「くそっ……また被害者が!」
セルを見付けらない悔しさからガンとスカイカーの操縦席を殴る。あれから既に二日が経過したがセルは未だに見つからず被害者が増えるばかりだった。
フリーザやコルド大王の細胞が使われているなら行動パターンが読めないかとスーナに訪ねた所、「コルド大王様の細胞が混ざっているなら競馬場に現れる可能性も……」と言っていた。この時、クリリン達は「そんなバカな」とマトモに取り合わなかったのだが、その日の夕方にセルが競馬場のある街に出現したニュースを見て、絶句した。
そして三日目になった日、トランクスの薬が効いたのか悟空が目を覚ました。悟空は夢の中で今までの事態を把握しているとの事で、悟空は今のままじゃ人造人間に勝てないから修行をすると決意。
神様の神殿にある『精神と時の部屋』と呼ばれる部屋なら一日で一年の時間が過ごせるのだと言う。
悟空は悟飯やスーナを連れて言っても良いかと、チチに問う。チチは猛反発しようとしたが、クウラに指摘されていた『過保護』である事やスーナの今までの事を思うと簡単には反発出来なかった。
人造人間の戦いが終わった悟空はマトモに働き、悟飯の勉強を邪魔せず、スーナの苦労を減らす約束をさせられた。悟空は今までの反省もあるのか、素直に頷いた。
悟空は一人では人造人間に勝てないからと、ベジータやトランクスも精神と時の部屋での修行を勧める。
揃って神様の神殿に行き、最初はベジータとトランクスが修行を開始した。
悟空、悟飯、スーナは神様の神殿でベジータとトランクスの修行が完成するのを待った。
一方のピッコロ、クリリン、天津飯、ヤムチャはカメハウスで待機し、セル探しを続けていた。
そしてベジータとトランクスが精神と時の部屋に入ってから丸一日が経過しそうな頃、悟空を探しに来た人造人間16.17.18号がカメハウスへと来てしまう。ピッコロは人造人間達を人のいない島へと誘い、そこで戦うと決めた。今のピッコロなら人造人間の一人と互角に戦うのは可能だろう。
始まった戦いの気を感じた悟空、悟飯、スーナは神様の神殿で戦いの行方を案じると同時に未だに出てこないベジータとトランクスに焦りを感じる。
スーナは神殿の端で正座をしながら瞳を閉じ、戦いの気を感じながら心を沈めていた。自身も精神と時の部屋に入ると決まってはいたが、自身の修行方針を見定めていた。クウラが以前、言っていた『自分自身に蓋をしている』と言っていたのは正にこの事だろう。その証拠に実戦を通じてスーナはスーパーサイヤ人への覚醒を果たしている。ならば、スーナがやるのは自分自身の開放と言うべきか。
スーナが、その事に悩みを抱えていると戦況に変化が起きた。17号との戦いを優位に進めていたピッコロだが、セルが乱入してきてしまう。セルはピッコロの予想を遥かに越える程の戦闘力を有していた。ピッコロはセルが完全体になるのを防ぐ為に立ち向かうが、敵わず返り討ちにあってしまう。すると16号が立ち上がり、セルを倒そうとするがセルは一瞬の隙を突き、17号を吸収してしまう。
セルは17号を吸収し、第二形態になるとあっと言う間に16号を半壊させてしまう。最早、逃げられないと絶望した18号だが、天津飯がその場に乱入し気功砲でセルの足止めをする。命懸けの連続気功砲で16.18号を逃がした天津飯。しかし、気の消耗が激しい気功砲を乱発した結果、天津飯は力尽きて倒れてしまう。邪魔をされた事に苛立つ、セルは天津飯を殺害しようとするが、悟空が瞬間移動で天津飯を助けだし、阻止する。悟空は瀕死の状態のピッコロも助け、その場から離脱した。
神様の神殿に戻った悟空達は今後の話をしていた。ピッコロや天津飯は仙豆で一命を取り留めたがセルの強さに若干弱気を見せていた。
その時、丁度ベジータとトランクスが精神と時の部屋から出てくる。トランクスの話ではもっと早く出てくる予定だったがベジータが納得できずに多少、長引いたらしい。
