ドラゴンボール ギニュー親子の物語   作:残月

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スーナの心の叫び

 

 

 

「な、何をするんですかクウラ様!?」

「フリーザもそうだが……貴様も相当、甘いな。先程の戦闘で貴様には才能が無いとわかった。邪魔になるくらいなら此処で消してやる」

 

 

蹴り飛ばされたスーナは体勢を整えて空中で制止するが、クウラは更なる猛攻を仕掛けてきた。

 

 

「や、やめてください!」

「フリーザやギニューなら此処でやめるだろうが、俺は止まらん!」

 

 

スーナはクウラの拳を避けようとするが、その避けられず殴られ、その直後足首を掴まれると猛スピードで地面に叩きつけられる。

 

 

「く……あ……」

「……立て」

 

 

クウラはスーナの縛った髪を掴み上げ、無理矢理立たせる。

 

 

「その甘さが……貴様の弱さの最大の原因だ」

「やめ……て……」

 

 

スーナを無理矢理立たせたクウラは更にスーナを痛め付けようと掌にエネルギー波を溜めていた。

 

 

「何してるだ、クウラさん!」

「貴様は黙っていろ!」

 

 

 

突然の事態に呆然としていたチチだが、正気に戻りクウラを叱りつける。その事に苛立った様にクウラはスーナに放とうとしていたエネルギー波の目標をスーナからチチに変えた。

エネルギー波が着弾し、周囲に爆発と砂塵が舞い上がる。

 

 

「お母さん!」

「これも貴様の甘さが招いた結果だ。フリーザの様な所でぬるま湯に浸かっていたからこうなる」

 

 

その所業に悲鳴を上げたスーナにクウラは更にスーナを生い立てる。

 

 

「私の事はいくらでも言っても構いません……ですが、フリーザ様の事やお母さんを傷付けた事は……」

「許さない……か?死んだ連中に義理立てして何になる?時間の無駄だ。貴様の父ギニューもそれ故に死んだのだろう?」

 

 

怒りに震えるスーナにクウラは決定的な一言を告げる。それが皮切りだった。

 

 

「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「ほぅ、戦闘力がハネ上がったな」

 

 

スーナは叫びと共に戦闘力がハネ上がる。その姿は以前、ターレスと戦った際の擬似的なスーパーサイヤ人の状態だった。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「先程、ナメック星人の時よりもパワーもスピードも上がったが、まだまだだな」

 

 

怒りに任せて拳を振るうスーナだがクウラはいとも簡単に受け止める。スーナの腹に膝を叩き込み、動きが止まったと同時にエネルギー波を浴びせた。

 

 

「くぅ……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「こんなエネルギー波など……こうしてくれる!」

 

 

スーナはボロボロになりながらもクウラにエネルギー波を放つが、クウラは尻尾でスーナのエネルギー波を弾き返した。

 

 

「貴様は自分自身で才能に蓋をしている。実力を晒せば既に貴様はギニューよりも強い」

「そ、それは……」

 

 

クウラの発言に少し正気に戻るスーナ。クウラの指摘は事実だった。擬似的なスーパーサイヤ人になったスーナはギニューを遥かに凌ぐ力を持っていた。

 

 

「貴様はギニュー達に義理立てして力を隠した……いや、力の出し方が分かっていなかった。だが、地球に住み、記憶が戻った貴様は力を出せるようになり、ギニュー達を助けられなかった事を悔やんだ……フリーザやギニューの仇である孫悟空やベジータが傍にいながらにして何も出来なかった」

「う、ううぅぅぅぅぅ……」

 

 

クウラの発言にスーナの気が乱れていく。金色に輝いていた気が揺らぎ始めていた。

 

 

「貴様は地球で過ごした日々とフリーザ軍での日々の狭間で悩み苦しんだ。だが……いい加減、その胸中に抱いた思いを解放したらどうだ?」

「出来るわけ……無いじゃないですか……フリーザ軍での事も地球での事も……私には大事な……」

「ならば……次は貴様の弟を殺してやろうか?そうすれば貴様の甘さも消えるだろう」

 

