苺鈴達がアースラに拠点を移してから早一週間。「時空管理局」やかつての仲間達という頼もしい助っ人たちが現れた事で、残りのジュエルシード集めも順調であった。
苺鈴は一人食堂で、軽食を取っていた。しかし、あまり食は進んでいないようであった。反対にため息ばかりが吐き出されていた。
苺鈴 (アースラに移ってからもう一週間・・・木之本さん達や管理局の助けもあって、あの鳳凰みたいなのやら、怪獣みたいなのやらからのジュエルシードの回収も順調だし、はぁ~・・・私って、ここに来た意味、あるのかしら?・・・)
更に一つ、ため息をこぼす。それを見ていたのか、同じく軽食を持っていた一人の女の子が近寄ってくる。
???「意外ですね。あなたのため息をみれるなんて」
苺鈴 「ブリジットさん。っていうか普通に出歩いてますけどいいんですか?」
ブリジット「あぁ、それについては色々リンディさんとした取り決めがありましてね。色々フェイトさん達の事情もありましたので、万が一のことを考えて、フェイトさんとアルフさんの事を取り計らってもらう条件で管理局への協力と、ある程度の自由を約束してもらったんですよ。」
苺鈴 「あぁそういうことですか。」
ブリジット「まぁそれよりも、何度か剣をって、苺鈴さんの場合ですと『拳(こぶし)』の『拳(けん)』でしたね。あなたはそんな風にため息をする人とは思えませんでしたけど?」
苺鈴 「あのですね?私だって人間ですよ?ため息位つくことありますからね?・・・私がアースラに来てからというものの、ユーノは人間になってなのはへのサポートがより
積極的になったし、木之本さんはカードのおかげで私以上になのはの力になっているしで、これじゃあ数年前と変わらないんですよ?私の立場!!」
ブリジット「数年前?」
苺鈴 「数年前に私も小狼達と一緒に『クロウ・カード』を集める手伝いをしていたんですよ。」
ブリジット「へぇ~」
苺鈴 「でも・・・役に立ったのは『ツイン』のカードを捕まえた時ぐらいですし・・・はぁ~~」
ブリジット「まぁそのぉ~・・・でもほら!!苺鈴さん私と互角に渡り合っていたじゃないですか!!それにフェイトさんからも聞きましたけど、前にフェイトさんと戦った時もフェイトさんが苺鈴さんの事「戦い方が上手い」って言ってましたよ!!」
ブリジットがため息を吐いていた苺鈴を慰め、気持ちが落ち着いたのか苺鈴は特に深い意味はなかったつもりだが、以前から気になっていたことを問いただすことにした。
苺鈴 「そういえばブリジットさん。前から気になっていたんですけどいいですか?」
ブリジット「いいですよ。なんですか?」
苺鈴 「ブリジットさんとあのフェイトって子の戦い方何ですけどね?なんとなく思ったんですけど、フェイトって子はなのはと同じような魔法を使いながら戦いますけど、ブリジットさんは私みたいに魔法って使わないですよね?アルフって人ともなんか違うような気がしますし・・・」
ブリジット「あぁ、一応私も魔法自体は使えるんですよ。ただ、あまり使う機会がなくって見せたことがないだけで」
苺鈴 「あれ?そうなんですか?」
ブリジット「えぇ。と言いますか、私とフェイトさんの使う魔法ってそもそも種類が違うんですよ。」
苺鈴 「そうだったんですか!?それって、なのはの魔法と木之本さんの魔法が違う種類のようにって事ですか?」
ブリジット「えぇそうです。そんな感じですね、はい。」
苺鈴 「へぇ~じゃあもしかして、ブリジットさんってあのフェイトって子の出身世界とは別の世界から来ていたりして!!・・・な~んて、そんな訳ないですよね~」
ブリジット「そうですよ。」
苺鈴 「えっ?」
ブリジット「合ってますよ。私は苺鈴さんやフェイトさんの住んでいた世界とは違う世界からやってきたんですよ。」
