ドラゴンボール ギニュー親子の物語   作:残月

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スーナの思い・ギニューの決意

 

 

 

宇宙船に戻ったスーナは修理指示や土壌調査を始めていた。

宇宙船はスーナが思っていた以上に損壊が激しく、通信機が無事なのでいっそ惑星フリーザから迎えを頼んだ方が早いかも知れないと考えていた。

土壌調査は既にフリーザの指示である程度進んでいた。しかし、今からこの星を開拓するのではコストが掛かりすぎる為に、住む星を失った宇宙人用の移住惑星にした方が良いかもしれないとスーナは考えていたが、フリーザはドラゴンボールで願いを叶えたらナメック星は花火にする予定なのをスーナは知らなかったりする。

 

 

「宇宙船の修理状況はどうですか?」

「フロートは無事ですが船体の方がボロボロですね。応急修理で飛ばす事は可能ですが惑星フリーザまで保つかどうか……」

 

 

スーナは部下から宇宙船の修理状況を聞きながら、やはり通信機で惑星フリーザに迎えを頼んだ方が良いだろうと考えていた。その時だった。

 

 

「「ギニュー特戦隊、出動!!」」

 

 

宇宙船の窓からギニューとジースが数名の部下をバックにスペシャルファイティングポーズを取っていた。いつもなら全員揃ってポーズを決めているのに何故、二人でしているのか疑問に思ったスーナは宇宙船の外に出る。

 

 

「何をしてるんですか。お父さん、ジースさん」「……………」

「ス、スーナ……」

 

 

 

宇宙船の外に出たスーナはギニュー達に問いかけるがギニューは口を閉じ、ジースはあからさまに動揺していた。

 

 

「スーナ……良く聞け。グルド、リクーム、バータがベジータとその仲間達に殺された」

「た、隊長!?」

「え……お、お父さん、冗談にしては笑えない……」

 

 

ギニューは意を決して今の状況を説明した。スーナには黙っているのだろうと思っていたジースは驚きを隠せず、スーナは驚愕のあまり思考が上手く回らなかった。

 

 

「本当の事だ。リクーム達はベジータ達を後一歩の所まで追い詰めていたが新たに現れたサイヤ人に敗北した」

「そ、そんな……」

 

 

ギニューの説明にスーナは信じられなかった。いつも敵を軽く見て慢心しているギニュー特戦隊だが、それは強さの裏返しでもある。事実、今までギニュー特戦隊を倒せる者は居なかったのだから。

 

 

「俺はこれから奴等の敵討ちに向かう。スーナ、お前は此処で待っていろ」

「そ、そんな……私は!」

 

 

食って掛かろうとするスーナの肩に手を置いて落ち着かせるギニュー。

 

 

「いいから聞け。こんな失態をフリーザ様に報告するなど現段階では出来ん。俺自ら出動し、部下の失態を消してくる。その上でフリーザ様に報告する……それしかない」

 

 

普段からふざけている事の多いギニューが真面目に話をしている。それだけでもスーナを驚かせる要因なのだが、ギニュー特戦隊がやられた事もあり、スーナはギニューが追い詰められているのだと改めて感じた。

 

 

「………わかった。でも、お父さんも気を付けて」

「ああ……必ず戻るから心配するな」

 

 

ギニューは泣きそうになっているスーナの頭にポンと手を重ねると、素早い速度で飛び立っていく。

 

 

「スーナ、そこの足元にドラゴンボールを隠したから後は頼む」

「はい、此方は私が引き継ぎます」

 

 

ジースも一言残してから飛び立っていく。ジースがスーナにドラゴンボールの話をしたのはドラゴンボールの警備を預かっていたギニューからの引き継ぎと言う事だ。

スーナは涙目になっていた目の端を指で掬い上げ涙を拭う。

フリーザとギニューから仕事を任されたのだ、まだ泣くわけにはいけないとスーナは涙を堪えた。

 

しかし、悲劇は続く。ギニューを見送ってから宇宙船に戻り、仕事を再開したスーナの前に驚くべき人物が現れたのだ。

 

 

「ベ、ベジータ王子……」

「ほう……これは好都合だ。ギニューの奴をカカロットに押し付けていれば宇宙船が手薄になっているだろうと思っていたが、まさかお前が居るとはなスーナ」

 

 

ボロボロの戦闘ジャケットを身に纏ったベジータがフリーザの宇宙船に侵入してきた。恐らく、ギニュー特戦隊との戦いで傷付いたのだろう。そしてその口ぶりから先程、ギニューが言っていた新たに現れたサイヤ人にギニューを任せて、自身はフリーザの宇宙船に来たのだろうとスーナは推測していた。

 

 

「さっきはお前に別れを告げられたが……今度は俺から言ってやるぞ。じゃあな、スーナ」

「くっ!」

 

 

