因みに予定ではこの話を含めて残り4~5話くらいで一度完結する予定です。
苺鈴 「とまぁローゼンベルグ騎士養成学校じゃそんな事があった訳」
さくら「私達もいたんだ!?」
知世 「そちらの世界のさくらちゃんも、超絶かわいかったのでしょうねぇ~見て見たかったですわ~!!」
苺鈴 「3人共あの学校の制服似合ってたわよ?」
華凛 「ふ~む・・・」
プリーシア「ん?どかしましたか教官?」
華凛 「いや・・・別の世界の拙者は一月も迷うほどの方向音痴だったとは・・・それで軽くショックを受けていた」
プリーシア「あぁなるほど」
なのは「それでサブルムに着いた後はどうなったの?」
苺鈴 「その後はね?・・・」
???「ぜぇ~ぜぇ~ぜぇ~・・・」
天気は雲一つない晴れ。直射日光がまぶしくそして暑い・・・・・・
場所は砂漠の中、ボロボロの身なりにボロボロのマントフードを被った人物が息を切らしながら砂に足を取られそのまま砂漠の上に倒れる。「もう死ぬのか・・・」そんな風に思っていた矢先で何か建物がぼやけて見えた・・・「蜃気楼かもしれない」と正常な状態であれば判断できたであろうが、その人物はそんな事を知らないし、それ以前にそんな事を言っていられない。残りの力を振り絞って再び歩き出す。
視線の先にある元『サブルム帝国』へと・・・・・・
苺鈴 「意外と賑やかな所なのね?」
ブリジット「なんだか私が居たサブルムよりも栄えているような気がするです、はい」
苺鈴達は輸送の馬車に揺られ遂に『サブルム帝国』改め『サブルム共和国』へとたどり着き、馬車を降りたところであった。
地球で言えばエジプトに近い雰囲気であり、ブリジットの知るサブルムより心無しか栄えているような活気も見えていたらしい・・・
ルーア「プリーシアさんが言っていましたけど、今は両国共、お互いに歩み寄って助け合おうと支援しているそうですから。ヴィントラントからは物資を、サブルムからは『天使』という労力を送り合っているそうです」
苺鈴 「あぁそういえばそんな事言ってたっけ?」
ハヤウェイ「それじゃあリッテ先生の所に行こうか?」
ブリジット「あっ!!すみません私ちょっと寄りたい所があるんですけどいいですか?」
寄り道発言に思わず行き先を聞くと、挨拶に行きたい人物がいるそうですぐに済むという話で1人別行動をとる事となった
ルーア「場所分るんですか?」
ブリジット「大丈夫です、はい!!一応サブルム出身なんですよ!!例の場所もちゃんと聞いていますから問題ないですよ!!」
そんな会話の中、人混みにブリジットの姿は消えていき、一同はリッテのいるはずのウームの遺跡へと再び足を進めようとしたがその直後、苺鈴にぶつかる一人の人物がいた。「すみません」とつい反射的に苺鈴は謝ったが、ぶつかった男は特に何も無しでその場を離れていく。その態度に少しイラっとしながら「ぶつかっといて~」とつぶやいていた
苺鈴 「・・・ん?・・・あれ!?無い!?」
つぶやいた直後ポーチから発電機が落ち、元のポーチに戻そうとしたが、ポーチの膨らみ方に違和感を覚えた。中を見て体のあちこちを急に触り出すとスマフォが無くなっていることに気付き「何処で落としたんだろう」と必死で思い出そうとするが、ブリジットと別れる直前までは確実に持っていた。ブリジットの『寄り道』発言の時、ポケットに仕舞い直したのだから。しかも発電機を仕舞っているのと同じポーチに・・・
落としたのであれば意外と大きい音もするし、場所も多少の砂はあるが石畳のようにもなっているので音が消え切るとも考えづらい。周りの音も意外に大きくない位だ。となると何処に?・・・
ふと咄嗟に起こった事を思い出した。さっき人とぶつかった事だ。今にしてみればやけに速足で、顔を決して見せようとしないような素振りも見えた・・・
苺鈴 「まさか引ったくり!?」
ルーア「あっ!?苺鈴さん!!」
ハヤウェイ「何処行くのぉ~!?」
ハヤウェイ達の声が耳に入っていないかのように苺鈴はぶつかった男が消えた方向へ走っていく。
すぐに追いつけたのが幸いしたのか、男をすぐに見つけ脇道へと入っていくのが見えてすぐにそこに入るなり「待ちなさい!!」と呼びかけると男は振り返った
苺鈴 「逃がさないわよ!!私から盗んだスマフォ返して!!」
男はそのまま逃げようとしたが、その男の進行方向に、そして苺鈴の前後に数名の男達が取り囲む。追いかけた男もびくついており、仲間という風には見えなかった・・・
男達の間から一人の刺青からピアスやらをしている怖そうな雰囲気の女性が不敵な笑みを浮かべながらやってくる
集団男A「姉さんこいつ『あの娘』じゃねぇすか?」
女性 「あん?そういやそうだね?よぉ~しこいつは絶対に捕まえな!!そっちの男も逃がすんじゃないよ!!」
女性の命令で手下と思わしき男達は苺鈴とスリの男を襲い始める。スリの男はあっさり捕まってしまったが、苺鈴はそうはいかなかった
苺鈴 「よっ!!・・・はあっ!!」
飛びつきそうになった男の背を踏み台にしていなし、跳んだ先にいた男に向かって空中で体を回転させて蹴りを放ったりして確実に技を決めていなし続けている・・・
その様子に周りの男達は苺鈴の強さに動揺を見せていた
男A 「あいつ強ぇ~!?・・・」
女性 「びびってんじゃないよ!!王族のもんなら護身術ぐらい身に着けててもおかしくないよ!!」
「にしちゃ強すぎませんか!?」と弱腰になっている男Aを怒鳴りつけ、「一斉にかかれ」と指示を出すと全員で苺鈴を取り囲み一斉に飛びかかろうと一歩足を出した直後、周辺から白い煙が出て全員がせき込んでいき、視界を奪う。その最中どさっ!!どさっ!!と何かが地にぶつかる音が響き、煙が晴れるとリーダーである女性と苺鈴しか立っていなかった・・・
女性が動揺していた隙にフードマントで全身を包んだ何者かが女性の背後に着地して首筋に細い針を差し込むと女性もどさっ!!と倒れこみ動きを止める。
苺鈴は咄嗟に構えるが相手はお構いなしにゆっくりと近づいて来るのだった・・・
苺鈴 「・・・・・・」
フードマント「どうしたんですか?私ですよ?」
そう言ってフードを後頭部に取ると、正体は苺鈴のよく知っている顔であった・・・
苺鈴 「ブリジットさん!?」
ブリジット「・・・はい?」
苺鈴 「流石ですけど・・・まさか殺した訳じゃ・・・」
ブリジット「そうそうそんな事はもうしません。もう戦争中ではないのですから・・・ちょっとしびれ薬を塗った針をチクッとしただけで」
苺鈴「そう。だったらよかった」
ブリジット「あの、ところで・・・・・・」
苺鈴 「ん?・・・」
