「スーナ様、土壌の調査が完了しました」
「スーナ様、殺していない銀河パトロールはどうしますか?」
「私の端末に送っておいて下さい。兵士の皆さんは銀河パトロールを本部に送り返しますから一纏めに。それから荒れた大地の地ならしをしてください」
バタバタと働く兵士達にスーナは指示を出し続ける。兵士達はスーナの指示を仰ぎ、忠実に動いていた。
一部の兵士は大量のデータを纏めながらスーナの端末に送り、一部の兵士は捕らえた銀河パトロールを縄でグルグル巻きに拘束し、一部の兵士はギニュー特戦隊や側近が戦った際に荒れた大地を手直しする為に奔走していた。因みにギニュー特戦隊は明日に行われる、お花見の為にダンス訓練をしていた。
「その……スーナ様」
「なんですか?」
そんな中で一人の兵士がスーナに話し掛けづらそうに歩み寄る。
「非常に仕事しづらいのですが……」
「気持ちはわかりますが、お願いします」
スーナや兵士の後ろには、仕事を監督するようにフリーザとクウラが居た。二人は表面上はにこやかに仕事を観察している様に見えるが、軍のトップが見ている最中で働く兵士達の心境は穏やかではないだろう。スーナもそんな兵士達の気持ちは察していたが、フリーザやクウラに意義の申し立てなんか出来る訳もなく黙々と仕事に徹していた。
「ふん、銀河パトロールを始末しないとは、やはり甘いなフリーザよ」
「今回の件はスーナに任せています。それよりも兄さんも殺してばかりとは野蛮ですね」
そんなスーナや兵士達の意思など関係なく、フリーザとクウラは言葉の端々に刺を感じさせながら会話を続けていく。
「そうか、ならば敵を生かす甘い考えを聞かせてもらおうか……おい、猿!」
「猿……はい、クウラ様」
クウラに呼ばれたスーナは、猿呼ばわりされた事は流石に嫌だった。が、顔には出さずにクウラの前に立つ。
「貴様が兵士達に命じて銀河パトロールを殺さずに生かす理由を教えて見せろ」
「フリーザ軍の力と恐怖を語り継がせるため、あえて殺さずに銀河パトロールの本部に送りつける策を取らせていただきました。生かさず殺さず状態で銀河パトロールに送り返す事で捕らえた銀河パトロールの口からフリーザ軍の脅威を語ってもらいます。そして脅威を語らなかったとしても、その体に刻まれた傷は周囲に恐怖を与えるでしょう」
クウラの質問に答えたスーナ。それはフリーザ軍が難なく銀河パトロールを壊滅を済ませた事を知らしめる為にも、語り部となる存在を作る策だった。
「直接的な恐怖ではなく、敢えて生かして恐怖を刻み込むと言う事か」
「はい、捕らえた銀河パトロールが仮に『フリーザ軍は大した事がなかった』と主張しても半殺しにされた銀河パトロールの兵士を見れば嘘だとすぐに分かるでしょう。その事は周囲に伝わり、結果的にフリーザ軍に対する恐怖や脅威を伝える事となるでしょう」
クウラは少し理解したという風に口を開くと、スーナは補足で説明をいれた。
「ただ殺すだけではなく、使えない銀河パトロールの屑を再利用するとはスーナは優しいですね。そしてそれが私の為になるとは素晴らしい忠誠心です」
「ありがとうございます、フリーザ様」
「ふん……回りくどいな」
ニコニコとフリーザは満足そうにしながらスーナを誉めるが、クウラはフンと鼻を鳴らした。
「フリーザ様、クウラ様。本日までは土地の制圧や地ならしをしましたが明日までには整えます。明日はお花見をお楽しみください」
「楽しみにさせてもらいますよ、スーナ。兵士達の指示は任せます」
「猿、精々働くんだな」
頭を下げたスーナにフリーザはニコリと笑みを浮かべてから宇宙船に戻り、クウラは最後までスーナを猿と呼んで同じく宇宙船に戻っていった。
フリーザとクウラを見送ったスーナは素早く、兵士達に指示を出した。万が一にも間に合わなかったなんて事態を招かない為だった。
「アレがサイヤ人の生き残りか……けけ、苛めてやろうじゃないか」
「面白そうだな、俺にもやらせろ」
「何をする気だネイズ、ドーレ。だが、フリーザ軍の奴等が目立つのは気に入らんな」
甲斐甲斐しくも働くスーナを観察していたのはギニュー特戦隊と対をなす存在のクウラ機甲戦隊のネイズ、ドーレ、サウザーだった。