ベジータはニヤリと笑みを浮かべるとエネルギー波を手にチャージしており、スーナに向けて放とうとする。スーナは咄嗟にガードしようとした。ベジータとスーナの戦闘力の差を考えれば意味は無いかもしれないが、何もしないよりはマシだろう。

 

 

「皆、スーナ様を守れ!」

「「「オオオオォォォォォォォォッ!!」」」

「み、皆さん……」

「ふん、ご苦労な事だ!」

 

 

ベジータがエネルギー波を放つ瞬間、宇宙船に残っていた兵士達がスーナの盾になる様にベジータの前に立ちはだかる。それを見たスーナは驚き、ベジータは関係無いとばかりにエネルギー波を放つ。放たれたエネルギー波はスーナと部下達を飲み込み、宇宙船の一室を完全に吹き飛ばした。

 

 

 

 

◆◇sideギニュー◆◇

 

 

 

ギニューはリクーム、グルド、バータを倒された敵討ちに向かい、ベジータと見覚えの無いサイヤ人と対峙していた。ギニューは新たに現れたサイヤ人『孫悟空』の戦闘力が相当に高いと直感的に感じていた。二人とも倒そうかと思っていたがベジータは即座に戦線離脱をした。

 

 

「ベ、ベジータの野郎逃げやがった!」

「馬鹿者!すぐに奴を追え!フリーザ様の宇宙船にはスーナが居るんだぞ!」

 

 

ベジータが逃げた事にジースは叫んだ後にギニューからの怒声を浴び、慌ててベジータの後を追う。

それを皮切りにギニューと悟空との戦いが始まった。素早い動きに数度合わせた拳と蹴りの応酬。数度の接触の後に二人は距離を開ける。

 

 

「オメェ達でも仲間を思う気持ちってのがあるんだな。さっきの戦いでもフェアな戦いぶりだしよ」

「俺を他の奴等と同格に思わない事だな。だが……貴様の力は俺よりも強そうだ」

 

 

ギニューは先程の戦いから悟空の戦闘力が高いと感じ取っていた。対する悟空はギニューがフェアな戦士だと感じていた。先程、戦ったリクームやバータ、ジースは油断していた上に自身との力の差も感じ取れない連中だったが、目の前の男は違うと考えていた。

 

 

「力の差を感じたのなら、自分の中の星に帰ぇれ。オラは無駄な殺生はしたくねぇ。特にフェアな戦士であるオメェは死なせたくねぇ」

「………フッ」

 

 

悟空の発言にギニューは何処か諦めた様子でスカウターを外し、笑みを浮かべた。そして昔の事を思い出していた。

 

 

◆◇◆◇

 

 

『ボディチェンジ?』

『そう!それこそ俺の最大の奥義にして究極の技なのだ!俺は自分の体と相手の体を入れ換える特殊能力があるのだ!だから万が一、敵が俺よりも強くても相手の体を奪い俺は更なる力を手に入れられるのだ!』

 

 

ギニューはスーナに自分の特殊能力の話をしていた。その能力とは『ボディチェンジ』その特殊能力は相手の体と自分の体を入れ換える能力である。

 

 

『お父さん……その能力は普段から使ってるんですか?今まで見たことありませんけど』

『自分より弱い者と体を入れ換える意味は無いからな。もう20年以上は変えていないぞ』

 

 

スーナの疑問に答えたギニュー。今の体になってから既に20年以上は経過しており、惑星ベジータでコルド大王がフリーザに軍を譲る発言をした際にも今現在の姿だった。

 

 

『俺の能力は無敵。仮に俺よりも強い奴が現れても俺自身の体を傷付けてから体を入れ換えれば済むからな』

『確かにその戦法は有効かも知れませんけど……その力に頼りすぎると痛い目を見るかも……』

 

 

ギニューは自分の力を完璧な物だと確信していたがスーナは不安そうにしていた。

 

 

『案ずるなスーナ。俺よりも強い存在とはフリーザ様の一族以外には存在しない。事実、俺は今の体になってから20年はそのままなんだからな』

『そっか……でも私はお父さんがボディチェンジをするのはやっぱり嫌かも。だってお父さんは今の姿が私にとってのお父さんなんだから』

 

 

ギニューはスーナを安心させる様に頭を撫でてスーナは自分の思いをギニューに告げた。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

「スーナに嫌われようが……戦士としての誇りを失おうが……俺の命はフリーザ様の為に……あるのだ!」

「なっ……オメェ何を!?」

 

 

ギニューはスカウターを地面に落とすと自分の胸を右手で貫く。突然の事態に驚く悟空。そしてその隙は致命的なものとなった。

 

 

「チェーンジ!!」

「なっ!?」

 

 

ギニューは両腕を広げて叫び、向かい合った悟空はギニューから放たれた光を避ける事が出来ずに直撃した。


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