「うーん……」
「どうした、何を唸っているのだスーナ」
事務室でデータ整理をしていたスーナだが先程からウンウンと唸ってばかりいた。それを不審に思ったザーボンはスーナに話し掛けた。
「いえ……ベジータ王子とナッパさんが向かった先を予測しようと向かった星域を調べていたのですが、やはり文明が進んだ惑星が無さそうなんです。少なくとも自力で宇宙船を作って宇宙に出れる程の科学力を持った惑星は数える程でして」
「ふむ……ならばベジータとナッパは何を目的に動いているか不明か……」
スーナは勝手な行動を取り始めたベジータとナッパのこれからを予想しようとしていた。まず手始めに高値の星が見つかったのかと思い、宇宙ポッドの進行方向を調べたのだが成果無しだった。
「そう言えば……もう一人生き残りのサイヤ人が居たんじゃなかったか?最近、見ないがな」
「そうだ……ラディッツさん……」
ザーボンの発言に少し前に会ったサイヤ人の生き残りのラディッツを思い出したスーナ。ザーボンは生き残りのサイヤ人として覚えていたが、名前までは覚えていなかった。
◆◇◆◇
「おい、スーナ!俺に有給をくれ!」
「いきなり、人事部に殴り込みを掛けてなんですかラディッツさん。しかも有給をくれだんて」
突如、人事部のデスクに来たのはサイヤ人の生き残りのラディッツだった。
スーナとラディッツの出会いはフリーザ監視下の中でベジータ、ナッパ、ラディッツが惑星侵略から帰って来た報告の時に会ったのだ。
『フリーザ様、只今シャープ星より帰って参りました。少し手間取りましたが、3日間で奴等を降伏させました』
『……そうですか。あんな星に3日もね。スーナさん、後で兵達にシャープ星の土壌調査をさせる様に命じなさい』
『畏まりました。向かう人数や時間などをリストアップしておきます』
ベジータの報告に少し呆れた様子のフリーザ。フリーザはそんなベジータを尻目にスーナに話し掛ける。そんな態度にベジータは兎も角、ナッパ、ラディッツは苛立ちを隠せない様子だった。
『頼みましたよスーナさん。ベジータさん、アナタ方も下がってよろしいですよ』
『なっ!?おいっ!ちょっと待てよ!』
そしてフリーザの口から出たのは下がってよろしいという言葉のみ。褒美が何もないと分かったナッパが、バッと立ち上がって抗議する。ナッパが立ち上がると同時にザーボンとドドリアがフリーザの前に立った。因みに、スーナはザーボンが前に出るなと手で制した為に変わらずフリーザの後ろに控えている。
『俺達は体ボロボロにして帰って来たんだぞ!それをっ!』
『……ザーボンさん、あの星を征服するのに何日かかりますか?』
『はい、1日あれば充分かと』
ナッパの苛立ちにフリーザはザーボンにシャープ星を征服に何日かかるかと問えば、ザーボンは一日で充分だと告げる。
『そうでしょうね、あんなちっぽけな星程度…ホーホッホッホッ』
『こ、この野郎っ!』
『やめろナッパ!』
何も言い返せなくなったナッパがフリーザに突撃しようとしたが、それをベジータが制止した。
そしてベジータはナッパに止めろと言わんばかりに睨むとフリーザに頭を下げた。
『…フリーザ様、失礼致します』
『ええ、次の働きも期待していますよベジータさん。それと……ラディッツ』
フリーザから咎めが無かった事に安堵したベジータはその場を離れようとしたが、フリーザがラディッツだけを呼び止めた。
『な、なんでしょうかフリーザ様?』
『アナタにはスーナの事を紹介していませんでしたね。同じサイヤ人同士、自己紹介くらいしときなさい』
そう告げるとフリーザはスーナに目配せをした。それを合図にスーナは前に出てラディッツに頭を下げた。
『初めまして、スーナです。若輩ながらフリーザ様に仕えさせて頂いています』
『あ、ああ……俺はラディッツだ。サイヤ人の生き残りが居たとは嬉しいぞ』
互いに会釈しながら自己紹介をしたスーナとラディッツ。普段ならもう少し横柄な態度を取るであろうラディッツだったが、フリーザの前でそんな態度が取れる筈もなく普通に会話をしただけだった。
その後、同じサイヤ人としてラディッツとは雑談を交わす間柄となったスーナだった。
「それで急に休暇をと言われても難しいですよ。そもそも有給申請ならちゃんと……」
「フフフ……ただの休暇じゃない。ちゃんと理由があるのだよ。俺が休暇から帰ったら驚くだろうな、ハーハッハッハッ!」
因みにこの後、スーナはラディッツに有給申請の書類をちゃんと書かせた。
◇◆◇◆
そんな、やり取りをした数日後にラディッツは宇宙ポッドで飛んでいってしまった。行き先は聞かなかったが、もしかしたらラディッツが行った星域とベジータやナッパが向かっている星域は同じなのかも知れないと考え始めていた。
「兵士達にもベジータの行方は探させている。お前がそんな顔をするな」
「はい……スミマセン、ザーボンさん」
根を詰めすぎているスーナの頭を撫でたザーボン。
「しかし、本当にギニュー隊長に似なくて良かったなスーナ。やはりおまえの髪は美しい」
「アハハ……ありがとうございますザーボンさん」
そしてザーボンはスーナのサラサラとしている黒髪がお気に入りだった。もしもスーナがギニューと本当の親子で、この髪が失われていたらと思うとザーボンは悔やんだだろう。対するスーナは髪だけでも誉められているのは嬉しいのか頬を少し赤く染めていた。
「そりゃあ良かったな、ザーボン」
「お、親バカ隊長!?」
「違うぞザーボン、それは本音だ!」
いつの間にか事務室に入ってきていたギニューは、先程のザーボンの発言を聞いていたのか青筋を頭に走らせていた。対するザーボンはギニューを『親バカ隊長』と呼んでしまう。それに対してジースはザーボンに建前ではなく本音が出ているとツッコミを入れた。
因みに『親バカ隊長』とはフリーザ軍におけるギニューの裏のあだ名である。