街角のスクリーンに映し出されるMr.サタンの姿にスーナは目を細めた。
あの人物は恐らく平均的な地球人としては強い部類に入るだろう。だが、クリリン等の強さとは悪い意味でレベルが違う。恐らく、戦闘力も20前後であろうと推測していた。
※猟銃を持った人間の戦闘力は5
「彼もセルゲームに参加する様ですが……あのナマモノが相手にするか疑問ですね」
スーナは興味を失った様にスクリーンから視線を外す。あの程度の戦闘力と性格ではナマモノ(セル)が相手にするかどうか怪しいと考えていた。
カプセルコーポレーションに到着したスーナは受付嬢に案内をして貰い、ブルマを呼び出す。一日で急成長を遂げたスーナに受付嬢は驚いていたが、「成長期ですから」とニコリと笑みを浮かべたスーナに受付嬢も黙ってしまう。
「すぐに案内させますから」とスーナはギニューカエルの居る温室へと案内された。いつも温室で引っ付いてくるギニューカエルだが、急成長を遂げ体つきが女性らしくなった姿を見てギニューカエルは二足立ちで驚いたリアクションを取っていた。
「いつもながらリアクションが大きいですねアナタは。そして何を訴えているんですか?」
「ゲコッゲコッ!」
ベンチに座るスーナにすがるようなリアクションをするギニューカエル。ギニューは「何で一日でそんなに成長してるんだ!」と叫んでいるのだが当然、スーナには伝わらない。ギニューとしてはサイズの合わない服を着て無防備に肌を晒している状態のスーナを叱っていた。
「ふむ……アナタは私に懐いてくれていますが、言葉が伝わらないのがもどかしいですね。今度、ブルマさんにカエル用の翻訳機でも作って貰いましょうか?」
「ゲコッ!」
「お待たせ、桃香……って服のサイズが合ってないじゃない!?こっちに来なさい!」
スーナの発言にギニューカエルは大層嬉しそうにしていた。しかし、そこでブルマが温室に到着。スーナの成長した姿を見て、ブルマは慌てた。明らかに成長した体と服のサイズが合っていないのだ。男が見れば確実に目を引く姿にブルマはスーナの手を取ると衣装部屋へと連れていった。一人残らされたギニューカエルは翻訳機が出来ればスーナと話が出来ると意気揚々としていた。以前のギニューならばチェンジで誰かの体を奪おうとしただろうが、今のギニューは『スーナと会話する』事の方が重要であり、チェンジの事は頭から抜け落ちていた。
一方で衣装部屋に連れ込まれたスーナはブルマから様々な服を着させられていた。スーナは普段からスーツ姿が多く、たまに着替えても胴着だったりチチから譲り受けた色気薄目のチャイナ服ばかりで流行りの服を着る事がほぼ無い。ブルマはその事を勿体ないと常々思っていた。そこからスーナのプチファッションショーと化していた。戸惑いながらもスーナはブルマが着させてくれる様々な服を楽しみ、ブルマも楽しそうにしているスーナを見て、満足気にしていた。
プチファッションショーを終えた後、スーナはブルマから貰った服を着たまま人造人間16号の修理をしているラボに顔を出していた。その服装はスーナが普段着ないようなカジュアルな服装だった。
診察台の様なベッドで眠る様に横たわる人造人間16号。修理中なのか頭の一部は未だに欠けたままだった。
「彼はまだ修理中なんですね」
「クリリン君とトランクスがDr.ゲロの研究所から持ってきた設計図の解析が先だったのよ。そろそろ修理に掛かるわ。でも、Dr.ゲロはスゴい科学者よ。技術の使い方を間違えなければ人の為になったと思うわ」
修理中の人造人間16号を見て呟いたスーナにブルマはDr.ゲロの研究所から持ってきた設計図を手渡した。
「確かに……この技術は凄いですね。そもそも人造人間19号の強さもフリーザ軍の兵士を遥かに上回る強さだったと聞きます……もしも量産なんかされていたら確実に危険な状態に陥っていたでしょうね」
スーナは口ではそう言いながらも量産は不可能だと考えていた。かつてのレッドリボン軍がある頃ならまだしも今のDr.ゲロにはスポンサーがいない。つまりDr.ゲロはゼロから人造人間を作り出す資金が途中で尽きたのだろう。だから17号18号は人間をベースに改造し、時間は掛かるがセルと言う生物タイプの人造人間を作り出したと考えられる。