そこへクリリンから神様の神殿の場所を聞いたブルマが現れる。ブルマはベジータ達の為にフリーザ軍で使用されていた戦闘用のジャケットを作成し、持ってきたのだと言う。この戦闘用のジャケットの作製にはスーナも関わっており、スーナの助言で実はフリーザ軍時代の物よりも質が良くなっている。
新たな戦闘用のジャケットに着替えたベジータはセルの気を感じとり、飛んでいってしまう。トランクスも同じく、戦闘用のジャケットに着替え、悟空から仙豆を受け取り、ベジータの戦いを見届けに。またはベジータが敵わなかった場合、自分が戦う為に後を追った。因みに、スーナはトランクスに「ベジータ王子はサイヤ人の王族としてのプライドを取り戻していますが、絶対に余計な事を仕出かします。しっかり監視しておいて下さい」と言い含めていた。トランクスはスーナの迫力に頷くしか答えを持ち合わせていなかった。しかし、スーナの悪い予想は的中する事となる。
セル第二形態との戦いはベジータの一方的な戦いで終わるかと思われたが、余りにも差が付いてしまった戦闘力にベジータが呆れてしまったのだ。更にセルはベジータに「完全体になれば絶対に負けない」と挑発を始める、これが今のベジータの琴線に触れた。
スーナの悪い予想通り、ベジータはセルが完全体になる手助けをし始めたのだ。
間の悪い事にクリリンはブルマから受け取った人造人間の緊急停止コントローラーを18号への慈悲から破壊してしまったのだ。そこで18号はセルに見付かってしまう。
セルの完全体を阻止しようとしたトランクスだが、ベジータに邪魔をされてしまい、18号は抵抗も虚しくセルに吸収されてしまった。
完全体になったセルはクリリン、そしてベジータを圧倒的な力で倒してしまう。トランクスも戦ったが、パワーに頼りきった変身をしてしまい、セルのスピードに翻弄され、勝機を見失い敗北する。
トランクスにトドメを刺そうとしたセルだが、ほんの数日前まで17.18号にすら敵わなかった者達が強さを増したのかをトランクスから聞き出し、それを聞いたセルは笑みを溢した。
「そうか、ならば武道大会を開くとしよう……お前は知らないだろうが、嘗ての地球では天下一武道会と呼ばれた武道大会があったのだ。それを再び、開くとしよう。時間をあげるから精々、修行して私を楽しませてくれたまえ」
「そうやって時間を与えるのは自分はフェアに戦うと言うつもりですか?」
「桃香さん!?」
セルがトランクスにトドメを刺さずに止めたと同時に瞬間移動で現れたスーナがセルを睨みながら会話に参加する。仙豆を飲んでベジータを抱えていたクリリンも会話に参加はしなかったものの現場に戻ってきていた。
「ほぅ……キミが孫桃香か。いや、スーナと言うべきかな?私の中のフリーザの細胞が喜んでいるよ。キミに会えて嬉しいとね」
「フリーザ様のつもりで話しているなら、とんだ見当違いですね。あの方の私に対する思いはそんな物ではありません」
スーナに否定されたセルは、先程までの余裕そうな表情を僅かに歪めた後にスーナを見定めてニヤリと笑みを溢した。
「私を甘く見るなよ孫桃香。貴様ごときの考えなぞ、お見通しだ」
そう言ってセルはスーナの心を読む。
『パンツくらい履けよ、バーカ』
「うわぁぁぁぁっ!」
「ああ、セルが逃げた!」
「様々な細胞を取り込んだ究極の人造人間が!」
スーナの心を読み取ったセルは鼻血と涙を流しながら逃げ去った。その光景にクリリンとトランクスは驚愕する。
「す、凄いです桃香さん。いったい、どんな技を……」
「フフフ……一先ず、セルも逃げた事ですし、私達は対策を練りましょうか」
トランクスがスーナを尊敬の眼差しで見ていた。スーナはにこやかに振り返りながら完全体になってしまったセルの対策を考えようと提案をした。