ドラゴンボール ギニュー親子の物語   作:残月

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阿井 上夫様から素敵なイラストを頂きました。ありがとうございます。
スーナ/桃香のスーツverのスーパーサイヤ人です。



【挿絵表示】



天下一武道会・子供の部決勝戦◆

 

 

 

孫悟天にとって、孫桃香は距離感が掴めない相手だった。自身が生まれる前に亡くなったと言う姉。兄である悟飯からは『頭が良く、優しい姉』であると聞かされ、父である悟空からは『強い娘』と評され、母であるチチからは『誰よりも優しい良い子』。時折会う叔父の様な存在のギニューからは『宇宙一の可愛さを持つ我が娘』とそれぞれ評価が違っていた。そもそも会ったことが無いためにスーナと言う存在が『姉』である自覚は悟天には薄い。

姉と言うなら悟飯の友達であるビーデルの方が姉とさえ思っていた。

 

そんなスーナと天下一武道会で初めて会った時、悟天は言葉を失った。家のリビングに飾られた写真でどの様な容姿かは知っていたが直接会うと不思議な感覚に襲われたのだ。

美人でありながら可愛いと思う様な顔立ち。厳しそうでありながら優しさを持ち合わせる雰囲気。そして見た目からは想像できない様な内面に秘めた戦闘力。

家族がそれぞれ下した評価が全て分かった様な気がしたのだ。両親や兄、叔父が感動の再会を果たした最中、悟天は動けなかった。普段から天真爛漫で人見知りをしない悟天だったが、この時ばかりは動けず、スーナとの再会を果たし終えたチチの後ろに隠れてしまっていた。

 

 

「そっちの子は……悟飯の弟ですね」

「ほら、悟天。お姉ちゃんだべ」

「はは、悟天も初めて会う姉さんに照れてるみたいですね」

 

 

スーナから水を向けられた悟天はチチの背後から動こうとしなかった。と言うよりも恥かしくて動けなかったのだ。それを見たスーナは優しげな笑みを浮かべてから「後でゆっくりと話しましょうね」と悟天の頭を優しく撫でた。悟天は撫でられた頭に自身の手を添えて着替えに更衣室に向かうスーナを見送った。いつもは天真爛漫で笑顔を絶やさない悟天だったが今は胸にモヤモヤした物を抱えて悩む事となる。

 

 

対するスーナも悟天を一目見てから不思議な感覚と言うか……親子三代そっくりですね、と思っていた。バーダック、悟空、悟天は血の繋がりの濃さが異常に目立つ祖父、父、子となっている。悟飯は悟空にも似ているがどちらかと言えばチチ寄りなのだろう。

天下一武道会が終わったらバーダックの事もギネの事も悟飯翁の事も悟空に伝えなければならないとスーナは思っていた。しかし、スーナは時間が足りないと思っていた。農場の現在の状況や孫家の家計簿チェック。カプセルコーポレーションの開発部のサンプル確認にベジータが働かない問題。ギニューと悟飯が正義の味方としてブレイクしている件。

 

今日、一日で処理しきれない問題が重なっていた。各家庭の事だけでもこれだけ問題があるにも拘らず、更にボージャックの一件もある。そちらはナマモノ同様に即座に処理をしてしまおうと考えてはいた。この天下一武道会に揃った過剰戦力なら苦戦はしないだろうと考えた結果である。

 

予選でのパンチングマシンを難なく済ませたスーナは余った時間を利用して生前、孫家に残していたノートパソコンを使って事務処理を済ませようとしていた。それと並行して紫色の超人とグレートサイヤマンの動画を見ていた。

正義の味方としての存在はまだ良い。人々の為になるならば文句は無い。悟飯は正義感が強いし、ギニューは元々の宇宙の地上げ屋から比べれば善行を積んでいるのも不満は無い。ならば何が問題かと言われればスペシャルファイティングポーズである。

スーナは父であるギニューの事は好きだがスペシャルファイティングポーズだけは受け入れられなかった。それが父だけで話が終われば良かった。

それが幼い頃にソレを見た弟にまで影響を及ぼすとはスーナにも予想外であり、まさか自分からノリノリでやる様になるとは思いもしなかったのだ。

 

それでも悟飯はまだ良いと言えた。まだグレートサイヤマンとして正体を隠しているのだから。だがギニューは違う。まんま、素顔を晒しているのだ。ニュースに取り上げられたり、道行く人が目撃しても特殊メイクとして受け入れられているがそれが生の素顔である事を知っているスーナからして見れば身内の恥以外の何者でも無い。

 

ギニューと悟飯のオシオキを決定したスーナは悟天とトランクスの対決を見学する事に。

 

 

 

天下一武道会・子供の部は当然の様に悟天とトランクスの決勝戦となっていた。トランクスは快調に勝ち進み、悟天もスーナの事に頭を悩ませながらも余裕で勝ち進んだのだ。

 

 

「へー、チビ達もやるじゃないか」

「くだらんお遊戯か」

「結果が決まりきった大会だな」

「少々悟天の動きが固い様に見えますね。普段から、あんな感じなんですか?」

「いや、普段は元気いっぱいなんだがな……」

「確かにさっきから悟天らしくねぇぞ」

 

 

決勝戦に勝ち進んだ悟天とトランクスを褒めるクリリンにくだらない大会だとベジータとピッコロは呆れていた。そんな中、ある程度資料に目を通し終えたスーナは悟天の動きに違和感を感じていた。スーナの疑問に答えたのはギニューと悟空であり、二人も悟天の戦いに違和感を感じていたらしい。

 

そんな事を思いながらも決勝戦になったが、やはり悟天の動きは固いままだった。終始トランクスに押され気味で劣勢を強いられている悟天。遂には場外負けになりそうになった際に客席から怒鳴り声が響いた。

 

 

「何をしているんです、悟天!悩みを抱えたまま戦うなとは言いません!ですが、貴方に戦士としての誇りがあるならば立ち上がりなさい!貴方は天下一武道会で優勝した孫悟空の息子なんですよ、父の誇りにも泥を塗るつもりですか?!勝ち負けではありません!戦うのであれば全力を尽くしなさい!」

「あ、あ……」

 

 

客席の上段からスーナの叱咤が飛び、悟天はスーナを見上げる。初めて姉に叱られた悟天は驚きながらも姉を見つめる。

 

 

「そして……楽しみなさい。貴方の全力を受け止めてくれる人との戦いに」

「お姉ちゃん……うん!」

 

 

叱咤の後の優しい笑みと言葉に悟天を悩ませていた事は四散した。今はトランクスとの戦いを楽しむ。悟天の散漫だった集中力はトランクスに向けられていく。

 

 

「へへっ……やっといつもの悟天になったな」

「ごめんね、トランクス君」

 

 

トランクスも悟天が本調子じゃない事を気にしていたらしい。トランクスは笑みを浮かべながら構えて、悟天も笑みを浮かべて構えた。

 

 

「悟飯さんといい、桃香さんといい姉兄がいる悟天が羨ましいぜ」

「えへへ……いいでしょ」

 

 

一頻り笑うと二人から笑みが消えた。それと同時に天下一武道会・子供の部の本当の決勝戦が始まったのだった。

 

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