迎えたローゼンベルグ騎士養成養成学校二日目。苺鈴は基本的に訓練の時間でしか先生としての仕事はないので、生徒として教室に入室し挨拶を交わした
苺鈴 「おはよう!!」
しかし、苺鈴に挨拶をされた皆は頭に?マークを浮かべたような顔をして、その様子に苺鈴も頭に?マークを浮かべ訳が分からずにいた
知世 「あの苺鈴さん」
苺鈴 「何?」
知世 「苺鈴さんはこの国の挨拶をご存じですか?」
苺鈴 「えっ?普通に『おはよう』・『こんにちは』じゃないの?」
ヴィントラントには風の国ならではの独特の挨拶があった。『いい風』又は『いい風車日和(ふうしゃびより)』と言ってそれがあいさつなのだ。因みにメディアードにも独特の挨拶があり商業都市だけに『いい商売日和(しょうばいびより)』だったりする
苺鈴 「いい風!!」
教えてくれた知世に礼を言い、改めて挨拶をして今度はみんなも挨拶を返してくれた事に安堵し、席に向かおうとしたが、その直後に小狼が入室し苺鈴とばったり出くわす
苺鈴 「ぁっ・・・」
小狼 「・・・・・・」
二人は固まり、数秒の間が流れたが苺鈴から少しぎこちなく「いい風」と挨拶を交わすが、小狼は顔を赤くし、顔を伏せて自身の席に向かい座ってしまう。その反応に苺鈴も「まぁしょうがない」と何とも言えない微妙な気持ちになっていた
苺鈴 (まぁあんなことがあって昨日の今日じゃね?)
そんなこんなで他の時間でも訓練の時間でも小狼はまともに苺鈴の顔を見る事は無く、苺鈴も色々察してか出来るだけ距離は取っていたが、昨日エインから聞いた話をふと思い出すと自然に彼を視界に入れてしまう回数が多くなり、その度に小狼と目が合い小狼は顔を伏せて、苺鈴は「ごめん」と軽くジェスチャーを加えて心の中で謝罪するのであった
苺鈴 「ここか・・・」
いきなり放課後、苺鈴はブリジットと共に図書館に来ていた。中に入り少しの間物色(ぶっしょく)していると、用のあった人物であるプレシアを見つけ出すと図書館である事もあって普段よりは小声で話しかける
苺鈴 「やっぱり研究者だけあって勉強熱心なのね?」
プレシア「・・・・・・」
苺鈴 「てっきりアリシアの事以外には無関心だと思っていたけれど、研究者にとっては別の世界の文献(ぶんけん)ってのは興味をそそられるモノな訳?っていうかあなたって今更だけどこの世界の文字読めるのね?」
余談(よだん)だが苺鈴はメディアードに居た頃からブリジットやルーア・こっちの世界のみらい・リコからもこの世界の文字を教わっていたが、プレシアはそんな様子は皆無(かいむ)であり『本を読む』という事は『文字を読める』という事だ。休み時間の度(たび)にも入りびたるところから何を調べているのかが気になっていたのだ。勿論また何をしでかすか分からないので監視の意味も込めてだが・・・
プレシア「当然よ。『この世界』の技術があればアリシアを生き返らせる事が出来る。そのために私は『この世界』の技術を調べているのだから」
ブリジット「はい?・・・」
苺鈴 「何か引っかかる言い方ね?あなたが行きたかったのは『アルハザード』でしょ?その言い方だとこの世界が『アルハザード』だって言ってるみたいじゃない?」
プレシア「今更何を言っているの?この世界が『アルハザード』なのよ?」
苺鈴 「ぇっ?・・・」
ブリジット「はい?・・・」
苺鈴 「えぇっ~!?ブリジットさんの世界が『アルハザード』!?」
ブリジット「そんなまさか!?私が生まれた世界がだなんて!?いったいどういう事なんですか!?」
プレシア「考えてもみなさい?あなた達も『時の庭園』で戦った『天使』・・・あの技術はどこから来たモノだと思うの?あれはアルハザードの事を調べている時に一緒に見つけた技術だったのよ?」
ブリジット「あぁ~なるほど。それで『時の庭園』に天使がいたんですね?」
苺鈴 「メディアードで倒した天使が「私の管理下に無かった」っていうのはそういう意味だったのね?」
と衝撃なカミングアウトがありつつも2人はプレシアに他に何か動きが無いのを感じ取りその上「今はどうこうするつもりもない」と本人からも馬車の旅には同行する旨(むね)を言われ一先(ひとま)ずは問題は無いであろうと図書館を後にして帰路に就くことにした・・・