ブリジット「何故、私の偽名を知っているのですか?私話した覚えはないはずですが?」
苺鈴 「・・・はっ?・・・」
同じ頃、場所は変わり墓地にて苺鈴達と別れたブリジットはここへ訪れていた。元の世界で仕えこの世界ではいや正確にはブリジットが知らないだけ元の世界の方でももう死亡した人物の墓参りに来たのであった。戦争が終わってヴィントラントが勝利しているという事はとうに聞いていたのでこっちの元サブルム王『ゲロート・ポイオス』も死亡している事も込みで知ったのだ。
事前に墓の場所を調べ王族だったにも関わらず平民の墓と同じ所に建てられていたので少し探すのに手間取ってしまったが無事探し出す事は出来たのだが、たどり着くとすでに先客がいたようであった・・・
ブリジットはその人物に「こんにちは」と声をかけ同じ人の墓参りに来た人物に若干興味が湧き、声を掛けられた人物もブリジットの方へと振り返ると意外な人物というか「何でいるの!?」
と言える人物がそこにいた・・・
ブリジット「あれ?苺鈴さんいつの間に?と言いますか何でここが分かったんですか?」
苺鈴 「分かったも何も、よく一緒にお墓参りに来てたじゃない『セリマ』?」
ブリジット「・・・はい?・・・」
ハヤウェイ「とりあえず宮殿に来たのはいいものの・・・」
ルーア「来ていないみたいですね?」
プレシア「全く・・・困った者ね・・・」
一言言ってから離れたブリジットはともかく、いきなり別行動を取ってしまった苺鈴はすぐに探したが見つからず、完全に人混みにまぎれて分からなくなってしまい、とりあえず何かあった時のためにあらかじめ集合場所はサブルム宮殿の前と決めていたのでそこに向かってみたがやっぱりまだ苺鈴もブリジットも来ておらず「どうしたものか?」と悩んでいたが、少し離れたところから「おぉ~い!!」と叫ぶ苺鈴の声が聞こえて来たのでその方向を見てみるとブリジットを引っ張りながらハヤウェイ達へと向かってくる苺鈴の姿が見えた
ハヤウェイ「探したよもぉ~!!」
ルーア「今までどちらに?」
苺鈴 「ごめんなさい。スリにあってたみたいで、何とか無事に取り戻せました」
スリに遭い、ゴロツキに絡まれた最中にブリジットと合流した事を説明したのだが、ハヤウェイ達もブリジットの様子が少しおかしい気はしたが、ひとまず合流もしたので宮殿の中にある通路から『ウーム』へと入る事となった・・・
流石に元々秘密の通路だったので入り口は目立たないようにひっそりとした場所にあったが今では普通に解放されている状態であった。もちろん警備兵はいたが・・・
苺鈴 「宮殿の中にこんな場所があるなんて?・・・」
ハヤウェイ「俺も初めて来た時はそんな風に思ったっけ?」
かつてサブルム帝国との戦争が終結して一週間が過ぎた頃・・・当時はまだ行方不明となっていた『プリンセア王妃』を捜索するために訪れた通路でありこの先に『ウーム』と呼ばれる遺跡があり、その『ウーム』こそが『天使』の製造工場でもあったのだ。戦争が終わり本当の敵であった『三賢者』・『ジュダス』もすべて倒れた事により調査団が両国から派遣されそこに色んな方面に顔が広く、何より『ウーム』に詳しい人物という意味でもリッテが呼ばれたという訳である。
通路を抜けるとそこには広い空間が存在し、そこには大小様々なカプセルも沢山あり同時に白衣を着た研究員らしき者達が大勢何か作業をしているようでこの中に探し人の『リッテ』がいるはずである・・・そう思っていた矢先、ハヤウェイとルーアの名を呼びながら近寄ってくる人物がいたがハヤウェイとルーアはその声の主を知っていたので、その名前を呼び返した
ハヤウェイ・ルーア「リッテ先生!!」
リッテ「二人共お久しぶりです!!」
ハヤウェイ「リッテ先生の方こそお元気そうで?」
リッテ「私の方は相変わらず、研究に没頭って感じですね?ところでどうしてまたここに?」
ルーア「実はリッテ先生の力を貸してほしい人達がいるんです」
ルーアの言葉の後に一歩前に進んだ苺鈴とプレシアを手で指しながら詳しい事情を説明すると『別の世界』という単語にやっぱり半信半疑の反応をされたが、プリーシアやキザーロフの時と同様ハヤウェイとルーアの人となりを見てきたリッテだからこそハヤウェイとルーアの言葉を信じ、出来る限りの事は手伝う事を約束してくれたのでとりあえず安堵の表情を見せる苺鈴とハヤウェイ・ルーアであったが、ブリジットの様子がどうにもおかしかった・・・
ブリジット「『メイリン』様。本当なんですか?その『別の世界』というのは?」
苺鈴 「はぁっ?今更何言ってるのよ?ブリジットさん?それに何でいきなり『様』付けなのよ?」
ブリジット「『今更』?それに『いきなり』って、あなたの言葉ですからもちろん信じたい処ですが、流石に突拍子も無いと言いますか何と言いますか・・・」
苺鈴 「本当にどうしちゃったの?」
ルーア「ブリジットさん、どうしたんでしょうか?」
ハヤウェイ「さぁ?」
リッテ「あぁそれは多分、ハヤウェイ君達の話が本当の事でしたら辻褄(つじつま)が合いますね?」
ハヤウェイ「どういうことですか?」
リッテ「う~ん・・・説明するよりも証拠を見た方が早いかもですね?ほらっ丁度来たみたいですし?」
ハヤウェイ「んっ?」
リッテの指さす方は、この遺跡に入ってきた入り口の方であり、そこから更に遺跡に入ってくる人物達が二人いた・・・それはココにもいる人物達であった
後からやってきた方のブリジット「あっ!?みなさ~ん!!遅れてすいません!!」
ブリジットに引っ張られながらやってくる苺鈴「『セリマ』そんなに強く引っ張らないで!?」
先に来ていた方の苺鈴・ブリジット「ん?・・・」
後から来た方のブリジット・苺鈴「えっ?・・・」
二人の苺鈴「私が・・・二人!?」
二人のブリジット「私達が二人!?」
ルーア「えぇ!?」
ハヤウェイ「二人が!?『二人』!?」
リッテ「つまりですね?ここに先に来ていた方の苺鈴ちゃんが『別の世界』の苺鈴ちゃんで、セリマちゃんがここに元々いた方のセリマちゃん。あっちにいる方のセリマちゃんが『別の世界』から来た方のセリマちゃんで、もう一人いる方の苺鈴ちゃんが元々ここにいる方の苺鈴ちゃんという訳何ですね?」
別世界苺鈴「じゃあさっきから私の横にいる方のブリジットさんの様子がおかしかったのは・・・」
元々いた方のブリジット「あなたの知っている私では無かったからだった訳ですね?はい。それで会話が噛み合わないと思いましたよ?」
別世界ブリジット「という事はこっちの苺鈴さんは・・・」
元々いた方の苺鈴「元々この国に住んでいる方の『メイリン』なんです」
別世界ブリジット「ありゃ~!?それは失礼しましたです、はい!?」
