悟天とトランクスの試合は凄まじい盛り上がりを見せていた。幼いながらに才能に溢れたトランクスにそれと互角に戦う悟天。
スーナはそんな幼い戦士二人を微笑ましい物を見る目で見ていた。トランクスは赤ん坊の頃を知っているし、悟天は孫家の末っ子。どちらも自分にとっては可愛くて仕方ないのだ。更にスーナの背後ではトランクスの才能に満足気に見ているベジータと楽しそうに悟天の戦いぶりを見ている悟空。更にトランクスと悟天にとっては叔父の様な存在となってギニューが見守る様に戦いを見入っているのだ。スーナにとっては嬉しい事ばかりだと自然と笑みが溢れていた。
ふと視線が試合会場から外れると試合場の入り口付近で空いた口が塞がらないミスターサタンが見えた。恐らくセルゲームの時の恐怖が蘇っているのだろう。セルゲームの時は散々悟空達の戦いに振り回されていたサタンだ。二人の戦いぶりを見て、悟空の一派と察したのだろう。更に悟空と悟天は親子として似過ぎている。親子と断定するのは容易いだろう。
そして、この後のエキシビジョンマッチとして子供の部で優勝した子供とサタンとの試合がある。サタンからしてみれば死刑宣告みたいなものだ。今頃必死にどうするか頭を悩ませているのだろうと思うとスーナは笑ってしまう。
「まあ……悟飯や皆さんの手柄を独り占めしたんですから苦労はしてくださいね」
あの当時、セルを倒した功績を美味しい所を掻っ攫っていったサタンが良い思いをしたのだ。甘い汁を吸ったのだから、それ相応の苦労も必要だろう。スーナは楽しそうにクスクスと笑っていた。
そうこうしている間にも試合は進んでいく。トランクスと悟天は互角の戦いをしながら僅かながらにトランクスが優勢になり始めていた。お互いの才能は恐らく互角だろう。だが、年齢差から来る経験の差が少しずつ現れていた。
「へへっ…‥甘く見るなよ悟天。俺は片手だけでもお前に勝て……うひっ!?」
「トランクス君?」
互角の戦いをしていたトランクスと悟天だったがトランクスが年上の余裕を見せようと片手でも勝てると宣言しようとした瞬間、客席からの圧に身体を震わせた。余裕を見せようとしたトランクスをスーナが視線だけで圧を加えたのだ。元々赤ん坊の頃にベジータに説教をするスーナを見ていたと言うよりも感じていたトランクス。染み込んだ恐怖にトランクスは動けなくなったのだ。
スーナからの視線はこう語っていた。『悟天に全力を促したのに貴方は油断をする気ですか?』と。
「と思ったけど……やーめた。全力で行くぜ!」
「う、うん……僕も!」
恐怖に身体を震わせるトランクスと悟天。しかし切り替えも早く、二人は戦いに集中し試合会場を沸かせていた。
「まったく……少しでも余裕があると油断するのは血筋なんでしょうか」
客席からトランクスに圧を掛けていたスーナだったが二人が試合再開した事で圧を解いていた。そしてスーナは戦いに油断しがちな血筋の元であろう悟空とベジータを呆れ顔のジト目で睨む。睨まれた悟空は苦笑いでベジータは舌打ちをした。どちらも互いに身に覚えがあるのだろう。
やれやれと溜息を零しながら視線を戻すとトランクスと悟天の拳が交差して互いの頬を殴っていた。一瞬、トランクスと悟天の動きが止まり……悟天の身体がゆっくりと倒れ、試合場に沈んだ。
『決まりましたー!子供の部の優勝はトランクス君でーす!』
「「「「「ワァァァァァァァァァァァッ!!」」」」」
マイクを通した審判の叫びに会場が湧き上がる。湧き上がる会場だがサタンは目に見えて動揺しているし、スーナの隣ではベジータが悟空に「ハッハッハッ、俺の血筋の方が優秀らしいな」と悟空の背中を叩いていた。
「ベジータ王子も分かりやすく態度では示さないけど親バカですよね」と親バカ代表のギニューの娘であるスーナは呆れながらも笑みを浮かべていた。