ドラゴンボール ギニュー親子の物語   作:残月

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スーナの戦闘服と過去の指切り

 

 

 

 

スーナは神殿の部屋でフリーザ軍の戦闘服に身を包む。

 

 

「ちゃんとした形で戦闘服を纏うのは久しぶりです」

「貴様は普段から着ていたスーツが戦闘服だったからな。フリーザやギニューは親バカだからスーツの繊維を戦闘服と同等の素材で作らせていたからな」

 

 

実のところを言うならスーナが戦闘服に着替えなかった……というよりは着替えさせてもらえなかったのはギニューが指示したからだ。あの当時でもスーナは女性的な体つきになってきており、兵士達がスーナを良くない視線で見ていた事に気付いたギニューはスーナに『事務仕事を優先し、トレーニングの時はジャージで済ませ、極力戦闘服を着るな』と言っておいたのだ。後半の事情は兎も角、前半の事情はフリーザにとっても良い話だった。スーナが事務に集中してくれれば助かる事の方が多いからだ。

事実、現在でもヤムチャが体のラインが出る戦闘服をチラチラとスケベ目線で見ている。

 

 

「しかし、スーナよ。本当に一人で入るのか?俺が嫌ならトランクスと入ると言うのもありだが」

「私も私なりに見詰め直したい部分があるんです。おもえば私は一人で過ごした事が殆ど無かったので」

 

 

ピッコロが話した通り、スーナは精神と時の部屋に一人で入ると申し出たのだ。修行の効率を考えれば一人よりも二人の方が良いのだが、スーナは一人が良いと主張したのだ。

フリーザ軍ではザーボン、ドドリアと共に行動し、フリーザに付き添う事が多く、更にマネージャーとしてギニュー特戦隊の管理。人事のトップとして部下と接する機会が多かった。

地球に来てからは孫家に居着き、カプセルコーポレーションで仕事をしたりとスーナは『一人で何かをする』といった経験が実質皆無だった。

 

 

「私はフリーザ様の下で甘やかされていました。それに地球に来てからも孫家で穏やかに過ごしていましたから。私は此処で一度、自分を戒めなければなりません」

「……桃香さん。貴女を甘やかしていたフリーザとは先程、桃香さんを見て鼻血を流していたセルに使われている細胞の持ち主ですか?」

 

 

フリーザの事を思い出しているスーナだがトランクスの発言にセルがフリーザの細胞を取り込んでいる事を思い出させられ、少々機嫌が悪くなる。

 

 

「そう、貴方の父親の細胞が使われている人造人間です」

「ふ……僕は認めちゃいませんよ」

 

 

スーナの反論にトランクスはそっぽを向きながらセルの中にベジータの細胞が使われている事を否定したかった。

 

 

「それに私が誰かと修行するとすれば私の才能を見出してくれたクウラ様とですね」

「そう言えば桃香はフリーザ軍に居たんだろ?別の軍だったクウラとの交流はあったのか?」

 

 

クリリンはスーナからフリーザ軍時代の話を聞いているし、フリーザとクウラの不仲を知っていたのでクウラが修行相手として成り立つのか不安だった様だ。

 

 

「以前、お話しした惑星ブロッサム以外にもクウラ様とは会っていましたよ。そうですね……」

 

 

そう言ってスーナは昔の事を思い出す。それは惑星ブロッサムから数ヶ月後の事だった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

惑星フリーザでフリーザ軍とクウラ軍はコルド大王に呼び出されていた。数年に一回の割合で両陣営は集まり、親睦会をしている。

フリーザとクウラはコルド大王の元へと出向き、ギニュー特戦隊やザーボン、ドドリア、クウラ機甲戦隊は部下同士で情報交換したり親睦を深めたりしている。例年通りならギスギスした雰囲気のまま話は進むのだが、今回からスーナも参加した事で、その空気も多少は緩和されていた。

 

 

その頃、コルド大王と顔合わせをしていたフリーザやクウラは互いに何も口にせずただ黙っているままだった。

 

 

「お前達……久し振りに家族での顔合わせだと言うのになんだ、その態度は」

「親父よ……俺はこんな集会は廃止すべきだと散々言った筈だが?」

「おや、珍しく意見が合いましたね兄さん。パパなら兎も角、僕も貴方とは顔を会わせたくないんですよ」

 

 

コルド大王が会話のきっかけを作ってもクウラとフリーザは険悪な雰囲気を崩さなかった。

 

 

「お前達、兄弟で仲良くしようとは思わないのか?」

「ふん、こんな甘さの残る奴と仲良くできる筈もない」

「スーナを僕から取り上げようとしてる奴なんて、ごめんだね」

 

 

 

コルド大王がクウラとフリーザの喧嘩を仲裁しようとしたが失敗に終わる。

『昔、少しは仲が良かったのに……』とコルド大王は日記を手にしながら目の端に涙を溜めていた。

 

 

 

「いい加減にしないか、お前達。もう喧嘩しないとパパに指切りしなさい」

「…………」

「…………」

 

 

ため息を溢したコルド大王は自身の小指を差し出しながらクウラとフリーザに喧嘩しないようにと告げた。それを見たクウラとフリーザは無言のままコルド大王を見詰める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方でギニュー特戦隊とクウラ機甲戦隊の親睦会はスーナが間に入った事で、程々に仲良く親睦を深めていたのだが突如、惑星が地震でも起こしたかの様に揺れ始める。

 

 

「な、なんだ!この揺れは!?」

「フリーザ様とクウラ様とコルド大王様が喧嘩をしている様です!」

「他所でやれ、宇宙最強一族!」

 

 

 

 

この喧嘩は騒ぎを聞き付けたスーナが仲裁に入るまで続いた。実を言うと帰り際にクウラがスーナを連れ帰ろうとした所をフリーザが目撃し、第二ラウンドに発展しそうになるのだが、そこは流石にギニュー特戦隊とザーボン、ドドリア、クウラ機甲戦隊が全力で止めた。

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

「って事がありました。因みにベジータさんはこの頃から連絡や命令無視で僻地に居ましたからコルド大王様の事をご存知じゃなかったのでしょう」

「交流って言うか……」

 

 

あまりにもスケールのデカい兄弟ゲンカに話を聞いていたクリリン、天津飯、ヤムチャの地球人組は引いていた。

この会話の後、スーナは一人で精神と時の部屋へ入っていった。姉を見送った悟飯は少し寂しそうにしていたが、悟飯は悟空に連れられて孫家に帰って行った。


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