元々いた方の苺鈴「いいのよ。分かってもらえれば?ふふっそれにしても、世界が違ってもその口癖は変わらないのね?」
別世界ブリジット「はい?」
元々いた方の苺鈴「なんとか『です、はい!!』の口癖?私の知っている方のセリマもよく語尾に付くのよ?」
別世界ブリジット「私って、そんな口癖あったんですか?」
別世界苺鈴「気付いてなかったの?」
別世界ブリジット「はい!!」
元々いた方のブリジット「同じく!!」
別世界ブリジット「ところで苺鈴さん?」
別世界苺鈴「一旦ストォォ~プ!!」
ブリジット二人・元々いた方の苺鈴「へっ?」
別世界苺鈴「このままじゃ名前がややこしくて付いていけなくなるわ!?ちょっと呼び方変えましょう!!」
別世界ブリジット「どう変えるんですか?」
苺鈴 「別の世界からやってきた私は漢字書きの『苺鈴』そのままで、私と一緒に来た方のブリジットさんをそのまま『ブリジット』として、元々こっちにいた私は・・・本名何だっけ?」
メイリン「『メイリン』と言います」
セリマ「私は職業柄本当は明かしてはまずいんですけど『セリマ』が本名です」
ブリジット「あっ!?因みに私も本名は『セリマ』と言いますです、はい」
苺鈴 「今それ言うとこんがらがっちゃうから止めて!!こほんっ・・・それじゃあこっちの私はカタカナ書きで『メイリン』。こっちのブリジットさんは『セリマ』という事で呼び合う事にしましょう」
ブリジット「あの苺鈴さん?それですと結局どっちも『めいりん』ですよね?」
苺鈴 「いいの!!読者が分かれば!!」
ブリジット「それ言っちゃダメな奴ですよ!?」
???・???「博士ぇぇぇ~~!!」
突如遺跡の中で子供二人の声が響き、その言葉にいち早く反応したのはリッテであった。しかし、リッテが呼んだ名前にいち早く反応したのはプレシアであった
リッテ「あっ!!パルティちゃん!!『アリシア』ちゃん!!」
プレシア「えっ!?アリシア?・・・」
パルティ「博士!!これ見てでし!!」
アリシア「二人で見つけたの!!これって何かの化石とかかな?」
リッテ「どれどれ・・・残念。これはただの石ですね?」
パルティ「何だぁ」
アリシア「つまんなぁ~い!!ぷぅっ~・・・」
プレシア「『アリシア』なの?」
アリシア「へっ?」
プレシア「あなた・・・本当にアリシアなの?・・・」
アリシア「ん?・・・あっ!!お母さん!!」
プレシア「アリシア?・・・」
プレシア「お母さぁぁ~ん!!」
アリシアはプレシアに抱き着き、プレシアは突然の事に戸惑っている。咄嗟に両膝をついてアリシアの目線に出来るだけ合わせていたため、アリシアは自身の手をプレシアの顔にタッチする事が出来たが、アリシアが咄嗟に出た手はかつて『ドリーム』・『リターン』のカードを使って過去に飛んだ際に見たアリシアと同じ聞き手『左手』であった。このことからプレシアは咄嗟に感じる事が出来た。『この子は間違いなくアリシアである』と・・・それが分かると同時にプレシアはアリシアを涙ぐみながら抱きしめ、アリシアは若干苦しそうにしていた
苺鈴 「どういう事なの?何で死んだはずのアリシアが生きてるの?」
ブリジット「というかリッテ先生の事を博士って呼んでいましたが、リッテ先生は彼女の事をご存じだったんですか!?」
ハヤウェイ「ちょっと待って!!それを言ったらそこの『パルティ』ももう死んだはずなのに何でここに!?」
ブリジット「それ本当なんですか!?」
ハヤウェイ「あぁ!!俺やプリーシア達が暴走した『ある天使』を止めるために倒したらその中からそこのパルティが遺体になって現れて・・・」
パルティ「何でしか?ハヤウェイはパルティが生きていて文句があるでしか?」
ハヤウェイ「いやいや違うから!?俺もお前が生きてくれててよかったって本当に思ってるから!!」
パルティ「ホントでしか?」
ハヤウェイ「本当!!本当!!」
パルティ「・・・ならいいでし」
ハヤウェイ「ほっ」
ルーア「でもどうしてその子がここにいるんですか?」
リッテ「それはですね?パルティちゃんの場合はあれからすぐにテレサさんがあの子の遺体を運んでくれたのが幸いでして、すぐに治療できたからなんですよ。まぁそれ以外にも『運』が良かったとも言えた訳ですが・・・」
苺鈴 「じゃあアリシアは!?」
リッテ「あの子の場合ですと遺体の保存状態がよかったんですよ。脳死に近い状態で、遺体が早い段階で腐敗しないように完璧な処置を施していたため奇跡的に意識を取り戻したんです。ただ、それにはある物を体内に注入する事が必要でしたが・・・」
苺鈴 「『ある物』って?」
リッテ「『天使の因子』ですよ?あれは使いようによっては、細胞をすさまじく進化させる事も出来ますから」
苺鈴 「『天使の因子』・・・」
ブリジット「そんな物を体内に注入して大丈夫なんですか?」
リッテ「『絶対に』とは言えません。なにしろこういった治療に使うデータが不足していますから」
苺鈴 「良く言えば『最後の望み』・悪く言えば『実験』って訳ですか?」
ブリジット「ちょっと苺鈴さん!?」
苺鈴 「事実でしょ?どんなに取り繕っても?」
ブリジット「そうかもしれませんけど」
リッテ「いいんです。その子の言う事は間違っていませんから。元々脳死に近い状態でしたから実際私も、半分それぐらいの気持ちも持っていました。今回は結果が良かったからに過ぎません」
ブリジット「・・・・・・」
リッテ「ところでアリシアちゃんの遺体を保存していたのってもしかして・・・」
ブリジット「プレシアさんです、はい・・・」
リッテ「やはり・・・あっ!?そういえば私も苺鈴ちゃんとブリジットちゃんに聞きたい事があります」
ブリジット「何ですか?」
リッテ「この石がなんなのか知っていますか?」
リッテが懐から取り出し、手の平を広げて見せたのはジュエルシードであった。これを見た二人は目を大きく開き、何故この石をリッテが持っているのかを尋ねると、どうやらアリシアのカプセルと共にこの世界に流れ着いたようだ。詳しく聞くと、『時の庭園』で発動させた後、行方不明となった数がすべてここにあるらしく、アリシアの事と並行して調べていたようだ。リッテが何故苺鈴達に尋ねたかと言うと、アリシアの事を知っていたから、もしかしたら一緒に見つかった正体不明のプリズム(魔法石)の事も何か知っているかもしれないとダメ元で聞いてみたのだ。そしてジュエルシードの危険性の事も・・・
リッテ「そんな危険なプリズムだったとは・・・分かりました。一先ずこのプリズムいえジュエルシードは厳重に保管しましょう」
ブリジット「よろしくお願いしますです、はい」
