ネイズがスーナの所を訪れてから数時間後、惑星ブロッサムでの花見が始まろうとしていた。
「おい……本当に寝たのか、お前」
「寝ましたよ……二時間程……」
フラフラと仕事をしているスーナを見付けたネイズはスーナに話し掛けると、返ってきた答えは大丈夫とは程遠いものだった。
「そんなフラフラでどうするんだ……休めよ」
「大じょぶ……らいじょー……」
スーナの体がフラりと倒れそうになったのをネイズが咄嗟に支えた。その際、スーナの持っていたファイルがバサリと地面に落ちる。
そしてスーナを抱き止めたネイズは軽い、と感じた。スーナは子供だが、それを差し引いても軽すぎるとネイズは感じとった。
「スーナ!?貴様、スーナに何をした!」
「ギニュー隊長!?いや、違う、俺がやったんじゃねぇ!」
ネイズに抱き抱えられているスーナを見て、ギニューは叫びを上げる。そしてネイズの腕の中でスーナがモゾモゾと動き始める。
「ご、ごめんなさいネイズさん……私、大丈夫ですから」
「あ、おい!」
スーナはネイズの腕の中から飛び出すと、落としたファイルを拾い走って行ってしまう。
「こら、待つんだスーナ!」
「ごめんなさい、お父さん!まだ確認する事があるの!」
ギニューの制止を振り切ってスーナは行ってしまう。
「スーナ!……まったく……何故、親の言う事を聞かんのだ」
「あ、あの……ギニュー隊長。何があったんだ?」
スーナが自分の言う事を聞かない事にギニューが腕を組みながら怒っていると、遠慮がちにネイズが話し掛ける。
「……フリーザ様に人事を任されてから、あの様子なのだ。特戦隊が書類を溜めてしまったのも原因の一つだが最近のスーナは無理をしすぎている」
「………昨日、ちっと用事があってフリーザ様の宇宙船にお邪魔したんだが、昨夜も実質徹夜してたみたいだな」
ギニューは最近の悩みを口にする。因みに特戦隊が書類を溜めてしまったとは言うが、ギニューはちゃんと書類を提出しており、リクーム、ジース、バータ、グルドが出していなかったのである。他にもベジータや他の部署の者も勝手に書類を持ち込んでいたりもする。
「休めと……何度も言っているのだが、あの様子でな……俺もスーナが心配で本日、フリーザ様にお見せするダンス(お花見ver)の練習にも身が入らなかった……」
そんな心配ならダンスの練習しないでスーナ様の事をもっと気に掛けて下さい……と、近くで作業をしていた下級兵士達は心の中でツッコミを入れた。
「ギニュー隊長……我等、兵士達もスーナ様が心配で何度も進言しているのですが、聞き入れて頂けないのです」
そんな中、一人の下級兵士が前に出る。以前、ギニューと共にスーナを迎えに行ったアプールだった。
「ううむ……何故、スーナは彼処まで働こうとするのだ!それはフリーザ様の為にはなるが、お前自身の為にならん。何よりも見ていて俺が辛い!」
「表向きの理由と本音が見事に別れましたね。まあ、我々も同じ意見ですが」
ギニューの叫びにアプールがツッコミを入れ、周囲の兵士達がうんうんと頷く。その光景を見て、ネイズはスーナの奴、兵士達にも慕われているんだな、と思っていた。
「おおぃ、ネイズ。あの猿の小娘を苛める算段は着いたのか?」
「ドーレ……いや、今はその話は止めておけ」
そんな空気を全く読まずにクウラ機甲戦隊のドーレがドスドスと歩きながらネイズに歩み寄る。ネイズはこの場でスーナの話題を出すのはマズいと思い、口止めをしようとするがドーレは止まらない。
「ああん?あんな猿に何をビビってるんだ?」
「止めろドーレ!マジでフリーザ軍と戦争になりかねん!」
ドーレはサイヤ人の子供なんかに何をビビってると言うが、実際には親であるギニューにその話を聞かれるのがマズいと思っていた。何故ならネイズの背後でギニューは明らかに怒っている雰囲気を露にし、周囲の下級兵士達も今にも襲い掛からんと言う程に目をギラつかせていた。
「た、隊長!ギニュー隊長!」
「なんだ、ジース?俺は今からコイツを……」
今にもドーレにミルキーキャノンを叩き込もうとしているギニューの下に、ジースが慌てた様子で飛んできた。
「それどころじゃありません!スーナが倒れました!」
「な、なんだと!?」
ジースから告げられた言葉にギニューは目を見開いて驚愕する。周囲の兵士達にも緊張が走った。
「今はクウラ様の宇宙船に……」
「スゥゥゥゥナァァァァァッ!!」
ジースの説明を途中まで聞いたギニューはクウラの宇宙船に飛び立った。その速度は普段のギニューの最高速度を遥かに上回っていた。
「ギニュー隊長、俺も行きます!」
「俺も行くぜ!」
「お、おいネイズ!?」
その後をジース、ネイズ、ドーレが追う。
そして最高速度を叩き出したギニューはクウラの宇宙船の中に飛び込んだ。フリーザの宇宙船とクウラの宇宙船は型が同じでメディカルルームは同じ部屋配置である。
ギニューは迷わず、メディカルルームへと足を踏み入れた。そしてその先で見た光景にギニューは言葉を失う。
ベッドで眠るスーナの脇で椅子に腰掛けながら脚を組み、スーナが先程まで手にしていたファイルを眺めているクウラの姿があったからだ。