スーナがメディカルポッドに入った次の日。傷と体力を完全に回復したスーナは、メディカルポッドから出ると着替えて早くも書類を纏めていた。題目は『サイヤ人の生き残りの可能性』
スーナはターレスの残した『サイヤ人の生き残りはまだいる』の発言から、宇宙の何処かにまだサイヤ人の生き残りが存在するであろう事を推測し、ナメック星の件が終わったらフリーザに進言して調査を行おうと考えていた。ある程度、案を纏めた書類を制作し一休みしようかと考えていた所で、執務室に下級兵の一人がノックした後に入ってきた。
「失礼します、スーナ様。間もなくギニュー特戦隊が到着いたします」
「わかりました。私も出迎えに行きましょう」
下級兵はスーナの表情を見た後にギョッとしたが上司であるスーナの前もあり、すぐに姿勢を正してスーナを見送った。スーナの姿が見えなくなるまで頭を下げていた下級兵だが、スーナが完全に見えなくなると大きく息を吐いた。
「ぶっはぁぁぁぁぁ……緊張したぁ……」
「おいおい、他の幹部方じゃないんだからスーナ様にそこまで緊張感しなくても……」
スーナを見送った兵士をたまたま通り掛かりの兵士が声を掛ける。だが、スーナを見送った兵士はガバッと顔を上げて抗議した。
「バカ野郎!今のスーナ様のお顔を見てないのか!」
その兵士の一言に怒鳴られた兵士は、スーナの顔を見ていないので頭の上に?マークを上げるだけである。
◇◆◇◆
「うぉぉぉぉぉぉっ!リクーム!」
「ケーケッケッケッ!バータ!」
「はぁぁぁぁぁぁっ!ジース!」
「ふぉぉぉぉぉぉっ!グルド!」
「はぁぁぁぁぁぁっ!あ、ギニュー!」
ギニューを始めとするギニュー特戦隊のメンバーは独特のポーズを好む。それをフリーザとスーナは冷めた目で見ていた。
「み」「ん」「な」「そろっ」「て」
「「「「「ギニュー特戦隊!!!」」」」」
そして五人組は息ピッタリと最後に決めポーズをした。その場には冷たい空気と沈黙が流れる。
「ま、待っていました……よ」
フリーザは色々と言いたいことがあったが、なんとか労いの言葉を絞り出した。しかし、ギニュー特戦隊にはそれ以上の事があった。
「おい、スーナどうした!?」
「いつもなら冷めたコメントの一つが出てるぞ!」
ギニュー特戦隊はポーズを解くとスーナに駆け寄る。いつもならツッコミの一つが入るのに今回は何もない。ギニュー特戦隊が慌てるのも無理もなかった。
「スーナ……何があったんだ?」
「……お父……さん……」
ギニューがスーナに歩み寄るとスーナは俯いていた顔を上げる。そこには涙を目の端に溜めたスーナの泣きそうな表情だった。今まで見たことのないスーナの顔にギニュー特戦隊の誰もがギョッとした。
「その件については私から説明しましょう」
「は、畏まりました。お前等、整列!」
フリーザの一言にギニューは特戦隊を並ばせた。スーナもギニューの隣に立つ。
「このナメック星にはドラゴンボールと呼ばれる何でも願いの叶う玉があるそうです。私はそれを集めていましたが裏切り者のベジータが私からドラゴンボールを奪いました。その過程でドドリアさんとザーボンさんはベジータに襲われて殉職と相成りました。一度はベジータを捕らえましたが脱走され、アプールも殺されました」
「な……ザーボンとドドリアが……アプールまで……」
フリーザの発言にギニューは驚きを隠せなかった。ベジータがザーボンとドドリアを倒した事もそうだが長年、スーナの上司と教育係となっていた二人が死亡したのだ。更に長年スーナの部下として共に居たアプールまでもがベジータに殺されたのだ。スーナの胸中を考えれば泣くのも無理はないとギニューは思う。
「更に連れてきていた兵士の八割がナメック星人の抵抗で使い物にならなくなりましてね……スーナにも連れてきて貰ったんですが、そちらも他のサイヤ人に襲われて全滅……」
「他のサイヤ人に?フリーザ様、生き残ったサイヤ人はスーナ、ベジータ、ナッパ、ラディッツの四名だけかと……」
「それが違った様ですね。スーナを襲ったターレスというサイヤ人によればサイヤ人の生き残りはまだ居るとの事でしてね。ま、そのターレスとやらも意識を失ったスーナに倒された様ですが」
「スーナに?いや、しかし……」
「隊長、スーナの戦闘力が4000にまで上がってますぜ」
フリーザの説明を受けていたギニューだが、信じれないと言い掛けた所でスカウターでスーナの戦闘力を測ったバータが口を挟んだ。