クウラが孫家に訪問してから数日。スーナはクウラの言い付けを守って悟空達の修行に参加していた。
現在のスーナのスケジュールは午前中に仕事を済ませ、昼食を食べた後に明日の仕事の調整。それを済ませた後に午後から悟空達の修行に参加。夕食まで修行をした後に夜はチチの家事を手伝いながら、体を休めるといった日々を過ごしていた。
悟空や悟飯は修行をしつつもスーナの予定に合わせた修行をしていた。悟空はチチからのリクエストもあり、車の免許の習得に励んだ(ピッコロも同伴)しかし、行った翌日に免許を貰ったと豪語した悟空から話を聞いたスーナは『免許を貰った』ではなく『免許を押し付け、来ないように言われた』が正しかった。スーナは仕事をする傍ら、悟空に正しい車の知識を勉強させ、貰った免許をちゃんと使用できる様になるまで知識と実技を叩き込んだ。仕事をしながらも悟空に勉強させられるのはスーナがフリーザ軍時代に培った技術でもあった。
悟飯は悟空やスーナが仕事や勉強に追われている間に自習やピッコロとの修行に励んでいた。本来なら自習だけの予定だったが、悟飯が少しでも悟空やピッコロに近付きたいからと自習時間を減らして修行をしていた。
ピッコロも悟飯の心情を察してか修行を施していた。
ピッコロは悟飯が自習をしている時は一人で瞑想し、午後の修行は悟飯とスーナを鍛えていた。
修行も勿論だが体を休める為に休日を設けていた。休みの日はスーナも仕事をせずに孫家で家事に勤しんだり、悟空の交遊関係に挨拶に回ったりしていた。既に亀仙人、占いババ、カリン、ヤジロベーと言った人達と出会い、現在では界王星で北の界王と会っていた。
「元フリーザ軍人事担当スーナと申します。今は孫桃香として地球に住んでいます」
「悟空の所にいる奴にしては礼儀正しいな……」
界王星で界王に挨拶をしたスーナは、界王に悟空に関連した人物にしては礼儀正しいと感じていた。そもそも悟空は界王に対して、軽い態度で接していたし、ピッコロが界王星に行った時の印象はかなり悪かった。故にスーナの評価も低かったのだが、今は右肩上がりの様だ。
「悟空さんがスミマセン。この銀河を担当する界王様に対する態度が悪かったのは承知していました。改めて謝罪をしたく悟空さんに連れてきて貰いました」
「悟空は態度はあれじゃが、その精神は水晶の様に透き通っておる。だからこそ、仲間も増えるしワシも許す気になってしまったんじゃよ」
深々と頭を下げたスーナに界王は気にするなと告げた。
「それにお主も同様だな。フリーザの下に居たにしては他人を思う心が強い。サイヤ人としての闘争本能よりも優しさの方が強いようだしな」
「私は私です。今も昔も……対人関係は少し変わったかも知れませんが……」
界王は僅かな会話の中でスーナの心がサイヤ人らしからぬ優しい心の持ち主だと感じていた。悟飯とは違い純粋なサイヤ人で優しい心を持つのは悟空だけかと思っていたが、例外が更に増えたのだと界王は思う。
「今はまだ修行中の身です。次に来る時は私自身の力で来たいと思います」
「悟空の瞬間移動か……お前さんのセンスなら瞬間移動を体得するには悟空よりも早かろうて」
界王との会話を終えたスーナは離れた所でバブルスやグレゴリーと遊んでる悟空の所へ歩き始める。界王はそんなスーナの背中に話しかけながら後ろを歩いた。
「悟空さん、お待たせしました」
「おう、もういいんかスーナ?」
スーナが悟空に歩み寄るとバブルスとグレゴリーと遊んでいた悟空は立ち上がりながらスーナと界王に向き合う。
「はい、お待たせしました。バブルスさんもグレゴリーさんもまた会いましょう」
「ウホホホッ」
「礼儀正しい方ですね」
スーナは身を屈め、バブルスとグレゴリーにも挨拶をする。界王はその姿を見て、孫家で世話になっていると言っていたスーナは、実は孫家がスーナに世話になっているのでは?と考えていた。
「じゃあな、界王様!」
「失礼致します」
片手を上げて軽い挨拶をして瞬間移動して地球に帰還する悟空と界王に向かって深々と頭を下げるスーナ。
普通、年齢を考えれば悟空とスーナの行動は逆なのだが、悟空とスーナの精神年齢を考えれば妥当だと感じてしまうのが二人の関係なのだと思えるから不思議だった。