 

クウラの発言に頑なに心情を明かさないスーナにクウラが更なる発言を重ねて、スーナは再び擬似的なスーパーサイヤ人になる。

 

 

「私は……フリーザ様を尊敬していました!悪人であっても宇宙の帝王であったフリーザ様を!お父さんはいつも親バカで!でも、一番に私を見てくれていて!特戦隊の皆もバカで、いつも私に仕事を押し付けるけど優しくて!ザーボンさんもドドリアさんも私に仕事を教えてくれて!アプールさんは私の仕事を支えてくれて!皆……皆、私にとっては家族だったんです!」

「ならば何故、仇を取らん!」

 

 

スーナは叫んだ。叫びながらクウラに殴りかかり、クウラは指先からデスビームを放つ。スーナはそれを両手で弾くとクウラの懐に飛び込んだ。

 

 

「それと同じ位に……お母さんも悟飯もブルマさんもクリリンさんも……地球の皆さんを好きになってしまったんです!悟空さんも困った人だけどお父さんみたいに優しくて!ベジータ王子は相変わらずだけど戦士としての誇りが誰よりも高くて!」

 

 

スーナは涙を流しながら今まで誰にも漏らさなかった自分自身の胸の内を叫んだ。

フリーザ軍での思いを持ちながら、地球で過ごした日々もスーナにとって忘れ難いものとなっていた。その心情の狭間で揺れていたスーナはズッと苦しんでいた。誰にも話せず、自問自答を繰り返し、悩み続けた。

 

 

「それを打ち明けず……貴様は表で泣かずに心で泣いていたって訳だ」

「それが何だって言うんですか!私はフリーザ様やお父さんの事は忘れられない!でも、地球の皆さんを恨むなんて出来ない!」

 

 

いくら話した所で解決しない問題を抱えていたスーナは叫びと共にクウラを蹴ろうとしたが、クウラはそれを避けるとスーナの尻尾を握った。

 

 

「ひゃうっ!?」

 

 

尻尾を握れたスーナは力が抜けると同時に悲鳴を上げた。そのままクウラは尻尾を掴んだまま腕を振り上げる。

 

 

「だったら……忘れなければ良かろう。中途半端にするから苦しむ……忘れずに糧にしろ。今の貴様をフリーザやギニューが望むとは思えん」

「え……クウラ様?」

 

 

クウラとは思えぬ優しい声音にスーナは思わず、視線がクウラの顔に向けられる。そこには慈愛と言うべき……フリーザやギニューが自身を褒めてくれていた時のような優しくて力強い笑み。

 

 

「ヌゥン!……あ」

「い……いったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!?」

 

 

その直後、スーナの尻尾を掴んだまま地面に叩き付けようと腕を振り下ろしたクウラだが、掴んでいた尻尾から重石が抜けた様な感覚が手に伝わる。クウラが自身の手の中を見るとそこにはダランと重力に負けた茶色い物があった。それはスーナの尻尾だった。

地面に叩き付けられたスーナは、地面に叩き付けられた事と尻尾が千切れた痛みで叫びを上げる。

 

 

「ひぐぅぅぅぅぅぅぅ……」

 

 

スーナは千切れた尻尾の付け根の部分を手で押さえながら地面をのたうつ。

 

 

「桃香ちゃん、大丈夫だべか!?」

「ふぇっ!お母さん!?」

 

 

その痛みを気遣う様に寄り添った女性の声にスーナが顔を上げると、其処にはクウラのエネルギー波を浴びて死んだと思っていたチチの姿があったのだ。

 スーナが視線を移すと苦笑いをしている悟空、気まずそうにしている悟飯、我関せずといった様子のピッコロがそっぽを向いていた。

 


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