あいかが私の手を引っ張って、ライブ会場に連れて行こうとする。
私はその手を払って。
「見たんでしょ、私のデビューライブ……」
「うん」
「だったら、なんで私となんかライブするのさ! 今日はすごいライブするんでしょ! クラスのみんなに言いふらしてたじゃん! それとも何? 下手くそな私と、歌もダンスも上手なあいかと比べて、一層私のこと馬鹿にするつもりなの?」
「……み、みやこちゃん」
本当はこんなこと言いたくないけど、いつもエントリー2人で入れてくれていることとか……嬉しかったけど、最近のあいかの行動を見ていたら、自分の中からいろんな感情が込みあがってしまった。
「そんなわけないじゃん!」
あいかが声を張り上げて、突然泣き始めて。
「歌やダンスが上手とか関係ない……昔、約束したの覚えてる?一緒にアイドルやろうって言ってたの」
そう言われて、小さな頃のことが頭に浮かんだ。
習い事が終わった後、毎日……30分や1時間っていう小さな時間だったけど、必ず一緒にアイドルの練習していた。
プリパラに一緒にデビューしようって。
ピアノや水泳やめても、アイドルで競い合おうって、必死に練習していた。
「私、みやこにプリチケ届くのずっと待ってたんだよ……」
「あいか……でも、私……歌もダンスも下手くそなんだよ、私なんかとライブしたら、」
「みやこ」
「え?」
「プリパラは好き?」
「好き、好きだよ……!」
「なら、大丈夫。 プリパラは誰だって、どんな女の子だって……アイドルに慣れる場所ってジェリアが言ってたじゃん! 」
「それに、あの曲なら……歌えるでしょ? ずっと、ずっと歌ってきた私たちの曲…………」
あの曲……?
確かにあの曲なら……。
でも……。
「うん、でも……」
「大丈夫やって! だって、横には現トップアイドルのうちがおるんやで〜!」
ちょっと涙組んだ声で言われた関西弁が少し面白くって。
「やっぱり、あいかには関西弁は似合わないよ」
『コーデの数だけカードをスキャンしてね! 友達のトモチケもスキャンできるわ!』
『コーディネートスタート!』
『あいかちゃんのコーデはCandyAlamodeの最新コーデ! エネルギッシュなあいかちゃんにピッタリね!』
「キャンディアラモードポピュラーアイドルコーデ! やでっ!」
『みやこちゃんはクールでセクシーなマジシャンアイドルコーデ! クールトリック、楽しみね!』
「ホリックトリックマジシャンアイドルコーデ! ふ……」
ステージに上がると、最初のライブとは違って女の子達がたくさん……待っていた。
それを見たとたん、私は……。
もし、また失敗したら……どうしよう…………。
前のライブはお昼頃で誰もいなかったから、まだ……陰口を叩かれるぐらいで終わったけど、
「あれ、なんでみやこが一緒にいるの?」
「あいかちゃんだけのライブじゃないの!?」
女の子達の声が聞こえると、足が震えて前を見れなくなる。
イントロが始まって、あいかが踊り出しても、私は何もできない……。
やっぱり…………できないよ…………。
「私……やっぱり……」
両手を強く握ると、足の力がだんだんなくなるのを感じて。
目が暗くなって、周りのスポットライトの光が消えて……世界が、黒に染まるような――
「みやこ!」
「!」
あいかが私を呼んだと思って、あいかの方を見ると、
あいかが私の右手を握って、私の方を見ていた。
あいかと、目が合うと、昔、子供の時、あいかと一緒に練習していた時のことを思い出す。
(え…………?)
『うー、またころんじゃったよー!』
『あ! みやこちゃん、またこけてる! へたくそだなぁ』
『すぐにじょうずになるよ! わたし、じぇりあのような、かっこいいあいどるになるもん!』
『しょうがないなぁ』
『みやこちゃんがしっぱいしても、みやこちゃんがかっこいいあいどるになれるように、あいかがてをひっぱってあげる!』
『あいかちゃんが? うっそだー!』
『あいかはうそ、つかないよ! みやこちゃんがあいどるでびゅーしたときには』
「すごい……」
「『すごいあいどるになっているから……』」
あいかは私の手を引っ張って、一歩前に私を出して。
『『オシャレなあの子のマネするより』』
『『自分らしさが一番でしょ!』』
「は、ハト!? う、歌えているハト……どういうことハト!?」
「……みやこちゃん、あいかちゃん、さすがだね」
歌える……!