ブリジット「あっ?」
苺鈴 「プリーシアさん?・・・何しているのかしら?」
2人は女子寮に帰るために中庭を通ろうとしたが、2人の視界にキザーロフの像の近くでレイピアをふるうプリーシアの姿が映った。単純にここで何をしているのかが気になり声をかけるとレイピアを鞘(さや)に収(おさ)めてプリーシアも苺鈴達に振り返る
苺鈴 「鍛錬(たんれん)ですか?こんなところで?」
プリーシア「あぁ。昔から何となくここでする事が多くてな。ついここに足を運んでしまうのだ」
ブリジット「言われてみれば私が知っている方のプリーシア様も確かにここでよく鍛錬していましたね?」
プリーシア「ほぅ。向こうのわらわもか?世界が違っていてもやっている事は同じという訳か・・・」
苺鈴 「あのプリーシアさんちょっとお願いがあるんですけどいいですか?」
プリーシア「何だ?」
苺鈴 「鍛錬するところ・・・見学してもいいですか?」
プリーシアは「構わない」と許可は出したが「そんなに面白いモノではないぞ?」と付け加えプリーシアは再び鍛錬を始める・・・
プリーシアは「ハァッ!!」と声を上げながらレイピアを突き出し、時には曲切りや避けながら繰り出すような動きも見せる。ただ剣をふるうだけでなく相手を想像しながら打ち込むようだ
苺鈴 「・・・・・・」
そんなプリーシアの鍛錬を見つめていた苺鈴はしばらくすると一区切りついたプリーシアにもう一つ頼みごとをする
プリーシア「わらわと戦うだと?」
苺鈴 「お願いできますか?」
プリーシア「何でまた?」
ブリジット「そうですよ苺鈴さん!?プリーシア様すごく強いんですよ!?無謀ですはい!?」
苺鈴 「だからよ。これから先、どんな事があるかわからないし・・・メディアードの『影の爪』みたいなのとまた戦う事がこの先にあるかもしれないからさ?」
ブリジット「負けますよ?絶対!!」
苺鈴 「そこまで言わなくてもいいじゃない?それに、私の力がどこまで通用するのかも自分の力で確かめたいのよ?私は一騎当千の猛者(もさ)ってわけでもないし・・・」
プリーシア「分かった。そういう事ならば受けてたとう」
苺鈴 「ありがとうございます!!」
ブリジット「あぁぁぁっぁ~~!?・・・」
ブリジットが頭を抱え唸(うな)っているが、二人は特に突っ込まず3人は場所を変えることにし、プリーシアの先導の元、体育館へと場所を移しブリジットを審判として両者は構え、ブリジットの号令を待っていた・・・
ブリジット「それでは準備いいですね?」
苺鈴 「えぇ!!」
プリーシア「よい!!」
ブリジット「では両者・・・始め!!」
苺鈴 「ふんっ!!」
先に苺鈴が飛び出しプリーシアと一気に距離を詰めて足を踏ん張り、バネのように力強く跳ね上がると同時に右正拳突きをプリーシアの下斜めから放っていくがそれを細いレイピアで両手を添えて防ぐ。しかし、サイクロードをつけていない状態の苺鈴のパワーにも関わらずプリーシアは足をつけたままで後ろに下がってしまい、そのパワーにプリーシアも「ほぅ?」と関心の声を上げていた
プリーシア「中々の力だな?正直驚いたぞ?」
苺鈴 「まだまだこれからですよ?」
プリーシア「そうでなくてはな!!」
苺鈴 「っ!?・・・」
プリーシア「はあっ!!」
苺鈴 「ふっ!!」
プリーシアは自身のレイピア『ルビーフラッシュ』を横一閃で振るい、苺鈴はそれを反転ジャンプで距離を取りつつ避け、更にプリーシアの攻撃は続いていく・・・
レイピアの細い剣先から繰り出される3撃を何とか避け、正直ヒア汗もかいているぐらいだが、負けじと反撃に拳を突き出していく
苺鈴 「ふぅぅっ!!・・・ふんっ!!はぁ!!」
プリーシア「ぐぁっ!?っぅ・・・ちぃっ!!」
左→右→左のストレートからの一回転右裏拳更にもう一撃右回転蹴りの連撃でストレートはすべてレイピアで防がれ裏拳はしゃがまれることで回避されるが回し蹴りはプリーシアの右肩に命中しその衝撃でプリーシアは横に吹き飛んでいくが、なんとか踏ん張り転倒することなく立ち直すことが出来、この一撃を入れた攻防は審判をしていたブリジットも唖然としていた
ブリジット「すごいです、はい・・・プリーシア様に一撃入れました」
