ドラゴンボール ギニュー親子の物語   作:残月

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夫婦水入らずのプロデュース

 

16号の様子を見終えたスーナは孫家へ一度帰った。その際にチチから「良かった、桃香ちゃんは不良になってねぇだ」と言われた。その発言にスーナはスーパーサイヤ人状態の悟空と悟飯を見たチチが髪を金髪に染めた不良だと勘違いしたと察した。普通に考えれば一日で髪の色が変わる訳がなく、染めたと勘違いされても仕方ない事である。その後、悟空からスーパーサイヤ人の事を聞いていたチチだが、『不良=染めた金髪』の方程式が成り立っているのかチチはスーパーサイヤ人の事を歓迎していない様だった。

 

自身もスーパーサイヤ人になれる事を話したスーナだが、チチは「髪を染めるのは大人になってからだ!」と断固としてスーナのスーパーサイヤ人化を認めなかった。まあ、戦いになれば否が応でも変身しなければならないのだが。

 

 

「悟飯は神様の神殿に残ったと聞いていましたが……悟空さんはどちらへ?」

「悟空さならドラゴンボールを探しに行っちまっただ……まったく、オラはいつも待たされてばかりだべ」

 

 

悟空の所在を聞くとチチは深いため息を溢す。チチがため息を溢すのを見たスーナは「この夫婦って良く離婚しませんね……」と思わず考えてしまう。

 

過去のチチの発言から悟空は結婚してから一銭も稼いでいない上にラディッツとの戦いで死亡していた為に悟飯を育てていたのはピッコロ、クリリンと言える。更にナメック星の戦いの後にヤードラッド星で修行をして居たので三年間行方不明。そして地球に帰ってきてから対人造人間対策に修行をして家を空ける事が多かった。そして現在。必要な事とは言えど、嫁をほったらかしてドラゴンボール集めをする夫。

 

 

「明日にでも説教してやりますか……」

 

 

独特の感性の持ち主ではあるが、家族を大事にしようとしたギニューと自由奔放に生きる悟空では今のスーナの心境で悟空の評価は下方修正気味である。

 

 

「と、桃香ちゃん?なんか、怖い気配がするだぞ?」

「いえ、我が家の大黒柱(仮)にお説教をどうしようかと思いまして」

 

 

スーナの恐ろしげな気配を察したチチは少し引き気味である。

 

 

「それはそうと、お母さんも悟空さんをもっと引き留めないといけませんよ」

「で、でも悟空さは昔からああなんだべ」

 

 

ここでスーナの矛先はチチへと向けられた。

 

 

 

「それでもです。聞けばお母さんと悟空さんはマトモな夫婦生活もしていなかったと聞きます。セルゲームまでまだ数日ありますし、悟飯は神様の神殿に友達と一緒に居ますから夫婦水入らずの時間を作るべきです。ドラゴンボール探しは明日から私が行きます」

「と、桃香ちゃん……」

 

 

チチは義娘に気を使われた事も心に響いたが、悟空と共に過ごせる時間の事も心に響いた。

 

 

 

「因みに私も明日からカプセルコーポレーションに泊まりますから、ご心配無く」

「へ……じゃあ……と、桃香ちゃん!」

 

 

スーナの発言に顔を真っ赤にするチチ。悟飯は神様の神殿でスーナはカプセルコーポレーションで寝泊まりをする。つまりは夜に誰も帰らない。悟空とチチのみが家に居る状態となる事を示したのだ。その意図に気付いたチチはスーナを咎めようとしたがスーナはチチの両手を包むように握る。

 

 

「セルを倒し、世界が平和になったら悟空さんに働くように言いましたが、目標が無ければ悟空さんは仕事をサボって修行に行くでしょう。そこに『子育て』と言う責任が重なれば今よりマシになると思います。どうも悟空さんは野性的と言うか世捨て人みたいな部分がありますから」

 

 

スーナの歯に衣を着せぬ物言いにチチも引き気味だが的を得ている為に反論も出来なかった。

この後、帰って来た悟空に先程までの話を伝え、半ば強引にドラゴンレーダーを取り上げたスーナは「明日から私がドラゴンボールを集めます。悟空さんはもう少し、チチさんを労る事!」とビシッと指を差しながらこれは既に決定事項だと告げた。

 

 

翌日、朝早くから出掛けたスーナは鞄にお泊まりセットを入れた状態で出発した。ブルマには事前に連絡をして居たので泊まる事は構わないと言われ、寧ろ歓迎された。

 

 

「サイヤ人って気の利かない連中ばかりだと思ったけどスーナみたいに気遣いの出来るのもいるのね」

 

 

と電話越しに言われ、スーナはブルマが遭遇したであろうサイヤ人『悟空』『ベジータ』『ラディッツ』を思い浮かべる。気遣いとは無縁とも言えるラインナップだった。

元々サイヤ人は粗暴な人種が多く、寧ろスーナの方が希少な人格とも言えた。

 

 

 

「その分、混血である悟飯やトランクスは気遣いが出来る方なんでしょうね」

 

 

スーナは純血よりも混血の方がマトモな人格のサイヤ人が多いのではなかろうかと思案する。事実、能天気な悟空からは真面目な悟飯が息子として産まれ、プライドの塊で気難しいベジータからは礼儀正しいトランクスが産まれている。育ちの関係もあるのだろうが、純血よりも混血である事の方が良く思えてきたのだ。

 

 

「ま、今日から数日私も家に帰らない訳ですから夫婦水入らず。来年には悟飯に弟か妹でも出来るかもしれませんね」

 

 

 

空を飛びながらドラゴンレーダーを使い、クスクスと笑うスーナ。

 

因みにこの時の発言が数ヶ月後に的中する事に成るのだが、今のスーナにそれを知る術はなかった。


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