界王星から帰ったスーナは挨拶回りを終え、修行に専念する事にした。ブルマの仕事を手伝っていたが、そちらはある程度目処がたったので農業の方もチチに任せる形でスーナも本格的な修行に打ち込んでいた。
「……………」
「そうだ……気を感じ、精神を乱さない様にするんだ」
スーナは悟空指導の下、瞬間移動の体得に励んでいた。
瞬間移動は気を感じとる事と気のコントロールを繊細に扱わなければならないらしく、スーナは座禅をしながら気のコントロールを学んでいた。悟空が気の繊細なコントロールが出来るかと言われれば否で、悟空は一度習得した瞬間移動を後は感覚だけで扱っている。その証拠に瞬間移動を教えたヤードラッド星人は瞬間移動を悟空の様に額に指を這わせなくても使える。だから悟空がスーナに瞬間移動の事を指南するにも感覚的な部分が多く、理詰めタイプのスーナには理解が届かない。
スーナは悟空達と違い、戦闘力のコントロールが出来ない。ベジータは天才的なセンスで相手の戦闘力を察知したり、戦闘力のコントロールを習得したが、スーナは元々、戦闘員ではない為に戦闘力のコントロールの習得に苦戦していた。
「戦闘のセンスは高いようだがコントロールはまだまだだな。昔のお前を見ているようだ。才能があるのに、それを持て余していた頃のな……」
「姉さんも僕と同じなんですね」
それを遠目で見ていたピッコロと悟飯はスーナの才能について話し合う。戦闘に不馴れなスーナはかつての悟飯と重なる部分が多々あった。
根を詰めても上手くいかないのが気のコントロール。スーナは深く息をすると目を開き、座禅を解いた。
「今まで相手の居場所を知るにはスカウターを使っていましたから大変です」
「でも、ベジータさんもナメック星にいた時には気をコントロールしてましたよ。姉さんもすぐに出来ますよ」
悟飯の発言に「そうありたいですね」と返したスーナは話題に上がったベジータの事を思い出す。未だに苦手意識は強いが元々、同僚(立場的にはスーナが上司)であった為にスーナがカプセルコーポレーションに行った時には挨拶程度の会話もする。そんな中、ベジータとブルマが一緒にいる事が最近、多いのだ。
端から見ればベジータがブルマを言いように使っている様に見えるのだが、元々のベジータを知っているスーナからしてみれば今のベジータはブルマに僅かにだが気を許している様にも見えた。
「それとだけんどよ、オラは桃香にもスーパーサイヤ人になって欲しいんだ」
「私が……ですか?」
気のコントロールの話の途中で悟空はスーナにスーパーサイヤ人になれる様に願っていた。
「クウラにも言われてただろ?スーナはスーパーサイヤ人になれるって。それに何回かスーパーサイヤ人になりかけたんだからコツを覚えれば成れる筈だ」
「私はまだスーパーサイヤ人に成りきれてませんから、苦労しそうです」
悟空は一度でもスーパーサイヤ人になったのなら、やれる筈だと自分の感覚で話、スーナはまだ気のコントロールが出来ないし、スーパーサイヤ人の時の感覚が薄いから実感が沸かずにいた。
実はスーパーサイヤ人のなる条件は純粋な心の持ち主である事と一定水準の力を持つ者。そして爆発的な怒りか悲しみを感じる事でスーパーサイヤ人に覚醒する。
これ等はスーナは条件を全てクリアしていたが、スーナに闘争心が無い為にスーパーサイヤ人への覚醒も一時的なもので終わっていた。
「スーパーサイヤ人になるには怒りが切っ掛けになる……この前、桃香のマグカップ割っちまった事を言えば怒るか?」
「私がスーパーサイヤ人になる前に余罪を追求しますから、彼方に行きましょうか悟空さん?」
悟空のカミングアウトにスーナはスーパーサイヤ人への覚醒はせずに静かな怒りを浮かべながらにこやかに悟空の肩を掴む。フリーザやギニューが居たらスーナが本気で怒ってる時の怒り方だと評しただろう。
余談だが、約束の日になるまでの三年間、スーパーサイヤ人になる怒りとは別の怒りを悟空に与え続ける事になり、悟空はスーナに頭が上がらなくなっていく事となる。
その後もスーパーサイヤ人になろうとしたスーナだが、スーパーサイヤ人になる事は叶わず、三年の月日が流れ……人造人間が襲来する日になった。