ヤムチャに軽い制裁を加えたスーナは引き続きドラゴンボール探しを続けた。
他のトラブルは少なく、順調にドラゴンボールを集め、残り後一つとなっていた。途中で世界最高を自称する殺し屋と遭遇するが今のスーナには問題にならないので割愛。
そしてセルゲームまで残す所、三日となりドラゴンボールを集め終えたスーナは一度、家に帰る事にした。それと言うのもドラゴンボール集めをしている最中でも悟空とチチの事が気にかかっていたからだ。瞬間移動を駆使して、孫家に帰ったスーナは丁度、洗濯物を干していたチチと会った。
「桃香ちゃん、帰って来ただな!」
「ただいまです、お母さん。ドラゴンボールが集め終わったので一度帰ってきました」
帰って来たスーナに喜んで抱きつくチチにスーナも嬉しそうにしていた。
「あれ、悟空さんは?」
「悟空さなら、夕飯の狩りに行ってるべ。悟空さも今は、夕飯の狩りや薪割りなんか色々とやってくれてるべさ」
悟空が居ないことを疑問に思うスーナ。まさか、折角、二人きりの状態にしたのに一人で出掛けたのかと考えたスーナだが、チチから家事の手伝いをしているのだと聞いて一安心したと同時に今まで、どれだけ手伝ってなかったんだと言いそうになった。そして、スーナにはもう一つ気になる事があった。
「お母さん、髪を下ろしていたんですね。普段のお団子も似合ってますけど、ストレートも似合っています。悟空さんも惚れ直すんじゃないですか?」
「そ、そんな事ねぇだよ。悟空さはオラがどんな髪型や服装してたって、何も言わねぇべさ。それにオラももうオバサンの年齢だべ」
スーナは珍しく髪を下ろしていたチチの事を珍しげに観察し、少々ニヤニヤとしていた。対するチチは多少照れながらも悟空の思考を理解しているのか、否定した。
「そんな事ありませんよ。お母さんはまだ若くて綺麗なんですから」
「桃香ちゃん、大好きだべ!」
スーナの手放しの誉め言葉にチチはスーナを抱き締めながら喜んだ。ここまでストレートにチチの容姿を褒める人が他に居なかったのでチチの心にはクリティカルヒットしたらしい。
「あり、帰ってたのか桃香?」
「はい、ドラゴンボール集めが終わったので一度、帰ってきました。それはそうと、悟空さん。今のお母さんを見て何か、感想はありませんか?」
「と、桃香ちゃん……」
すると、仕留めた巨大な猪を担いだ悟空が丁度帰ってきていた。スーナは良いタイミングだったとばかりに悟空にチチの容姿について尋ねた。急に話を振られたチチは狼狽える。
「どうって……いつものチチじゃねぇか」
「セルの前に貴方から倒すべきですね。何か無いんですか、可愛いとか綺麗だとか……」
「お、落ち着くだ桃香ちゃん!」
悟空のコメントに気を解放し、悟空を殴り飛ばそうとするスーナをチチは慌てて止めた。今のスーナなら本当に悟空を仕留めかねないからだ。
「チチが可愛いのは当たり前じゃねぇか。当たり前の事は言わなくてもいいだろ?」
「な……オラが……か、可愛い……当たり前……」
「ふわぁ……」
悟空の一言にチチは顔が真っ赤になり、端で見ていたスーナも当てられた。
悟空の、この言葉が本心なら悟空はチチの事を可愛くて綺麗だと思っている。そしてチチのリアクションを見るに悟空は今まで、その事を一度も口にしなかったのだろう。
それどころか好きだとか愛してるとかすら言っていない可能性すらある。その証拠にチチは頭から湯気が出る程に顔を赤くしている。今まではチチが悟空の気持ちを自ら察する事で夫婦が成り立っていたのだろう。
「わ、悪ぃ……オラが当たり前だと思う事は言わなくても良いもんだと。チチは可愛いぞ」
「ま、待って……悟空さ。そんな風に言われたらオラ、心臓が持たないだ……」
今の状態のチチに狼狽える悟空と悟空のストレートな物言いに胸キュン状態のチチ。
「寧ろ……これはチャンスかも知れませんね」
ポツリと呟くスーナ。悟空とチチが二人きりの状態を作り上げたが現状では普通に生活をしていただけだろうとスーナは推測していた。だが、今の状態の二人をちゃんとした形で二人きりにすれば間違いなく変化が起きるだろう。そう思ったスーナの行動は早かった。
「悟空さん、お母さん。私は神殿にドラゴンボールを届けに行ってきますね。悟空さんはお母さんに今まで思った事を全て伝えて下さい。お母さんはちゃんと全部、聞いてくださいね」
「お、おう?」
「ま、待つだ桃香ちゃん!?」
悟空とチチに一言残すと瞬間移動で神殿へと移動した。残された悟空とチチは気まずさが残りながらも夫婦で過ごした。翌日、こっそりと様子を見に行ったスーナは付き合いはじめの様に初々しい悟空とチチを見て作戦が成功したのだと確信した。更にチチは髪型がお団子ではなく、髪を下ろしていた。昨晩の間で随分と夫婦仲が進んだのだとスーナは思う。
そして妙に艶々としているチチを見て、「来年辺り、本当に悟飯に弟か妹が出来るかも知れませんね」っと思いながらスーナはカプセルコーポレーションへと戻った。