スーナの苦しみの叫びに悟飯から凄まじい気が放たれ始める。
「ほぅ……やはり、キミが孫悟飯のウィークポイントだな。苦しむ姉の姿は弟には刺激的らしい」
「くうぅぅ……ああああぁぁぁっ!」
「や、やめろ……やめてくれ……」
ギリギリとベアハッグでスーナを苦しめるセル。スーナの叫びに比例して更に気が高まっていく悟飯。
「悟空……確かに悟飯がキレれば、その隠された力が解放されセルを倒せるかもしれん。だが、義理とは言え娘があの状況なのを放っておくのか!?」
「わかってる……でも、他に手がねぇんだ……」
「……悟空」
ピッコロの叫びに悟飯同様に怒りに震えている様子の悟空。悟空の本来の予定ならば悟飯がセルと戦い己の殻を破って成長してくれるだろうと願っての行動だったが、スーナが出て来てしまった為に本来思い描いた事とは違う風になってしまった。悟空の見立てでは悟飯が覚醒すればセルをも上回る力となる。だからこそ悟飯を指名したのだ。
悟空とてスーナが苦しむ場面を見たい訳ではない。その思いに気付いたクリリンも悲痛な面持ちで悟空を見上げた。
「まだ真の力を出さんか……ならば方向性を変えてみるか」
「く……あぅ……」
セルのベアハッグから解放されたスーナだがセルのパワーで締め付けられた為に解放されても身動きが取れなくなっていた。
セルは超スピードで移動し、クリリンから仙豆を奪う。そしてセルはニヤリと笑みを溢した後、尻尾の先が開いたかと思えば中から何かが飛び出して来る。
「き、きき……」
「ひゃはぁ……」
「やれ、セルジュニア達よ。奴等を痛めつけろ」
出て来たのは子供サイズのセルだった。セルジュニアと呼ばれた個体は全部で9体存在し、セルの命令を聞いたセルジュニアは邪悪な笑みを浮かべると悟空達に襲い掛かった。
「気ぃつけろ!恐ろしく強えぞコイツ等!」
「無駄だ。私の子達だぞ、絶対に勝てん」
悟空の叫びに全員が身構えた。しかし、それは無駄な努力だとセルが笑みをこぼす。
悟空はギリギリ互角の戦いをしているがセルとの戦いで体力が消耗していて次第に劣勢になっていく。ベジータとトランクスは互角の戦いをしていだがセルジュニアは余裕そうだった。ピッコロ、クリリン、天津飯、ヤムチャはセルジュニアに一方的に攻め立てられ苦しみ、16号はミスターサタン達を庇いながら戦っていた為に徐々に破壊され始めていた。
「や、やめろ……やめ……」
「見ろ、孫悟空やベジータですら互角なんだ。他のお仲間はヤバいんじゃないか?16号は直したばかりなのにもう壊されてしまうかもな。あの無謀で無知な馬鹿どもも殺されるたまろう。それに見たまえ」
怒りでザワザワと気が高まっていく悟飯。後一息だとセルは悟飯の視界にある物を納めた。それはセルジュニアによってボロ雑巾の様にボロボロにされたスーナだった。スーナはセルジュニアに髪を乱暴に引っ張られながら悟飯とセルの前に投げ捨てられる。
「あ、ああ……ね、姉さ……」
「お前の所為だぞ、孫悟飯。お前が力を隠すから姉が傷ついた」
その姿に悟飯は言葉を失い、絶句した。スーナを襲ったセルジュニアはスーナが動けない事を良い事に腹を蹴ったり、髪を乱暴に引っ張ったりとやりたい放題だった。
それを満足そうに見たセルはトドメとばかりにセルジュニアに乱暴に連れて来られたスーナに歩み寄る。
「ほら、お前が力を隠し続けると大好きな姉さんが傷物にされていくぞ」
そう言ってセルはスーナの道着の上着をビリっと破く。破かれた上着からインナーが晒され、白い肌が空気に晒される。しかし、スーナの肌はセルジュニアの暴行により所々血が流れていた。
傷だらけにされた姉の姿に悟飯の理性は完全にブチ切れた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
悟飯の叫びと共に気の嵐が吹き荒れた。その衝撃で近くに居たセルジュニアが吹っ飛ばされる。
「ほう……やっと真の力を解放したか……だが、む?」
「返して貰ったぞ……」