苺鈴 「えっ!?そうなんですか!?冗談だったのに・・・」
ブリジット「隠してたわけじゃないんですけどまぁ、今まで聞かれませんでしたしね」
苺鈴 「じゃぁ、ブリジットさんの出身世界って、どんなところだったんですか?」
ブリジット「そうですねぇ~・・・」
ブリジットは語る。自身の出身世界の事を・・・地球の場所で例えると中世の頃の時代で、彼女は神である『アルケイ』を信仰する「サルース教徒」の砂漠にある国『サブルム帝国』の出身で、隣国である風の国『ヴィントラント』と宗教戦争の真っただ中であった。
苺鈴 「『風の国、ヴィントラント』に『砂漠の国、サブルム帝国』ですか・・・」
ブリジット「えぇ、苺鈴さんやフェイトさんには関係の無い話ですから言うんですけど、私はサブルム王『ゲロート・ポイオス』様の命(めい)で、ヴィントラント王国の行方不明の王女様を探し出し、暗殺するためにやってきたんです。」
苺鈴 「『暗殺』って、結構物騒な話ですね?」
ブリジット「まぁそうですね。ですが、戦争を終わらせるためにも、私はただ国に尽くしていただけですからね。綺麗事ばかりを言っていられる状況じゃなかったんですよ。まぁ、その潜入任務のおかげで、私はフェルさんや神楽さんといった友人も出来ましたがね。ただ、こんな秘密を隠しているのが心苦しいですけどね・・・」
苺鈴 「でもブリジットさん。こんなこと言うのも変だと思うんですけど、それならなんであのフェイトって子のところにいるんですか?なんか話を聞く感じですと、まだその戦争って終わってないんですよね?」
ブリジット「あぁ、それはですね。・・・フェイトさんとアルフさんとの出会いは、ヴィントラントで行われたあの『建国際(けんこくさい)』にまで遡ります・・・」
ブリジットの言う『建国際』それはヴィントラント王国で年に一度行われるパーティーで、同時に彼女も通っていた『ローゼンベルグ騎士養成学校』の卒業記念パーティーでもあった。
赤い忍者「閣下。サブルムのニンジャでございます。」
その夜、私はその世界のヴィントラントとサブルムの戦争の裏でに大きく暗躍していると思われる人物達の行動を見張っていた。しかし、私は殺されたと思われていた和の国の忍びの集団『影の爪』の統領「血桜(ちざくら)」の不意打ちを食らい捕らわれてしまい、ヴィントラント王国の隣国(りんごく)『ヴィエーラ』の最強の騎士団『テンペルリッター』の団長「ジュダス」と、私の学校のクラスの担任「リッテ・ラートゥス」先生の下に運び込まれました。
「あぁ、私・・・ここで終わりなのかなぁ・・・」その時はそう思いました。だってもう絶体絶命だったんですもの。明らかに私よりも強い人達しか周りにはいなかったんですから・・・
ですが、そんな絶望的な状況下で私は見たんです。それから少し経ったとき、私の国『サブルム帝国』の主力である生体兵器『天使』の中でも、砲撃に優れた機体「ファギェル」に向かっていく光の巨人を、そして、その巨人がはばたき、光輝き、その光が夜の世界を昼間のように辺りを照らしていくのを・・・
リッテ「これが、ハヤウェイ君とアーラ・グラディウスの力・・・ん?」
リッテの視線の先には、白い光の中に小さく光る青い輝きがリッテの方へ落ちてくる。不思議と彼女はそれを避けようとはせず、それを見続ける。青い輝きは、ブリジットの胸に落ち、バウンドして、リッテがそれを掴む。掴んだ「それ」を見てみると、数字の書かれたひし形の石であり、正体がとりあえず石だと解るとそれよりも今自分が抱きかかえている彼女をどうにか助けたい。という思いでいっぱいになっていた。
リッテ(出来ればこの子も死なせたくない。誰でもいいんです!!誰でもいいですから今この場からこの子をどこか安全な、彼らの手が届かない所に連れ出して!!)