アリシア「お母さん苦しいぃよ!?」
プレシア「今までごめんなさいアリシア・・・これからはずっと一緒よ?これからは家族『3人』で、静かに・・・」
アリシア「『3人』?私・・・お母さん・・・後は・・・リニスの事?」
プレシア「何を言っているの?リニスはもう寿命で死んだのよ?私とアリシアと・・・アリシアと?・・・3・・・人?・・・」
アリシア「お母さん?・・・」
プレシア「私・・・今『3人』って?・・・3人目・・・」
ふと口にした『3人』という言葉・・・それが誰の事なのか考えてみると、ある人物の事が急に頭の中で何度も再生されていき、それは心なしかアリシアとの時間よりも思い出す事が多かったような気がして、最後に聞いたその人物の言葉がまた脳内再生されていった
回想のフェイト「あなたにとっては私は只(ただ)の人形でしかないのかもしれません。それでも・・・私にとってあなたは私を育ててくれたたった一人の母さんで、そしてあなたの娘である事を誇りに思っています。これは私の・・・フェイト・テスタロッサの嘘偽りない気持ちです」
プレシア「あっ・・・そうか・・・私・・・アリシアの願いを叶えようとしてただけだったのね?・・・」
アリシア・フェイトの言葉を思い出したプレシアは自分がやってきたフェイトへの仕打ちがどれほどの行為だったのかをようやく理解したと同時に狂ってしまったかのように天井を向きながら笑い始めた。
その様子はアリシアも後ずさってしまい、一同もその様子にただ唖然としていて、プレシアも笑い方が徐々に変わっていき、狂ったかのように笑っていたかと思えば悲しみ悔しさの篭(こも)ったような泣き方になっていた・・・
アリシア「おっお母さん?・・・」
ルーア「大丈夫ですか?」
あまりにも心配になったのでルーアが声をかけると同時にプレシアは咳き込み、遂には気を失い倒れこんでしまったのであった・・・・・・
プレシア「何か欲しい物ってあるの?」
アリシア「う~~んとねぇ~・・・」
数年前。アリシアがまだ生きて居た頃、プレシアとアリシアはピクニックに来ていたようだ。アリシアはもうすぐ誕生日。何かプレゼントを用意したくて直接聞いた訳だが正直色んな意味で難しい要望であった
アリシア「私ね?『妹』がほしい!!」
アリシアの要望に思わず赤面してしまうプレシア。シングルマザーであるプレシアには正直色んな意味で難しく、そもそも都合に合わせて用意できる『物』いや『者』でもないのだ。
とはいえ折角のお願い・・・出来れば叶えたい一心でようやく用意できたアリシアの待望の妹『フェイト』を養子として迎え入れる事が出来た
プレシア「アリシアちょっといらっしゃい」
アリシア「何~?」
プレシア「紹介したい子がいるの。この子よ」
アリシア「・・・・・・何処にいるの?」
プレシア「えっ?」
アリシアの言葉につられて自分の右手で握って連れてきたはずのフェイトの姿が見えず、辺りを見渡すが見つからなかった。
ふと振り返ると何もない地平線だけの世界に1つの扉があり、ドアノブを回してその先に入るとバリアジャケットを着たフェイトがプレシア達に背を向ける形で横たわっているのが見え「起きなさい」とプレシアはフェイトの体を揺さぶるが反応がない・・・もう一度フェイトの名を呼びながら体を揺らすと、反動でプレシアの方へと顔が向きその顔を見た時、背筋が凍り付く感覚に襲われるのだった・・・
プレシア「フェイト!?その傷は何!?」
フェイトの後姿は綺麗であったが正面はひどかった・・・バリアジャケットもボロボロで、頭部も体も血だらけで、かろうじて息がある程度であった・・・
動揺していたプレシアの前には別の人物がフェイトとプレシアを見つめながら立っておりその人物を見るとまた訳が分からないでいた
プレシア「『私』?・・・」
目の前にいたのはバリアジャケットを着ていたプレシアであり、フェイトを見る目はとても冷たく、フェイトに触れているプレシアには目もくれていないようであった・・・
魔法を発動させフェイトの体を宙に縛り付け動かないようにしていた
プレシア「待ちなさい!!何を!?」
バリアジャケットのプレシアは無言のまま鞭を取り出しフェイトに向かって何発もぶつけていた。その光景にプレシアは吐き気を覚えるぐらいであった・・・
何故なら鞭で叩かれるたびに腕が、脚が、腹部がそして頭部の肉がそがれ、血管もむき出しになり、骨まで露出しているところまでであった・・・
それはプレシアが「やめて!!」と泣き叫びながら懇願したが続いた。何故プレシアはバリアジャケットのプレシアを止めないのか?いや止められなかった・・・バリアジャケットのプレシアが現れてから急に体が固定されたかのように動かなくなってしまったのだ。懸命に動かそうとするが、全く動かない。まばたきすらできずせいぜい眼球を動かすのがやっとだった・・・
とうとう両腕が半分の長さとなり手首への拘束だったためか体が正面に向かってバタンと倒れこむ。こうなってはもう息もない・・・『死んだ』と診て間違いないであろう・・・
そしてバリアジャケットのプレシアはどこかへと移動していく。それはプレシアの後ろにいたアリシアのいる方であった
プレシア「待って!!その子に何をする気!?」
バリアジャケットのプレシアはゆっくりとアリシアへと歩み寄り、アリシアは恐怖のあまり動けないような様子であった。アリシアに向けてバリアジャケットのプレシアは鞭を構え、フェイト同様に何発も振り放ちアリシアの体にもフェイトのように無数の深い傷が出来、この世界にアリシアの悲痛の叫び声だけが響いていく・・・とうとうアリシアの体も手足が胴体から離れ離れになってしまい息絶える寸前であった。そしてようやく動けるようになったプレシアはアリシアに駆け寄り首と胴体だけとなったアリシアの体を抱き起しアリシアの名前を叫びながら呼びかけるが、アリシアの目はもう死んでいてたにも関わらず、頭が怪我の具合に似合わないほど早く動きプレシアの方へと動き、まるでロボットのような片言(かたこと)で喋り出すのであった
アリシア「ひどいよお母さん・・・私を・・・『殺し』ちゃうなんて?・・・」
プレシア「アリシア?・・・何を言っているの?やったのは私じゃ!?んっ!?」
プレシアのスカートを引っ張る存在がいたようで、気づいたプレシアがそちらに視線を向けると死んだはずのフェイトとバラバラにされたはずのフェイトの腕がそこにあり、その腕がプレシアのスカートを引っ張っていたようだ。そしてフェイトも口を開き、喋り出した
プレシア「フェイト?・・・」
フェイト「殺(や)ったのは『母さん』だよ?」
プレシア「違う!!殺したのは私じゃない!!全部あの女が!!・・・」