力を解放したセルからスーナを奪い返し、更に仙豆も取り返した悟飯はスーナを横抱きに抱えて悟空達と戦っているセルジュニア達の方へ超スピードで移動した。
「な、ぎぃ!?」
「ぎゃあっ!?」
「す、凄い……わっ!」
「トランクスさん、姉さんをお願いします。クリリンさん、仙豆で皆をお願いします」
「あ、ああ……任せろ」
スーナを横抱きにしている為に足技だけでセルジュニアを瞬殺して行く悟飯。あっと言う間に9体のセルジュニアを片付けた悟飯はトランクスにスーナを預け、更にクリリンに仙豆を返すと悟飯はセルと戦いに向かう。
「いい気になるなよ、小僧……まさか本気で私を倒せると思っているのか?」
「倒せるさ」
セルの言葉に迷いなく断言する悟飯。その態度にイラついたセルはフルパワーを解放した。
「はあっ!見ろ、これが私のフルパワーだ。これでも勝てると言う気か……ごはっ!?」
「この程度か?」
セルの自慢げな表情を意にも介さず、悟飯はセルを殴り付けた。一撃で凄まじいダメージを負ったセルは一歩後退し、キッと悟飯を睨み付けると素早い手刀で悟飯を叩き付けようとするが悟飯はそれ以上のスピードでセルの顔側面を殴り飛ばす。
「あ、あれが覚醒した悟飯か……」
「やった……オラの予想通り、悟飯の潜在能力はセルを上回っていた」
ピッコロと悟空がセルを圧倒する悟飯の強さに驚いているとセルは猛スピードで上空へ逃げると気を上げた状態で構えた。
「フハハハハッ!くらえ、全力のかめはめ波だ!避けれるものなら、避けてみろ!貴様が避けても地球は粉々だ!その身で受けざるを得ないぞ!」
「よ、よせ馬鹿野郎!」
「……終わりだ」
「かめはめ……」
セルの放った、かめはめ波が地表に迫る。クリリンは叫び、ベジータはその破壊力の予想がついた為に地球が破壊され自身も死ぬだろうと本能的に察してしまった。しかし、悟飯だけは落ち着いた様子で構えた。
「波ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「な、馬鹿な……がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「セルのかめはめ波を……あのガキが更に巨大な、かめはめ波で消し飛ばしやがった……」
悟飯が放った、かめはめ波はセルのかめはめ波を飲み込み、セルの体を吹っ飛ばした。ベジータは今見た光景が信じられず茫然と呟くしか出来なかった。
上空では悟飯のかめはめ波で四肢が失われ、ボロボロの姿になったセルが居た。その姿を見た悟飯はニヤリと笑みを浮かべた。
「何をしている悟飯!早くセルにトドメを刺すんだ!」
「トドメを?まだだよ父さん。皆を……姉さんを苦しめたコイツはもっと苦しめてから殺さないと……」
悟空は悟飯にセルにトドメをさせと叫ぶが悟飯はセルをもっと苦しめるべきだとトドメを拒んだ。
その隙にセルは身体を再生するとパワーを上げた変身で悟飯に戦いを挑むがスピードが失われた肉体では悟飯の動きに翻弄され、悟飯に一方的に攻撃されていた。
「パワーに偏った変身でスピードが失われている。俺に指摘した変身をするなんて……」
「悟飯の強さに逆上したんでしょうね……冷静な判断が出来なくなっているんでしょう」
トランクスの呟きにトランクスの腕の中で気絶していた桃香が呟いた。
「桃香さん、気が付きましたか!?」
「ええ、油断していた訳では無かったんですが、あの様にセルの冷静さを失わせようと思っていたんですが悟飯はセルのプライドを真正面から打ち砕いた様です。私では実力的に出来なかった事です」
目覚めたスーナはフラつきながらもトランクスの腕から離れ立ち上がる。スーナは先程までセルを馬鹿にしながら冷静さを欠かせて、その隙を突こうとしたのだが先にセルが悟飯に目をつけた為に叶わなかった事だった。
その間にセルは悟飯にボコボコにされ、その衝撃でセルは18号を吐き出して完全体から第二形態へと戻ってしまった。
「じゅ、18号を吐き出した……完全体じゃなくなったんだ……」
「ちぇ……ツマらないな。そんなんじゃもうお終いだ」
「ち、ちくしょう……こうなったら……」