そして設計図を見る限り、Dr.ゲロは量産よりも単体での性能を上げようとしていた節がある。16号よりも前の13号14号15号は設計図通りに作られていたならパワーのみに重点をおいた人造人間として設計されている。その完成型が16号なのだろう。クリリン達から聞いた話ではDr.ゲロは16号を動かしたくないと言っていた。確かに16号は悟空達が修行をする前だったら確実に脅威となる存在だった。
「Dr.ゲロの技術はフリーザ軍に居た私ですら驚愕に値する物です。それを地球人が……おや?」
「どうしたの、桃香?」
スーナは人造人間16号の設計図に目を通している段階で気になる部分があった。
「ブルマさん、16号のこの回路……恐らく、自爆用の爆弾ですね」
「え、嘘……まさか……」
スーナは16号の設計図をブルマにも見せながら指でなぞりながら指摘する。当初は否定気味だったブルマも段々、顔を青ざめていく。
「16号のエネルギー源と連動してるじゃない、コレ!こんなのが爆発したら、西の都なんか全部吹き飛ぶわよ!?」
「エネルギー源になっている回路も凄いですね。リミッターが付けられてるみたいですけど全部解放したら……スーパーサイヤ人を上回りますよ、多分」
ブルマが叫びながら怯えるとスーナは更なる爆弾発言を投下した。今の段階でも16号の爆弾は西の都を破壊する程の威力を秘めている。それがスーパーサイヤ人並のエネルギーを解放した状態で爆発したらどうなるか。西の都どころか地球ですら破壊しかねないと予想される。
「恐らく、Dr.ゲロは万が一に16号が悟空さんに負けたとしても自爆させる気だったんでしょうね。この範囲の爆発なら逃げられない威力でしょうし」
「アンタ……よく、冷静でいられるわね……」
淡々と推測を重ねるスーナにブルマは少々呆れ顔だ。
「クリリンさん達はDr.ゲロが『16号が目覚めれば世界が滅ぶ』の発言を聞いたと言っていました。恐らくですがDr.ゲロは17号と18号の様に16号が言う事を聞かない存在になる事を恐れたのでしょう。仮に16号がフルパワーで暴れたら地球は一ヶ月もしない内に滅んでいたでしょう」
スーナの予想は実は当たっていた。未来の17号18号が破壊と殺戮を楽しむ戦闘マシーンと化しているのも己のパワーに酔いしれて暴走している為であり、止められる人間がいない事もそれに拍車を掛けていると言える。
「兎に角、爆弾は外した方が良さそうね……万が一にでも爆発させる訳にはいかないわ」
「そうですね。ですが、エネルギー源のリミッターは任意で解除できるようにしておきましょう。その方が戦力になりそうですし」
ブルマが16号の設計図を改めて食い入る様に見ていた。すぐにでも爆弾を外すつもりの様であり、スーナはそんなブルマの案に乗る事にした。
「リミッター解除って大丈夫かしら?暴走とか……」
「ですから任意での解除なんです。一定時間で再びリミッターが作動する様にしておけば問題ないでしょう。それにクリリンさんから聞いた話では16号は優しい心の持ち主だと聞いています」
ブルマはとんでも爆弾が仕掛けられていた16号の存在に不安を抱きつつあるが、スーナは逆に戦力にしてしまおうと考えていた。『使える物は使う』フリーザ軍時代の考えは健在だった。
「それに……悟空さんから聞いた人造人間の印象と近いものを感じるんです。Dr.ゲロが16号を失敗作と揶揄したのはそれが原因だと考えられますし」
スーナは修行していた三年間に悟空がレッドリボン軍と戦っていた頃の話を何度も聞いていた。その中でスーナの興味を引いたのは初期の頃に作られた人造人間8号の事だ。彼は争いを嫌う優しい性格だったらしく、悟空とも仲良くなった。
それを考えればDr.ゲロが16号を失敗作と呼んだ理由と重なるのだ。人造人間8号は命令に逆らった挙げ句、悟空の味方となった。穏やかな性格の16号も8号と同じようになるのではと危惧していたと考えられる。
「ともあれ、彼もセルを倒す事に賛同していましたから戦力にはなるでしょう」
「そうね……まずはセルをどうにかしなきゃだもの」
スーナの助言もあり、16号は爆弾を外した後にリミッター解除の改造を施される事となった。