かめはめ波が直撃し、辺りに粉塵が舞う。瓦礫に埋もれたセルはガラガラと音を立てながら這い出てきた。
「中々やってくれるじゃないか。まさか、こんな手で来るとはね」
「まさか卑怯とは言いませんよね?この戦法は天下一武道会でも反則とされなかった戦法なんですから。ねえ、クリリンさん?」
「あー……い、いやぁ……あははっ……」
「そーいや、ジャッキーのじっちゃんに使ってたなぁクリリン」
土埃を払いながらセルがスーナに歩み寄る。その手には馬券がしっかりと握られていた。対するスーナは挑発するように笑みを溢した後にクリリンに視線を移して微笑んだ。水を向けられたクリリンは苦笑いをし、悟空は当時の事を思い出していた。
それは第21回天下一武道会の準決勝での戦い。クリリンとジャッキー・チュンの戦いの最中、実力的に敵わないと感じたクリリンは隠し持っていた女性の下着を試合の最中にジャッキー・チュンの前に放り投げる。咄嗟にそれを取ろうとしたジャッキー・チュンは隙だらけになり、クリリンの飛び蹴りを食らって場外負けしそうになったのだ。
この行為を審判も咎める事はなく、ジャッキー・チュンが場外負けを防いだ後は普通に試合は進行した。つまりはこの行為に対するペナルティは何も無かったのだ。
今回スーナが行った行為もこの事に照らし合わせれば隙を見せたセルの方が悪い事になる。クリリンはベジータやピッコロから冷たい視線に晒され居心地が悪そうだった。
「しかし、良く知ってたな桃香」
「過去の天下一武道会の事も以前調べましたから。隙を見せるのは寧ろ未熟の証と言う事でしょう」
「ごもっともだな……なら、小細工が通用しない様にするとしよう。かあっ!」
当時の事を覚えていたヤムチャが呟き、スーナは様々な事を調べている過程で今回の戦法を参考にしたと告げる。そんなスーナの態度にセルは馬券を放り捨てると気を解放した。凄まじい気の嵐が吹き荒れた。
「手加減しておれば調子に乗ってくれたな、孫桃香。孫悟空と言い、貴様等は私を怒らせてくれるな」
「怒っているのは私もですよ。フリーザ様の細胞を使っている段階で侮辱でしかないでしょう」
セルがスーナに歩み寄り、スーナは気を解放しスーパーサイヤ人になる。睨み合いながら距離が迫って行く。
「私にフリーザの細胞が使われている事がそんなに気に食わないのかね?」
「貴方は他の人達の細胞を……言わば人の才能を掠め取って全て自分自身が偉いと言わんばかりな態度を取っています。悟空さんやベジータ王子のサイヤ人としての闘争本能。ピッコロさんのナメック星人としての体質。フリーザ様やコルド大王様の残虐性(とギャンブル狂い)を……誰かから盗み、与えられた力を自分の物の様に振る舞う……最低ですね」
セルからの挑発にスーナはニコリと笑みを返した。それが合図だった。スーナが右拳を振るい、セルは左手で受け止める。受け止められた拳を捻りあげられそうになるが、スーナは飛び上がりながら体を捻り左膝をセルの顔面に叩き込もうとするがセルは右手で受け止めた。しかし、スーナは右膝をセルの顎目掛けて放った。放った右膝はセルの顎に直撃したがセルはニヤリと笑みを浮かべる。スーナはそのままセルの顔面を蹴り飛ばして距離を空けた。
「キミも短期間で強くなったのだろうが私には通用しない。孫悟空が言っていた孫悟飯の力も同様だがね。全て無駄な努力だ。このセルには勝てんさ」
「あら、そうでしょうか?悟飯の力は私も信じてますよ。でも、あの子は戦うのが嫌いなんです。ならば私が……年上として、姉として守らねばなりません。悟空さんが悟飯に戦って自らの殻を破ってほしいと言う願いも分かりますけどね。それに悟空さんとの戦いで体力が消費された貴方なら私でも、ある程度戦える様ですし」
セルはドヤ顔をしながら無駄な抵抗だと告げるが、スーナは違った。スーナは悟空の言い分も理解はしている。しかし、その為に悟飯が傷付くと言うなら話は別だと告げた。
「ほう……そこまで、あの小僧の潜在能力を信じるか……ならば、私の方針は決まったな」
「な……ぐうっ!?」
セルは良い事を思い付いたとばかりに一瞬でスーナとの距離を詰め、腹部に一撃を与えた。
「こうやって、キミを傷付ければ孫悟飯は怒りに震え、隠された真の力を発揮するんじゃないのかね?むんっ!」
「く……うああああああああっ!?」
「姉さん!?止めろ、止めてくれ!」
腹部への一撃で動きが止まったスーナを抱き寄せベアハッグで苦しめるセル。その光景を見た悟飯は叫んだ。その瞳には自分が戦わなかった所為で苦しんでいる姉の姿が映し出され、悟飯の心の中でフツフツと何かが湧き上がっていた。