リッテは右手に持っていた石を握りしめながら、祈ると、突如ブリジットの体が光りだし、彼女の手を離れ、宙に浮き出す。それに気づいたジュダスと呼ばれる男と赤い忍者もブリジットを見ると、次の瞬間、彼女の体からより一層光りを強く放ち、その場から一瞬で消えてしまったのだ。唐突のことでその場にいた全員が唖然としていたが、ジュダスはいち早く正気になり、リッテに疑いの言葉を投げかけるが、これにはリッテも全く心当たりがなく、懸命に疑いを晴らそうとしていた。反応を見る限り嘘は言っていないと納得したジュダスはそれ以上リッテを疑うことはしなかったが、リッテは一つの心当たりを隠していた。
リッテ(あの石もなくなっている?・・・まさか、あの石が原因(げんいん)で!?だとしたらブリジットちゃんはどこに?無事だといいのですけれど・・・)
ブリジットは確かに無事ではあった。しかし、彼女は転送魔法のようなもので飛ばされてしまい、リッテの予想を大きく上回る場所に飛ばされてしまっていたのであった。
第97管理外世界・現地惑星名称『地球』に・・・
苺鈴 「っで、いつの間にか気絶しているうちに私達のいる世界に飛ばされて来ちゃった訳なんですね?」
ブリジット「そうなんですよぉ。しかも目が覚めた途端またエライ目に遭いまして・・・」
また時は遡り夜の海鳴市。何もない空間から一人の少女と獣耳の女性が現れる。フェイトとアルフだ。二人は空中に浮かびながら今やってきた世界の風景をゆっくり見渡していた。
アルフ「いやぁ~やっと着いたねフェイト!!」
フェイト「うん。ここが管理外世界の地球か・・・ん?」
アルフ「んん?・・・なんだろね?何か聞こえるようなぁ・・・」
???「うわああぁぁぁぁっぁっあっぁぁぁ~~~~~!?」
アルフ「ん~~?・・・あれ?なんだろね、あれ?」
フェイト「あれ?・・・」
アルフが上を指さすと、フェイトもつられて上を見る。すると空から少女が一人落ちてきていた。
???(んん~~?・・・あれ?ここは・・・)「何処ですか!?」
ローゼンベルグ騎士養成学校からリッテの予想道理に石の力でどこかに飛ばされていたのであった。ただ、今はまだ妙なトンネルのような空間に居て、彼女自身も訳が分からな
い状態であった。
ブリジット「何なんですかここ!?って!!なんか光ってる穴が迫ってきてるんですけどぉぉ~~!?ぎゃぁぁぁ~~!?」
私が光の穴を潜(くぐ)り抜けるとそこは地上にいろんな小さな光が右往左往(うおうさおう)している場所でした・・・
苺鈴 「それって、町の街灯(がいとう)とかですよね?」
ブリジット「いきなり回想に割って入らないでくださいよぉ。」
そんな景色を見てまず私が発した第一声はというと・・・
ブリジット「うわああぁぁぁぁっぁっあっぁぁぁ~~~~~!?」
絶叫でした・・・
その下からフェイトとアルフは絶叫が聞こえてきたため上を見ると、猛スピードで地上に向かって急降下しているブリジットを発見する。ブリジットが二人を通過するのをじ~と見ていた二人は、突然の事でぼ~としていたが、少しの間の後に「ハッ!!」と我に返り、フェイトは慌ててブリジットを追いかける。アルフもフェイトにつられて後方から追いかけていきブリジットに接近する。
ブリジット「いやあぁぁ~~~!?」
フェイト(間に合え!!)
