苺鈴 「皆!!」
ブリジット「何があったんですか!?」
緊急アラートを聞きつけ、メインブリッジに集まった二人。しかし、彼女達が最後だったようで他のメンバーはもうメインブリッジに集まっていた。二人にさくらは前方のモニターを指さしながら「見て」と視線を向けさせる。二人の目に映ったのは海上(かいじょう)で残りのジュエルシード5つの内4つの反応があり、それを強引に発動させ、回収しようとしているフェイトとアルフの姿であった。モニター越しではあったが、二人は疲労の色も見えかなり苦戦しているのが見て取れた。
苺鈴 「なのは!!」
なのは「うん!!私、今すぐに!!」
クロノ「その必要はない」
飛び出そうとしたなのはをクロノが止める。理由は「いずれは自滅か回収できても弱っているところを確保する」との事だった。
リンディは苺鈴やなのは達に「残酷に見えるけど、これが私達の仕事で、これが最善なの」と語る。さくらやなのはは「そんな、ひどい!!」と信じていた人達から裏切られた
ような気分になり、小狼やケルベロス・ユーノ・知世は何も言わなかったが険しい顔をし、苺鈴は歯ぎしりをして明らかに不機嫌であった。そんな苺鈴の背後からブリジットは苺鈴に「仕方がないですよ」と話しかけた。
苺鈴 「仕方がないって、どういうことですかブリジットさん?」
ブリジット「組織であろうと、個人であろうと、自分達への被害は最小限に留めたいと思うのは当然ですよ。私がリンディさんの立場にいたとしても恐らく同じようにしていたでしょうしね・・・」
苺鈴 「それは・・・そうかもしれないですけど・・・でも!!相手はなのはと同じ位の小さな女の子ですよ!!こんな残酷な事、許していいんですか!?」
ブリジット「そんな事、私だって許せませんよ!!でも・・・今の私に何ができるって言うんですか?」
ブリジットのやりきれない思いを静かに苺鈴にぶつける。苺鈴も返す言葉が無く、黙ってしまう。そして、モニターのフェイト達・そしてなのはを見つめる。
フェイト達はクロノが言うように自滅するのは時間の問題で、なのはは今すぐにでも飛び出したい。しかし、本当にそれでいいのか?リンディ達の言うように最善を尽くすべきなのか?それを迷っているような顔をしていた。
最後にブリジットを見ると、瞳からは涙が、拳から強く握りすぎて、爪が手のひらに食い込み血が流れているのが見えた。彼女も本当は今すぐに飛んでいきたいのをこらえているのであろう。だが場所は海上・・・空を飛べない彼女ではどう頑張っても助けに行けない。それどころか今飛び出せば今後のフェイト達のための布石(ふせき)が破棄されるかもしれない。自身の見も危ないかもしれない!!そんなどうしようも出来ない自分を情けなく感じていたのであった。
苺鈴 「・・・・・・」
苺鈴にもブリジットの気持ちが痛いほどに共感できた。苺鈴も魔力がないばかりにクロウ・カードの時はほとんど役に立てなく、いまでもさくら達の活躍で自分は特に何もできない状態であったからだ。それで過去に泣いたこともあった・・・
苺鈴は少し考えこみそして、ユーノに近づき小声で尋ねる。「・・・をあそこに転送魔法で送れるか」と・・・ユーノは敢えて小さく頷(うなず)くだけで返事を返し、苺鈴も「そう・・・」とつぶやくと、今度はなのはに近づき耳元で「合図したら行きなさい。」とだけ言い、なのはは「何を言っているの?」と顔に出しているその時にユーノからの念話が入る。
ユーノ「(なのは!!)」
なのは「ぇっ!?」
ユーノ「(なのは行ってあげて!!転送は僕がやるから!!)」
ユーノは念話でなのはにフェイトの下に行くように促(うなが)し、ユーノが印を結ぶ。その後、ユーノの後ろにある扉が光り出す。それに気づいた一同は振り返り、なのはは光る扉に向かって駆け出す。なのはは「命令違反は後でちゃんと謝ります!!」とまずリンディとクロノに謝る。
クロノ「君は!!」
苺鈴 「ふっ!!」
クロノ「がっ!?・・・おい!!」
苺鈴 「行きなさいなのは!!この腹黒執務官は私が抑えるから!!」
なのは「苺鈴ちゃん!?・・・ありがとう!!」
苺鈴 「木之本さん!!小狼もぬいぐるみと一緒に行っ・・・行きなさい命令よ!!」
さくら・小狼・ケルベロスは苺鈴が「行って」ではなく首を振ってわざわざ命令よと言い出した事には少し驚いていたが、すぐになのはの後を追いかける。
3人と一匹が扉に並んだ直後、扉から全員(ぜんいん)消えて目標座標に転移された。
苺鈴 (良し。行ったわね)
知世 (苺鈴ちゃん・・・)
クロノ「ぉぃ・・・」
