「あなたのそのミラチケ、回収させていただきます!」
…………。
一瞬、場が固まる。
「ぇええええええええええ!?」
「みやこさん、先ほどのライブ……素晴らしい出来でした」
「しかし!」
めが兄ぃさんは一度、服を脱い空転し、自身のめがねから空中に映像を映し出す。
「めが兄ィィィィィィイイホログラァアメーションッ!」
映像には『ミライチャレンジ は ない』と書かれて、大きな赤いバツが映し出される。
「わざわざ映像にしなくてもええんじゃ」
あいかが映像を見て苦笑いする。
「そうです!」
めが兄ぃさんは立ち上がり、脇を見せながら、両手を頭上に押し当て、セクシーポーズをして語りだす。
その様子に女の子たちはなぜかメロメロになる。
「システムに、ミライチャレンジなどというライブは存在しないのです!」
「みやこさん、これはシステムエラーです。システムに存在しないライブ――ミライチャレンジから現れたミラチケを見逃すことはできません」
「なので、回収させていただきます!」
めが兄ぃさんは差し出すように手を伸ばした。
観客席からは批難の声が聞こえてくる。
「なにも回収しなくてもいいのにねー」
「すごいライブだったのに残念」
「みやこ、素直に渡すハト、運営に逆らっていいことはないハト」
黙っている私をみて、ハトさんが耳元でアドバイスをくれた。
確かに、めが兄ぃさんの言っていることはわかるよ。
でも……このチケットはあいかと一緒にライブして、手に入れられたチケットなんだよ?
そんな簡単に……渡せない。
「……いやだ!」
「な、なんですって!?」
めが兄ぃさんはめがねを驚きのあまり、めがねを落とす。
「このチケットは、ずっと約束していたのに……私のところにプリチケが届かなかったからずっとできなかったけど……」
「やっと、やっと、私とあいかが一緒にライブして手に入れた……誰も持っていない私だけのチケット……!」
「だから、めが兄ぃさんには渡せないです!」
「みやこ……」
「……わかりました、私はあくまでアイドルを守る存在。先ほどのライブに免じて、今日のところはみやこさんの遺志を尊重しましょう」
あれ、思ったよりあっさり?
めが兄ぃさんは落ちためがねをめがね拭きで拭いて、かけなおす。
「しかし、私もあきらめたわけではありません……必ずそのチケットをいただきます」
「…………」
めが兄ぃさんが立ち去った後、私たちはプリパラタウンの噴水広場にあるカフェでジュースを飲んでいた。
「みやこ、今日はなんかぎすぎすしとったけど、いつものめが兄ぃさんは、うちらのことをいろいろ助けてくれてる、優しいお兄さんやねんで」
「そうなんだ」
「うちらの曲を作ってるのも、全部めが兄ぃさんやし」
その言葉を聞いて、私は飲んでいたメロンジュースを吹き出す。
「えぇ!? じゃあ、あのあいかがいつも歌ってる『Popin summer Day』とかも……」
「めが兄ぃさんや」
「あの変態が、そうなんだ……」
まさか、初対面の女の子に向かって服を脱ぐような人が、女の子の夢のプリパラアイドルの曲の作曲をしてるなんて。
「ま、まぁ、ルックスはそこそこのイケメンやし? 許されてる感じはあるけど……ハハ」
「そうです私はナイスガイ! ですから、ところでみやこさん……お気持ちは変わりましたか?」
「そうそう、めが兄ぃが――ぎゃあああ!? め、めが兄ぃさん!?」
いつのまにか、私とあいかが座っている席の横で、めが兄ぃさんが海パン姿でエクスプレッソを飲んでいた。
「なんで、こんなところにいるんや!!」
「もちろん、ミラチケの回収にです―アハッ」
めが兄ぃさんがスマイルで女の子達にウィンクを飛ばすと、周りの女の子たちは目の色を変えてキャーキャー言いだす。
「悪いですけど、気持ちは変わってません! っていうか、今日は立ち去るとかいってませんでした……?」
「そうですか、はて?」
めが兄ぃさんはいつのまにか、噴水の前に移動し、私に方を向いて。
「それではまた、とうっ!!!!」
めが兄ぃさんは噴水めがけて走り出し、噴水に向かって飛び込む。
――ザバーン!
「なに、あの人」
「よっぽど、ミラチケを回収したいんやろうな。あはは」
少し、周りを見渡すと誰か足りない気がして、
「あ! そういえば、いちごちゃんは? あとハトさんは?」
「あぁ、いちごならライブ終わってすぐに、用事があるって言って帰ったはずやけど。ハトは、あれ」
あいかが指さす方向を見ると、女の子たちに囲まれて、泡をふいているハトさんがいた。
「きゃー! すごい、マスコットだ!!」
「マスコットさん、私のマネージャーになってよ!」
「私が先に言ったの! とらないでよ!!」
女の子たちがハトさんの羽をもって、引っ張り出す。
「も……ゃ……め……てくれハト……」
「あああああ!! まずいよ! まずいよ!」
「何がまずいんや? ぬいぐるみやし、大丈夫やろ」
「ハトさん女性恐怖症だから……下手したら死んじゃうかも!!」
「はぁ!? 女性恐怖症のマスコットってどこにおるんや!!」
「あそこにいるよ!!」
私たちは慌てて、ハトさんの元に行って、女の子たちに説明してハトさんを救出した。