踊れる……!
あいかと、手をつないで思い出す、3年前以上のことだけど……。
私の体は覚えていた!
リズムを、ダンスを、音程も……全部……!
『『パキンと半分こで!』』
『『友達コンプリートーしよー!』』
ランウェイの先まであるいて、会場を見下ろすと、会場から聞こえていた不安の声はなくなっていた。
「ふ……!」
「やでっ!」
「「メイキングドラマ、スイッチオーン」や!」
『ダンスと!』
『ランウェイと!』
『歌で目指せ!』
『『レッツゴープリパラ!!』』
「「サイリウムチェーンジ!!」」
「あぁあ……あの、みやこが、あのみやこがメイキングドラマと、サイリウムチェンジまで成功させたハト!!」
ライブが終わると、いつのまにか、あいかの手は離れていた。
「あ、あれ……」
「できたやないか、みやこにしては」
あいかと一緒にハイタッチする。
「当然でしょ!」
「きゃあああああああ!!!! あいかちゃんのお団子をたべたい!!!」
「みやこちゃんのラブリコーデが見てみたい!!」
す、すごいエールだ……。
嫌なこと言われるよりはマシだけど、悪寒がする……。
「あ、あのさ……あい」
――バッ!!
急に照明が落ちて、私の言葉が遮られた。
「え、何!?」
「何!?」
客席の方から声が聞こえてくるけど、あいかの声がどこからも聞こえないからだんだん不安になってくる。
「あ、あいかー? ハトさ」
空からひらひらと1枚のチケットが落ちてくる。
「……あれ? これ、プリチケ……?」
上を見ると、たくさん光ってる何かが、落ちて……。
「って、プリチケ!? なんで、上からたくさんのプリチケが降ってくるの!?」
「空から降り注ぐ、無数のプリチケ!」
あれ? 今の私の声……!?
『ボクはプリチケの配達人! アイドル達を見守る存在……!』
誰!?
声がどうしてかでないし、どこからか変な声がするし……!?
周りに鏡が現れたかと思ったら、私は上へ上へと、上空していく。
「鏡に映る未来の私!」
私何言ってるの!?
勝手に口が……動いて……!?
そして、突然、郵便配達員の恰好をした、顔がよく見えない青年?みたいなのが出てきた。
『さぁ、君のアイドルとしてのチャレンジ……ミライチャレンジ、スイッチオン!!』
『パラレルジュエル!』
『ミラージュエル!』
『そして、君のあこがれ……クールジュエル!』
『未来のアイドル、誕生!』
プリパスの中にジュエルが入っていくと、プリパスが大きなマイクになって、私の手元へと現れる。
聞いたこともない曲なのに、体が勝手にダンスして歌を歌ってる……!?
もうわけがわからない~!!
『君の新たなチャレンジのために……鏡が示す最高のコーデを君に……!』
「ミラチケ!!」
……。
…………。
「――ハッ」
「み、みやこ!? 大丈夫か……なんや、今のライブ……?」
気が付くと、私は元のステージにいた。
「今のなに!? ミライチャレンジ!? ミラチケ!?」
「すっごい! そして、何あのおとこのこ!!!」
観客席から、興奮した女の子の声が聞こえて、あいかに聞いてみた。
「み、見えていたの?」
「うん、いつのまにか、どこかのステージの観客席にいて……」
私は手元を見ると、神レアのコーデ、「ロゼッタジュエル神クールマジシャンコーデ」があった。
「ミラチケ…?」
チケットを裏返しても、特にほかのプリチケとは変わりがないみたいだけど……。
「今のそのライブ……! 見させていただきました! とぅ!!!」
突然、ステージに男の人が上がりこんできた。
「スタイリッシュ!」
「タフ!」
「ガァイ!!」
変なポーズを次々に繰り出しては私たちに筋肉を見せつけてきた。
「え? なに、この変態!?」
「みやこ、この人はめが兄ぃさんや」
「め、めが兄ぃ?」
「プリパラの運営のお兄さんや」
「な、なるほど!」
めが兄ぃさんは私の目のまえに迫ってくる。
「みやこさん! あなたのその、ミラチケ……」
「回収させていただきます!!」
「え……」
「えぇええええええええぇえええええええええええええ!?」