フェイトはブリジットの降下ルートを予測して、以前ユーノがなのはに掛けた、クッション代わりの魔法陣と同じ魔法を何重か掛けて地面への激突を防ぐ。ビルの屋上に最後のクッション魔法を掛け、それに乗ったブリジットはゆっくりとビルの屋上に降ろされる。ブリジットは今、自身に何が起こったのかさっぱり分からず唖然としていたが、その前にフェイトとアルフが彼女の前に降り立つのであった。ブリジットは突如現れた二人組にはさすがに警戒の色を見せたが、フェイトが「大丈夫でしたか?」と尋ねると、ブリジットも「えぇまぁ、なんとか・・・」と答える。お互いに沈黙して少しの間が過ぎたあたりでアルフが今のブリジットの状態について問いかけた。
アルフ「ねぇアンタ、何で縛られてるのさぁ?しかもそんな状態で空から降ってくるなんて異常だよ?」
ブリジット「縛られているのは不覚にも不意打ちを受けて捕まっただけですよ!!ほっといてください!!それに空から降ってきた理由は、私が知りたいぐらいですよ!!」
フェイト「・・・もしかして、何で空から降ってきたのか分からないの?」
ブリジット「知りませんよ!!私、飛行魔法なんて使えませんし!!落ちてくるときに見た地上の様子もなんだかおかしいですしで、私にも何がなんだか・・・」
アルフ「(・・・フェイト。今こいつ・・・)」
フェイト「(うん。「魔法」って言ってたね。)」
アルフ「(この世界の人間は魔法は使えないどころか信じられていない力のはずだよ!?それを信じてるってことはこいつ・・・)」
フェイト「(もしかしたら管理局の人間なのかも)」
アルフ「(どうすんだい?)」」
フェイト「(とりあえず確認したいこともあるし、ちょっと簡単な質問に答えてもらうよ。)」
アルフ「(わかった。)」
フェイト「・・・あの、一つ聞いてもいいですか?」
ブリジット「・・・何でしょうか?」
フェイト「あなたは、『魔法』を使えますか?」
ブリジット「それがフェイトさんとアルフさんとの出会いだったんですよ。」
苺鈴 「へぇ~そんなことが・・・っで、その後どうしたんですか?」
ブリジット「その後・・・」
私はもちろん魔法を使えましたし、魔法が当たり前に存在していた世界に住んでいましたから『使える』と答えました。フェイトさんとアルフさんは私の事を『時空管理局』の魔導士かもしれないと疑っていたようですけど、フェイトさんは私を縛っていた縄を解いてくれました。
そして、あの事件が起こったんです・・・
ブリジット「ふ~いやぁ~助かりましたぁ~ありがとうございますです、はい!!」
フェイト「いいよ別に、むしろあんな状態で放(ほう)っておけないもの。」
アルフ「ところでさぁ、あんたこれからどうすんの?」
ブリジット「そうですねぇ~ってのわぁ~~!?」
フェイト「何!?」
アルフ「フェイト!!アレ!?」
急にブリジットに白い糸が体を拘束する。そして、どこかに強引に引っ張られる。フェイトとアルフはブリジットが引き寄せられた先を見てみると、そこには暗くて視界が悪いが明らかに人間とは言えない何者かが立っていた。目が慣れてきた二人がよく相手を観察してみると、蜘蛛(くも)を思わせる女性が手から糸を出していたのだった。
蜘蛛女「うっふふふふ、み~つけた・・・」
ブリジット「へっ!?何ですか!?どなたですか!?あなた!?」
蜘蛛女「な~に、ちょいとアンタに用があってね。アンタはもしかしてアタイが探している魔法の『石』を持っているんじゃないかって思ってさぁ」
フェイト・アルフ「えっ!?」
アルフ「(フェイト、あの蜘蛛女もまさか?)」
フェイト「(分からないけど、今この世界に存在する『魔法の石』ってことは多分あの人も・・・)」
アルフ「(ジュエルシードが狙いって事かい!?)」
フェイト「(そう考えるのが、可能性が高いかも)」
アルフ「(でもだったら、あの蜘蛛女がいう事が本当ならあの女がジュエルシードを持ってるってこと?)」
フェイト「(かもしれないけど、今はそれよりも・・・)」
ブリジット「『石』!?何のことですか!?というかあなた誰ですか!?」
スパルダ「あっ?アタイかい?アタイは『スパルダ』!!偉大なる闇の魔法使いだよ!!」
ブリジット「『闇の魔法使い』!?」
スパルダ「おしゃべりはお終いだよ。さっさと石を・・・」
スパルダと名乗る蜘蛛女がブリジットに『石』を渡すように要求するが、途中で中断された。黄色い光の斬撃がスパルダめがけて飛んできたのだ。咄嗟に後方に飛び回避するが、飛び引いた先にアルフが飛び掛かり、その衝撃で思わずブリジットを手放してしまい、ブリジットはフェンスまで吹き飛ばされる。アルフはそのままスパルダと対峙している間にフェイトはブリジットの救出に向かう。
ブリジット「あいたた・・・」
フェイト「大丈夫?今、糸を切るから」
フェイトはブリジットに巻き付いていた糸を切ると、そのまま彼女に背中を向けて「あなたは逃げて」と告げる。ブリジットはフェイトを止めようとするが「大丈夫。私、強いから・・・」と言い残し、アルフの援護に向かっていく。体に巻き付いた糸を完全にほどいたブリジットは三人の闘いをじっと見ていた。状況はフェイト達の攻撃を軽くあしらうスパルダ構図が出来上がっている状態であった。
ブリジット(あの子、何の縁もない私の事を命がけで・・・それにさっきもいきなり現れた私の事も助けてくれました。でしたら、私のやることは一つ!!)