「今の悟飯はサイヤ人としての本能に引っ張られてますね。セルのあの様子も含めて嫌な予感がします」
トランクスの呟きに悟飯も興味が薄くなった様に呟いた。もっとセルを苦しませ。いたぶりたかったのだろう。セルの悔しそうな表情にスーナは嫌な予感がしていた。あの表情はスーナがフリーザ軍に居た頃に時折見た顔だったからだ。
そしてスーナの予想は当たってしまう。セルの体は風船の様に膨らみ始めたのだ。スーナは痛む身体に鞭を打ちながらセルの方へと歩み寄る。その途中でミスターサタンやテレビ局の人間を見付けて話し掛ける。
「この状況でも逃げずに観戦をしながら戦いの順番待ちをするとは流石、現役チャンピオンですね。テレビ局の方々も守るとはお見事です。テレビ局の方々もこんな状況下でも撮影しようとするとは見事なプロ根性です。今後は昔の強者達を調べてから番組を組む事をお勧めします。そうすればもっと良い番組になると思いますよ」
「お、おい……何をする気だ!?もう止めておけ!」
「そ、そうだぞ!キミはもうボロボロじゃないか!後は大人に任せたまえ!」
スーナに話し掛けられたミスターサタンとアナウンサーは揃ってスーナを呼び止めようとしたがスーナは最後にニコリと笑みを残してそのまま行ってしまう。
「ふ、ひひひ……これでお前達は終わりだ。俺はこれから自爆する。後、一分程でな。おっと攻撃しようなんて思うなよ。その衝撃で爆発するから死ぬのが早まるだけだ」
「く、くそ……父さんの言った通りになってしまった……僕がさっさとトドメをさしておけば……」
セルの自爆を止める術が無いと絶望する悟飯達。最早、打つ手が無いと誰もが諦めたその時だった。
「やっぱ……地球が助かるにはコレしか方法が無さそうだ。バイバイみん……ぐうっ!?」
「父親として、戦士として責任を感じるのであれば今後に活かしてください。貴方は放任主義が過ぎますから」
悟空が何かをしようとした瞬間、スーナがボディブローで悟空の動きを封じた。そしてスーナはそのままセルに歩み寄る。
「く、くく……お前に勝てなかったのは悔しいがお前達の悔しそうな顔を見れて満足……って、おい……」
「体の面積が広いと落書きしやすいですね」
「ね、姉さん……?」
セルの膨らんだ体に何処から出したのか筆で『競馬狂いのナマモノ』『似非紳士』と書いて行くスーナ。ある意味でいつも通りの姉の姿に唖然としている悟飯。
「16号、ドクターゲロの命令に従わず生きてみなさい。クリリンさん、ヤムチャさん、天津飯さん。元フリーザ軍の私に優しくしてくださって、ありがとうございます。ピッコロさん、長い間トレーニングに付き合って下さってありがとうございました。ベジータ王子、フリーザ軍時代から私を気にかけて下さって感謝いたします。トランクス、貴方なら未来を救えると信じています」
スーナは筆を捨てるとセルの腹に手を添える。
「悟飯、私の為に怒ってくれて不謹慎ですが嬉しかったですよ。これからはその力をコントロール出来る様になりなさい。正しい力の使い方は貴方の方が良く理解しているでしょう。貴方の姉として過ごした日々は私の宝物です。お母さんには……謝っておいて下さい。とんだ親不孝者ですね、私は」
「姉さん……まさか、待って!」
「よせ、桃香!オラが……」
スーナの発言から何をする気なのか察した悟飯と悟空はスーナを止めようとしたがスーナは悟空に振り返り笑みを溢した。
「さようなら、私のもう一人のお父さん……」
その言葉を最後にスーナはセルを連れて瞬間移動をした。
「わぁぁぁぁぁぁっ!?そんな奴を連れてくるなぁぁぁぁ!!」
「申し訳ありません、界王様。私の目的の為に貴方を利用させていただきます。お父さん、フリーザ様……私も今、お側に参ります」
「チ、チクショォォォォォォォォォォォォォォッ!!」
界王星に瞬間移動したスーナは瞳を閉じて最後の時を迎えようとしていた。界王は自爆寸前のセルに驚愕し、セルは自爆で道連れが叶わないのだと理解して悔しそうに絶叫した。
その直後、セルは自爆してスーナ、界王を道連れに大爆発を引き起こしたのだった。