『ほぅ……それでスーナの戦闘力がハネ上がったと』
「はい。恐らくはサイヤ人特有の戦闘力の上がり方かと」
ギニューは宇宙船の通信でフリーザに事の顛末を話していた。ギニューの言うサイヤ人特有の戦闘力の上がり方とは、サイヤ人は戦い続け、そして死の淵から甦る度に、戦闘力を増していく特性がある。
『なるほど……確かにサイヤ人特有の戦闘力増しですが……スーナの元の数値を考えると妙な上がり方ですね』
「はい。私もその事が気にかかっていたのですがスーナからはその事を聞き出せなかったので……」
フリーザは、いきなり四倍近くまでハネ上がったスーナの戦闘力を不審に思っていた。
『ところで……何故、ギニューさん達は黒コゲなのですか?ソルベも』
「そ、それは……」
「色々ありまして……」
フリーザの問いに口ごもるギニューとソルベ。先程のスーナのエネルギー弾でダメージは受けなかったものの、流石に黒コゲになってしまったギニューとソルベ。他の部下達は余波で傷付いた宇宙船の修理や掃除をしていた。
『ま、良いでしょう。細かい報告は後程スーナにさせます。ギニューさん、後処理を済ませたらアナタはスーナを連れて此方に戻ってきなさい』
「は、畏まりました」
フリーザはギニューにスーナを連れて戻るようにと指示を出すと、ギニューは敬礼しながら応えた。そして通信が切れると同時に、ギニューとソルベはドッと冷や汗と溜め息を出した。
「危ないところでしたね」
「うむ……危うく我らがスーナの着替えを覗いた事をフリーザ様に知られるところだった」
ソルベの呟きにギニューは同意する。スーナの事が心配だったと言っても、ノックも無しに医務室に駆け込んでスーナの裸を見たのも事実だが、この事がフリーザや周囲に知られると二人の評価は確実に下がるだろう。そしてギニューとしてはこれ以上スーナの怒りを買う事を避けたいのだろう。
「そ、それでスーナの様子はどうだ?」
「今はタゴマやシサミが見ている筈です。なまじベテランの兵が見るよりも新兵の方がスーナ殿も話しやすいかと」
ギニューがスーナの様子を尋ねると、ソルベは気を回していた様で新兵のタゴマやシサミにスーナの事を頼んでいたらしい。
「で、では様子を見に行くか……」
「そうですな」
ギニューはゴホンと咳払いをすると、スーナが居る医務室へ向かう。ソルベはそんなギニューの背を見ながら、思春期の娘に嫌われたくない親の姿そのものだと思うのだった。
◆◇◆◇
一方その頃、スーナはタゴマやシサミと上がった戦闘力の話をして居た。
「流石はサイヤ人ですね。圧倒的に戦闘力が上がるとは」
「私としては不思議な感覚です。急に内側からパワーが溢れてくる感じです」
タゴマの発言に、スーナは医務室のベッドに腰を掛けながら自身の掌を見詰めながら呟いた。
「今までの戦闘力から上がりすぎた為にスーナ様の中でパワーが滾っておられるのでしょう」
「落ち着かない感じです」
シサミの言葉にスーナは自身の手を握り開く行為を何度も繰り返す。
「しかしスーナ様。この調子で強くなり続ければ幹部も夢ではないですぞ」
「シサミ、スーナ様は自身のあり方を悩んでおいでなんだぞ」
シサミは調子良くスーナを誉めるが、タゴマはスーナが力に悩んでいる事に気付いており、シサミを叱った。
「んだと?強くなる事は良いことじゃねーか」
「スーナ様は事務職で管理職となられる御方だ。強ければ良いと言う訳じゃない。貴様には分からんだろうなシサミ」
スーナをそっちのけで喧嘩を始めたタゴマとシサミ。そんな二人を見てスーナは笑みを溢していた。
「そっか……似てるんですね」
スーナはタゴマとシサミに聞こえない程度の小さな声で呟いた。タゴマとシサミはスーナが普段から世話になっているザーボンとドドリアに似ているのだ。力関係から考え方まで。だとすれば場を納める方法はスーナにとってはお手のものだ。
「今回の一件でシャーベさんを失った事でソルベさんの軍は弱体化してしまったでしょう。ですがタゴマさんやシサミさんが強くなってくれれば安心ですね。お二人はザーボンさんやドドリアさんに似ていますから」
「ザーボン様やドドリア様に……」
「ス、スーナ様……我々がそれほどまで強くなれると言うのですか?」
スーナの発言にタゴマとシサミは言い争いを止めてスーナに向かい合う。
「はい。私が保証します」
「おお……俺達がそれほどまでに……」
「スーナ様!我等、より一層の努力をします!」
ニッコリと笑みを浮かべたスーナ、にタゴマとシサミは膝をついて歓喜に震えた。
「俺達の杞憂だったか」
「スーナ殿も慣れておられる様ですな」
医務室の扉から中の様子を窺っていたギニューとソルベだが、スーナの様子を見て安心した様だ。
「スーナ、もう大丈夫の様だ……」
「お父さんのエッチ……」
「ぐっはぁっ!?」
「ギ、ギニュー隊長!?」
ギニューは安心して医務室に入ったのだが、スーナから距離を置かれた上にジト目で睨まれ、その一言に撃沈した。