ドラゴンボール ギニュー親子の物語   作:残月

61 / 116
今回は早めに仕上がったので。


修行の始まり、スーナの蟠り

 

 

 

「はっ!やっ!たあっ!」

「スピードは中々のものだが、パワーが足りん!パワーが足りんのなら手数を増やせ!」

 

 

次々に放たれるスーナの拳や蹴りを捌いていくピッコロ。悟空達の修行に交ざったスーナだが、クウラや悟空ではなくピッコロが相手をしているのには理由があった。

 

まず悟空やクウラでは実力差が有りすぎる上にどちらも実戦タイプで指導者には不向きであり、悟飯は姉に攻撃できるかと言えば無理だろう。互いに甘えが出そうであり、結果ピッコロが相手をするしかないと言った状況である。

 

 

「うーん……じっちゃんに人に教える時の修行とか聞いてみっかな……」

「貴様の師か。どんな奴だ?」

 

 

悟空とクウラはスーナの修行を見ながら会話をしている。普通に考えれば敵対関係にありそうな二人だがスーナの修行、そして武人としての本能からか、戦いたいという欲求はあっても敵対関係に発展していないのが現状であった。

 

 

「頑張って下さい、姉さん!」

「桃香ちゃん……結構強かっただなぁ」

 

 

同じくスーナの修行を観戦しているのは悟飯とチチである。本来ならチチは修行には付き合わないのだが、スーナの始めての修行日。流石に母親として心配だったのか今日だけでも、と見学に来ていた。

 

 

 

「貴様もギニューと変わらんな……過保護だ」

「クウラさんにはわからねぇべな。桃香ちゃんは女の子だし……それにいつも桃香ちゃんは働きすぎだべ。根を詰めすぎで、いつか倒れちまうべさ……」

 

 

過保護にスーナの事を気にかけるチチにクウラは甘いと言うが、チチはスーナがズッと無理をしているのではと心配していた。

 

 

「働きすぎ……か。そうかも知れんな。もしも奴が昔計画していた通りならスーナは今ほどワーカホリックにはなっていなかっただろう」

「え……どういう事ですか?」

 

 

クウラの発言に思わず質問をする悟飯。

 

 

「数年前の話だ……俺はスーナと初めて会った時に奴が計画していたファイルを見た。その計画通りならフリーザ軍は既に宇宙の覇権を得ていただろう。だが、その計画は頓挫した。そもそもスーナが忙しくしていたのはベジータが地球に来た為だ。ベジータが抜けた穴を埋める為にスーナは奔走し、更にフリーザ軍の制圧下にあった惑星をクラッシャー軍団を名乗る連中が侵略、壊滅。その後処理に追われたと同時に幹部としての仕事もあった。上にも下にも問題を抱えれば仕事浸けになるのも無理はあるまい」

「姉さん……頼まれたら断れない性格ですし……」

 

 

クウラの事を敵視していた悟飯だが、それもここ数日の修行で解消されていた。そしてクウラからスーナが地球に来る前の話を聞いてスーナの性格なら断れないだろうと実感していた。

スーナは頼まれたら断れない性格をしているし、それを実行してしまうだけの知識と力を持っていた。それがスーナをワーカホリックにしてしまった由縁とも言える。

 

フリーザは使える部下として、ドドリア・ザーボンは同僚として頼みにし、部下は頼れる上司として、ギニュー特戦隊は甘えられる存在としてスーナを求めていた。そして、それら全てを受け入れていたのがスーナである。

 

 

「だが、ナメック星でフリーザ以下、幹部連中が死んだんだ……今さら、奴が仕事をする必要は無いんだがな」

「きっと……仕事してないと、そのフリーザやギニューの事を思いだしちまうんだべさ」

 

 

クウラの呟きに答えたのはチチだった。

 

 

「クウラさんから話を聞いて納得しただ。きっと桃香ちゃんは仕事をする事でフリーザやギニューの事を考えない様にしてるだ。考える時間を増やしたら思いだしちまうから……」

「お母さん……」

 

 

 

チチはスーナが何故、仕事に没頭するか答えに辿り着いていた。仕事に集中していればフリーザやギニュー、死んだ同僚や部下の事を考えずに済むとスーナは考えていた。事実、スーナは孫家でフリーザやギニューの話題は出すが直ぐに話を逸らす。その考えから逃げる様に。

 

 

「つまりスーナは逃げてると言う事か……」

「だべな……頭ん中を空っぽにする為だべ。でも、頭ん中を空っぽにするのは泣くのが一番だべ。でも、オラじゃ桃香ちゃんは泣いてくれないべさ」

 

 

クウラの呟きにチチは俯いた。スーナとチチの関係は極めて良好だが、スーナは母親としてチチを頼りに泣いた事はない。そもそもスーナが地球に来てから1度も泣いた事がないのだ。それはスーナがチチを母親として甘えていないのではないかとチチに考えさせるには充分なものだった。

 

 

「………泣くのが良い……か。ならば泣かせてやろう」

「…………え?」

「おい、オメェ……」

「姉さんに何をする気ですか?」

 

 

そんなチチの思考を遮ったのはクウラだった。クウラはチチの話に何かを感じ取ったのかチチを一瞥した後にピッコロと修行をしているスーナに視線を戻した。その仕草にチチは勿論、悟空や悟飯ですら嫌な予感を感じていた。

 

 

 

「言っただろう……泣かせて、頭の中を空っぽにしてやるんだ!」

「え、きゃあっ!?」

「おい、クウラ!?」

 

 

そう言ったクウラは飛び立ち、スーナ目掛けて蹴りを見舞う。突然の事態に反応出来なかったスーナは蹴り飛ばされ、ピッコロも動揺し蹴り飛ばされたスーナを呆然と見た後にクウラを睨んだ。

 

 

「奴は修行以前の問題だった……だから先ずやるべき事があった……それだけだ。貴様等は手を出すな」

「おい、待て!」

 

 

ピッコロに手出し無用と念を押したクウラは蹴り飛ばしたスーナの元へと飛んでいった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。