医務室にハトさんをぶち込んだ後、その前でめが兄ぃさんが三角すわりをして待っていた。
「またぁ!? 今日で15回目だよ!」
振り向いて呆れる私を見ても、めが兄ぃさんは顔一つ変えなかった。
「彼の様態は大丈夫ですか」
さすがのあいかも大きなため息をして、意地悪な顔をして。
「それは大丈夫やけど、めが兄ぃさん、あんまりしつこいと流石に警察よぶで?」
「ぐっ、それは困りましたね」
「めが兄ぃさん、どうしてそんなにしつこいの? そんなにこのチケットが怖いなら、無理やりにでも奪えばいいのに……」
「……みやこさん、それはできないのです。私はあくまでシステムの一部……アイドルに手を出すことはできません」
めが兄ぃさんは立ち上がり、めがねをくいっと持ち上げる。
「なるほど、いいでしょう。みやこさん……どうして私がここまでしつこいのか教えましょう」
「え?」
「ここではなんなので……カフェに向かって歩きながらでも」
めが兄ぃさんにプリパラカフェのパフェ無料券を2枚もらって、歩き始める。
「話はそうですね……さかのぼること、約100年前。このプリパラで災害が起きたのです」
「災害? 火山の噴火とか、地震?」
「なんでやねん! システムで管理されてるプリパラで噴火とか地震とか、起きるわけないやん!」
あいかのエセ関西ツッコミが入る。
「その通りです、あいかさん、雨や曇りなどの天気や温度が完全管理されているプリパラでは噴火や地震などの……現実で起こるような地震が起きるはずありません」
「じゃあ、プリパラの災害ってどういうのものなの?」
「簡単に言うと、システムのエラーです。みなさんが普段使うような機械で『フリーズ』、『固まった』などというものがありますよね、ああいったものが現実となって現れるのです」
「????」
「みやこ、全然わかってへんやろ……」
「うっさい! わかるよ! パソコンとか宿題してて突然、電源落ちてパニックった時あるし!?」
「はは……まぁ、そんな感じのものです」
「はじめはほんの少しのことでした、ある一人の女の子がいました。名前は『みつあ』」
みつあ。
その言葉を聞いてあいかがハッとする。
「『みつあ』って、ずっと前に噂で聞いたことがあるわ! みやこ、知らへん?」
「聞いたことないけど……」
あいかが懐中電灯を顎に当て話し始める。
「夜遅くのプリパラで化けて出てくるお化けだとか、プリパラミュージアムのトイレで『みつあさん、でておいで』とか言ったら、プリチケをとられるとかなんとか……」
「お化け!? プリパラにお化けが出るの?」
「はい、その『みつあ』で間違いないです」
「「えぇ!? プリパラにお化けが出たの!?」」
「ノンノン 、お化けではありません。ウイルスです」
「話を進めましょう」
ある時代に、1人の少女がいました。
その少女はプリパラアイドルに憧れ、自分にプリチケが届くその日をずっと待っていました。
しかし、小学生を過ぎ、中学生になっても一向にプリチケは届きそうにもありませんでした。
(中学生になってもプリチケが届かない……私と同じだ)
彼女はずっと待ち続けました。
そして、ある日……待ちきれなくなった彼女は禁忌を犯したのです。
「禁忌?」
「他人のプリチケを奪い…………プリパラデビューしたのです」
「え……?」
もちろん、そのようなこと……想定できない事態でした。
彼女ーー『みつあ』は、他人になりすますことで、アイドルとなったのです。
「そんなん、可能なんか?」
「えぇ。今では不可能に近いですが……当時はセキュリティも甘く、少し知識があればできてしまったのです」
彼女は他人となってプリパラを謳歌します……しかし、彼女の幸せはそう長くは続きません。
プリチケを奪われた女の子の友達が、気づいたのです。
自分の友達の中身が他人だと……。
そして、『みつあ』自身……自分のなりたいアイドル像とはかけ離れているプリパラでの自分の姿……他人のアイドル像に満足していませんでした。
『こんなの! 私がなりたいアイドルじゃない!』
『私の体ー私の声でーデビューしたい!』
っと、自分としてアイドルデビューすることを強く望み始めたのです。
「それで、どうなったの?」
「…………」
彼女は、正体がバレると、また他人になりすまし……自分に近いアイドルのプリチケを求めて、プリチケを奪い続けました。
そのせいで、プリパラアイドル達は誰が『みつあ』なのかわからなくなり……次第に自分の友達が『みつあ』じゃないかと疑い始めました。
「それって」
「そうです、次第にプリパラアイドル達は互いを信じ合うことができないようになってしまいました」
『自分の隣で歌っている女の子は自分の友達ではなくー『みつあ』かもしれない』
「プリパラのシステムに必要な「友達」への気持ち……『みつあ』によって引き起こされる、持ち主が異なるプリチケの使用……それによって、プリパラのシステムは異常なエラーを起こし、異常気象とも言えるような現象が多発したのです」
「それってどうやって解決したの? それに、みつあって女の子は……」
「完全な解決はできませんでした。それほど起きたエラーは凄まじかったのです」
『私は……私は! お前たちプリパラを絶対に許さないぃ……!』
「当時の神アイドル達が力を合わせて、なんとか『みつあ』をプリパラのシステムの奥底に封印することで一時を免れ……復興にも50年以上かかり、今やっと……プリパラは女の子のテーマパークへと本来の姿を取り戻したのです」
『必ず蘇って、この狂った楽園を破壊し……真の楽園を創造してやる……! そして……! お前たち神アイドルの力をてにいれ…アァ……! ああああああぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!』
「…………うそでしょ」
私とあいかがめが兄ぃさんの話を聞いて、何も返せなかった。
私の大好きなプリパラで……そんなことが起きたなんて。
「これが私がみやこさんにしつこく……ミラチケをいただこうとする理由です。怖いのです……システムにないことによって……想定していないことによって起きるエラーが……あの災害のような出来事をまた起きてしまうのが……私は無力でした……ただ、見てるだけで……!」
感情が込みあがりそうになっためが兄ぃさんは息をのんで、呼吸した。
「明日また、みやこさんの方に私から赴きます。その時にいい返事をいただけることを期待しています……」
めが兄ぃさんは立ち去る時、あいかがあることに気づいた。
「なぁ……今、めが兄ぃさん泣いてなかったか?」
「え?」
私たち2人はめが兄ぃさんが立ちさる姿をずっと見ることしかできなかった。