未来へと帰って来たトランクスはブルマの下へと急いだ。過去での戦いと、その結末を伝える為に。
「そっか……孫君は生き残ったけど桃香は……悟飯君が仇を取ったのね」
「はい。父さんも母さんの言った様にただの冷たい人じゃありませんでした。俺や桃香さんがセルにやられた時、真剣に怒ってくれたんです」
トランクスから過去の出来事を聞いたブルマはスーナの事を残念そうに聞いていた。そして話題がベジータの事になってから苦笑いを浮かべていた。
「そ、そうでしょ?だから、そう言ったじゃない」
アハハと空笑いをするブルマは「へぇ……意外だったわ。ベジータにもそんな面があったのね」と心の中で呟く。
「それで母さん……桃香さんの事なんですけど……過去で桃香さんが言っていたんです。『フリーザを桃香の目の前で倒す』これが母さんの指示にしては妙だったと。何か母さんが隠している事があるって」
「流石、桃香ね……僅かな情報からでも真相に近い部分にまで予想してるなんて」
トランクスの発言にブルマはコーヒーを飲みながら呆れた様な口調で苦笑いをした。
「過去の事が解決したなら、もう良いかしら……実を言うとね、フリーザを桃香の目の前で倒す様に言ったのは桃香自身なのよ」
「え……ええっ!?」
ブルマの意外な発言にトランクスは驚きを隠せなかった。桃香自身がフリーザを倒せと指示を出していたと言う事実に。
「桃香が言っていたのよ『私を地球に留まらせる為にはフリーザ様の死が必要になるでしょう……あの時、悟空さんがフリーザ様を倒さなかったら私はフリーザ軍へ戻っていたでしょうからね。もしも歴史にズレが生じた際には……誰かがフリーザ様を倒さねばなりません。これから悟飯かトランクスが過去に行くのであれば、それは最重要事項の一つになるでしょう。過去の私には悪いとは思いますが未来を変える為と……過去をより良いものにする為に……』ってね。桃香は自分自身の事だから過去でフリーザを倒せば自分は絶対に地球に留まると確信してたのよ。その事をアンタ達に伝えたら躊躇うでしょ。桃香がフリーザの事を崇拝していたのは知ってたんだから。だから私からの意見って事にしたのよ」
「そ、そうだったんですね……」
フリーザをスーナの目の前で倒す。その指示がスーナ自身から発せられた物である上に未来と過去の為に自分自身ですら合理的に利用していたスーナの思考にトランクスは恐ろしい物を感じていた。結果として未来のスーナが予想していた通りに過去でセルを含めた人造人間の問題を解決して、トランクス自身も未来の人造人間を倒せる程にまで成長したのだから。
『番組の途中ですが、緊急速報です。パセリシティで人造人間が暴れているとの情報が入りました。近隣の方は急いで避難を……』
「人造人間が……行ってきます」
その時だった。ラジオから緊急速報が流れ始め、トランクスは上着を脱ぎながら立ち上がる。
「トランクス……気を付けてね」
「大丈夫です。その為に過去に行ってきたんですから」
ブルマの心配をよそにトランクスは笑みを浮かべると人造人間が暴れている街へと急行した。過去の世界で修行を重ねた今のトランクスと人造人間では力の差が開いていた。人造人間17号.18号をアッサリと倒したトランクス。更に競馬場の跡が残る街に出没した完全体になる前のセルを見つけ出し、始末した。
「これで全てが終わった……ありがとう悟空さん達……」
『お疲れ様です。トランクス、ご飯の準備は出来てますから一緒に食べましょう』
セルを消滅させた後、空を見上げて人造人間の脅威が全て解決したのだと心からの安堵したトランクス。それと同時に思い出したのは悟飯とスーナがまだ生きていた頃。悟飯との修行の後に手作りの料理を振舞ってくれていたスーナの言葉だった。ブルマから人造人間との戦いは危険だから、その為に修行する事を禁じられていたトランクスだがスーナはそれをブルマに黙っていてくれた上に悟飯と共に自身の事を労ってくれていた。そしてトランクスは修行後のスーナの手料理を何よりも楽しみにしていたのだ。
過去の世界において神の神殿の修行後にスーナの手料理を振る舞われた際には未来のスーナの事を思い出して泣きそうになった程だ。
「く、うぅ……桃香さ……ん……」
そして全てが終わった今、スーナの幻影と言葉が聞こえたトランクスは今度こそ涙を流した。ここに居ない筈の……この世界には既に存在しないスーナの温もりを感じて今まで耐えて堰き止めていた筈の涙が溢れ出てしまったのだ。
「っ…‥泣いてちゃ駄目だ。それこそ……桃香さんにも悟飯さんにも怒られてしまう」
トランクスは自身の拳で涙を拭う。そして、この世界は自分が守っていくのだと決意を新たにするのであった。