その後も、日を超えてもめが兄ぃは私たちが行くところで出てきて……。
例えば、ごみ箱からでてきたり……木かと思ったらめが兄ぃだったり……ベンチに座ったと思ったら、それはめが兄ぃで。
「はぁあああ~~……」
レッスン室の真ん中で、練習しているあいかの横で私は大きくため息を吐いた。
「どないしたんや、みやこ」
「いや~めが兄ぃがしつこいから疲れちゃってさ」
「確かにしつこすぎるな、うちもライブしようと思って、プリチケさしたら、めが兄ぃさんのめがねにプリチケさしてもうて……何度もみやこに渡すように説得してくださいって言われたわ」
システムにないはずのライブ……ミライチャレンジ。
そのライブでもらえたミラチケ。
そんなにこのチケットは危ないものなのかな? ただのコーデチケットでしょ……?
「どうして、あんなにしつこいんだろう、仕事っていうのはわかるけど」
ミラチケを何度みても、他のコーデチケットと変わらないし。おかしいところといえば、廃版になっていたはずのブランド、RosetteJewelロゼットジュエルの最新コーデが記録されてることだけど。
「みやこちゃ~ん、まだめが兄ぃさんにミラチケを渡してないの?」
突然、レッスン室に長髪の二人組の女の子たちが入ってくる。
あいかが二人をにらみつけて、立ち上がる。
「あんたら、最近、話題の二人組、
「ふらわーとらっぷ? 有名人なの?」
「ここ一週間前に出てきて、ブイブイいわせとるだけのグループや。右のクールな雰囲気の青髪の子がにこ。そして、ぶりっ子っぽい黄色髪の子がさこや」
「ぶりっ子って、ひどいね~にこ? ま、私は~きゃわ!たん!だから、問題ないんだけどね~!」
「…………にこっ」
さこがほっぺに指をあてて、謎の黄色の星を周りに飛ばす。
うっ、アイドルとしてはいいけど、友達にいたら対応に困る人たちだ……。
「うちらになんのようや、あんたらもうすぐライブの時間やろ」
「あら? 私たちのことよぉおく知ってるんだね? それはもちろん、ミラチケをさっさとめが兄ぃさんに渡してもらおうと催促しにきただけ!」
青髪の子、にこちゃんがクールに微笑み、目を閉じながらうなずく。
「やっぱりぃ~? 私たちは次の大会に向けて、ちょうちょぉおおおおう、練習しているのにぃ~変なトラブルを起こされると困るから~さっさと、みやこちゃんにはめが兄ぃさんにミラチケを渡してほしいんだよぉねぇ~」
「にこっ……」
「安心しな、あんたらは大会にでても、でんでも、得られるもんはなんも変わらんからな~それに、トラブルなんかのこと失敗する程度の実力しかもってへんのちゃうん~?」
「なっ……」
あいかが、さこちゃんに言い返すと、にこちゃんのイケメン雰囲気につられたハトさんが起きて、にこちゃんに近づく。
「ハト……イケメンの香りがしたハト。 どこにイケメンくんはいるハト~」
この前、女性恐怖症のハトさんが女の子たちに触られて、死にかけているところをみたあいかは心配になって、私の耳元で聞いてくる。
「みやこ、ハトがにこちゃんに触れようとしてるけど、大丈夫なんか?」
「うん、ハトさんはイケメン女子だったら大丈夫なんだ」
「なんやそれは」
ハトさんが目にハートマークを浮かべながら、にこちゃんの手に触れると、突然、ハトさんは叫び声をあげて、毛をそり立たせた。
「ハトォォォオオオオオオオ!!!」
「ハトさん!?」
あれ? おかしいな、にこちゃんはイケメン女子のはずなのに、どうして……。
「なんや、全然あかんやんか!! また医務室行くで!」
あいかは手袋をはめて、手術着に着替えて、気絶したハトさんを台車に乗せた。
にこちゃんの方をみると、にこちゃんが急にぷるぷると震えだして、
「ふぇぇぇぇ……、だ、だいひょうぶぅ……ですか……?」
「え?」
なんと、にこちゃんはさっきまでのクールで冷たそうな雰囲気から一変して、ナチュラル女子な雰囲気に突然変わり、涙目で内股になっていた。
にこちゃんのその様子を見て、さこちゃんが慌てて、ぶりっ子ポーズをやめて、顔を変えて叫ぶ。
「に、に、に……にこっ、にこお姉さまぁ!? 演技が崩れていますわ!」
「あっ、…………に、にこっ」
さこちゃんに指摘されたにこちゃんは、一瞬固まって、すぐさま体制をかっこつけたポーズに変える。
「おほ、おほほほほ! それでは私たちはこれで! さこぺろ! 必ず、そのチケットはめが兄ぃさんに渡すのですわ~!」
さこちゃんはにこちゃんを引っ張って、レッスン室から急いで出る。
――ぴゅーっ!
「なんや、なんや、慌ただしいやつらやな」
「うん……」