アルフ「ぐあっ!?」
フェイト「アルフ!?」
スパルダ「なんだい、あんたたちの力はそんなものかい?『プリキュア』とは大違いだねぇ~」
フェイト「プリキュア?」
スパルダ「アンタ達には用はないからね。もうそろそろ終わりにさせてもらうよ!!」
フェイト「うっ・・・」
フェイトが構え、スパルダがその凶悪な腕を振りかざすと、その腕めがけて短剣が一本飛んでくる。その短剣はスパルダの腕に刺さらずそのまま宙を舞い、空中に跳ね返った短剣を掴む影があり、その影がそのままスパルダに向かって短剣を振りかざす。そのまま数回、曲切りを繰り返し、スパルダはそれも難なく回避して、後方に下がる。
ブリジット「・・・大丈夫ですか!!」
フェイト「えっ?何で逃げなかったの!?」
ブリジット「ん?当たり前ですよ?」
フェイト「『当たり前』?・・・」
ブリジット「えぇ、さっき助けてくれましたでしょ。受けた恩は必ず返します!!それに・・・」
フェイト「ん?」
ブリジット「こんな幼い子に危ない事させておいて逃げるなんて、それこそ末代(まつだい)までの恥です!!ですから・・・」
フェイト「・・・・・・」
ブリジット「一緒に戦いましょう!!」
フェイト「うん!!」
ブリジットはフェイトに手を差し出しながら、「一緒に戦おう」と笑いかける。フェイトも笑顔を浮かべながら頷き、手を握り返す。二人はアルフと交戦しているスパルダを見定めて同時に駆け出す。二人は同時にスパルダに切りかかるが、咄嗟に察知したスパルダは後方に下がり、アルフと合流した二人は三人で軽く何かを打ち合わせをしていた。
ブリジット「ではまず私が行きます!!」
フェイト「分かった。」
アルフ「信じていいんだね?」
ブリジット「裏切ったと思いましたらその時は後ろからでもどうぞ!!」
アルフ「おし!!十分!!」
ブリジット「行きます!!」
先陣をブリジットが切る。スパルダ目掛けて短剣を何度も曲切りで襲い、スパルダも手刀と糸を吐きながら応戦する。
スパルダ「ちょこまかとすんじゃないよ!!」
フェイト「はぁー!!」
スパルダ「なっ!?ちぃっ!?」
ブリジット「やあっー!!」
スパルダ「ちぃっ!!」
ブリジットがスパルダと応戦している最中、フェイトが大剣を振りかざし、スパルダに切り掛かるが、それを左手で受け止める。その隙をついてブリジットも短剣を突き刺すが、それも右手で掴み止める。三者が硬直しているそのチャンスを狙ったかのようにフェイトが声を出す。
フェイト「今だよアルフ!!」
アルフ「でやぁっーー!!」
スパルダ「なっ!?」
三者が硬直している隙を狙いアルフが正面からスパルダ目掛けて正拳突きを放つ。フェイトとブリジットに挟まれて動けなかったスパルダはそれをまともに受け、後方に転倒する。それを見た三人は「良し!!」と拳をグッ!!とする。しかし、確かに決まった一撃を受けたはずのスパルダはスッと立ち上がり、三人を憎らし気(げ)に睨み付ける。
フェイト「あの人、まだ・・・」
スパルダ「あんたたち、舐めた真似してくれたね?もう容赦しないよ!!・・・あれが使えそうだね。行くよ!!魔法、入りました!!いでよ!!ヨクバール!!」
ヨクバール「ヨクバ~ル!!」
フェイト「なっ!?」
ブリジット・アルフ「何なんですかぁあれぇ~~!?・何なんだいあれはぁ~~!?」
スパルダはビルの屋上にあった貯水タンクと通りかかった鳩(はと)を魔法陣に取り込み、コミカルな髑髏(どくろ)顔の貯水タンクを背中に生やした巨大な鳩をその場に生成する。
初めて見る奇怪(きっかい)な者を見た三人は訳が分からないと言った顔をして、スパルダが「行け!!」と命じると、ヨクバールと呼ばれた怪物は「ギョイ!!」と返事を返し、三人に向かっていく。
ヨクバール「ヨクバ~~ル!!」
ヨクバールは口と思わしき場所から水の弾を勢いよく何発も放ち三人を攻撃する。三人は何とかかわし、態勢を立て直そうとするが、すかさずヨクバールが猛スピードで突っ込んでくるのだから上手くいかない。ヨクバールが翼をバサバサさせ強風を起こす。フェイトとアルフは何とか踏ん張るが、ブリジットは吹き飛ばされ屋上のフェンスにぶつかる。二人はまだ強風の中に取り残され、なんとか助けようと体を起こそうとするがダメージのせいか上手く起きることが出来ない。その最中、ブリジットの体から一つの石が落ち、彼女の視界に入る。