アリシア「違わないよ?私を一人ぼっちのまま殺したのも・・・」
フェイト「そばにいたのに、そばにいてくれないまま私を傷つけて殺したのも・・・」
アリシア・フェイト「全部・・・どっちのお母さんがやった事なんだよ?」・「全部・・・どっちの母さんがやった事なんだよ?」
それだけ言うとフェイトとアリシアの目は眼球が飛び出しそうな勢いで開き、充血何て生ぬるいと思えるほど真っ赤に染まり、本当に血が涙として流れていると言っても過言ではないほどの状態となり、二人の死体はプレシアをしっかりと掴み、そのままプレシアごと地面に飲み込まれていき、その下は黒い渦巻が徐々に3人の体をどこか深い闇へといざなうかのように開いていく。抵抗を試みるプレシアだが、全く力が出ずそのまま悲鳴を上げながら飲み込まれていき、完全に飲み込まれた先には首の無いフェイトだったり、頭皮が斜め45°に削(そ)がれ血管がむき出しの血まみれになったアリシアや目が真っ黒に染まり、薄ら笑いを浮かべながら口からムカデのような虫を何匹も何匹も剥いでてくるのを気にも留めずただ立っているフェイト・全身灰色のようになり、思いっきり猫背になって包丁のような物を持ちながらケラケラと笑うアリシアと他にも多種多彩のもはや異質としか言えないフェイトとアリシアの形をした『何か』がうようよしており、プレシアはそれらに囲まれ、取り押さえられてしまい、最後には・・・・・・
何発もの肉を切り裂く音が響き渡り、周辺に肉片と血しぶきが散らかるのであった・・・・・・
リッテ「プレシアさん!?」
部屋にリッテの声が響く。プレシアは目を覚まし視界には白い天井が見え、そばにはリッテがいた。どうやら様子を見に来ていた時にプレシアがホラーな夢を見ていた事でうなされていたのを心配して呼びかけていたようだ
プレシア「酷い夢を見たわ・・・」
リッテ「一体どんな?」
プレシア「自業自得な夢よ・・・あれが・・・私の起こした罪への、あの子達の気持ちなんでしょうね?・・・・・・私はどれぐらい寝ていたの?」
リッテ「あれからもう数日は経ちました」
プレシア「そんなに・・・」
プレシアはベッドに横になったままリッテと話し、リッテにここでのアリシアの様子を聞き、一言で言えば『パルティ』という友達もできた事で時々寂しそうにはしていたが、割と元気でやっているとの事であった。ついでにアリシアの保護者として現在はパルティ同様アリシアを家族として迎え入れているらしい。その事に礼を言い少しの間沈黙していたが、突如起こった地鳴りと、何か人では無い者の叫び声を聞いたプレシアは正体が気になり起き上がろうとするが、リッテに止められる
リッテ「あなたはまだ疲れが抜けきっていないんです!!私が見てきますからここでまだ休んでいてください!!」
そう言って部屋を後にするリッテ。プレシアも特に追う訳でもなく、再びベッドに入るが、何故か頭にアリシアが自身を呼ぶ声が響いてきたかのような感覚があり、疲れが抜けきっていないだるさを残す体を起こし、デバイスを支えの杖代わりにして部屋を後にするのであった
セリマ「あの一つ聞いてもいいですか?『私』?」
ブリジット「何ですか?『私』?ほっ!!」
プレシアが部屋を出る少し前・・・ブリジットとセリマはダーツで点数を競っていた。二人共中心に近い所にほぼ命中させ見ごたえのあるゲームとなっていた
セリマ「苺鈴さんってあなたから見てどんな方なんですか?ふっ!!」
ブリジット「そうですね・・・よっ!!・・・一言でいえばおっかない人ですかね?」
セリマ「おっ『おっかない』ですか?・・・それ・・・」
ブリジット「おぉっ!?結構きつい人なんですよねぇ~表裏ないって言いますか・・・ふっ!!」
セリマ「へぇ~・・・ふっ!!」
ブリジット「でもその分、本音をいつも言ってくれるので、私も本音を話し合えて気が楽になると言いますか・・・」
セリマ「そうなんですか・・・」
ブリジット「でもってその本音が、いつも誰かのための言葉ばっかりで、でもそれがきつい事も多いから勘違いもされやすくて・・・」
セリマ「ほぉ~・・・」
ブリジット「でもって自分の欲望に忠実なんですよね?」
セリマ「例えば?」
ブリジット「苺鈴さんって、実は結構スケベなんですよ?」
セリマ「えぇっ!?あっ!?」
ブリジット「事あるごとに私の胸を見たり揉もうとしますし、以前メディアードでバイトしていた時も私の制服姿に熱い視線を送っていたぐらいですし」
セリマ「・・・嫌がってるような言葉を並べる割には、なんだか楽しそうに話しますね?」
ブリジット「まぁ・・・なんだかんだで、私も彼女の事好きですからね?共に死線も潜り抜けた仲ですし?」
セリマ「なんか・・・いいなぁ・・・」
ブリジット「へっ?」
セリマ「お二人って、もしかして付き合ってるんですか?」
ブリジット「まっまさかぁ!?そんな訳!?・・・そんな訳が・・・」
セリマ「・・・満更ではないみたいですね?」
ブリジット「どうなんでしょうね?私、一応普通に男性が好みのはずなんですけどね?彼女を見ていると『それもありかな?』って思う私もいるんです、はい」
セリマ「やっぱり、別の世界でもあの方はあの方っか・・・」
ブリジット「どういう意味ですか?」
セリマ「どちらのメイリン様も優しい方だという事ですよ?・・・私・・・メイリン様が好きなんです。一人の女性として・・・」
ブリジット「えぇっ!?でもメイリン様は?・・・」
セリマ「『一国の王』ですからね?それに引き換え私は影で生きる者・・・おまけに私と彼女は同姓ですからね?より一層この気持ちが成就することはないでしょう。いずれあの方もどこぞの国の誰かと婚約でも結んで・・・」
ブリジット「いつから・・・なんですか?あの人を好きになったのは?」
セリマ「この気持ちに気付いたのは割と最近ですね?十字聖軍(ザンクトクロイツ)に『反ゲロート派』として協力すると聞いた時からです・・・その話を聞いた時、私はゲロート様の事よりも、メイリン様の安否を真っ先に考えてしまっていたんです。おかしいですよね?一番守らないといけない方よりも、他の人間の事を思ってしまうなんて?・・・」
ブリジット「・・・・・・」
セリマ「その時気付いたんですよ。メイリン様の事を考えていると胸が熱くなって『あぁ、私この人の事を愛しているんだなぁ~』ってね?」
ダーツをしながら会話を続けていた二人・・・驚愕し、思わずダーツの矢を落としたりする事もありながらもゲームを続けていた・・・
しかし、突如兵士の一人が慌ててやってきてある報告を受けると、報告で聞いた問題が起きた場所『ウーム』へと急行していくのであった
