なお読んでもらった同級生は分かりやすかったと苦笑いでいってくれましたよ。・・・優しさが痛い
ガタンゴトンと腹のそこにまで響く振動と重低音を感じながら、暗くなった窓の外を眺める。
まぁ、見える景色は豪風、吹雪く凍土しかみえなかったが・・・
-数時間前 ロシアル帝国国境付近-
『少し前にも話した通りちょっと技術者を脱国させてきてほしいの』
『事前ブリーフィングではスカウトじゃなかったか!?』
確実に狙って伝えられなかった情報のレベルが冗談じゃ済まないほど酷い。
『出来るでしょ?』
『無茶だ!!』
上司の無茶な要望も処理しないといけないのが部下のつとめとはいえこれはさすがにないと言いたい。
『ふぅん?無理じゃないんだ・・・』
この上司は分かっている。私が絶対に断らないことを・・・!
『・・・何がお望みですか?』
『物わかりが良くて私はとてもご機嫌です♪・・・まぁ、内容はかんたんだよ』
皮肉は通じていないらしい・・・
『ロシアル帝国首都に郊外ある研究所で缶詰にされてる除洗装置開発技術者がいるの、その技術者を連れ出してくれればいいわ』
まぁ、聞くだけなら楽なのだろう・・・ロシアル···技術者···救出···まさか裏で【世界中に散らばった特殊な1ドル】とか【ヤバい核発射装置】じゃあないだろうな・・・
『ん?ちょっと待て、除洗装置の技術者?』
『えぇ、除洗出来る薬物の知識を持っているから逆に考えれば除洗出来ないものを作らせるにも専門家でしょ?』
納得できるような無いような?
『細かいことは良いのよ・・・あっ首都までは電車旅よ!ロシアル帝国自慢の電車旅をご覧あれ~♪』
そう言って通信は切れる。
仕方なくデバイスを腰に引っかけ直し、コートを深く着込む。
寒いところは嫌なんだけどなぁ・・・・
「お客様、コーヒーはいかかでしょうか?」
少し前を思い出しながらボーッとしていると販売員に声をかけられる。
「貰おうかな・・・いくらだい?」
「お客様は平民枠ですので120ルーブルでございます」
そう言って販売員の女性は紙コップにポットから熱々としたコーヒーを注ぐ。
「120ルーブルだねハイハイ」
そうやって販売員の女性に紙幣とコインを数枚渡す。
階級ごとに分けてその階級はその仕事しかさせず、納税も階級で決まる。
資本的共産主義・・・妥協した結果の共産主義と言えるものらしい。
資本的かどうかは分からないがある意味共産的な考えではあると思えはするがのう・・・
まぁ、うまくいってるようなので気にしない方が吉なのかもしれない・・・
まだ電車旅は続く。
道の悪い直ぐに揺れる【素晴らしい】電車旅を終え、電車を降りる。
吹雪の時間は終わったのか、駅から出る頃には雪ははらりはらりと桜のように枚落ちる程度になっていた。
「ここは首都何だよな?」
旅行客丸出しといった感じで掲示板とパンフレットのような地図を交互に、にらめっこして研究所の場所を記憶に染み込ませる。
「車がいるかなぁ・・・」
地図上では目と鼻の先にある研究所も実際の距離では歩くのも馬鹿馬鹿しい程の距離だろう。
しかし、盗みをこんなところでしてしまうと転がりに転がって研究所の警備が増える可能性もある。
「どうしたらいいんだ!?」
『・・・姉さん、車、用意ある』
そう嘆いていると、通信機から聞き覚えのある声が聞こえる。
『玄!本当か!?』
可愛い弟の助言はどこぞのやつと違って嬉しいんだよなぁ・・・
『玄は嘘言わない・・・御武運を』
そう言って一方的に通信は切れる。
私は早速車を探し始める。
・・・あっ!?特徴聞き忘れた。
白が辺りの輪郭を消していく不可思議な道を最高速度でかっ飛ばしながら進む。
接続されたデバイスのデータを使ってカーナビの目的地を研究所の場所に合わせ自動運転に切り替える。
そして、私は突入用の装備を確認する。
「ブレード二本に、小銃二丁、あとは~ガスと閃光が少々か・・・」
支給された武器が今回は少ない。
「救出用ってこんなもんなのかな?」
さてどうしたものかと考えているうちに研究所は近づいてきた。
「車で突入・・・無いな」
一瞬バカな考えが頭をよぎったが無かったことにする。
車に急ブレーキをかけ、ドアを開けて脱出する。
研究所は雪を迷彩としているのかもとからなのか壁は白く、屋根にはどっさりと雪が積もっている。
入り口は見たところ二つあるらしい、片方は来客用の入り口と思わしく、もう片方は材料などの物資搬入口らしい。
それも丁度いいことに来客用の入り口の見張りが巡回に向かった。
「しめた!」
これを好機とせず何時が好機かと一目散に侵入、コートを脱ぐ。
コートの下には最早定番のスニーキングスーツを装備している・・・こんなところで裸とか風を通り越して死ねる。
忍び込んだ場所は正に研究所と言ったような所だった。
幾つもの薬品棚が立ち並び、デスクには所狭しと計算式や化学式が書かれた書類が散乱している。
物陰に隠れ、ロッカーに隠れと色々なところに隠れながらとある場所を目指して進む。
目指す場所は救難信号を発信している場所・・・局長室。
室内はそんなに警備もおらずなかなか簡単に進むことができた。
「拍子抜けだな・・・」
そして眼前に迫る局長室。
扉を開け放ち、室内へ入り、安全を確認する。
結果はエネミーゼロ、救出対象を発見。
何とも拍子抜けな最後だった。
「はっ早くここを出よう!」
白衣を着た肥満体型の中年・・・ターゲットが喋りかけてくる。
「見事な日本語だな」
ターゲットの喋りは日本語、もしかすると生き残りか二世、三世なのかもしれない。
「寒いのはもうこりごりだな・・・」
研究所へ物資を運ぶ用途に使われると思われるトラックに乗りながら呟く。
「同感だね。ここの国の人たちは頭の仲間で凍りついているらしい」
「いいジョークだ笑えるよ」
エンジンを吹かせ、アクセルを思い切り踏み込む。
後ろには敵兵がいるが追い付くのは至難の技だろう。
『目標達成に近づけたか?』
『まだまだね。私が生きてる間にできるのかしら?』
『出来るだろ、頑張ればできるって太陽神もいってるしな』
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【資本的共産主義】
作者がバカな頭で考えた机上の空論な共産主義
狭い範囲内では絶大なプラスの効力を発生させる(と筆者は思っている)共産主義を考え通り狭い範囲に当てはめたもの。
皇帝、貴族(軍人もここに含まれる)、平民(労働者&農民)の三つに大まかに分けられ、皇帝から平民に向かって税金の納税額が下がる。(例 皇帝:600万ルーブル 貴族:200万ルーブル 平民:2万ルーブル)
職業選択の意思はないに等しく、ほとんど歯車状態
階級同士は上下関係があるが、階級内は平等らしい・・・
【ルーブル】
ソ連のおかね(紙くず)
この作品で復活を果たした。
お金の換算は100ルーブル=100円だと思ってくれれば良いです。