ミスターサタンが敗れた事でセルゲームが本格的に始まった。
テレビのアナウンサーに「今のは足を滑らせただけだ。少し休んだら、また挑む」と告げ、それを見たベジータは「レベルの違いに気付いていないのか……バカの世界チャンピオンだ……」と別の意味で驚愕していたりする。
「いよいよ……始まりますね」
「ええ。かつてない死闘が」
悟空がセルゲームのリングに上がり、互いに睨み合う。悟空とセルの睨み合いを見ながらトランクスが呟き、スーナが同意した。
そして悟空とセルの戦いが始まると、その場の全員が固唾を飲んで戦いを見守る。
「今のうちに話しておきますか……16号」
「なんだ、孫桃香?」
戦いから視線は外さずに16号に話し掛けるスーナ。16号も戦いを観戦しながら応じた。
「貴方の体内にあった爆弾ですが、危険でしたので取り除きました。代わりに爆発に使用されるエネルギーを戦闘力に回せる様にしてありますので。リミッター作動式ですからリミッター解除後の稼働時間は二分ほどです」
「……俺を修理した際に取り除いたのか……」
スーナの発言に驚いた表情になり、戦いから視線を外した16号。
「あの規模で爆発されると流石に困るので。リミッター解除の使い所には気を付けてくださいね」
「ああ、承知した……む」
スーナからの説明に了解したと返した16号。それと同時に悟空とセルの戦いにも変化があった。セルは場外負けは勿体無いとセルゲームのリングをエネルギー波で消しとばしたのだ。
16号とスーナは咄嗟にミスターサタンとテレビ局のスタッフ全員を助け出していた。
「あ、ありがとうございます」
「お前達はもう帰った方が良い。邪魔になる」
「貴方達がプロとして中継したい気持ちは分かりますが、せめてもう少し離れるべきです。また私達が助けられるとは限りませんから」
助けられた事に流石に礼を言うアナウンサーだが16号とスーナからは離れた方が良いと告げられる。ミスターサタンとアナウンサー達は忠告に従い離れて行った。離れ際にミスターサタンもアナウンサーも休憩の為に離れるのだと強がりを言ってはいたが。
「ククッ……これでリングアウトは無くなった。この大地がリングとなったのだ。これで勝敗は降参するか死ぬかだけだ」
「成る程、最初に自分で決めたルールを守らない辺り、私達全員に勝つ自信が無くなって来たと……」
大穴が空いた地面に満足したセルはニヤリと笑う。しかし、スーナの発言にこめかみに青筋を走らせたセル。思わずスーナに狙いを定めようとしてセルだが悟空と戦っている最中だったので睨むだけに留まった。その後、互角の戦いをしていた悟空とセルだが悟空が瞬間移動で一瞬の隙を突き、セルの上半身をかめはめ波で吹っ飛ばしたのだ。
「や、やったか……?」
「ヤムチャさん、その発言は前フリでしかないですよ」
ヤムチャが上半身が吹っ飛んだセルを見て喜んだがヤムチャを除く全員の顔は険しいままだった。スーナのツッコミの直後、セルは立ち上がり体を再生させたのだ。セルにはピッコロの細胞とフリーザの細胞が混ざっている。凄まじい生命力のフリーザと再生能力を持つピッコロの細胞が成せる技と言えた。
この後、悟空とセルの戦いは苛烈なものとなったがスーナは悟空とセルの戦いを見ながら疑問が湧いていた。
「悟空さんは……何を狙っているのでしょうか?」
悟空は全力で戦っている様には見えたが、勝つつもりで戦っている様には見えなかった。まるで何かを確かめる様な感じだと思っていた。
「参った……降参だ。オラはどうやっても勝てないってのが良ーく分かった」
「なんだと?」
そんなスーナの予想が当たったのか悟空はなんとセルに降参してしまったのだ。その場の全員が驚愕する最中、悟空はニッと笑みを浮かべながらスーナ達の方を向く。
「オメェの出番だぞ、悟飯!」
「え、僕が……」
「なんのつもりだ、悟空!」
悟空の発言に驚きを隠せない悟飯とピッコロ。悟空は悟飯の才能が精神と時の部屋での修行で開花したとの事だった。事実、悟飯は悟空とセルとの戦いを大した事の無い戦いだと感じていたらしい。
「やはり、そのつもりでしたか……」
「気付いてたんか、桃香?」
スーナの呟きに悟空は意外そうな顔をしていた。
「途中からなんとなく程度でしたけど、そんな気がしていました」
「そっか……やってみろ、悟飯。平和な世の中、取り戻してやるんだ」
「は、はい……や、やってみます」
悟空の思惑をなんとなくレベルでだが察していたスーナにそれぞれが驚く中、悟飯は悟空に薦められるままにセルと戦う事になった。
悟飯とセルの戦う直前に悟空はクリリンから仙豆を受け取るとセルに投げ渡そうとしてスーナに止められた。
「何をする気だったんですか、悟空さん?」
「い、いや……このままじゃフェアじゃねぇと思ってよ」
仙豆を握る悟空の手を止めながらスーナは真顔のまま悟空の手を握り潰さんばかりに力を込めていた。
「もう貴方に任せておけませんね。フェアプレーも結構ですが、地球の危機である事をもっと認識してください……ていっ!悟飯、私が戦いますから貴方は下がりなさい」
「は、はい……」
「お、おい……桃香……」
スーナの有無を言わさぬ物言いと悟空に対して腹部に重い一撃が放たれた。その光景に悟飯とピッコロは引き気味になっていた。
「と、言う訳で私がお相手しましょう」
「おやおや、実力的に悟空はおろか、ベジータやトランクスにも劣るキミが相手とはね」
スーナは悟空の手から奪った仙豆を胴着の内側に仕舞いながらセルと対峙する。スーナ相手なら楽勝だとセルは余裕そうに笑みを溢した。
「ええ……実力的に劣る分、策を弄します」
セルの笑みに対してスーナは懐から馬券を取り出して、ピッと指でセルの方に向けて投げ飛ばす。セルは反射的に馬券を取ろうとした。勿論、スーナがその隙を見逃す筈も無かった。
「隙ありっ!」
「ぶるわぁ!?」
隙だらけとなったセルの腹部にスーナの蹴りがめり込み、セルはそのまま岩場に叩き付けられそうになるが直前で体勢を持ち直して着地した。
「おのれ、姑息な手を……なっ!?」
セルは手の中の馬券に一瞬視線を落として…‥絶望した。馬券の端に手書きで『この馬券はハズレました』と書かれていたのだ。そしてセルが視線を馬券からスーナに戻した瞬間、セルの視界はスーナの放ったかめはめ波で埋められた。
スーナの放った巨大なかめはめ波の渦に飲み込まれたセルに、戦いを見ていた全員が呆気に取られていた。