苺鈴 「このまま押し切る!!」
プリーシア「ふふっ!!はぁ!!」
プリーシアは「ふふっ」と口元が少し緩みその場でジャンプするとキックの体制に移り急降下する
プリーシア「プリズムキィィッーーク!!」
苺鈴 「ぁっ!?・・・ふんっ!!ぐぁっ!?」
プリーシアの放った「プリズムキック」は魔力でも宿(やど)しているのか足にビリビリとした光が備わっていて苺鈴は両腕をクロスして防御するがあっという間に吹き飛ばされはしたがなんとか踏ん張り転倒は防いだが、プリーシアが苺鈴の攻撃を受けた時とは違いプリーシアの方は余裕が感じられる表情をしていた・・・
プリーシアは再び駆け出しレイピアから3撃の突きを放つ・・・それを上半身を左右に動かし2撃はよけきるが、3撃目は右肩をかすめ、かすめた個所を左手で押さえ顔をしかめていた
苺鈴 「っ!?」
プリーシア「グロウラァァ~~ッシュ!!」
プリーシアは得意な必殺技であり、一瞬のうちに10連撃の突きを繰り出す『グロウラッシュ』を放ち、体の端々(はしばし)にかすめ傷がついていく苺鈴・・・
遂には後ろに転倒してしまいプリーシアもその場から高くはないがジャンプして滑空(かっくう)するかのように一気に苺鈴と距離を詰めレイピアを突き出す。その剣先を見つめる苺鈴とその苺鈴を見つめるプリーシア・・・この状態に苺鈴は『詰み』になっていた・・・
ブリジット「そこまでです、はい!!」
プリーシア「ふふっ中々よかったぞ?ほらっ」
挿し出された手を掴み立ち上がる苺鈴。『勝てる』とはあまり思ってはいなかったがそれでも苺鈴も悔しそうにしておりそんな苺鈴の様子を見たプリーシアは一つの助言をする事にした
プリーシア「苺鈴。レイピアを使う者との戦い方を一つ教えてやろう」
苺鈴 「へっ?」
ブリジット「なぁ!?」
突如プリーシアは苺鈴を抱き寄せもう少しで顔と顔が・・・唇と唇が引っ付きそうなそんな距離であった・・・背景と正面にはユリの花が似合いそうだ・・・突然の事に顔を赤らめる苺鈴であったが、数舜後に再びプリーシアが口を開く
プリーシア「・・・相手の懐に踏み込む事。それがレイピアを使う者との戦い方だ」
苺鈴 「へっ?・・・そう・・・なんですか?」
プリーシア「あぁ。懐に飛び込まれてはレイピアでは上手く立ち振る舞えなくなる。よく覚えておくとよい」
苺鈴 「・・・はい!!」
プリーシア「うむ・・・」
苺鈴 「んん~?・・・あの・・・プリーシアさん?」
プリーシア「あぁ!?すまぬ。つい・・・」
プリーシアは苺鈴の垂れている黒髪をなでるように触っていき苺鈴に呼ばれるまで気が付いていなかったかのようであった・・・パッと離してくれて二人は2歩分の距離を開け苺鈴はブリジットを何気なく見てみるとなんだかちょっと不機嫌そうにしているブリジットが苺鈴を見つめていた
苺鈴 「ブリジット・・・さん?」
ブリジット「ぷぅ~・・・」
苺鈴 「どうかした?」
ブリジット「何でもないです、はい・・・」
苺鈴 「あはは・・・ところでプリーシアさんもどうかしたんですか?私の髪に何かついてました?」
プリーシア「いやなに、綺麗な黒髪であったものだから『神楽』の事を思い出しておってな?」
苺鈴 「『神楽』さん?そういえば時の庭園であったあの巫女さんってそんな名前だったわね?」
ブリジット「そういえば神楽さんいませんよね?プリーシア様のそばにいないなんて珍しいですね?」
プリーシア「そういえばおぬし達も元の世界とやらで顔見知りなのであったな?実は今『和の国』に帰っているのだ」
神楽は基本プリーシアのそばにいる事が多い。任務でプリーシアの護衛のために『和の国』から派遣されているためであるが、途中からもうほとんど『友達』として普通にそばにいる方が大きくなっており、護衛はあくまで戦時中の話・・・色々な事の後処理も終わり任務も一段落したため報告等のため『和の国』で所属している組織に帰ってしまったのだ
プリーシア「ヴィントラントにはあまり黒髪の者がおらぬからおぬしを見ているとつい神楽を思い出してな?」
苺鈴 「そういう事でしたか・・・」
プリーシア「まぁ全然似てはおらんがな?」
苺鈴 「なぁ~んだ?」