その頃、転移したのはいいが、フェイト達のいる場所よりも遥(はる)か上空にいるためそのまま落下していたなのは達。しかし、全員全く動じている様子もなかった。ケルベロスは本来の姿であるライオンの姿に変わり、小狼に「乗れ!!小僧!!」とこの中で唯一(ゆいいつ)空を飛べない小狼に自分の背中に乗るように促す。小狼は自分の下に来てくれたケルベロスに飛び乗り、その間にもさくらとなのははそのまま落下を続ける。
さくら「なのはちゃん!!行ける!?」
なのは「はい!!行けます!!苺鈴ちゃんとユーノ君が作ってくれたこのチャンス、無駄にはしません!!」
さくら「うん!!」
なのは「風は空に、星は天に・・・」
さくら「星の力を秘めし鍵よ・・・」
二人は自身の魔法を最大限に発動させるための呪文を唱えていく。呪文の演唱(えんしょう)の最中二人の体を光が包み込み、最後に二人は同時に叫ぶ。
なのは・さくら「レイジングハート!!セッートアッープ!!・レリーズ(封印解除)!!」
苺鈴 「あの子達、間に合ったみたいね。」
クロノ「くっ君達はこんな勝手をして許されると思っているのか!?」
苺鈴 「そんな事どうでもいいのよ!!」
クロノ「何っ!?」
クロノは未だに苺鈴に抑え込まれて床に倒れこんでいた。苺鈴はクロノの体を完全に抑え込んでいたのでクロノは身動き一つ取れずに暴れようとしても無意味に近かった・・・
苺鈴 「なのははこの一月(ひとつき)以上、色んな事を経験してきた!!命がけの事も自分が関わっている事が失敗すればどんな被害に及(およ)んでしまうのかも知っていったわ!!けどね、それでもあの子は私達よりも幼くて、まだ10年も生きていない大人に憧れる歳の子供なのよ!!あのフェイトって子だってそうよ!!それなのに・・・それなのにそんな残酷で憧れと夢を潰す姿をあの子達の前で見せないで!!」
苺鈴は最後の一言をリンディに向けて言い放ち、その言葉を聞いたリンディも依然(いぜん)なのは達の映るモニターを見続ける。リンディが何の反応も見せないのを悪い意味で取ったのかもう一度抗議しようとしたが、リンディは苺鈴に「クロノを放してあげて」と変わらぬ口調で苺鈴に頼み込む。苺鈴は「なのは達を止めに行かせる気?」と聞いてみるが、リンディの回答はこうだった・・・
リンディ「彼女・・・『フェイト・テスタロッサ』とその使い魔である『アルフ』は私達の敵です。それはあなたたちにとってもそう」
苺鈴 「・・・・・・」
リンディ「ですが・・・私達の優先順位はあくまでもロストロギア『ジュエルシード』の封印・回収です。彼女達の確保はその後・・・例え彼女達が暴走したとしてもそれはまだ被害は軽いもので済むでしょう。しかし、ロストロギアはそうじゃない・・・一度暴走を始めたら手に負えないのも事実です。」
苺鈴 「そんな事、私にだってわかるわ!!」
リンディ「だからこそ、今現場に出ていったなのはさん・さくらさん・小狼君・ユーノ君・ケルベロスさんに何とかしてもらいます。あの二人の力も借りてね。そして、こちらの切り札もいつでも出せるように今は準備をしておかなくちゃいけないの・・・」
苺鈴 「・・・・・・」
リンディ「だから、クロノ執務菅を放してあげてください」
苺鈴はリンディの頼みを聞き入れたようで、ゆっくりクロノからどいていく・・・クロノは少しムスッとした顔で苺鈴を見るが、苺鈴はリンディの見ているのと同じモニターに釘付けであった。
現在モニターに映っていた状況は、さくらとユーノがそれぞれの魔法を使いユーノはアルフをさくらは『シールド(盾)』のカードを使いフェイトを守る。アルフは自分達の邪魔をしに来たと勘違いしてユーノ達に飛び掛かろうとするが、ケルベロスが「ちゃうわい!!」と否定した所であった。
ケルベロス「ちゃうわい!!このドアホ!!今そないなこと言うとる場合か!!」
アルフ「何!?」
小狼 「今はお前達が発動させたジュエルシードを止める事の方が先決だ!!違うか!!」
アルフ「・・・・・・」
小狼が言う事は正論であった。だから黙り込んでしまった。正直手助けが欲しかったのは事実であった。
フェイト「あなたは?」
さくら「フェイトちゃんだよね?私はさくら。木之本さくらだよ。」
シールドを解除したさくらがフェイトに近寄り、一応初対面だったのでさくらは自己紹介をして「あの子も来てるよ」と日差しが差し込む方向に指をさす。その先にはバリアジャケットを装着していたなのはがゆっくりと降下していき、フェイトとさくらに近づいていく。降下していく最中、なのははフェイトとどうなりたいのかに気づき二人の前に到達したその時にフェイトに自分の気持ちを伝えた。
なのは「・・・友達に、なりたいんだ。」