「…………で」
「ハトさん、ライブのエントリーってどうすればいいの?」
「うるせぇハト……勝手にライブでもクソでもしろハト……」
「えぇ!? それってあんまりじゃない? ハトさん、一応、私のマネージャーなんだから……」
「お前が勝手に契約させただろハト!! ったく……今度絶対にカゴを買えハト……メスが触ると、ハト様の美しいボディが台無しだハト……うぅ……」
確かに身体中鳥肌だらけで、ブツブツしててかわいそうだ。
でも、ぬいぐるみなのに鳥肌立つのって変なの。
「えぇー……お小遣い足りるかな……」
「絶対に買えハト! ハト様がお前のマネージャーをする最低限の条件ハト!」
「はーい」
マネージャーを籠の中で飼うって絶対におかしいけど、本人が気にしてないならいいや。
「お前、名前は?」
「え?」
「名前ハト! 一方的に契約されたから、名前を聞いていないハトよ!」
「そ、そうだっけ? みやこ、私は夏場みやこだよ」
「ハトはハムストリングス・トーマス・エジソン・ザ・プライム・マトリックス・エア・ヴィ・トリスタン3世だハト」
「え?」
「ハトの名前はハムストリングス・トーマス・エジソン・ザ・プライム・マトリックス・エア・ヴィ・トリスタン3世だハト」
?????
「えっと……ハム……?? た……ろ…………」
「違うハト!! ハムストリングス・トーマス・エジソン・ザ・プライム・マトリックス・モア・アンド・モア・エア・ヴィ・トリスタン3世だハト!! 」
「そんな長い名前覚えられないよ、これからもハトさんって呼ぶね……」
「全く……やっぱりメスは物覚えが悪いハトね」
さっきからメス、メス、メスってどれだけ女の子が嫌いなんだろう。
あんまり言われると、イラっとくるな……。
「ハトさん、おねがい! ライブのエントリーのやり方教えてよ! ライブして、あの憧れのジェリアみたいに、かっこいいクールアイドルになりたいんだ!」
「ん……? みやこはジェリアのようなかっこいいクールアイドルになりたいハト……?」
「そうだよ! 小さい頃からずっと憧れてたんだ!」
「…………ジェリアのようなかっこいいクールアイドル?」
(ジェリアといえば、ハト様もが認める超超イケメン女子アイドルハト……)
(みやこは……顔は…………まぁ、悪くないハトし…………あのジェリアみたいな超イケメン女子だったら……女性恐怖症のハト様でも全然アリだハト……!)
(『ハト様……俺に特別な稽古つけてよ……』
『ハートさーま! オレ、ハト様のために、イチゴのショートケーキ……作ったんだぜ」
『あぁん…………ハト様……オレに……もっと……強い……ステージにオゥ…………』)
「は、ハトォォォオオオオオオオ!!!」
「えぇえ!?」
「クルックー、みやこ、今日からお前はハト様に従うイケメン女子になるハト……! 1にクールに2にクール! ハト様の地獄のレッスンにかかれば、みやこみたいなじゃりん子でもジェリアは夢じゃないハト!!」
「え、え? なんか声変わってない?」
「さぁ、みやこ、ライブのエントリーしに行って、まずはデビューライブハト!」
「え、う、うん!」
なんだか、急にマネージャーとしてのやる気を出したハトさんに案内されて、プリパラTVのライブ会場に向かった。
まずは受付に所に行ったんだけど、受付で立ってる女の人がある人にすごく似ていた。
「め、めが姉ぇさん!?」
「あら、あなた初めての子? 外のめが姉ぇさんとは別人でーす、システムでーす」
「システム?」
「気にするなハト、プリパラの中にはめが姉ぇさんなんて100人、200人、1000人くらいいるハト」
「せ、せんにんのめが姉ぇ!?」
ど、どういうことなの……?
目の前のめが姉ぇさん、私が知ってるめが姉ぇさんよりも無表情っていうか……感情がないというか……なんだか不気味だし……!
「みやこ、ハト様が責任持って、エントリーの手続きをするハト……だから、すぐにライブの準備をするハト……」
「え、うん」
「クルックー……みやこ、1人でエントリーだクルックー」
「はーい! わかりました!」
語尾変わってなくない???
とりあえず、今は着ているコーデ以外のコーデを持ってないから……このコーデでライブすることになるんだけど……。
スマホを取り出して、曲を再生する。
『今ファンタジー〜扉が開く〜』
Girl’s fantasy……ジェリアが、最後に歌った伝説の曲……。
この曲で、デビューライブしたいって、ずっと、ずっと、小さい頃から思っていたんだ……。
扉を開くんだ、私のアイドルとしての道を……。
『コーデの数だけカードをスキャンしてね! 友達のトモチケもスキャンできるわ!』
コーデチケットをスキャンして、私はその手でステージの扉を開いた。
ステージに上がると、ちょうど、学校のお昼休みの時間だから、誰も会場にはいない。
でも、このライブはプリパラTVで放送されている。
きっと、いちごちゃんだって、あのあいかだって見てるはずだ。
イントロが流れ始めて、もうすぐ歌い出しだ……緊張する……けど…………これが私の最初のライブなんだ、絶対に失敗したらダメだ……。しっかり、大きな声で歌わなくちゃ……
マイクをもって、何度も動画でみた、練習したダンスをやる……けど、少しモタついてしまう。
銀河を流れていく……銀河を流れていく……。
「ぎっ!!!」
「ハト……?」
(この感じは…………ハト…………)
「ぎ、ん゛がぁ゛〜お゛な゛がれ゛でい゛ぐ……ってあれ…………?」
かっこよく、華麗に、くるっと回ろうとして……足と足がぶつかって、転んでしまう。
急いで立ち上がろうとすると、いつのまにか、自分が歌うのをやめてるのに気づいてしまった。
「な、なんだっけ、次の……フレーズ…………」
「みやこ……」
曲は続いてるのに、頭が真っ白になって、
立ち上がれない……体が震えて、マイクを手から離してしまった。
マイクが転がって、ステージから落ち、大きなノイズがスピーカーから鳴る。
「お、終わりハト! めが姉ぇさん、今すぐライブを終了させるハト!」
「はーい!」
めが姉ぇさんが手を挙げると、幕が降りて、ステージが閉じてしまった。
「み、みやこ……」
どうしよう……私、失敗しちゃったんだ……。初めてにライブなのに、ずっと憧れていたステージのはずなのに……。
「みやこ…………よく聞くハト」
「なに?」
「ハト様はこう見えても30年くらい生きてきたハト、ずっといろんなアイドルを見てきたハト、いろんなアイドルのお世話をしてきたハト。プリパラTVやいろんな会場でライブを見てきたハト、才能に恵まれて……初めてでもすごいライブをする子、自分のイメージ通りにライブができる子、実は伝説のプリズムボイスを持っていた子……そんな中でも、ほかのアイドルよりは見劣りするような子なんてたくさんいたハト、ダンスがへたっぴな子……音程を合わすのが得意じゃない子」
「でも……みやこは……これまでの、今までのどんなアイドルよりも…………アイドルの才能がないハト」
「え?」
「歌い出した時、踊り出した時……全てを感じたハト、ダメだって」
「…………」
「でも、みやこ……ハト様は同時に、みやこの気持ちがよくわかったハト、かっこいい私になりたいって気持ちが…………みやこがずっと持っていた憧れの思いが……よくわかったハト……」
「だから…………だから、思い出が、憧れが……好きだったものが……嫌なものになる前に……」
「アイドルをやめるハト、みやこ」