苺鈴 「ところでさ?セリマさんとはどこまで進んでるの?」
再びプレシアが部屋を出る少し前に遡る・・・
メイリンの自室でチェスをしてくつろいでいた二人の苺鈴。突然の質問に何を想像したのか顔を真っ赤にしてメイリンが駒を動かす手を止めてしまう
メイリン「すっ進んでいるって何の事かしら?・・・」
苺鈴 「『好き』なんでしょう?セリマさんの事?恋人とかのね?」
直球な返しにポンッ!!軽く煙が上がるほど更に赤くなり、ポンと駒を見て置いたのかそうでないのか分からないが空いているマスへと置き、口調や動きで動揺しているのがバレバレであった
苺鈴 「見ててなんとなくね?それに同じ『私』でしょ?」
メイリン「そう言われれば・・・確かに?・・・」
苺鈴 「ねぇ聞かせてよ?どうせ誰にも話せないから悩んでいるんでしょう?」
メイリン「う~ん・・・そうねぇ~・・・」
苺鈴 「自分の事を『自分に相談』したって誰も文句言わないわよ」
メイリン「ふふっそれもそうね?あなたの言う通りよ。私はセリマが好き」
苺鈴 「やっぱり。っで?どこまで進んでる訳?もうキスまでしちゃった?」
メイリン「私とは言え、言いずらい事までずけずけと・・・」
苺鈴 「気にしない!!気にしない!!っで?そこんところどうなの?」
メイリン「・・・・・・」
苺鈴 「えっ?何々?もしかして口に出せない処までイッちゃってるとか?」
メイリン「・・・・・・」
苺鈴 「・・・・・・もしかして・・・何もない・・・とか?」
苺鈴の問いに一回頷くメイリン。まぁ普通の恋愛とは違うので色んな意味で余計に進展が難しいのであろう・・・片や『女王』・片や『影の世界で生きる者』・・・
まさにドラマの世界だ。尤もこの作品自体がフィクションの世界な訳だが・・・
苺鈴 「ぅっ!?まぁでもさ?そうやって後回しにしてばっかりだとその内言いたくてももう言えなく位に立場が更に固まっちゃうんじゃないお互いにさ?・・・」
汗を流しチェス盤を見ながら次の一手を考えている。どうやら押されているようだ
メイリン「わかっているのよそんな事・・・でも・・・私の思いと彼女の思いが全くの別物で、拒絶でもされて、もっと一緒にいられる時間が無くなってしまうと思うと・・・」
苺鈴 「怖くなっちゃう訳か・・・ぅっ!?」
苺鈴が話している最中も駒を一つ動かす苺鈴。しかし苺鈴がまた一言話すと同時にメイリンも駒を一つ動かしまた苺鈴は唸る。まだまだ危ない状況らしい・・・
苺鈴 「同じ私とは思えないわね?私の時はさっさと言っちゃったわよ?」
メイリン「それはあなたの場合でしょ?っというかあなたも同じ経験があるの?」
苺鈴 「あるわよ。まぁ相手は従兄(いとこ)の男の子で結局振られちゃったけどね・・・・・・」
メイリン「そうだったの・・・はい」
再び苺鈴は駒を動かすが、すぐにメイリンは反撃に出て「はい」とまた駒を動かす。この一駒の動きに苺鈴は更に汗をかき、じ~とチェス版を見つめるが、がくっ!!と頭が下がり、降参を示した。どうや『詰み』になってしまったらしい・・・それはそれとして悔しさを紛らすことも含めて話を戻し、ある考えが浮かんだため直球に話を進めだす
苺鈴 「う~ん・・・・・・だったらさぁ、付き合っちゃえばいいんじゃない?試しにさぁ?」
メイリン「『試しに』ってそんな簡単に言うけれど、それが出来ればこんな苦労は・・・」
苺鈴 「勿論簡単なんて思ってないけどさ?セリマさんって今、彼氏っていないのよね?」
メイリン「えぇ。私が調べたところではいないわ」
苺鈴 「・・・何?その手帳?」
メイリンが懐から取り出した手帳には『セリマ』と書かれており、それをパラパラとめくりながら恋愛事情の説明をしていた。軽くストーカーじみていたため若干引いたがメイリンはそのまま語りだす
メイリン「好きな人の事って色々知りたくなるでしょ?」
苺鈴 「それは分かるけど、これってストーカー・・・」
メイリン「セリマの着ていた服のにおいを嗅いだり、口をつけた笛を咥(くわ)えたり、彼女の机でその・・・むにゃむにゃ・・・」
苺鈴 「・・・ごめん。私にはちょっと踏み込めない領域だわ。っていうか笛を咥えるってアンタねぇ、思春期の小学生か!?」
メイリン「ずっと言えない思いを抱えているのよ!?こうでもして発散しないと理性を保てないのよ!!ぅぅっ・・・セリマァァ~~!!ぅぅっ・・・」
苺鈴 「はぁ~これは重傷だわ・・・」
最後にはチェス盤にぶつからないよう机につっぷうして泣き出してしまいよっぽどセリマの事が好きでもどかしくて苦しんでいるのが伺え、思わず苺鈴も片手で頭を抱えながらも、昔、小狼に告白すると決めるまで悩んだ時の懐かしさも感じながら思わず少しだけ口元に笑みを浮かべていた・・・そして次に苺鈴が口を開こうとした直後、警備兵の一人が部屋に慌てて入ってきたため二人の会話が中断してしまう
メイリン「何事ですか?」
兵士A「大変です!!『ウーム』に侵入者が!!」
メイリン「侵入者!?」
苺鈴 「私が行くわ!!あなたはここにいて!!」
メイリン「分かりました!!気を付けて」
苺鈴 「うん!!」
それから少し経ち、苺鈴達の無事を祈っているメイリンは突如聞こえた雄たけびと地面から聞こえる大きな音に反応して窓から外を見ると、視界には黒い巨体の左右に3枚づつ羽をはやした物体が映る
メイリン「あれは!?」
これはただ事ではないと感じた彼女は急ぎ街の方へと向かっていくのであった
時間を少しだけ遡り苺鈴は急ぎ『ウーム』へと向かいウームの入り口でブリジット・セリマの二人と合流を果たし、さらに奥へと進むとそこにはボロボロのフード付きマントをかぶった正体不明の人物が苺鈴達の存在を視界に入れると憎らし気に声を荒げていた。声色からして男性のようだ・・・
フード「『お前ら』はあの時の小娘共!?」
苺鈴 「セリマさん知り合い?」
セリマ「さぁ?声には聞き覚えはありませんし、そもそも顔が見えないので・・・」
ブリジット「それに苺鈴さん。彼、小娘『共』って言いましたよね?なんか特に苺鈴さんの方に視線を向けているような気が・・・」
苺鈴 「そぉ?気のせいじゃない?」
フード「お前らぁ!!この私を無視するなぁー!!」
苺鈴 「別に無視した訳じゃないわよ?というかあなた誰?フードを深くかぶっちゃって、誰だかわかったもんじゃないわよ?」
フード「この顔を忘れたとは言わせんぞぉ!!」
男はフードを取り、その素顔を見せる。イケメンでよく見ると細身であった・・・
苺鈴 「・・・セリマさん知り合い?」
セリマ「う~ん・・・やっぱり知りませんね?」
ブリジット「同じく」
