ドラゴンボール ギニュー親子の物語   作:残月

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間話 カエルのギニューの物語

 

 

 

「もう……すっかり春だな」

 

 

 

その人物は窓から見える光景に目を細め、季節を感じていた。その仕草から懐かしさと哀愁を漂わせる人物は思いを馳せていた。

 

 

「俺は……いつまでカエルのままなんだ……」

 

 

口に出した言葉は虚しくも『ゲコォ』としか出なかった。

 

『※ギニューの言葉は翻訳して日本語でお届けします』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の名はギニュー。宇宙の帝王フリーザ様の右腕として戦っていた戦士だ。宇宙中のエリートを集めたギニュー特戦隊の隊長として誇りある戦士としてフリーザ様にお仕えしていたのだが、ナメック星での戦いで俺以上の戦士との戦いで苦戦した俺は特殊能力チェンジを使用し、敵のサイヤ人の体を奪った。だが、裏切り者のベジータのせいで再び劣勢に立たされ、今度はベジータの体を奪おうとしたのだが、先程まで体を奪ったサイヤ人に邪魔をされ俺はカエルとチェンジしてしまった。

それからは苦難の日々だった。カエルになった俺は喋る事も叶わず、再びチェンジする事を封じられ何も出来なくなってしまった。最大戦闘力が12万を誇っていた俺が単なるカエルに成り下がってしまうとは……

 

何も出来ない事を嘆いていた俺だが気が付けば何故か、見知らぬ星に降り立っていた。周囲を見渡すと裏切り者のベジータやナメック星人達が会話をしていた。

彼等の会話を盗み聞きしていると、ナメック星のドラゴンボールでソンゴクウとフリーザ様を除いた生き物を地球と呼ばれる辺境の惑星に転移させたらしい。

 

あのソンゴクウと言うサイヤ人はフリーザ様と互角な戦いをしていたらしいが、まさかそこまで強い戦士だったとは……そんな事を思っているとベジータやナメック星人が騒ぎ始めている。何事かと思えば、其処に居たのはスーナだった。無事だったのかっ!?ベジータがスーナを殺したと聞いていたから心配したんだぞ!駆け寄ろうと思ったのだが、カエルの体では上手く走れない。なんとも、もどかしい気分だ。

 

しかし、俺に更なる悲劇が見舞われる。なんとスーナは記憶を失っていたのだ!そんな今までの……俺と親子として過ごした過去が……戦士として指導した記憶が……共にスペシャルファイティングポーズをした微笑ましい思い出が……

 

『※最期のはギニューの妄想です』

 

なんて、なんて悲劇なんだっ!今すぐにでもスーナを抱き締めてやりたい!記憶を取り戻させたいのだ!

しかし、スーナはベジータやソンゴクウの子供のゴハンとやらに連れられて行った。記憶を失ったスーナは言われるがままに共に行動をしている。ダメだ、知った仲とは言っても男にヒョイヒョイ付いていくな!男は狼なんだぞ!

注意したがったが俺の口から出た言葉は『ゲコッ』だった。その声に俺は初めてナメック星人達の注目を浴びる事となる。

 

その後、俺は地球産のカエルではなくナメック星のカエルだと思われ、保護される事になった。俺の思惑とは違ったが俺もスーナやナメック星人達が保護される所へと連れて行かれる様だ。

連れて行かれた施設は、この惑星にしては発展した科学がある様だ。くそっ……カエルの姿じゃなかったら見学したいくらいなのに……しかし、俺の思いとは裏腹に俺は小動物を放し飼いにしている温室に放り込まれた。

 

そこで俺は数ヶ月、生活する事となる。適度な室温に危険の無い生活。更に働かなくとも得られる食事……いかん、このぬるま湯の生活は俺をダメにする!……とは思いつつも今の俺では温室から抜け出す事すら叶わない……

そんな俺の最近の日課はブルマの仕事の手伝いでカプセルコーポレーションに来ているスーナに寄り添う事だ。本来なら今、スーナがお世話になっている家に親として挨拶に行かねばならぬのだがカエルの身ではそれも叶わない。

 

しかし……スーナは本当に明るく笑うようになった。記憶喪失なのも影響しているのだろうが、スーナは元々、心優しい性格だ。フリーザ軍の仕事も心を押さえ付けて実行していた節があるから、今のスーナを見ていると今までの俺の教育が間違っていたのではないかと思ってしまう。

 

『※教育をしたのは主にフリーザとザーボンである』

 

そんな事を思いつつもカエルの姿の日々は続くのだが、ある日……ベジータが荒ぶった様子でカプセルコーポレーションに帰って来た。

 

 

「ちっ……カカロットと未来から来たサイヤ人がスーパーサイヤ人だと……ふざけやがって。俺がナンバーワンだ!」

 

 

普段からイラついた様子の多いベジータがやたらと苛立っていた。カカロットとはソンゴクウの事だったな。それに未来のサイヤ人とはなんだ?

 

何があったか知りたいがカエルの身では調べる事も出来ん……いったい何が起きているんだ……チェンジさえ……チェンジさえ出来れば人の姿に成れると言うのに……

 

 

しかし、俺のこの願いが叶うのは数年後となった事を今の俺は知るよしも無かった。


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