3人は軽く笑い合い、プリーシアもこの場を後にしていきその後ろ姿に向かって苺鈴は「ありがとうございました!!」と深くお辞儀をしてプリーシアが見えなくなった頃に苺鈴も「行きましょうか?」とブリジットに声をかけるが、まだちょっと不機嫌そうに軽くそっぽを向かれていた
ブリジット「ぷぅ~・・・」
苺鈴 「ブリジットさん?」
ブリジット「ぷぅぅっ~~!!・・・」
苺鈴 「そんなあからさまに頬を膨らませないでくださいよ!?そんな事する歳ですか!?」
ブリジット「大きなお世話ですよ!!・・・なんですかもう、プリーシア様にあんな風にドキッ!っとしちゃっても~・・・」
苺鈴 「・・・・・・」
小声で不満を漏らしていたブリジット・・・どうやらヤキモチだったらしい。小声がばっちり聞こえていた苺鈴はゆっくりと歩み寄り、腕を組み・頬を赤くしながらまだちょっとだけ苺鈴にそっぽ向いているブリジットの両肩を掴み、自身のつま先を伸ばしてちょっとだけ身長を伸ばすと「チュッ!!」と音を立てながら唇をブリジットの頬に当てゆっくりとブリジットから2~3歩分距離を開け両腕を後ろで組みながら上目遣いでブリジットを見つめており、ブリジットも唇が当たった個所を手で押さえながら苺鈴を見つめていた・・・
ブリジット「ななななっ!?・・・」
苺鈴 「これで許してくれる?」
ブリジット「許すも何も私は別に!?・・・」
苺鈴 「ぷっ!!あっはは!!ヤキモチ焼いてくれてたくせに?ブリジットさんってばかわいい」
ブリジット「んんっもうっ!!」
苺鈴 「あはははは!!」
こんなやり取りをしながら二人は追いかけっこのように走ったり時々歩いたりして女子寮へと帰っていくのであった・・・・・・
苺鈴 「綺麗な所ねぇ~!!・・・」
ブリジット「隠れた名所なんですよここ。私もたまに来てたんですよ」
翌日の放課後、二人はやる事も終わり寮に帰る前にブリジットが「寄りたい所がある」と苺鈴も誘ってその場所へと訪れていた。その場所とは二日前に小狼とさくらが訪れていた泉であり二人は泉の景色を堪能していたところに何処からか掛け声のような声が聞こえ咄嗟に伏せ身を隠すとすぐ近くで小狼が何らかの動きをしているようであった・・・
ブリジット「何しているんでしょうか?」
苺鈴 「あれ・・・私が授業で教えている拳法の動きだわ?」
小狼の動きは苺鈴が授業で教えている護身術であり、ひたすら左右で正拳突きを繰り返していた・・・少しの間その様子を見ていたが苺鈴はジェスチャーで「帰りましょう」とブリジットに伝え足音を立てないようにゆっくりとその場を後にする・・・
苺鈴 「ここまで離れればもう声を出してもいいでしょう?」
ブリジット「何で声掛けなかったんですか?一応先生なんですし教えてあげればいいのに?・・・」
苺鈴 「ん~・・・多分今は無理でしょうねぇ~・・・」
ブリジット「何で?」
苺鈴 「まぁ・・・私は大丈夫なんですけど、小狼の方が多分顔を合わせずらいからだと思う・・・」
ブリジット「それはまた何で?」
苺鈴 「まぁ・・・色々あったのよ。色々・・・」
ブリジット「はぁ?・・・」
苺鈴 「あっ!!ところでブリジットさん明日のお休み何ですけど、王都に行くんで」
ブリジット「『王都』にですか?御一人で?」
苺鈴 「ううん。さくら達に誘われて何ですよ。折角だからちょっと観光したいかなぁ~って思って?ブリジットさんも来る?」
ブリジット「あぁ~私はちょっと他に用事があるので、折角ですけど・・・」
苺鈴 「そう・・・」
翌日苺鈴は王都の噴水前にて待ち合わせであったためブリジットの先導の元やってきてすでにさくら達も来ており二人が最後のようであった
苺鈴 「ごめん!!お待たせ!」
最後になり、待たせた事に対して一言謝ってから一同は早速王都『フリーデン』を満喫(まんきつ)するために移動を開始するのであった・・・
プリーシア「次回26話『騎士達の学園(はなぞの)「後編」』輝け、心のプリズム」
フェル「そしてそして~~!!はぁ~いみなさ~~ん!!次回はいよいよフェルちゃんの出番ですよぉ~!!」
神楽 「私も・・・出番・・・」
フェル「こうご期待!!」
神楽 「続く~・・・」
プリーシア「それ、わらわ達のドラマCDネタか?・・・」