苺鈴 「ごめん。あなた誰?」
クディス「きっき・さ・ま・らぁぁっ~~!!この『クディス』様をどん底に陥れておいて忘れただと!?」
苺鈴 「『くでぃす』?」
ブリジット「はて?その名前どこかで聞いたような・・・」
苺鈴 「ブリジットさんも?私もどっかで聞いたような・・・何処だったかしら・・・」
クディス「思い出せよ!?『メディアード』一の貴族で、『影の爪』を操り、お前らにはめられた男だよ!!」
ブリジット「『影の爪』!?」
苺鈴 「『メディアード』って、まさかあんたあの時の最低貴族!?痩せたし、声も変わったし、顔もなんか変わったからわかんなかったわ!?」
ブリジット「居ましたねぇ~そういえば確かに・・・」
セリマ「一体あの者は?」
ブリジット「前に『メディアード』で誘拐事件を起こしていた貴族ですよ」
苺鈴 「メディアードの騎士団が逮捕して独房に入れられているはずなのにどうしてここに?」
クディス「ふんっ!!あんなところ脱獄してやったわ!!それに私は当たり前のことをしたまでだ!!」
苺鈴 「どこが当たり前なのよ!?」
クディス「平民なんぞ、私達貴族の思い道理に動いていればいいのだ!!私が気に入れば慰め物にして可愛がってやる!!気に入らなければ首を落とせばいい!!」
ブリジット「それのどこが当たり前なんですか!!」
苺鈴 「やっぱり・・・アンタって最低ね!!人をそんな風に扱えるなんて・・・」
クディス「五月蠅(うるさ)い!!丁度いいお前達には復讐をしてやりたかったんだ!!・・・」
ブリジット「あなたそれは!?」
苺鈴 「『ジュエルシード』!?何であんたがそれを!?」
クディスに手にはここにあったジュエルシードすべてが握られていた。どうやら彼はどこで知ったのかここにジュエルシードが保管されている事を知っていたうえでやってきていたらしい。
そしてその危険性も・・・
苺鈴 「アンタ!!それがどんな物か分かってんの!?」
クディス「知っているとも!!」
ブリジット「悪い事は言いません!!それを早く手放してください!!」
クディス「はぁっ?冗談じゃないな?これは願いを叶えてくれる別の世界のプリズム(魔法石)なんだろ?私はこれを使ってまずお前達に復讐してやる!!」
苺鈴 「『復讐』ですって?」
クディス「あぁ・・・こんな風にな!!」
セリマ「危ない!!」
苺鈴 「うぁっ!?」
ブリジット「ふっ!!」
クディスは空いている右手から無演唱で光属性の魔法を一発放ち苺鈴達を狙うが、苺鈴はセリマに押し倒され・ブリジットは二人とは反対方向へ伏せる事で回避し、3人は体を起こすとクディスの方へと視線を向き直す
ブリジット「魔法!?」
苺鈴 「あいつ魔法が使えたの!?」
クディス「脱獄の途中で使えるようになったのさ!!『影の爪』のやつらと協力して脱獄して途中でおとりにされたが突如目覚めたんだ。こんな目に合わせたお前達への怒りに体が震えてな!!」
苺鈴 「何て奴なの!?」
クディス「私はこのプリズム(魔法石)を使って更に強くなってお前達に力の差を徹底的に知らしめて・・・そうだなぁ~・・・今度はお前達を『凌辱(りょうじょく)』してやる」
ブリジット・セリマ「なぁっ!?」
苺鈴 「んん~・・・ねぇセリマさん『りょうじょく』って何?」
セリマ「えぇっ!?そのぉ~・・・」
苺鈴 「どうかしたの?あっ!?あのスケベ貴族が口走る事って事はまさか!?」
セリマ「どこまで想像したかはわかりかねますが、大体それで合っていると思いますです、はい・・・」
苺鈴 「なぁっ!?」
クディス「ひひひひっ!!散々私をこけにしてくれたお前達がその私にふひひひっ!!・・・」
苺鈴 「んっ!?」
クディス「お前はそうだな・・・気が強い女だからな、抵抗しつつ私に罵声を浴びせながらも私にその身を捧げてしまい最後には私に・・・うひひひひっ」
苺鈴 「ひぃっ!?」
クディス「ひひひひっ・・・あの時のお前はそうだなぁ~・・・その実った二つの脂肪と、反比例したそのボディーにピッタリの衣装にでも身を包んで、縛り上げて涙ぐみながら私に許しを乞(こ)い、私はそれを無視して・・・うひひひひっ!!」
ブリジット「ひぃぃぃっ~~!?」
セリマ「何て奴ですか!?虫唾(むしず)が走っちゃいましたよ!!」
苺鈴 「そっそうね・・・」
不覚にもブリジットのHなシーンを思い浮かべて「ちょっと良いかも?」と思ってしまった苺鈴は罪悪感があったためハッキリとセリマの意見に同意の言葉を言い放つ事が出来なかったのであった・・・
苺鈴 「ともかく、あいつにジュエルシードを好き勝手に使われる訳にはいかない!!二人共!!」
ブリジット・セリマ「了解!!」
3人は一斉にクディスに向かって駆け出すが、クディスは広範囲系の攻撃魔法を放ち3人を吹き飛ばし、ジュエルシードに叫ぶ
クディス「私の願いを叶えろ!!誰も逆らえないほどの力を寄越せ!!」
クディスの頭上に浮かんだジュエルシードは光を放ち、4人はジュエルシードを見ていたが、ひょっこりとクディスの後ろから二つの影が見えた。パルティとアリシアだ。二人は完全に背後への注意が疎かになっているクディスの背後から飛びついていた
パルティ「その石を返せでし!!」
クディス「何だ!?お前らは!?」
アリシア「それはリッテ博士が大事に閉まってた石なんだ!!返して!!」
クディス「邪魔だ!!どけ!!」
パルティ「あいたたたっ!?よくもやったでしね!!がぶっ!!」
パルティの長い髪を掴んだクディスはパルティの怒りを買い、アリシアの対処に回していた腕に噛みつき、アリシアを振りほどき、パルティにのみ注意を向けていたが、短い階段のそばであったため足元への注意が向かず、二人して転げ落ちクディスとパルティはジュエルシードから離れてしまう。そして、体を床にぶつけたアリシアは痛むカ所をさすりながらゆっくりと起き上がったがそこはジュエルシードの真下であった
アリシア「うぅっ!?何!?体が・・・熱い!?」
苺鈴 「アリシア!!」
アリシア「うああぁぁっーーーー!!」
ブリジット「ロープアーム!!」
ブリジットは咄嗟にパルティをメディアードでも使ったロープアームで絡めとり、自身の方へと引き寄せる。そのおかげでアリシアの叫びと共に放たれた光と衝撃を至近距離で受ける事は避けられ、4人のダメージは最小限に留める事が出来、クディスは吹き飛ばされ壁に激突し気を失った
次に4人が目を開けるとそこにはアリシアではなく、全く別の『モノ』が居て、真っ黒いその巨体を4人にさらしていく
苺鈴 「これって天使!?」
ブリジット「でもこんな黒い天使見た事ないですよ!?」
