惑星ブロッサムの花見から一年半後、スーナは十二歳になりフリーザ軍の人事として働いていた。今まで滞っていた書類関係の仕事を円滑に進め、兵士達の働きの見直し、ギニュー特戦隊のマネージャーと多忙な日々を送っていた。惑星ブロッサムで体調不良で倒れた時のような事はなく、忙しく過ごしながらも無茶はしない日々だった。
「あ、また勝手な事をして、あの人達は……」
スーナは自身に届けられた書類に目を通して頭が痛くなり始めていた。その書類はギニュー特戦隊に対するモノで、スーナがマネージャーをするようになってから多少はマシになってきたギニュー特戦隊だが、未だにトラブルの種である。
「スーナ様、先日滅ぼしたスラッグとかいう宇宙人の件ですが……」
「ああ……フリーザ軍の領地に攻め込んできた方々ですね」
スーナは書類仕事を進めながらアプールの話を聞き、先日の騒動を思い出した。
スラッグと名乗る武装宇宙人達がフリーザ軍の領地を侵略しようと攻め込んできたのだ。しかし、運が悪かったのはスラッグ達である。その日、視察という事でフリーザ、ザーボン、ドドリア、スーナがその惑星に居たのだ。
フリーザの怒りを買ったスラッグは軍を滅ぼされた挙げ句、自身も宇宙の塵となった。
「あのスラッグとやらも恐らくは若い頃は強い存在だったのでしょう。いやはや、老いとは恐ろしいものですね」とはフリーザの言である。妙に実感が籠った一言だったとスーナは感じていた。
「奴等の戦闘力は高かったのでフリーザ軍へのスカウトも考えた方が良かったのかと……」
「フリーザ様に牙を向いた段階で却下でしょうね。それに後で調べて判明したのですがスラッグ星の方々は日光に弱いみたいで他の惑星に行くのには向かない種族だった様です」
スラッグ星出身の彼らは全員、日光に弱いという弱点を持つ。それは他の惑星を侵略する上で最大級の足枷となるだろうとスーナは考えていた。
それにリーダーであったスラッグという年老いた宇宙人は、誰かに従うよりも支配する側の人格だったから、フリーザに忠誠を誓うとは思えなかったスーナはその可能性を最初から除外していた。
「スーナ様!」
「どうしました?」
そんな話を進めるスーナとアプールの元に部下が慌ただしく部屋に入ってきた。
「ご報告します。ベジータ様とナッパさんが担当していた惑星から離れて別の惑星へとポッドを飛ばした様です!」
「ベジータ王子とナッパさんが?詳しい報告をお願いします」
部下の報告に嫌な予感がしたスーナは詳しい報告を部下に求めた。内容はこうである。
とある惑星侵略をフリーザから命じられていたベジータとナッパだが、命令を途中で放棄して違う惑星に向けてポッドで飛んでいってしまったのだという。それに兵士が気付いたのはポッドが飛んでから数日後で、ベジータとナッパが惑星侵略の報告をしない事から気付いたのだと言う。何度も帰還する様に連絡をしたのだが、いつもなら『高値の星を見つけた』『フリーザ様の為だ』と短い返答が来る。だが、今回はそれすらもないから不審に思った為にスーナに報告となったのだ。
「なるほど……ベジータ王子が向かった惑星は予想は出来ますか?」
「いえ、それが……ベジータ様とナッパさんが侵略をしていた惑星からは逆方向なのです。しかも大した文明の無い惑星ばかりの宙域です。おおよその方角は算出は出来ますが行き先までは……」
その報告を聞いてスーナは益々妙だと感じた。ベジータとナッパは戦闘を求めて常に最前線に身を投じていた。そんなベジータとナッパが大した文明の無い惑星ばかりの宙域に向かうなど今までなかったからだ。
「私はフリーザ様にご報告します。皆さんは通常業務へ戻ってください」
「ハッ!」
「了解しました!」
アプールと他の部下に指示を出したスーナは書類を持つとフリーザの元へと足を運んだ。
余談だが、スーナの手元にある書類にはギニュー特戦隊が無断で経費を使い、チョコパフェを食べていた事に対する始末書も含まれていたりする。