ブリジット「これは・・・プリズム(魔法石)?でもこれって・・・」
ブリジットの言うプリズムとは彼女のいた世界で魔法の力を秘めた石の事である。これを魔法の素質のある者が使うと発動させることが出来るアイテムなのである。しかし、手にしたプリズムは彼女の知っている物とは少し違っていた。それはひし形の宝石のような、中心に数字の書かれていた物、『ジュエルシード』であった。彼女は知らないが、リッテの願いに反応したジュエルシードがブリジットを次元移動させたと同時にジュエルシード本体までも彼女に引っ付いてきてしまっていたのだった。
未だに強風から抜け出せない二人を見ると、余計な詮索を後回しにし、力を振り絞って立ち上がる。そして、「もう四の五の言ってられない!!」と、ジュエルシードとは露知らないブリジットは短剣についている宝石を強引に取り外し、ジュエルシードを取り付ける。すると、ブリジットの短剣から眩(まばゆ)い光があふれ、ブリジット以外の者は思わず腕で目を覆い隠すしぐさを見せた。
ヨクバール「ヨクッ!?」
フェイト「何!?」
アルフ「あっ!?フェイトあれ!?」
フェイト「・・・ジュエルシード!?」
スパルダ「なんだい!?やっぱりあいつ、リンクルストーンを持っていやがったのかい!?」
光が次第に小さくなっていき、最終的にはブリジットの二本の短剣に青白い光の刃が付与されその形状に思わず見とれていたが、その隙を突きヨクバールは一際大きな水弾を発射する。
ブリジット「ぁっ!?・・・でぇやぁーー!!」
ヨクバール「ヨクッ!?」
フェイト「すごい・・・」
アルフ「あぁ。切り裂いちまったよあれを・・・」
ブリジットは放たれた砲弾を短剣を正面に持ち変え、雄たけびを上げながら大ぶりに剣を振りかざす。そして、きれいに砲弾は真っ二つになりブリジットの横を通過してはじける。唖然としていたスパルダも「何とかしな!!」とヨクバールに命令を出す。しかし、ヨクバールが反応するよりも早く、ブリジットはヨクバールの足元に移動していて再び短剣を逆手に持ち直し構える。
ブリジット「双迅(そうじん)!!七乱舞(なならんぶ)!!」
ブリジットは、交互に二本の短剣で3回ずつ踊るように舞いヨクバールを切り裂き、最後に二つの短剣で同時に唐竹割(からたけわり)の要領で切り裂く。最後の一撃を食らい後方に吹き飛ばされ、隙が生じたその瞬間にバルディッシュを大剣に換装(かんそう)させたフェイトがヨクバールの前に飛び出す。
フェイト「ハーケン・セイバー!!」
ヨクバール「ヨクバァ~ル!?」
フェイトが放った黄色い雷属性が付与された斬撃がヨクバール目掛けて飛んで行き、見事に一刀両断され、コミカルな髑髏のような幽体が先ほど魔法陣に取り込まれた鳩と貯水タンクから幽体離脱したかのように離れていき、貯水タンクは元の場所に戻り、破損された場所も何事もなかったかのように修復されていた。
アルフ「良し!!」
ブリジット「やりました!!」
スパルダ「ちっ、プリキュアでもない奴らに手こずるとはねぇ~まあいいよ。お前が持ってた石はアタイが探していた物じゃないみたいだったしねぇ、今日のところはこれで引いてやるけど、次に遭う時まで、オボエテ~ロ!!」
ブリジット「消えた!?」
フェイト「油断しないで!!」
ブリジット・アルフ「はい!!・応!!」
舌打ちの音が聞こえ三人はスパルダ睨むが、まるで呪文を唱えるかのように「覚えていろ」と捨て台詞を言い放ちながらいずこかえ消えていった。油断を誘うための罠かと考え警戒を続けたが、待てども待てども襲ってくる気配がなく、どうやら本当に引いていったと確信した三人は安堵(あんど)し、警戒態勢を解く。そして、フェイトはブリジットに先の戦いで使用された石を見せてほしいと頼み、見せてもらうとやはりそれは『ジュエルシード』であった。
アルフ「フェイト。これってやっぱり・・・」
