛鳥とアナの冷たい言葉は届かない。
「フン。おんしほどの男でもそれを理解しえないか」
「へぇ、言ってくれるじゃねえか。つまりお前には、スカートの中を見えなくすることに芸術的理由があるというのか?」
「考えてみよ。おんしら人類の最も大きな動力源はなんだ? エロか? なるほど、それもある。だがときにそれを上回るのが想像力! 未知への期待! 渇望だ!! 小僧よ、貴様ほどの漢ならばさぞかし多くの芸術品を見てきたことだろう! その中にも未知という名の神秘があったはず! 想像せよ。 何者にも勝る芸術とは即ち――――己が宇宙の中にあるッ!!」
ズドォォォォォンという効果音が聞こえてきそうな雰囲気で、十六夜は衝撃を受けて硬直した。
「なッ……己が宇宙の中に、だと……!?」
打ちひしがれる十六夜に白夜叉はそっと近寄りその肩に手を置いた。
「若き勇者よ。さあ、この双眼鏡で共に今こそ世界の真実を」
昔、同じことを言われた気がする。はたから見ると、ただの馬鹿だな・・・。嫌いではないが。
「あ、あのー」
「「見るなサンドラ「アナ」。馬鹿がうつる」」
思はず、はもってしまった。嫌いではないが教育上よろしいことではない
あれ? なにやら悪寒が?・・・
舞台上で、ブルリと黒ウサギはウサ耳を震わせるのだった。
そうして造物主の決闘、決勝が開始される。
★
「くそったれ」
ウィル・オ・ウィスプのプレイヤー、アーシャ=イグニファトゥスは悔しそうに吐き捨てる。
白夜叉によって舞台は移動され木の根に囲まれた《アンダーウッドの迷路》が開始された。対戦相手の耀はまず序盤に舌戦でアーシャの冷静さを奪い、感情任せにぶっ放し続けた攻撃手段である火炎の正体も看破してみせた。天然ガスを導火線に放ってくるそれは風のギフトでガスを吹き飛ばされてしまえばどうやっても火は耀に届かない。木の根の迷路も嗅覚その他五感が鋭い彼女ならば容易くゴールに着けるはずだった。――――ただ、耀にとっての誤算はアーシャが連れていた者の存在だった。
「後はアンタに任せるよ。やっちゃってジャックさん」
今までアーシャに付き従っていたはずのカボチャのお化け。てっきり彼女が操る人形かと思っていたそれは、
「嘘」
「嘘じゃありません。失礼、お嬢さん」
先行していた耀の眼前に突如現れた。ジャックの真っ白な手が耀を薙ぎ払う。勢いを殺せず木の根に背中から激突し肺の中の酸素が全て吐き出される。
「……ッッ!」
「さ、早く行きなさいアーシャ」
「悪いねジャックさん。本当は自分の手で優勝したかったけど……」
こちらを見るアーシャの顔にはありありと見える不満。言葉の通りこの展開を、彼女は本意と思っていないようだった。そんな彼女を先ほどまで騒ぐだけだったカボチャのお化けは紳士的な口調でたしなめる。
「それは貴女の怠慢と油断が原因。猛省し、このお嬢さんのゲームメイクを見習いなさい」
「うー……了解しました」
「待っ」
「待ちません。貴女はここでゲームオーバーです」
走り出すアーシャを追おうとするとジャックが立ちはだかる。ランタンのかがり火が耀の周囲を囲む。先ほどまでの手品じみたものではない。――――本物の悪魔の炎。
「貴方は」
「はい。貴女のご想像はおそらく正しい。私はアーシャ=イグニファトゥス作のジャック・オー・ランタンでは
ヤホホー、と笑うジャック。
耀は直感してしまう。彼には勝てない。ジャックのかがり火の瞳はすでに生命の目録を看破している。そも切れる切り札も無いが、あったとしても今の自分ではいくらあっても太刀打ち出来ない。
首に下がるペンダントを一瞥し、耀は静かにゲーム終了を口にした。
★
「負けてしまったわね、春日部さん」
「ま、そういうこともあるさ。気になるなら後で励ましてやれよ」
目に見えて気落ちする飛鳥と軽い調子で笑う十六夜。
「シンプルなゲーム盤なのにとても見応えのあるゲームでした。貴方達が恥じることは何も無い」
「うむ。シンプルなゲームはパワーゲームになりがちだが、中々堂に入ったゲームメイクだったぞ」
★★★★
空から黒い何かが落ちてきているのが見えた。
これは、黒い羊皮紙。なるほどもう来たのか。さてさてどうなるかな。
『ギフトゲーム名〝The PIED PIPER of HAMELIN〟
・プレイヤー一覧
・現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ。
・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター
・太陽の運行者・星霊 白夜叉。
・ホストマスター側 勝利条件
・全プレイヤーの屈服・及び殺害。
・プレイヤー側 勝利条件
一、ゲームマスターを打倒。
二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
〝グリムグリモワール・ハーメルン〟印』