ベジータとナッパが行方が知れなくなってから十一ヶ月。未だにベジータとナッパの手懸かりは得られず、フリーザ軍では半ば彼等は居ない扱いとなっていた。
任務中に居なくなった者は、基本的に半年間の捜索で見付からなければ殉職扱いとなる。これは侵略をするに辺り、敵わないと思った兵士が逃げ出してしまう。又は銀河パトロールに捕まってしまったケースが希に起こるからである。
エリート兵士なら侵略する惑星のレベルを推し量れるが、下級兵のみの構成だと、その星に強い者が居た場合、返り討ちにあってしまうからだ。ただし、このケースは基本的に下級兵のみに適用されていた。何故ならばエリート兵士くらいとなればフリーザの恐ろしさに逃げ出す事すらしないからである。今回のベジータとナッパの件は非常に珍しいのだ。
そして、その下級兵の枠に入っているラディッツは当然の様に殉職扱いとされていた。当初は有給を使っていたから帰ってこないと思われていたラディッツだが、長らく帰って来ない上にポッドの通信にも応じない。
「ベジータ王子やナッパさんは兎も角、ラディッツさんは何かの目的があって行動していた。つまり、その先で何かが起きた……と考えるべきですね」
「しかし、スーナ様。ベジータ様もナッパさんもラディッツもフリーザ軍の索敵範囲を越えた宙域を飛んでいる様です。スカウターの会話を録音する指示は受けていますが通話範囲ギリギリです」
執務室で通常の仕事をこなしながらスーナはアプールから報告を受けていた。未だに行方不明のサイヤ人達の事を話していたが進展はなかった。
「そろそろ捜索も打ち切りませんと人員が割かれるばかりです」
「そうですね……結果が出ないとフリーザ様に物理的に割かれかねませんから、そろそろ何かの情報が欲しい所です」
スーナの笑えない冗談にアプールの顔がひきつった。その時だった。執務室のスーナ専用の回線に通信が入った。スーナはすぐに回線を開くと慌てた様子の兵士の顔が映る。
『失礼しますスーナ様!ベジータ様とナッパさんのスカウターに反応がありました!』
「宙域の確認とスカウターの会話ログの録音を!私もすぐに向かいます!」
報告を聞いたスーナは即座に立ち上がり、執務室から通信室へと急ぎ、アプールも後を追った。
通信室に到着したスーナ。そこでは既に会話ログや現在位置の確認作業が進められていた。
「状況はどうなっていますか?」
「ハッ、ベジータ様とナッパさんのスカウターに反応がありました。現在位置は遥か辺境の宙域です。ろくに繁栄もしていない惑星ばかりの宙域ですね」
スーナが兵士に確認するとベジータとナッパは思ってた以上に遠くに行っていたらしく、フリーザ軍の索敵範囲ギリギリの地点だった。
「この惑星は……?」
「はい。この青い星は現地名称で地球と言うらしいです。未だに宇宙に出る宇宙船の開発すら遅れている文明レベルの低い星です。人口はそれなりにいる様ですが……少なくとも軍の侵略対象にはなっていませんね」
スーナがベジータとナッパが居る惑星の情報を求めると兵士は短時間で集めた情報を提示した。兵士の言うように文明レベルは低く、フリーザ軍の侵略対象にすらなっていない様な惑星だった。
「確かに技術水準は低そうですね……だったらなんでベジータ王子とナッパさんはこの惑星に……」
「スーナ様、スカウターの会話ログを確認します」
スーナには地球がベジータとナッパが進んで侵略に行く様な惑星には見えなかった。そのスーナの思考を遮る様に兵士の一人がベジータとナッパのスカウターの会話ログをモニターに映した。
[念の為に聞くが……貴様ら地球に何しに来やがった?]
『その声……ラディッツを殺った奴だな?』
会話ログを見て、スーナはサッと血の気が引いた。ラディッツが殺された?……その事実に驚愕していたスーナだが会話ログが更に映し出される。
『アイツ、ナメック星人だぜ』
『なるほど、ナメック星人ならラディッツが始末されても不思議は無いって事か。なら、お目当ての物を持っている可能性が高いな』
会話ログを見ながらスーナは首を傾げた。この会話からベジータとナッパが何かを求めて地球に行ったのは理解したが、ベジータの言うお目当ての物が何かは分からなかったのだ。
『ナメック星人には、並外れた戦闘力の他に不思議な力を待つと聞く。眉唾物の話だと思っていたが本当らしいな。ドラゴンボールを作ったのも貴様だろう?』
『へへっ……なんでも願いが叶うってのも本当か』
此処までの会話ログを見てスーナは思い出した。過去にナメック星人が不思議な魔法みたいな力を持っていると噂話を聞いたのだ。宇宙人の中には戦闘力が低い代わりに不思議な力を持つ種族が存在する。ナメック星人もその中の一つなのだろう。
その後の会話ログは、通信に影響が出たのか上手く聞き取れない物ばかりで、録音も会話ログも上手く作動しなかった。
「地球が遠すぎるのと通信状況が悪いようですね」
「肝心な部分の会話が聞けただけ充分でしょう……ラディッツさんの死も確認……出来ましたから……」
確認ログを確認していた兵士の言葉になんとか返事を返したスーナ。同じサイヤ人が死んだ事に心を痛めていた。そしてスーナが顔を背け辛そうな表情になっていると最後の会話ログが映し出された。
『戦闘力……7000、7500……馬鹿な、ま……』
『おい……カカ……の戦闘……は!?』
『8000以上だ……[バキャ!]』
ベジータとナッパの会話。ベジータの忌々しそうな声とナッパの焦る声。最後の音はスカウターの破壊音だった。飛び飛びのログだったが見逃せない部分があった。
「戦闘力が8000以上!?」
「地球にはそんなに強い戦士が居るってのか!?」
騒然とする通信室。フリーザ軍の兵士の中でも戦闘力が2000以上(私個人の見解であるので、無視してくださっても構いません)の存在は貴重であり、中々存在しない。だが、地球には戦闘力が8000を超える者が存在する会話があったのだ。驚くのも無理はなかった。
「落ち着きなさい。この会話ログを私の端末に送っておいてください。私はフリーザ様にこの事を報告してきます」
「ハッ、了解しました!」
スーナは慌てる兵士達に声を掛け、通信室を後にした。
「ラディッツ……さん……」
毅然とした態度を保っていたスーナだったが通信室を後にした直後、その瞳から涙が溢れていた。