フェイト「うん。多分ジュエルシード。」
ブリジット「ジュエルシード?」
フェイト「知らずに使ったの?」
ブリジット「はい。てっきり変わったプリズムだと思いましたので・・・」
フェイト「プリズム?」
アルフ「ねぇアンタ、それをどこで手に入れたんだい?」
ブリジット「え~と、それはぁ~・・・」
ブリジットは、いつの間にか服のポケットに入っていたと思っていたので、「いつ・どこでこれを入手したのかが分からない」と答える。そしてフェイトはこの石は彼女達がこの異世界にまで探しに来ていた『ジュエルシード』であり、これが『願いをかなえる石』でもあると簡単に説明した。
ブリジット「こんな小さい石が・・・」
フェイト「うん。さっきあなたがその剣にこの石を取り付けた時に大きな力を宿していたでしょ?多分あなたが「あの怪物を倒したい!!」とか思ったんじゃないかな?そのせいだと思うよ?」
ブリジット「成程」
アルフ「ところでフェイトどうする?」
フェイト「うん。あの蜘蛛の人もいなくなったし、本題に入るよ。」
ブリジット「本題?」
フェイト「あの・・・お願いがあります!!」
ブリジット「はっはい!?」
フェイト「そのジュエルシードを私に譲ってください!!お願いします!!」
ブリジット「えっ!?これをですか?・・・」
フェイトは90°に体を曲げて頭を下げる。その真剣で、必死になっている彼女を見て、少し悩んだ末にブリジットはフェイトにある条件を出すことにした。
フェイト「条件?」
ブリジット「えぇ。ここまで真剣に頼むくらいですから相当あなた方が必要としているのが分かりましたし、これは私が持つよりは、あなたが持っていた方が良い物だと思います。でも・・・約束してください。これを絶対に悪用しないという事を・・・」
フェイト「それだけでいいの?」
ブリジット「それだけでいいんです。」
フェイト「・・・分かった。」
ブリジット「ん。約束しましたよ。」
フェイトは「うん」と頷き返し、『ジュエルシード』を受け取り、バルディッシュに収めていく。それを見てブリジットは「変わった武器だなぁ」と思いながら彼女達に今いるこの場所がどこなのか問いただす。フェイトも『ジュエルシード』を譲ってもらったお礼を兼ねて答えられることは可能な限り答えてくれたので、ブリジットは今自分のいる場所が『異世界』であり、この世界には元居た世界と違い『魔法』は空想上のモノでしかないという事を聞いて流石(さすが)に驚愕していたが、周りの見たことのない物・彼女達やさっきのスパルダやヨクバールのような明らかの自分が知っている魔法とは別の系統のモノを使っていたの見て信じざるをえなかった。更にフェイト達も異世界から来たという事も聞いたが、ブリジットのいた世界がどの座標にあるか分からないため元居た世界に返してあげることもできないと言われて若干涙目になりながら己に起こった不幸を嘆(なげ)いていた。
ブリジット「なんてことでしょうかぁ~!!助かったと思ったら異世界にジャンプだなんてぇ~しかも帰れないとは、あぁアルケイよ!!セリマは何て不幸なアサシンなんでしょうかぁあぁっ~~!!」
フェイト「・・・ねぇ、ブリジットっでいいんだよね?ちょっといい?」
ブリジット「ぐすっはい?何ですか?・・・」
フェイト「あなたがよかったら何だけど、家に来ない?私達もこの世界に来て間もないし、頼れる人なんていないでしょ?」
ブリジット「えっ!?」
フェイト「いいよね?アルフ?」
アルフ「まぁフェイトがいいって言うんならアタシは構わないよ。」
フェイト「うん。アルフもこう言っているし、今日はみんな疲れただろうから遠慮しないでいいよ。」
ブリジット「・・・本当にいいんですか?お邪魔しても?」
フェイト「いいよ」
アルフ「まぁフェイトに何かしようとしたらアタシがガブって行くけどね!!」
ブリジット「ううっ~~!!・・・ありがとうございます!!とりあえず一晩お世話になりますですはい!!」(やぁアルケイ!!セリマはラッキーです!!とりあえず寝床(ねどこ)を確保できました!!我らがアルケイに感謝です、はい!!)
