ドラゴンボール ギニュー親子の物語   作:残月

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スーナの役職

 

 

 

 

スーナはフリーザに呼び出され、フリーザの宇宙船に足を運んでいた。

 

 

「フリーザ様、スーナお呼びにより参上しました」

「呼び出してすいませんねスーナ」

 

 

フリーザの部屋に入ったスーナは礼儀正しく頭を下げ、フリーザはスーナの礼儀正しさに満足しているのかニコニコと笑みを浮かべていた。

 

 

「さて……さっそくですが貴女を呼び出した件です」

「はい」

 

 

フリーザは前置きを抜きにして本題に入る事にした。

 

 

「実はですね、貴女にフリーザ軍の人事を任せようかと思っているのですよ」

「わ、私をですか?」

 

 

フリーザから突然、役職を振られたスーナは驚いた。今まではフリーザ自らが人事を見ていたのだが、急にスーナに任せるとは思ってもみない事だったのだ。

 

 

「何も今日明日でやれとは言いませんよ。しかし、貴女が私の為に働き始めてから……本当に助かってますからね」

 

 

フリーザはスーナに背を向けながら宇宙船の窓から宇宙を見ていた。その背中には哀愁が漂っている。

 

 

「それにこれは貴女の為でもあるんですよ。聞きましたがスーナ……貴女、各部署から誘いの声が出ているそうですね」

「……はい」

 

 

フリーザの言葉にスーナは少し言葉を詰まらせた。それと言うのも、スーナがフリーザ軍で働き初めてから研究部署や事務等からスーナを専属で置いて欲しいと、嘆願書が大量に届くようになったのだ。

スーナはどの部署に行っても様々な事をしてきた。研究部署に行けばスカウターの性能向上の切っ掛けとなり、事務の仕事を始めればザーボン以下、事務仕事を任されていた者達の希望となった。そしてスーナが間に入る事でザーボン派閥とドドリア派閥との争いも多少軽減され、潤滑に回るようになったのだ。

これにより、子供ながらに各部署の影響力が高いスーナを誰もが引き抜きたいと思い始め……取り合いが発生し始めていた。

 

 

「因みにですが……ギニュー特戦隊は専属マネージャーは渡さないと各部署に殴り込みに行こうとしたみたいですね」

「父とその部下が本当にすいません」

 

 

フリーザの苦笑いにスーナは本当に申し訳なさそうに頭を下げた。

 

 

「ホッホッホッ……良いんですよスーナさん。貴女が求められるのは貴女が優秀だからです。私も鼻が高いですよ。ですが、まだ子供の貴女にそれらを選ぶのは酷と言うものです」

 

 

フリーザは笑みを浮かべた後にスーナに歩み寄る。

 

 

「各部署が争って火種になるのは困りもの……ならば全てのところに顔が利く人事を任せようと思ったのです。私の言葉なら反論する者はいませんからね」

「なるほど……流石はフリーザ様です」

 

 

フリーザの言葉にスーナは納得する。人事ならば、各部署へ顔を出す事になるから今の争いを納める手段となると、フリーザの手腕に改めて驚かされていた。

 

 

「ですが……子供の貴女が人事の仕事をするには、まだ早い。そこでこれからは他の部署の仕事を学んでもらいます。そしてそれらが終わったら改めて人事の役職を与えましょう。精々、私の為に励みなさい」

「畏まりましたフリーザ様」

 

 

フリーザの考えを理解したスーナは、頭を下げて今回の話を飲んだ。そもそもフリーザに逆らう気は毛頭ないので、スーナはただ受け入れるだけだ。

 

 

「ホーホッホッ良い返事です。ならギニューさんにまずは報告をしてきなさい。私に呼び出されたと随分と気にしていましたから」

「はい。では失礼させていただきます」

 

 

フリーザの気遣いにスーナはパァと笑顔になる。退室してギニューの下へと向かった。

 

 

「…………ふむ。ベジータ達と違って私への忠誠心は高いようですね。スーナ、貴女には存分に働いてもらいますよ」

 

 

 

フリーザは一人、静かな笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スーナァァァァァァァ!頼むから俺達の専属のマネージャーでいてくれぇぇぇぇ!」

「だからフリーザ様の命令だから覆せないの。まだ暫くは特戦隊の書類は面倒をみるけど今後は自分でやって」

 

 

フリーザの下から特戦隊の待機室へ向かったスーナは、先程の話をギニュー達に話すとギニューはすぐに納得し、スーナが更にフリーザに認められた事を喜んだ。が、リクーム、バータ、ジース、グルドは自分達の代わりに書類仕事をしてくれていたスーナが居なくなる事を非常に恐れていた。特にバータはスーナに抱きつく勢いで頼み込んでいたりする。

 

 

「そうだぞ、それにスーナが居なくなったら誰が俺達のオヤツを作るんだ」

「私の価値ってそこ?」

 

 

リクームはスーナの作る菓子が食べられなくなる方が重要なようだ。

 

 

「それに六人体制でのスペシャルファイティングポーズがやっと決まったのに!」

「私は絶対にしないから」

 

 

ジースは密かに考案していたスーナも交ぜたスペシャルファイティングポーズが出来ないことを嘆いていたが、スーナ本人にその気が無かった。

 

 

「へん、ベソかいて戻ってくるんじゃねーの?」

「私はグルドと違って上手く立ち回るよ」

 

 

スーナをビビらせようとしたグルドだが、スーナはサラッと流した。実際、スーナの方がグルドよりも社交的である。

 

 

「スーナ……俺は……俺はお前が何処に行っても上手くやると……信じて……」

「お父さんは気が早すぎ。それとまだ暫くは事務とマネージャーの仕事するから」

 

 

ギニューは娘の結婚を見送る父親のように泣きそうになっていた。なんやかんやで親バカである。

特戦隊はスーナがすぐに居なくなると勘違いをしているが、スーナは各部署へ顔を出す機会が増えるだけで実際は特戦隊のマネージャーの位置は当分変わらないのだが、その説明も忘れている……と言うかスーナが今後、自分達の専属じゃなくなる事に頭からその説明が抜け落ちたのかも知れない。

 


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