セリマ「これは『究極天使(ウルティマ・アンゲル)』!?しかも私が知っているのよりも心なしか大きい!?」
ブリジット「『究極天使(ウルティマ・アンゲル)』!?」
苺鈴 「なんなのそれ!?」
セリマ「十字聖軍(ザンクトクロイツ)とサブルムの戦争において十字聖軍に大きく貢献した天使で、黒幕である三賢者が使役していた最強の天使です!!」
ブリジット「最強の天使!?」
苺鈴 「そんなのまでいたのね?そういえば学校の歴史の授業でその天使の事が出てたような・・・」
パルティ「ねぇ!!アリシアはどうなったでしか!?」
苺鈴 「そういえば・・・まさか!?あの天使が!?」
ブリジット「アリシアさんが天使になった?って事ですか!?」
セリマ「でも、あれは願いをかなえる石でもあるんですよね?それがどうして彼女を天使にしてしまうんですか!?」
苺鈴 「あのバカ貴族の願いが本人の望む形で叶わなかったってところかしら?もしくはジュエルシードの数が多すぎて暴走しているとか?」
セリマ「暴走!?」
苺鈴 「考えてみればプレシアさんですら大掛かりな用意をしてやっと発動させている訳だから、なんの準備も無しじゃ暴走するのも当たり前か・・・」
セリマ「暴走が本当ならば、かなりまずいんじゃないですか!?」
苺鈴 「そうね・・・これはかなりまずい!!」
4人をよそに究極天使は雄たけびを上げ、それがウーム内に響き渡り、3人は耳を塞ぎ鼓膜が破れないようにする。そして雄たけびを上げながら翼を広げて天井を突き破りながら飛翔すると、瓦礫がウーム内に幾つか降り注ぐ
クディス「いっつつつっ・・・んっ?・・・おっ!?うわあぁぁっーー!?」
意識を取り戻したクディスであったが、『時すでに遅し』・・・究極天使の開けた天井の瓦礫の下敷きとなってしまった
究極天使が天井を突き破るとそこはサブルムの街中であり、突如現れた究極天使の姿を視界に入れ、その雄たけびを聞いた住民達は一目散に逃げだし、少しでも距離を離そうとするのであった
苺鈴 「急いで追いましょう!!」
ブリジット・セリマ「うん!!」
地上に出た3人は逃げ回る人々の波をかき分けながら究極天使に向かって進んでいく。そこにはすでに戦っているサブルムの兵士達もいるが、とてもではないが歯が立っていないようだ
セリマ「大丈夫ですか!?」
吹き飛ばされたり倒れたりしている兵士達に駆け寄り様子を聞くが、何とか致命傷は避けられているようだ。しかし、今集まっているほとんどの兵士は倒されてしまっているようで、このままでは被害が大きくなるばかりである。究極天使が標的を苺鈴達に変え睨み付けていたからか苺鈴・ブリジットも反撃に出る事にした
苺鈴 「セリマさん!!他の人達をお願いします!!ブリジットさん!!合体技行くわよ!!」
ブリジット「了解!!ふっ!!」
苺鈴 「・・・・・・」
苺鈴・ブリジット「エレキ光線!!・ライトニングブラスト!!」
二人はより究極天使に近づき、『時の庭園』で放った合体技を放つが、まともに受けたはずの究極天使にはまるで応えている様子が無く、これには二人も「そんな!?」と驚愕の表情を見せていた
苺鈴 「まずい!?あいつ魔法を撃つつもり!?」
ブリジット「ここには動けない人がたくさんなうえに防ぐ手段何て無いですよ!?」
ハヤウェイ「『KAMIKAZE(かみかぜ)』ェェッーー!!」
攻撃魔法を放とうとした究極天使目掛けて、ロケットのごとく飛翔してくる者がいた。『アーラ・グラディウス』を構えたハヤウェイであった。ハヤウェイは自身の体力のぎりぎりまでを削り、強烈な一撃を叩き込む諸刃(もろは)の技『KAMIKAZE』を放ち、それが究極天使の頬にあたる個所に命中させその巨体をよろけさせるほどの威力をもって、魔法を食い止める事に成功する。そして苺鈴達の近くに着地すると同時にルーアも『カリス・ロンギアス』を構えながらハヤウェイのそばに駆け寄ってくるなり、ヒールを出来るだけ長くかけていくのであった
ハヤウェイ「皆大丈夫?」
ルーア「お怪我は?」
苺鈴 「私達は大丈夫です!!」
ルーア「良かった。ハヤウェイさんこれは・・・」
ハヤウェイ「究極天使(ウルティマ・アンゲル)・・・どうしてこれが?」
ブリジット「あの天使はジュエルシードの力で誕生した突然変異です!!」
ハヤウェイ「突然変異?」
ブリジット「はい!!しかも複数のジュエルシードを取り込んでいるので厄介ですよ!?」
ルーア「ハヤウェイさん!!」
ハヤウェイ「分かった!!ここは俺とルーアで食い止める!!君達は逃げ遅れた人達を逃がしてきて!!」
ブリジット「ですが、たった二人では!?」
ハヤウェイ「大丈夫!!それにこれほどの相手だと人数が多すぎると逆に戦いずらい!!」
苺鈴 「分かりました!!」
ブリジット「しかし、苺鈴さん!!」
苺鈴 「ブリジットさんも見たでしょ!?私達の合体技もまるで通用しない!!これじゃあかえって足手まといよ!!」
ブリジット「分かりました。少々冷静さを欠いていたようです。お二人共気を付けて!!」
ハヤウェイ・ルーア「あぁ!!・はい!!」
究極天使の相手をハヤウェイとルーア託し、3人は逃げ遅れた者達の救助に当たる事に専念し、その場を離れる。そして、今ここにサブルム防衛戦の火ぶたが切って落とされるのであった・・・
ハヤウェイ「サブルム共和国で展開するこの旅での最後の決戦が遂に始まった」
ルーア「究極天使の力は私達の想像を遥かに上回る力を振りかざし、破壊の限りを尽くしていく・・・その時、私達に協力を申し出てくれたのは私達にとっては意外な人物でした・・・」
ハヤウェイ「次回、第29話『騎士達の共闘』輝け!!心のプリズム!!」
おまけにオリジナル設定の紹介
メイリン・・・サブルム帝国元国王『ゲロート』のイトコの娘でセリマとは幼馴染。『反ゲロート派』として活動もしていた事もあり、サブルム共和国の政治を任されている。因みにきれいな銀髪で髪は常に下ろしている。苺鈴と違って拳法の達人ではなく、護身術程度に軽くたしなむ程度の実力しかなく彼女の戦闘力は何もしていない一般人よりはマシ程度
セリマ・・・こっちの世界のブリジット。メイリンとは幼馴染。ゲロートの配下として動いていたのはブリジットと同じで、ゲロート亡き後はメイリンに仕えている。
因みにヴィントラントには潜入していたが、ハヤウェイ達とは面識はほとんどない様子
アリシア・・・フェルやパルティのように体内に注入された『天使の因子』を体に注入することで、蘇生出来た事からリッテが保護者となり、パルティ同様『博士』と呼んでいる。数日に一回は精密検査を受け天使の因子が引き起こす体の拒絶反応等の経過をリッテに見てもらっている