ブリジット「という事があって、その後はフェイトさん達の事情も知って、私も『ジュエルシード探索』を手伝うようになって、今に至るわけなんです。」
苺鈴 「へぇ~そんな事が・・・じゃあ私とブリジットさんが『翠屋』で会ったのもその後なんですね?」
ブリジット「そうですね。あの時はまさかこんな風にあなたと関わりを持つとは思いもよりませんでしたよ。」
苺鈴 「あはは、確かに!!」
二人は軽く笑いあい、少しの間の後、苺鈴は少し寂しげな表情をしながら更に問いかける。
苺鈴「・・・ねぇブリジットさん。ちょっといいですか?」
ブリジット「はい?」
苺鈴 「ブリジットさんはこの後どうするんですか?」
ブリジットはまた「はい?」と首をかしげる。苺鈴の言った「この後」の意味が分からないでいた。苺鈴にもう一度意味を聞き返してみると「ジュエルシードをすべて集めた後」という意味であった。その問いにはブリジットも回答に困っていたのか黙り込んでしまった。
黙り込んでいたブリジットを見つめていた苺鈴だったが、突如アースラ内部全域で緊急アラートが鳴り響く。二人は食事を中断してアースラーのメインブリッジに向かう。
メインブリッジへ走り続ける苺鈴とブリジット。その道中ブリジットは先の苺鈴の問いについて考えていた。ジュエルシードがすべて集まり「もし、元の世界に帰れたら私はどう
するのか」っと・・・
ジュエルシードの数は残り僅(わず)か。彼女の想像したその「もしも」の時は彼女の気づかない内に着実に近づいているのだった・・・
道中、苺鈴もあることが引っかかっていた。先のブリジットの回想に出てきた怪物の事を・・・
苺鈴 (そういえばブリジットさんの話に出てきていた「ヨクバール」って怪物・・・どこかで聞いたことがあるようなぁ~?何処だったかしら?最近聞いたような気が・・・)
おまけ
緊急アラートが鳴るほんの少し前の事、アースラ内の桜と知世の部屋にて・・・
部屋には知世一人が裁縫道具を広げて縫物をしていた。服の補修をしているようではなく、
ハタから見るとコスプレ衣装にも見える衣装をどうやら製作しているようであった。それも2着も・・・
知世 「・・・・・・」
知世は黙々(もくもく)と糸を通していく。その目は真剣でしかし、どこか不安げな表情であった・・・
知世(ジュエルシードも残り僅(わず)か。恐らくそう遠くない未来できっと何か大きな事が起こるはず・・・その前に何としてもこれらを完成させなくては!!)
知世はそこまで考えた後、一度手を止め自分の横に置いてあるもう一着の衣装を見ながら更に自身の思いを頭の中で独り言として言い続ける。
知世 (あの二人にも、無事に帰ってきてもらうためにも・・・)
そこまで考え切ると、知世は再び作業を再開させようとしたが、その途端に食堂で苺鈴達も聞いた緊急アラートを聞きつけ、簡単に道具を片付けてからメインブリッジに向かっていくのだった・・・